SkipSkip Box

君の魔法 (27)


こんばんは!なんだか寒いのか暖かいのか分かりにくい日々が続きます。
皆さま、風邪などひかないようお気を付けくださいねー(げほげほ)

今日は少し中途半端なところで切れてしまいました…
とりあえず、できたところまでUPします。






キョーコはモガミ家で年明けを迎えると、すぐに王城に戻った。
久しぶりの生家は、皆が温かく迎えてくれて、母親との話し合いで決意を新たにすることが出来た。その反面、離れていた数日間でレンの顔を見たい気持ちも募った気がする。

なんだかんだで毎日顔を合わせていたからなぁ…どうしてるかしら。

ちょっとくすぐったい気持ちを抱きながら、馬を引いて城門をくぐる。
城内は既にお祭り騒ぎの準備が着々と進められていた。年越しからずっと王族は宮殿内にいるため、近衛隊の業務は比較的楽になる。他国を外交で回っていた王太子も年末には戻ってきているはずだ。つき従っていた者たちも久しぶりに母国の土を踏んでほっとしていることだろう。
しかし、パーティーの準備に携わる人たちは大変だ。あちこちで怒号が飛び、様々な資材を抱えた男たちがバタバタと走り回っている。

準備も大変だけど、片付けもすごそうだわ…

そんなことをぼんやり考えながら、引いてきた馬を厩に入れ、鞍を外して水やエサをやる。さて、戻ろうと振り返って歩きかけたところで大きい壁にぼすんとぶつかった。すると瞬時に壁から生えてきた腕が体に巻きついてくる。

「レ、レン様!人が来たらどうするんですか~」
キョーコは真っ赤な顔で巻きついてきた長い腕をほどこうとするが、腕の持ち主はキョーコをぎゅうぎゅうと抱きしめたまま、その頭に顔をうずめて動かない。
「キョーコ…お帰り」
「ただいま帰りました…」

キョーコはレンと所謂お付き合いなるものを始めてから、知ったことがあった。
レンは貴族として、小隊長として、非常に沈着冷静で紳士的でスマートな振る舞いをするのだが、1人の男として、恋人に対しては非常に情熱的で時に嫉妬深く、時に甘えたがりになるのだ。
最初はそのギャップに驚いたキョーコだったが、恋人としてのレンの姿は本来の『クオン』のものなのだと受け入れるようになってからは、自分だけにそれを見せてくれるのが嬉しくもあり、少し子どもっぽくなるレンに母性本能をくすぐられてもいた。

「考えてみたら、今までずっと毎日顔を合わせてたんですよね。しばらく会えなくて寂しかったです」
そっとレンの背中を片手でさすりながらキョーコが言うと、レンはがばりと顔を起こし、満面の笑みになった。
「俺だけじゃなくてキョーコも寂しいと感じてくれてたのか…嬉しいな」
「でも、こんなところ見られたら大変ですよ」
わかった、とレンは渋々腕を緩め、二人は並んで歩き出した。

「久しぶりの家はどうだった?」
「皆歓迎してくれました。母とも、しっかり話してきましたよ。まだ頑張らなくちゃいけないことも沢山ありますけど、でも、その、前向きに頑張れそうです…」
「そうか…近いうちに、君の母君に挨拶したいな」
「母も、新年のパーティーでレン様の顔を見たいって言ってました」
「そうか、君の母君は来るのか」
「はい!多分、フワ家のご家族もいらっしゃいます…私、この機会にショウとちゃんと話してみようと思います」

周りに人も多かったため、色々とぼかした表現だったが、レンはキョーコが言わんとしていることを正確に理解した。自分を選んでくれたことを、心から嬉しく思う。そして、かねてから考えていた通り、明後日からの新年パーティーが大事な節目になる、と改めて思ったのだった。


裏方の頑張りが実り、王城での新年のパーティーは大々的に幕を開けた。
連日着飾った貴族たちが王城を訪れ、国王と王太子に挨拶をし、貴族同士の交流を深めていく。城の周りに別邸を持つ貴族たちは別にして、地方貴族たちは町の宿屋を利用するため、町もいつもとは違う活気に満ち溢れていた。

多くの試合が組まれた御前試合には、王以外にも貴族や市民たちが観戦に詰め掛けて観客席はぎちぎちの満員だ。そして、出場者の中にはキョーコの姿も見られた。
「小隊内の対戦決めたの、ヤシロさんですよね」
キョーコの試合が始まるのを見守りながら、レンが隣に立つ副官に話しかけた。キョーコの対戦相手はムラサメだ。出場者には試合が始まる直前まで対戦相手が知らされないため、二人の顔にはそれぞれ動揺が見えた。

「ああ、そうだよ。近衛隊は精鋭ぞろいだから、中で組み合わせるしかないからね」
「あの組み合わせ、わざとですよね」
「だってさ、キョーコちゃんは何かと自分を卑下しがちだから自信を持たせることが必要だろう。逆に、ムラサメは自信ありすぎるから、1回どこかで挫折を味わわせないと」

そうはいっても、気になっている女性に御前試合で負けるのはダメージが大きすぎないだろうか、とさすがのレンもムラサメが気の毒になる。そして、試合が始まり、レンとヤシロが予想した通り、キョーコとムラサメの一戦は圧倒的なキョーコの勝利に終わった。がっくりとうなだれるムラサメを見て、「大丈夫、あそこから這い上がればまた一段強くなるよ」と笑顔で言うヤシロに、(ヤシロさん…爽やかそうで、案外えげつないな)とレンは認識を新たにした。

「それにしてもキョーコちゃんの上達はすごいな。お前が目をかけて稽古に付き合っただけあるよ」
ヤシロがマリアから祝福を受けているキョーコを見ながら感心したように言う。
「ローリィ王の御世で久しく戦はないけど、もし他国と戦争なんてことになったら、ものすごい武勲を挙げる伝説の女将軍とかになってもおかしくないよな」

その言葉に、レンは少し険しい顔になった。
「………ませんよ」
「えっ?」
ぽつりとつぶやかれたレンの言葉に、思わずヤシロが聞き返す。
「万が一、そんなことになったとしてもキョーコは前線には出しませんよ」
「えっ?」
再びヤシロが聞き返すが、レンはするりと身を翻すとキョーコの元へ向かっていく。試合後のキョーコをねぎらうレンの表情を見ながら、ヤシロは呆然と呟いていた。
「ええ…?レン……そういう、ことなのか?……いつの間にぃ?」


レンとヤシロの位置とは反対側にも、キョーコの試合を観戦している男がいた。
しきりに声援を送る観衆の後ろ、明るい髪の若い貴族の男が試合を終えて下がっていくキョーコの姿をじっと見つめていた。男の視線の先のキョーコは、嬉しそうな顔で長身の男と言葉を交わすと、やがて男と別れて一人で裏手へ歩いていく。

キョーコの行く先を確かめた若い男は、すぐさま小走りでその後を追った。まだ続いている試合の歓声が響くものの、周りには人気がないことを確認して、後ろからキョーコに声をかける。
「おい、キョーコ」
キョーコは歩みを止め、振り返る。驚きと気まずさが混じった表情で男の顔をじっと見た。
「ショータロー…やっぱり、来てたのね」
「ああ…王への謁見は明日だけど、御前試合があるって聞いてな」
「見てくれたの?」
「まあな…お前、強くなりすぎだ。ますます嫁の貰い手なくしたな」
「……」
「俺ぐらいしかいないぜ、お前みたいのをもらってもいいっていうのは」
「ショーちゃん、その話だけど」
ショウはキョーコの言葉を遮った。
「俺との正式な婚約……しないつもりだって聞いたけど」

キョーコはきょろきょろと周りを見回して、それから改めて正面からショウの顔を見つめた。
「うん。その話、ショーちゃんががこっちに来てる間にちゃんとしようと思ってた」
「なんでだ?」
間髪いれずにショウが問う。ショウもまた、真剣な顔でキョーコを見ていた。キョーコは少し躊躇ったが、少し間をおいて慎重に口を開いた。
「ずっと、ショウちゃんに、『お前みたいな地味で何の取り柄もない女と結婚してもいいっていうのは俺くらいだ』って言われ続けて、自分でもそうだと思い込んでた。でもね……私、もらってもらわなくて、いいの」
「…何、言い出すんだよ」
「小さい頃からショーちゃんのお嫁さんになるのが夢だったから、もらってくれるって言われて、嬉しかったけど」
「ああ、だって、言ってる通り、他の男ではまず無理だろ」
キョーコは俯いてはぁっと息を吐き出すと、ぐっと力を入れて顔を上げた。
「それでも、私はモガミ家についてくるおまけだ、と言われてまでヘラヘラ笑っていられるほど、何も考えてない訳じゃなかった」
ショウは言葉に詰まって、ただキョーコの顔を見つめている。
「私と結婚すれば、両家は合併していろんなことがやりやすくなるし、領地も増えるし…ショーちゃんにとっては、そっちが大事だったでしょ。それがはっきり分かったら、逆に自分って何のためにいるんだろうって分からなくなった」
「キョーコ…」
「だからね。家を出て、落ち着いて考えたかった。フワ家と合併しなくてもやっていける方法を」
「お前、あの時もう決めてたのかよ」
「決めてた訳じゃないけど、落ち着けば落ち着くほど、今まで妄信的に信じていたことが崩れていってもう戻れなくなったの。もし、私が結婚するなら、私を私と認めてくれる人じゃなくちゃ嫌だって思った。そう言う人がいなかったら、1人でやっていこうと思ったの」

「お、俺だってお前のことを見てない訳じゃ…」
「この間、この城で会った時も、同じこと言ったよね、ショータロー……『お前を嫁にもらってやってやるんだ』って。でももういいの。私は私で、大事な人を見つけたわ」

ショウの目が、驚きで見開かれた。

関連記事

PageTop
 

コメントコメント


管理者にだけ表示を許可する