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はじまりのおはなし (7)


こんばんはー!ぞうはなです。

さて、このお話も今回で最後となりましたー。
当然ながらキョコさんと蓮さんの影は感じられない話でしたが、妄想破裂してました!
いわりん様、リクエストありがとうございましたー!





足元に長く延びる真紅の絨毯。
その上にはたくさんのエナメルシューズやピンヒールが行き来して、周辺もやかましいことこの上ない。
国際的に有名な映画賞の授賞式にクーは呼ばれ、その場に当事者として立っていた。

マイクを持つ異国のレポーターやでかいカメラを抱えた人の間を縫うようにして、クーはその端正な顔に微笑みをたたえたまま一人の女性に歩み寄った。
主演女優賞の候補に選ばれたと言うのに、彼女にとってはこのレッドカーペットはランウェイよりずっと気楽な場所のようだ。
ぴしりと伸ばされた背中と指先まで行き届いた神経はおそらくショーのときと同じだが、その表情はかなりリラックスしている。

「ジュリ」
小さく後ろからかけられた言葉に、女性は敏感に反応した。黒いドレスは大きく背中が開き、反面腕はしっかりと覆われ、バランスが取れているのかアンバランスなのかよく分からない。ふわりとなびく金髪が黒地に映えて、ドレスにちりばめられた細かい宝石に負けないくらい輝いて見える。クーは少し目を細めた。
「もう、クー!なんで昨日電話に出ないのよ」
ジュリエラは拗ねるとちょっと幼く見える。クーはそんなジュリエラも嫌いではなかった。ただし、だからといってあまり拗ねさせると後が怖い。
「ごめん、インタビューが長引いちゃって」
「そんなの、時間決まってるはずでしょう」
「わかってるけど、ないがしろにも出来なくてね。売出し中の身としては」
「もう、私の寿命が尽きるかもしれないのに」
「ごめんジュリ、けど今日会えてよかった。今日はまた驚くほど綺麗だ」
「仕事で会っても会ったうちに入らないわ!」
「怒ってても素敵だなんて、君は罪作りだね」
ジュリエラの手を取りながらクーは柔らかく微笑んだ。
ジュリエラのドレス姿を激写していたカメラマンが一瞬固まったのち思わずクーにピントを合わせてシャッターを切る。

クーはジュリエラとゆっくり歩き出した。柵の向こう側からしきりに声がかけられフラッシュが光るが、2人はまるで公園を散歩しているようだ。
「来月のショーの後、まとまった休みを取るって言ってたよね」
「ええ」
「俺も休みをそこにあわせようと思うんだけど、どうかな」
「…大丈夫なの?」
「まだ次の映画の撮影は始まってない。準備はあるけど俺が頑張れば、一週間くらいは」
「絶対ね?」
「うん」
「絶対の絶対よ?」
「もちろんだ」
ジュリエラの作った笑みは、この日一番のものだった。
「約束だからね?」

先ほどから無視し続けていたインタビュアーにご機嫌で振り返ると、ジュリエラは仕事モードに戻る。クーはジュリエラの後姿を眺めながらひとつ息をついたが、気がつけば隣にアランが立っていた。アランも今日はぴしりとフォーマルな装いで、ワイルドながらも気品にあふれている。
「相変わらず仲がいいな」
「アラン。お子さん誕生、おめでとう」
「サンクス。いやぁ、今日もジュリエラは凄いオーラをはなってるな」
「そう思うだろう?」
クーは嬉しそうに頷いた。
「あのドレスはジュリエラのために作られたんだ。こうして他の女優がたくさんいる場所でも、彼女のオーラはまったく他とは違う!美しいという言葉では表現が追いつかないくらいだな。俺はいつか彼女に本当の白い翼が生えて飛んで行ってしまうかもしれないと思うほどで」
「あいつジュリに馴れ馴れしいけどいいのか?」
アランはややうんざりした表情で強引に滑りすぎるクーの口を止めると顎をしゃくった。有名なテレビショーの司会者がインタビューのためか、妙にジュリエラと近い距離にいる。クーはそちらをちらりと見たが、微笑みながら首を横に振った。
「何の問題もない」
「はー、自信満々だな。もうこの際、とっとと結婚すればいいんじゃないのか?」
「そういう君は?」

アランは子供が生まれたと言うのにまだ結婚をしていなかった。
「俺はいいんだ、もちろんアンジェラも納得してる」
「そうか……」
「で、話を逸らすな」
アランはわざとらしく周囲を見回すと声をひそめる。
「ああ、君にも招待状を送るよ。この映画が俺と彼女を引き合わせてくれたんだ。君も恩人の1人だな」
「え、まじで決まってんのか?まだだって4ヶ月…?」
さらりと答えたクーに、アランは驚愕の面持ちでクーを見た。

「なんだ、冗談でけしかけてたのか?」
「いやいずれとは思ってたけどさ」
「もちろんいずれだ。けど、そう遠い将来じゃないよ」
アランはしばらくクーを凝視したのち、やっとほうっと肩から力を抜いてクーの腕を叩いた。
「なんだよそんな大物みたいな顔しやがって」
「どんな顔だよそれ」
「やだやだ、今回は俺とジュリエラが賞とってそれで終わりだからな、恨むなよ」
クーはアランの言葉に大げさに肩をすくめてみせる。
「なんだ、作品賞と監督賞も無しだっていうのか?お前案外冷血だな」
「そんなことは言ってない、揚げ足とるのはよせ」
「"アナリスト"の前で不用意なこと言うからだ」

バシバシとお互いの背中や肩をどつきながら笑いあう2人のところへジュリエラがやってきた。
「なんだか楽しそうね」
「ああジュリ!俺にエスコートさせてくれよ、映画のカップルは俺たちだ」
「あらそう言われたらそうね」
ジュリエラはアランに対して答えるとちらりとクーを見た。クーが笑顔で頷くとジュリエラはアランの腕に自分の腕を軽くからめる。
「悪いなクー。妬くなよ」
「大丈夫だよ。愛妻家のお前を信じてる」
3人はそろってのんびりと、授賞式の会場に向かって赤い絨毯の上を進んでいった。


「はーーーーー。そういう出会いだったんですねぇ…なんだか素敵です」
深く感動したようにキョーコが何度も頷いた。車はすでに事務所近くの首都高の出口近くに差し掛かっている。
「あの映画で共演しなくても、必ずどこかで出会っていたとは思うがね」
「結局、先に好きになったのは先生だったんですか?それともジュリエラさん…?」

キョーコのストレートな疑問に、クーは腕を組んでHmmmとうなった。
「ショーのシーンの時はジュリは何とも思ってなかったと思うんだが…あとでアランとたまたまそんな話をしたときは、なぜだかため息つかれたんだったな」
「ため息?どうしてですか?」
「お前は鈍い、と言われたんだ。さっぱり意味が分からない」
「……私は何となく分かりました」
「本当か?どういう意味だったと思う?」
キョーコはまじまじとクーの顔を見る。

そっか…雲の上の人と思って尊敬してたけど、先生も結構とぼけてるというかなんというか、素で天然なところがあるのよね。
そりゃそうよね、無自覚遊び人、天然タラシの敦賀さんのお父さんですもん、そりゃそうよ。

「何一人で考えて一人で納得している」
クーの作った指の形を見て、キョーコはとっさに両手でおでこを抑えた。
「いえ、なんでもありません!大体、今更ですよ。これまでずっと、先生とジュリエラさんはとても仲良く過ごされてるんですから、そんなのどうだっていいじゃないですか!」
すらすらと言葉を並べたキョーコを、胡散臭そうな目で見てクーはぶちぶちとこぼす。
「なんでキョーコまでそんな反応なんだ…?自分に向けられる好意にはひたすら鈍いくせに」
「…何の話ですか?」
「聞いてないのかね、クオンから」
「だから何をですか!」

2人が小学生のようにお互い不機嫌な顔で睨み合ったところでクーの携帯が鳴った。
「ハロー…」
「念を押すまでもないでしょうが、キョーコに余計なこと言ったりしてませんよね?」
携帯を耳に当てるなり飛び込んできたのは愛しい息子の声だが、なぜだかその声からはひんやりとした冷気を感じる。
「余計なことってなんだ?」
「俺は俺のペースでちゃんとキョーコと話をしますから。わかってらっしゃいますね」
「……OK。仕事中じゃないのか」
「休憩中です。撮影再開ですので、では」
通話は一方的に切れた。

「あいつ最近迫力が出てきたな…」
クーは携帯に目を落としながらぼそりと呟いた。
「どうされましたか?」
「うや、何でもない。さて、今日は何が食えるんだ?キョーコの飯は久しぶりで、楽しみだ」
「今日はたくさんご馳走作ってるんです!」
うきうきと笑うキョーコの屈託ない表情は、全然似ていないのになぜか、無邪気に笑うジュリエラと重なる。

クーはふっとほほ笑むと口を開いた。
「それで、キョーコはいつ我が家に挨拶に来てくれるんだ?」
「え!!お邪魔してもよろしいんですか?」
キョーコはしゃきりと背筋を伸ばし、きらきらと瞳を光らせてクーを見る。
「当り前だろう。披露宴をどこで開くとか、早めに打ち合わせておくことはたくさんある」
「ひ、ひぃぃぃぃ?ちょ、ちょっと待ってくださいまだそんな…」
「私は最初からそのつもりでジュリエラと付き合いだしたぞ?なんだ、クオンはそんなに甲斐性がないのか?」
「ちぃ!ちがいますけどそうじゃなくてですね」
後部座席に真っ赤な顔のキョーコを乗せたリムジンは、滑るようにLME本社の地下へと吸い込まれていった。



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コメントコメント


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素敵なお話しをありがとうございました😆💕✨確かに天然な二人、でも微笑ましいのね。キョーコちゃんとクォンも早くくっついて欲しいような気もする。リクエストをきいていただき、ありがとうございました😆💕

いわりん | URL | 2016/10/31 (Mon) 07:48 [編集]


Re: タイトルなし

> いわりん様

お返事遅くなりまして申し訳ありませんーー。
なにやらとっちらかった話になってしまいましたが、リクエストのご希望に沿えましたでしょうか。
クーパパのほうがクオンよりストレートにまっすぐ突っ込みそうかなあ、という想像の産物ですね。
こちらこそ、意外で楽しいリクエストをありがとうございました!

ぞうはな | URL | 2016/11/08 (Tue) 22:18 [編集]