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はじまりのおはなし (6)


おこんばんはー。ぞうはなです。
相変わらずの亀更新ですが、続きです。





白い天井にふさわしい白い蛍光灯。
清潔だと言えばそれはそうなのだろうが、あまりに殺風景だ。

「色気がないな」
どこを見るでもなく開いていた目はやがてピントを合わせ、最初に存在に気が付いたのが天井と蛍光灯だった。
クーは自分が声に出して感想を言っていたことに気が付き、そしてようやく意識を引っ張り上げることに成功した。


「ここはどこだ?」
体を起こそうとしたが鉛でも入っているかのように重く、少し身じろぎしただけで鈍い痛みが襲う。
しかし体を動かしたことで自分の脇腹あたりに何かが乗っていることに気が付き、クーは必死に頭を持ち上げてそちらを見た。
部屋はやはり病室のようだった。ぼんやりと白いそこそこの広さの部屋に自分の寝るベッドが一台だけ置かれ、備え付けのライトグリーンのカーテンは束ねられて壁際に止められている。
腕には点滴の管が挿されているが、それ以外の装置などはなく部屋はがらんとして静かだった。窓はこれまた白いブラインドが閉められているが、どうも窓の外は暗いように思える。
ベッド脇に置かれた椅子に誰かが座り、頭をベッドの端にもたれかけさせて眠っているようだ。枕代わりに敷かれた腕と髪がその顔を隠しているが、クーはすぐにそれが誰だかを理解して目を見開いた。

「…ジュリ?」
声は決して大きくなかったが、反応するかのように腕がピクリと動き、次の瞬間ばね仕掛けのようにその体が跳ね上がった。
「クー!気が付いたのね!?」
「あ、ああ。俺は……」
ジュリエラは心配そうに顔をゆがめていたが、すぐに笑顔を作った。泣き笑いのようなその表情を見たクーはなぜだか少し胸が締め付けられる。
「撮影中の事故で気絶して、運ばれたのよ」
「…そうだったな。思い出した。撮影、つぶしてしまったな」
「何を言ってるの。無事だっただけで十分。それに最後に撮ったシーン、監督が絶賛してたって」
「そりゃあよかった」

はは、と笑ったクーは腕を上げようとして痛みに顔をしかめる。
「大丈夫なの?アランは骨には異常がないって言ってたけど」
「まだよく分からないけど…一応手足はついてるよ。目も見えるし耳も聞こえてる」
「もう、当り前よ」

ため息をついたジュリエラにクーは笑いかけた。
「生きててよかったよ。天国にきたかと思った」
「怖いこと言わないで」
「だって君がいたから」
ジュリエラはけげんな表情でクーの顔を覗き込んだ。
「どういうこと?…本当に大丈夫なの?意識ははっきりしてる?」
「大丈夫だよ。だって目が覚めてすぐに君に会えるなんて…天使にいたずらされたのかと思ったんだ」
「まっ…もう!本当に大丈夫そうね!」
ぷうとジュリエラはふくれたが、クーはまじまじと真顔でジュリエラを見つめた。
「ここ、病院だね。今はいつ?あれからどれくらい経ってるのかな」

問われてジュリエラは左手の時計に目を落とす。
「今は午前2時。あなたがここに運ばれたのは午前中だったみたいだから…まだ1日は経ってないわ」
「そう…ぐっすり寝たから2日くらい経ってるのかと思ったよ」
「あなたって丈夫なのね。骨に異常はないしすぐに目が覚めるなんて」
「カルシウム、ちゃんと摂ってるからな」
「…カルシウムだけじゃないでしょ。それにいくらなんでも摂りすぎだと思うわ」
はは、とクーは笑い、それから口をつぐんでジュリエラを見つめた。

「ありがとう。君は今日撮影じゃなかったのに、こんな時間まで俺に付き添っててくれたんだね」
クーの顔を見つめて、それからジュリエラの瞳に涙が浮かぶ。
「…だって……あなたが撮影で爆発に巻き込まれて病院に運ばれたって聞いて…私まで倒れそうになったんだから!」
「心配かけてごめん。でも本当にありがとう」
「本当の本当に大丈夫なのね?痛いところとか、ないのね?」
ぽろぽろと涙をこぼすジュリエラの髪を、クーはそっと撫でた。腕を動かすとギシギシときしむような痛みが襲ってくるが、今はそれすらどこか心地よい。
「大丈夫。全身痛いけど、君が言う通り骨に異常があったりしないし、頭もはっきりしてるよ。爆発には巻き込まれていないんだ。だってほら、俺は火傷もしてないだろう?」
「そうだけど……」
「ぎりぎり逃げられたんだよ。俺はバイクの運転もうまいから」
「そういう問題なの?」
「そういう問題だよ。日本は火山が多いだろう?いつ噴火しても逃げられるように訓練してたんだ」

きょとんと涙目のままクーの顔を見つめたジュリエラだが、すぐにその表情からクーが冗談を言ったことに気が付いて泣き笑いになった。
「もう…本当あなたって…ひどいわ」
「自覚してるよ」
クーは笑うと、少し首をかしげてジュリエラを見た。
「もう少し、近くに来てくれる?」
「?」
ジュリエラは急に言われた意味が分からなかったが、クーのリクエスト通り椅子から腰を浮かせて顔をクーに近づけた。
するとクーはジュリエラの頬にそっと手を当てる。
「どうしたの?クー……」
添えられた手に少しだけ力が入り、クーは痛みに逆らって上半身を少し前に傾ける。クーの唇がジュリエラの唇にそっと触れて離れる。2人は至近距離で見つめあい、そしてもう一度クーの顔がジュリエラに近づくと、ジュリエラはゆっくり目を閉じた。


「俺…君に告白するにはまだ売れてもいないし君にとっては取るに足らない男だと思う」
無言でしばらく見つめあった後、クーは静かに口を開く。
「…けど、絶対に君にふさわしい男になる。だから、先行投資と思って付き合ってくれないか?」
ジュリエラはクーの頬に人差し指を突き立てた。
「私、そんなことで好きな人を選ばないわ」
「…ごめん…男のつまらないプライドだな」
「あなたは十分、すごい人だと思う。それに、これは内緒だって言われたんだけど」

ジュリエラはくすりと笑いをこぼし、いたずらっぽい表情で続ける。
「さっきアランがここに来たの。あなたが怪我して複雑な心境だったみたいよ」
「なんで?」
びっくりしてクーが聞くと、ジュリエラは少し声をひそめた。
「あなたがもし死んだら…これからの映画業界はすごい損失だって。だけど、いたらいたで自分の地位が脅かされるから複雑なんですって」
「…まさか」
「本当よ。でも、内緒なんだからね」
「わかってる。でもアランに本当にそう思ってもらえてたら光栄だ」
「本気だったと思うけど?」
「そう……」

少し考え込んだクーは、しばらくすると顔を上げた。
「それで、君の答え…今聞けるかな」
ジュリエラはびくりと体を震わせる。徐々に頬が赤くなり、けれど顔は徐々に下向きになった。
「…私がここにいることで、答えにならない?」
「うん…でもできれば、君の口から聞きたいな」

クーは真面目な表情でジュリエラの反応を待った。
「……YES」
「ありがとう!」
ジュリエラを抱きしめようと思わず両腕を上げたクーは、上半身を襲った強い痛みにうめき声をあげて動きを止め、ジュリエラはおろおろとその背中をさすった。



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コメントコメント


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天然なのに、無自覚な女たらしなクーパパですよね。ジュリママが素直で可愛い❤。素敵なお話しありがとうございます😆💕✨

いわりん | URL | 2016/10/27 (Thu) 02:16 [編集]


Re: タイトルなし

> いわりん様

ジュリママ、ぞうはなの想像では喜怒哀楽がはっきりしている人なのかなーと思います。
いい意味で素直、という感じで。
クーパパ、きっと蓮さんと同じようににこりとほほ笑むだけで全然そんな気なく周りの女性の目をハートにしてたんだろうなあ、なんて思います…
本当に楽しいリクエスト、ありがとうございました!

ぞうはな | URL | 2016/10/28 (Fri) 23:22 [編集]