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君の魔法 (31)


こんばんは!
今日は、うちの方では午前中から雨でした。
これほど風まで強くなるとは思いませんでしたが、さて、流星群は見えるのでしょうか?





ふわり、ふわりとキョーコのドレスの裾が舞う。

「どう?楽しかったかな?」
「んー…なんだか、不思議な体験でした」
「そう?」
「そうですよ。だって、こんなの、初めてですもの」
「でも、次の舞踏会では他の男とは踊って欲しくないかな」
「え?」
「見てて、やっぱり面白くなかった」
少しすねたレンの顔を見上げて、キョーコはおかしそうに笑った。

「でも…おかげで分かったことがあるんですよ?」
「それは、なに?」
「ふふ、やっぱりレン様の腕の中は特別ってことです!こんなにドキドキするのに、なんだか安心して居心地がいいんです」
レンはまじまじとキョーコを見つめるが、キョーコはニコニコしたまま続ける。
「レン様の存在が、私の気持ちを強くしてくれるんです。もう、ここにいてくれるだけで勇気が出ちゃいます」

「ああ…もう…君って娘は……」
レンは口の中で呟くと、くすくす笑い始めた。

どうしたんですか?とレンを見上げたキョーコが驚いた顔になる。
「レ、レン様!」
「どうしたの?」
「どうしたの、じゃないですよ!髪!髪の色が!!」
レンの髪は、濃い茶色に変化していた。ダンスのステップごとに吹き飛ばされるかのように、段々と髪の色が抜けて明るくなっていく。

「レン様!も、戻っちゃってますよ?」
キョーコは慌てて小声でレンに伝えるが、レンのくすくす笑いは止まらない。
「ああこれ?仕方がないよ」
「えええ?」

「だって…君が俺に魔法をかけるから」

一瞬口を開けてレンを見つめたキョーコは、すぐに立ち直ると慌てて反論した。
「何言ってるんですか?私魔法なんて…」
「気がついてないの?君はいつも俺に魔法をかける…これは、魅了の魔法かな」
レンの髪はすでに薄茶色になっていた。周りに気がつく者が出始め、周囲がざわついている。

「俺のくだらない思い込みや偏見なんか、簡単に吹き飛ばしてくれるし…君から目が離せない……本当に、どうしてくれるんだ」
「そんな、私ですか??ああ、やっぱり瞳もですよぉ~~」
当人であるレンが落ち着いてるのにキョーコは大慌てだった。レンの髪はすでにキラキラと光る金髪に完全に戻っており、瞳の色も碧い。周りを見回してみても、あちこちでこちらを指差して驚きの表情を浮かべている人々が見える。

「俺が…レンじゃなくてクオンでいるのは、いや?金髪や碧い瞳は嫌い?」
「そんなことはないですよ!髪の色とか、瞳とか、名前もどっちでも、そんなことでレン様が変わるわけじゃないです。そうじゃなくて、今こんなところで…!」
「うん、その答えを聞いて安心した」

曲が終わりを告げる。
レンとキョーコがその場で止まると、周りの視線はほぼ全て、レンに注がれていた。レンは静かにキョーコから身を離すと、キョーコの手を取ったまま片膝をつく。

「キョーコ・モガミ。俺の全てで、君を愛する。どんなときも、何があっても、ともに乗り越えて行きたい。一緒に生きてくれますか?」
キョーコはレンの顔を見つめた。その目に、うっすらと涙が浮かんでくる。レンに取られた手にもう片方の手をそっと添えると、静かに答えた。
「もちろんです。あなたがどんな姿でも、どこの誰でも、ずっと、一緒に。一緒にいてください」

周囲が固唾を呑んで見守る中、一段高い場所から パンパンパンパン と拍手が鳴り響いた。皆がそちらを振り返ると、そこには笑みをたたえた国王の姿がある。

「よぉ、久しぶりだな、クオン!どーだ、やっぱり愛の力ってのは偉大だろう?」

クオン?

一段と高いどよめきが人々から漏れる。
「あの、ヒズリ様の…?」「うそ、まさか」「どういうことなんだ?」人々が囁きあうのをさえぎるように、ひときわ高い声が響き渡った。

「クオン!」

声の主はそのまま二人に突進する。
「お前、こんな演出をしおってー!お前の目にはキョーコしか映ってないのか?父子の感動の再会をさせないつもりかぁ!」
慌てて立ち上がったレンとキョーコをまとめてぎゅうぎゅうと抱きしめて、ヒズリはわめきたてた。
「ああでも俺は嬉しいぞ!キョーコが娘になるなんて…」
「ヒ、ヒズリ様ちょっと」
「なにがヒズリ様だ!その姿のときは 父さんと呼べー!」


折角の愛の告白を台無しにされたことで父に抗議する息子と、その抗議を半ば嬉しそうに受ける父親。言い合いに夢中で他に手が回らない父子に代わって周囲からの質問攻めにあい、必死に受け答えする少女。
大騒ぎになった広間の様子を眺めながら、ローリィ王は1人、ゆったりとグラスを傾けていた。

「なるほどなぁ…確かに派手な騒ぎになったな。まあ、俺は楽しければいいけどな。うむ、クオン、なかなかいいものを、見せてもらったぞ」
でもお前ら、明日からも大変だぞー、とまるっきり他人事としてローリィはにやにやと呟くのであった。



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