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おしえてくれたこと (3)


こんばんは!月がきれいですね。

日をまたいでしまいました…。そしてすごく眠いです…
とりあえず、なんとかUP!





「蓮、どうした?」
社もメニューを受け取りながら不思議そうに蓮の顔を見る。
蓮は横に置いた上着のポケットからメガネを出すと、髪をばさばさと下ろしてからメガネをかけた。その姿を見て、今度はキョーコの方があっと声を上げる。
『俺が誰だか分かった?』
蓮がにこりと笑いながら英語で話しかけると、キョーコは呆然としたまま答えた。
「敦賀先生・・・?」
今度の返答は、英語ではなかった。蓮はメガネを外しながら笑う。
「正解。・・・さて、どうして最上さんがここで働いているのかな・・・学校に届けは出している?」

キョーコの通うLME高等学校はアルバイト禁止ではなかったが、バイト先についての届けを出すことが求められていた。蓮は卒業生のため、その辺りの規則にももちろん詳しい。
キョーコは青ざめて固まっている。
「出して・・・ません・・・」
「そうだよね。松島先生は、君が同級生の家で旅館の手伝いをしていると言っていたけど?」
「はい・・・」
キョーコは俯いて小さくなってしまった。学校に内緒で居酒屋のアルバイトをしていることが蓮にばれてしまったのだ。先生に言われると、色々とまずい。

蓮は ふ、と息を吐くと穏やかな声で言った。
「ああ、大丈夫だよ。学校に言ったりはしないから。俺も、正式な教員って訳でもないし、まあ高校時代は俺も色々あったし?」
キョーコはがばりと顔を上げた。心配そうな表情で蓮を見つめるが、蓮はいたずらっぽい顔で笑っている。
「事情もあるんだと思うし・・・でも、よければ明日にでもちょっと話を聞かせてくれる?もちろん先生には内緒で」
蓮は人差し指を立てて自分の唇の前に持ってきて言った。じっと、キョーコの顔を見つめる。
「分かりました・・・」
キョーコは観念したように答えた。とりあえず、最悪の事態だけは回避できそうだが、『ちょっと話』で何を言われるのか落ち着かない気分だ。しかもなぜ、敦賀先生は自分が旅館の手伝いをしていることを知っているのだろうか?
キョーコの気分を知ってか知らずか、蓮は笑顔のままだった。
「じゃあ店員さん。注文をお願いしますね」


キョーコが運んできたビールに口をつけながら、社は蓮をちろりと見た。
「お前が人のことに首突っ込むなんて、珍しいな」
「そうですか?」
「ああ。わざわざばれてない正体を明かすなんて、しないだろう、普段は」
「どうでしょうね」
「あ、しらばっくれやがって。撮影の時だっていつも他のモデルと交流なんかしないくせに」
「それなりに仲良くはしてますよ?」
「そうかぁ?友達づきあいも当たり障り無くだろ、どうせ」
「また、見て来たかのように…」
「お前見てればなんとなく分かるよ」
「そんなつもりも無いんですけどね」
社はあまり納得していなかったが、その話はそこで打ち切り、実習の様子などを質問し始めた。


社は飲み物を日本酒に変えて、順調に飲み続けていた。蓮は翌日の授業に酒臭い息で出る訳にもいかないので、少しペースを落としている。
「大体お前さ、教職なんて取ってどうすんだよ。モデルの仕事は学生の間だけだって言うし、親父さんの会社を継ぐわけじゃないのか?」
「いろいろ、試してみたいんですよ。教職も、今すぐ教師になるわけじゃありませんけど、持っておいて悪くは無いと思いますし」
「親父さんの会社は?」
「それは・・・もしそっちに進むとしても、やっぱりエンジニアとして経験を積んでから、ですかね・・・」
「まだまだ迷ってるみたいだな」
「そうですね・・・とりあえず、このまま父の会社のことを視野に入れるなら、あと2年大学にいようかとも思います」
「んじゃあと2年!あと2年、モデルの仕事も続けてくれよ~~」
「今のペースでよければ、可能だとは思いますが・・・」
「よぉし、絶対だな!」

蓮は社が勤務するプロダクションにモデルとして所属していた。もちろん、学生が本分であるために休みを利用してのバイトレベルではあったのだが、社は蓮のモデルとしての素質にほれ込み、ちょくちょく呼び出してはモデルやタレントを本業とするようスカウトしているのだ。蓮も、モデルを本業にするつもりは今のところはないのだが、社の人柄や仕事に対する姿勢を尊敬しているため、誘いをもらえばこうやって会いに来ている。
蓮はまだ自分の将来について決めかねているところがあり、その相談に乗ってくれる社を慕っている、という面もあった。あまり素直に言うことを聞いていると、本格的にタレント活動をさせられそうなので難しいのだが。


ふと社が気がつくと、蓮は少し離れたところをじっと見ている。蓮が見ている先は既に確認済みだ。

こいつ、さっきからちょいちょいあの子の事見てるよな・・・
実習先の生徒ね。普段だったらそんなのに興味なんて持つ奴じゃないのになぁ。

「そんなにあの子の事気になるのか?」
唐突に社に声をかけられて、蓮はキョーコから視線を外すと笑ってごまかした。
「気になるというか、表情豊かだなあ、と思いまして」
「そういうのを気になるって言うんだよ」
う、と蓮は言葉につまった。
「ほんと珍しいよな、お前が他人に興味持つなんて」
しかもさらりと誤魔化せないなんて、と社はグラスを口に運びながら心の中で思う。
蓮は腕組みをして本気で考え込んだ。
「確かに・・・自分でも、なんでこう目が行くのか、不思議ではありますね」
「惚れたか?」
社は冗談で言ってみたのだが、蓮は真顔になった。
「おいおい。本気かよ」
「あ、いや……違う、と思いますが」
「なんだ、歯切れが悪いな」
「だって俺、あの子に会ったの昨日が初めてですよ」
「そういうの、一目惚れって言わないか?」
「一目惚れ……ですか…」
それは考え付かなかった、という顔で蓮は社を見やる。

「しっかりしてくれよ。お前その顔で、自分が相手を好きかどうか、わかんないのか?」
社は苦笑しながら言うが、蓮は真剣な顔をしていた。
「俺の顔は関係ないですが・・・ 彼女は、昨日見た表情よりも、今日の笑顔の方が可愛いな、と思いますけど」
「なんだそりゃ」
「大体、教育実習中の学校の生徒を好きになるって、ダメじゃないですか」
「普通に考えてダメだろうな、まあ思うだけならいいかもしれないが、行動に出したらアウトだろう」
「どうしたらいいんでしょうね」
「その前に、お前ほんとにあの子に惚れたのか?」
「・・・分かりません」
社はがっくりとうなだれることになった。

「あー、あれだ。お前、はっきり惚れたって自覚してから考えろ」
「はあ」
「自覚したら、俺に相談しろ!そん時考えよう!」
「分かりました・・・」

すっかり酔っ払い親父と化した社のくだまきは、しばらく続いたのであった。


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