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君の魔法 (おまけ)


終わったと見せかけておいて、入れ損ねたエピソードのおまけです。
蛇足的なものですが、どうぞ~





クオンは宮殿脇にある大木に寄りかかり、空を流れていく雲を眺めながらぼんやりとしていた。時折頬を切るような冷たい風が吹き抜けていくが、クオンは気にする風もなくのんびりと佇んでいる。

そこへ、白い息を吐きながら1人の少女が駆け寄ってきた。
「クオン様!まさか、ずっとこんなところで待っていてくださったんですか??」
「ああ、キョーコ、お帰り。お勤めご苦労様」
「あ、ありがとうございます。いやそうじゃなくて・・・」
クオンはにっこりと笑うとキョーコの顔を覗き込んだ。
「キョーコが神へのお祈りを頑張ってる間に、俺だけぬくぬく休んでるってのも、どうもね・・・」
「そ、そんなこと気にしなくていいんですよ!!」
キョーコは至近距離から覗き込まれて急に挙動がおかしくなる。この少女はまだ恋人との近い距離に慣れていないようだ。

徐々に慣れてくれれば、と思って我慢してきたけど、もういっそのことショック療法のほうがいいのかな?

恋人が爽やかな笑顔で恐ろしいことを考えているとは思わず、キョーコは嬉しそうに報告を始めた。
「でも、滞りなく儀式が終わってよかったです」
「そうだね。マリア様も慣れてきたのかな?」
「はい!」

マリア姫は、祖父である国王や父親の王太子、更には青の魔女とも相談して、自分が契約を交わしたLEM国の守護神に対して、定期的にお祈りを捧げることに決めたのだった。
「神様のお力に頼ろうとは思いませんけど、見守っていただくためにもお祈りを捧げる位だったらいいですわよね?」
マリア姫の提案に反対するものはいなかったため、月に一度の祈りの儀式が恒例行事として組み入れられることになった。その結果、神の声を聞くことが出来るキョーコは必然的に神への代弁者として毎回お祈りの儀式に引っ張り出されている。

「神は、何かお告げをしたりするの?」
クオンも多少の興味を持って聞いてみた。何せ、その儀式に関わるものの中で神の声を聞けるのはキョーコただ1人なのだ。
「いや・・・お告げっていうものはありません。ただ、祈りは届いたってことを教えてくれるだけで」
「へぇ・・・どんな感じなんだろうな、神の声って」
「うぅん、声、とは言いますけど、実際声が聞こえるわけじゃないんですよね。頭の中に直接気持ちというか、意志が降りてくる感じで」
「前にもそれを聞いたけど、感覚的に分からないなあ」
そうですよね、と同意してから急にキョーコは表情を変えた。なぜか悲しそうな顔になっている。

「どうした?キョーコ。何か、困ったことでもあった?」
即座に表情の変化を察知してクオンが尋ねる。
「いえ、困ってはいないんですけど・・・」
「けど、どうした?」

キョーコは一呼吸置いてから、答え始めた。
「ここ2月ほど、お祈りの儀式で魔力を使っているせいでしょうか。今日の儀式の後に、精霊が見えるようになったことに気がついたんです」
クオンはキョーコの言葉に驚きつつも、その内容と悲しげな表情が一致しないことに疑問を感じた。
「見えるようになったのは、いいことじゃないの?もしかしたら精霊魔法も使えるようになるかもしれない」
「それは、確かに悪いことではないんですけど・・・」
「なにか、まずいことがあるの?」

次の瞬間クオンを見上げたキョーコの目には、うっすらと涙がたまっていた。
「だって・・・!精霊が見えるようになったらいいなって楽しみにしてたのに、ただの丸い光の玉に見えるんです!!羽が生えた妖精みたいのとか、そうでなくても鳥とか、もっとこう・・・お話できるような姿だったら良かったのにぃ!」

気にするの、そこ、なのか??


クオンは激しく脱力したが、すぐにおかしさがこみ上げてきた。
「くくく・・・ふふっ。ふ、はははははっ。まったく君って人は・・・!」
両手を伸ばしてキョーコの体を抱き寄せると、抗議も構わずぎゅうぎゅうと抱きしめる。
「ほんとに、君の思考は飛びぬけてて面白くて可愛いよね」
「なっ。何・・・んっ」
抱きしめられて真っ赤になり、物言いたげに見上げてくるキョーコが可愛くて、愛しくて、思わずクオンはその唇に触れるだけの口付けを落とした。

「ふふっ。早く、いつでも堂々とこうしていられるようになりたいな」
「・・・!!!もぅっ。何言ってるんですかぁ!既にクオン様は堂々としてますよ!」
「そうかな?かなり我慢してるのに・・・」
「これで、ですか?」
「そうだよ・・・・・・ふ、ふふ。精霊と、話せるようになるといいね」
「・・・バカにしてますね」
「そんなことないよ。実際話せる人だっているんだし、君は神様と話せるんだし」
「光の玉に見えてても話せます?」
「見え方は関係ないんじゃないかな」
「それなら、私、がんばってみます!」
「・・・うん(・・・どう頑張るんだろう)」

遠巻きに、ギャラリーはいたのだが、二人は気づかず抱き合ったままで会話を続けていた。
冷たい風も何のその。愛しい人がそこにいれば、心はいつも温かい。

・・・しかし、その後キョーコが精霊と会話できるようになったかどうかは・・・誰も、知らない。


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