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ほほえみの先に (12)


こんばんはーー。ぞうはなです。
先週は学校行事ウィークでした…

とりあえず、更新!とう!





「もしかしてキョーコちゃんが言ってた目的って、その彼氏が関係あるんじゃないのか?」

社の言葉に、蓮は真顔でしばらく静止した。

「まあお前には想像できないかもしれないけどさ。たとえば、彼氏が自分で店やるのが夢の、調理人の卵だったりするとさ」
「…ああ」
「分かったか?彼氏が店を出したければ、『じゃあ私がお店を出す手伝いをするわ!』みたいなことになる訳じゃん。彼氏が料理以外のことに疎ければ、経営を学んでそちらの面から支えようって」

『お前には想像できないかもしれないけど』という社の言葉がよく理解できる。
確かに蓮には、「自分の目的は好きな人の夢を支えること」だと言う気持ちは分からない。
いや、そういう考え方があることは分かるのだ。だが、そのこと自体が目的になるのはあまりに主体性がないと思う。

「でももしかしたら、2人の仲が上手く行ってないのかもしれないな」
「……」
ちょうど蓮も同じことを考えた。
キョーコは集中すると前だけ見て突進する傾向がある。もし社の言う通りなのだとしたら、迷いもなく出店まで突き進みそうだ。

「我に返って、『あれ?』となったのか、彼氏の方が離れて行って目的を見失ったのか」
「そうですね…確かにそう考えるのが辻褄があうような気がします」
突っ走る性質があるとはいえ、キョーコは決してバカではない。
むしろ、頭の回転は速く覚えもいい。そして人の話をよく聞いているのだ。ふと立ち止まったときに改めて考えてみたのかもしれない。

「別れたってことかもしれないよな」
ふと顔を上げればやはり、社はにやにやと蓮を見ている。
「そんな下衆な勘ぐり、よくないですよ」
「へえ、蓮君は気にならないんだな」
「気になりませんよ。そこまでプライベートなことに立ち入ったって仕方ないでしょう」
「はいはい」
ぴしゃりと蓮に否定され、社はそれ以上の追及を諦めた。


まったく社さんは…

社が蓮のことを心配しているのだと、それは分かっている。
何せ学部一、いや学校一と噂されるほどのルックスの蓮の割に全く女の影が見えないのだから、社でなくとも気になるし、なにか事情があるのではないかと思われるのは仕方ない。

だからといってすぐに恋愛に結び付けようとするのも迷惑だ。
大体自分はそういう目でキョーコを見てはいない。
けれど。

後輩として面倒を見ている、本当にそれだけだ。

蓮は自分の住むマンションへと足を踏み入れた。
頭の中で反芻した自分のセリフがなぜか自分自身に言い聞かせている言葉のようで、蓮は少し不思議な気分でエレベーターのボタンを押したのだった。


まさか自分の状況を分析されているとは思わないキョーコは夜遅く、家庭教師のバイトを終えて自分の部屋へと戻ってきていた。
がらんとして暗い部屋は少し広く感じる。

「継がないって…本気なのよね、きっと」
尚はダブルスクールの宣言をして以来、この部屋にはあまり帰ってこなくなっていた。4月からと言っていたのでまだ始まってはいないだろうが、どこで寝泊りしているのかも分からない。友達の部屋にいるのだろうか。ただ、キョーコから離れようとしているのは確かだろう。

尚に対する気持ちは、時間が経って怒りが落ち着くと同時に急速にその温度を失っている。今ではもう、尚を全力で支えようと思っていた自分の気持ちが思い出せないくらいだ。
「ここに住んでる意味ももう…ないわよね」

ぽそりと呟いて、キョーコは自分の言葉に自分でビックリする。
「そうよ!なんで私気がつかなかったんだろう!?」
キョーコの頭の中は早速、思いついた考えを行動に移す計画で完全に占められたのだった。


一週間後の大学キャンパス。
冷たく強い風が吹くその日の午後、キョーコは門に向かって一人、構内を歩いていた。
強い風がときたま砂埃を巻き上げるためキョーコは目を細めて下向きで歩いていたのだが、ふと風がやんだタイミングで顔を上げ、「え?」と声を出した。

門の外、ガードレールによっかかっているのは尚だ。いつにも増して不機嫌そうな顔で、腕組みをしたまま門から出る学生達を睨んでいる。

キョーコはここ数日、非通知でかかってくる電話に出ていないことを思い出していた。あの顔からすると尚はキョーコを待っていて、何か文句を言うつもりでいるのだろう。
「違う門から出よう」
だいぶ遠回りになってしまうが、尚に関わるよりは時間のロスは小さそうだ。

尚に気づいてから方向転換するまで早かったはずだが、相手の目ざとさが上回ったらしい。キョーコが10歩も歩かないうちに、すぐ横で「おい」というイラついた声が聞こえた。
「何よ」
キョーコは足を止めずにそっぽを向いたままぶっきらぼうに返事をする。すれ違う学生が何事かと自分たちを目で追ってくるのが妙に気になった。

「お前…あの部屋どうしたんだ」
「どうもしてないわ、私は」
「親父に電話しただろう」
「だってあの部屋の借主はおじさまよ。そりゃあ連絡するわよ」
「なんで勝手に出てくって話になるんだよ」

キョーコはぴたりと足を止める。
「私、あの部屋出ることにしたの」
「だから!なんでかって聞いてんだよ」
心底不思議そうな顔で、キョーコはまじまじと尚を見た。
「出ていっていいって言ったの、誰だったっけ」
「あ?」

尚は眉間にしわを寄せたが、少し考えて自分のセリフを思い出したらしい。少しだけ声のトーンが落ちる。
「そんな余裕がないって言ってたのはお前だろうが」
「余計なお世話よ、好きにするわ。…好きであの部屋に住んであんたの面倒見て…だからやめるのも自由よね」
「ふん」

キョーコは心底嫌そうな表情で尚を睨みつけたが、すぐに目をまん丸く見開いた。
キョーコの視線は尚ではなくその後ろ側に向けられているようで、尚は思わずちらりと振り向く。そこにはこれまた少し驚いたような表情をした男が立っていた。


「こ!こんにちは!敦賀先輩」
「こんにちは」
男は深々と頭を下げたキョーコに微笑みかけると、軽く頭を下げて挨拶を返した。自分を睨むように見てくる男にも軽く会釈をし、そのまま二人の横を通り過ぎる。

「親父たちに余計なことは言うなよ」
「余計なことって何よ」
「別に。いちいちチクるとか、ガキみてえなことするなってだけだ」
「チクられて困ることがあるの?」
「うるさくされると迷惑なだけだ」
尚は気づいていた。キョーコは明らかに、先ほどの男子学生に気を取られている。
まださほど離れていない男が、自分たちの会話を耳にすることを警戒しているように尚には感じられる。尚はなぜだかそのことに対して、ムカムカと腹が立つのを覚えた。

「まあ、俺によっかかって生きてきたお前に何ができるのか知らないけど、あとで泣きつくなよ」
「…私は生まれ変わるの。愚かだった今までの自分は捨てるのよ」
「ふん、できるならやってみろよ」
尚は言いながらちらりとキョーコの後方に注意を払った。
2人の会話が聞こえているのかは分からないが、男はごく普通に歩き去っていった。



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コメントコメント


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ちょっとは意識してる?

こんばんは!いつも更新楽しみにしてます。


はやく、はやく、蓮さんの片思い時期を拝見したいです!
絶対にキョーコちゃんとショーの会話、聞こえてますよね。


はやく、微笑み会う、キョーコと蓮を見たいです。

harunatsu7711 | URL | 2017/03/04 (Sat) 20:54 [編集]


Re: ちょっとは意識してる?

> harunatsu7711 様

コメントありがとうございます。
お返事がひっじょーーーに遅くなりまして申し訳ありませんー!

ふふふ、そろそろ蓮さん認めざるを得ない状況に追い込まれつつあります。
好きなことを自覚しながら相手の気持ちが読めないって、イライラしそうですよね。
相手に大事な存在があるというシチュエーションで、蓮さんがどう出るのか。
…き、気長にお待ちいただければと思います。

ぞうはな | URL | 2017/03/14 (Tue) 23:12 [編集]