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君の魔法 (28)


こんばんは!

市販の風邪薬って、眠くなりませんか?
私だけですか?

今日も更新でーす。
なかなか話が進まないのは、あの、作文がへたってことで、許してください…





「俺以外に、好きな奴が出来たとでも言うつもりかよ」

ショウの表情は若干こわばっていたが、強気な態度を崩してはいなかった。ふてくされたような表情で、腕を組んでキョーコのことを凝視している。
「うん。私、誰かに『もらわれる』のが嫌だって思って、1人でモガミ家を守っていくつもりだった。でも、一緒に歩いていこうって言ってくれる人がいたの」
「誰なんだよ、それ。俺じゃ、だめなのか?」
「私ね、今までずっと、お母さんのため、ショーちゃんのために生きてきた。言うことを聞いて、お母さんやショーちゃんが喜んでくれるように、褒められるように。でもショーちゃんにおまけだって言われて気がついたの。私、誰かのためにってことばっかり考えていて、自分って言うものがなかった。だから、自分を創りにここに来たの。ショーちゃんのお嫁さんになることだけ考えていた頃には、思いつかなかったことだわ」
「その男は、俺とは違うって言うのか?」
「そうだね・・・その人は、私の言うことを真剣に聞いてくれた。1人で家を守るために武術を学ぶって言っても、笑わないで真剣に稽古に付き合ってくれた。厳しいことも言う人だけど、いつもちゃんと私が自分でやろうとすることを、見守ってくれるの」
「はん。それでそいつと結婚したって、結局お前は『嫁にもらわれる』んだろ。同じことだよ」

「違うよ、ショーちゃん」
キョーコの顔には笑みが浮かんでいる。なぜか、ショータローの顔を見ていても憎しみがわきあがってこないことに、キョーコ自身はまだ気がついていなかった。
「結婚って、私が誰かにもらわれるってことじゃない。そういう形もあるのかもしれないけど、それだけじゃない。ううん、結婚するかどうかもそれほど問題じゃない。私は、あの人と、ずっと一緒に歩いていきたい。どっちかがどっちかに寄りかかるんじゃなくて、お互いがしっかりと自分の足で立って歩いていきたいの」

キョーコは遠くを見つめながら、何かを思い出すように言葉をつむぎだす。
「その人は…その人も、自分自身のことで悩んでいて、自分で答えを出した強い人。一緒に未来を歩きたいと、言ってくれた人なの。私はきっと、ショーちゃんに引っ張られるだけじゃ、そのうち自分がなくなってしまう。…私は、私でいたいの」

それに、あの人は私の思い出の…
キョーコは子供の頃のコーンとのことを思い出していたが、それは声には出さなかった。馬鹿にされるのが嫌で、湖で妖精と出合った事はショウにもずっと話さず内緒にしていたのだ。

「誰だ、そいつは」
ショウはキョーコを睨みつけるようにして低い声で聞いた。自分を一筋に見つめてきたはずのキョーコが、ここへ来て急に変わったことに、戸惑いを隠せないでいる。

どうせ、たいした男じゃないはずだ。言葉ばかりでこいつを騙して、遊んでるだけだろう。
ちんけな奴だったら笑い飛ばしでやればいいし、いずれ騙されたことに気がついて目を覚ますんだろ・・・

ショウはまだ高をくくっていた。キョーコが地味で色気もないのは事実だと思っている。誰かに見初められるような、そんなことがあるはずがない。しかし、次のキョーコの言葉はショウの度肝を抜いた。

「その人は…レン・ツルガ様。近衛隊の小隊長を務めてる方よ」

ショウは頭で名前を理解すると同時に大声で叫んだ。
「は?お前馬鹿か?寝言は寝てから言え!」

ショウは『いい男』の代名詞として語られるレンの名前をよく知っていた。自分に自信があるショウは、密かにライバルになりそうな男をチェックしていたのだ。レンは小さい地方貴族の養子であるにも関わらず、その実績、出世振り、そして男も惚れるほどのスタイルと美貌と物腰の柔らかさで有名だ。ツルガ家の跡継ぎではないため、あちこちの貴族たちが親も娘もレンを婿養子として迎えようと狙っている。

まさかそんな男が自分の幼馴染である地味なキョーコに目を付けるわけがない。そんなこと、あってはならないし、もし自分がレンの立場だったらこんな女、歯牙にもかけない。

「あんな、国中の女から惚れられるような男がお前ごときに…!」
「ごときって、失礼ね!!」
「お前得意の妄想か?とうとう夢と現実の境目がわからなくなった訳じゃねーだろうな!」
「…!なんてこと言うのよー!」

不毛な論争にあっさりと決着をつけたのは、噂になっている本人だった。

「ああ、キョーコ。ここにいたのか」
レンが建物の角を曲がって姿を現した。話しかけたところでショウの存在に気づいたようだ。
「テンさんが探してたんだけど…っと、失礼。フワ家の方ですね。ショウ・フワ殿ですか。先日は、大変失礼いたしました」
丁重にショウに向かって挨拶をする。

じろり、とレンを睨んだショウは、ぼそりと言葉をこぼした。
「レン・ツルガ…だよな?」
「確かに、私はレン・ツルガです。以後お見知りおきを」
レンはにっこりと笑顔を作って無礼な物言いの質問に答える。

ショウはレンの頭のてっぺんからつま先まで目線をやった。

この前ちょっと見たときも思ったけど、こいつどんだけ足が長いんだ…しかも男のくせにあんな彫刻みたいな整った顔しやがって。いやいや!俺だって、負けてはいない…よな。そういえばこいつ、考えてみたら、この前キョーコのことを俺の目の前で抱きしめやがって…

「あり得ないよな?」
「はい?」
呟きに近いショウの質問に、レンが問い返す。
「お前みたいな男が、キョーコに惚れるなんて、あり得ないよな?」
レンの目がすっと細められる。しかしそれは一瞬のことで、すぐにレンは笑顔を作った。
「なぜ、あり得ないなどと?」
「こんな、色気も何もない女、あんたほどの男が惚れるわけないってことだよ」

ふむ、とレンは顎に手を当てて考えるそぶりを見せた。
「少し、意見に相違があるようだね?」
「は?相違?」
「ああ。女性に惚れるのに、色気は必ずしも必要ない、と言うのが俺の意見だけど、君はそうではない、と言うんだね?」
いつの間にかレンの口調はくだけたものになっている。畳み掛けるようにレンは続けた。
「それに、俺自身はキョーコに色気がないとは思わない。君がどう思っているかは知らないけど、この子は近衛隊の中でも人気があって、狙ってる男も多いし、大変なんだ」
「んな、ありえねーよ」
「そう思うのは、君がこの子の表面しか見ていないからだ。本質ってものを見誤っているのでは?」

「俺は!」
ショウがかっとなって声を張り上げる。
「俺は物心ついたころからこいつのこと見てるんだよ!誰よりも、こいつのことを知ってるのは俺だ!」
挑みかかるような視線でレンを見るショウと、穏やかな笑顔のまま視線を返すレンとに挟まれて、キョーコは無言でおたおたしていた。(どうすれば、いいの??)と悩むものの、下手に口をはさんでも藪蛇になりそうで、口をつぐんで成り行きを見守る。

「そうだな、それでは、明日の夜の舞踏会に参加してみるといい。きっと、君の知らないことが見えてくるだろうから」
レンはあくまで穏やかに、紳士の顔をくずさずにショウに提案した。
「舞踏会?どっちにしても俺も出るつもりだ。俺と踊りたい女もたくさんいるしな。明日を楽しみにしている!」
捨て台詞を吐いて、ショウはどすどすと去って行った。

レンは、キョーコをじっと見つめた。キョーコはその視線に居たたまれなくなってしまった。
「なんでしょうか?」
「いや…あの男に会ったのに、穏やかな顔をしているよね。この間はあんなだったのに」
そういえば、とキョーコはようやくそのことを認識した。この前はあれほどにわきあがる憎しみを感じたのに、今日は全くそんなことを考えなかった。なぜだろう?と考えてみて、すぐに思い当たる。

レン様が、いてくれるから…?
この人が私自身を見てくれるから、ショーちゃんに何か言われても気にしないでいられるのかしら…?


何か言いたげなキョーコを優しい笑顔で見て、レンは促した。
「さて、遅くなってしまったけど、テンさんが待ってるよ。きっとこの前言ってた、礼服の直しの件だ。行ってあげて」
「あ、はい!」
キョーコは慌てて宮殿の方へと駆けていく。
レンはその後姿を見送ると、ぽつりと呟いた。

「さて、段々とギャラリーが増えてしまっている気がするけど、大丈夫かな?派手なことになって…まあ、国王様は喜ぶかもしれないけど」

表から響いてくる歓声を聞きながら、レンもその場を離れて歩き出したのだった。


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