SkipSkip Box

Catch the Wave (10)


こんばんは、ぞうはなです。
さて続き!

諸事情により、GW中は不定期ぶりに磨きがかかります。さらにコメントお返事も少し遅れます~。





「ごめん、言い過ぎたね。俺が言ったことは気にしなくていいよ」
しゅんとなってしまったキョーコを慰めるように蓮は言った。ついつい勢いで言い過ぎてしまった自覚があるため謝罪にも気持ちがこもる。
「俺も噂はあくまでも噂だと思っているし…ここで暮らしている以上しがらみもたくさんあって大変だと思うけど、気を遣いすぎることはないと思う」
「はい…分かってはいるんですけど」
「君は恩義とか義理を感じやすいんだろうね」
「あーーー…」

キョーコの目が泳ぎ、蓮は図星をついたと感じる。
「それもすごく大事なことだけど、自分を一番大切にすることだ。自分がつぶれたら、人に対しても何も出来なくなるから」
キョーコはきょとりと蓮を見つめた。しばらく考えるように黙った後、小さく頷く。
「そうですね……確かにその通りです」
「一人であの店を切り盛りしてるだけで大変なことだよ。料理とか接客だけじゃない、覚えなくちゃいけないことはたくさんあっただろう」
ぶんぶん、とキョーコは激しく頷いた。
「そうなんです!私ホテルで働いていたので、ある程度分かってるつもりだったんです。だけど実際やってみると"ある程度"の知識じゃどうにもならないんですよね。助けてくれる人がたくさんいたので何とかなっていますが」
蓮もキョーコの言葉に頷く。
「そうだね、それは俺も仕事で実感するよ。だけど君の店はしっかり軌道に乗っているように見える。始めてからどれくらい経つんだっけ?」
「1年と…4ヶ月くらいです」
「それなら上出来だ」
ふわりと微笑まれて、キョーコも嬉しそうに笑う。
「ありがとうございます。なんと言っても、敦賀さんみたいなお客様がいらしてくださるから成り立つんです!」
ぐっと握りこぶしを作るキョーコに、蓮はくすりと笑った。
「それだって、客が行きたいと思う店を君がつくってるからだよ」
「そうでしょうか」
「もちろん」

キョーコはまじまじと蓮を見た。
何回か会話をしているが、ここまでしっかり蓮と話したのは初めてのような気がする。そして、蓮の言葉はなぜだか心に響くのだ。
「ありがとうございます!なんだかとても嬉しいです」
「こちらこそ、いつもありがとう。今日も多分お邪魔することになるからよろしく」
「お待ちしてます!」

蓮はふと回りを見回した。昨日はあった野菜満載の自転車が今日は見当たらない。
「今日は仕出しの帰りじゃないの?」
「あ、はい!今日は八百屋さんがお休みなんです」
「なるほど。でもじゃあなんでここに?」
はっとしたようにキョーコは目を見開き、またもや目を泳がせた。
「いつもこの時間に目が覚めるので…そう、ちょっと散歩です。海の様子を見に」

…昨日の石橋くんみたいな理由だな…

何か他にもありそうだが、蓮は海を振り返って聞いた。
「そういえば、今朝はぱったり波がおさまっちゃったんだ。なんでだろう」
キョーコは話題が変わったことにほっとした様子で返事をする。
「今がちょうど引き潮で…昨夜は暖かかったので気温差が少なくて風も起きなくて、それが大きいと思います」
「じゃあここからは…」
「もうちょっとだけ待てば満ち始めますのでまた大きくなります。午前中はそこそこ楽しそうですよ」
「そうか、よかった」
「あの、さっきはあのバカが本当に失礼な事を…申し訳ありませんでした」

深々と頭を下げるキョーコに、蓮は心の底に微妙なむかつきを覚える。それはほんの小さなものだったので、深く考えずに蓮は笑顔を作った。
「いやそんな、最上さんが謝ることじゃないよ」
「大体あいつ、何年もサーフィンやってるのに全然分かってないんです」
「…何を?」
キョーコは腰に両手を当てて憤慨した顔をしている。
「難しい技を無理やりやったって、えらくもなんともないのに」

ほう?

蓮はキョーコの言葉を興味深くとらえて聞いてみた。
「じゃあ君は、どういうのがすごいと思うの?」
「それはもちろん、波に合わせて乗る事ですよ!」
ふふん、と胸をそらしてキョーコは答える。
「波に合わせて?」
「ええ。色々研究したんです。プロのサーファーのライディングは見てて安心感があります。波の勢いや崩れるタイミングに合わせてうまく板を操って、一番強いところにできるだけ長い時間乗ってるって感じでしょうか」
「そう、確かにプロはそんな感じだ。ひとつひとつの技ももちろん、全体のまとまりを大切にするね」
「ですよね!大体見てれば分かるはずなのに。敦賀さんがあの小さい波であれだけスピード付けて抜けていくのがすごい事だって」

キョーコはぶつぶつと言い切った後、蓮が黙って自分を見ているのに気がついて口を閉じた。
何かまずい事を言ってしまったかとそろりと見上げるが、蓮は驚いたような表情から満面の笑みになる。
「もしかして、今日も俺のライディングを見ててくれた?」
「はっ…!ご、ごめんなさい勝手に…!!」
「いや、むしろ嬉しいよ、そう言ってくれるのもとても」
照れたような蓮の表情に、キョーコはなぜだかドキリとした。

やだ、敦賀さんの笑顔ってものすごい眩しいわ…!
でも見てたの気付かれちゃって、ちょっと気まずいかも。

おろおろと考えるキョーコの方に蓮は少し体をかがめた。
「これからも、買い物帰りでもいいから少し見てくれる?」
「ひぇ?な、なんで……いやその、それはもちろん構いませんが」
「それで今みたいなアドバイスをくれると嬉しいな」
「あああああっ?アドバイスなんてそんなおこがましい!」

キョーコは飛び上がって青い顔で首を横に振るが、蓮は笑顔を崩さない。
「いや本当、そういう目で見てくれる人の意見が欲しいんだ」
「わ、私なんかその……」
「だめかな?」
「……わかりました…でも本当、私素人ですよ?」
「いや、よく研究してると思うよ」
キョーコは恐縮していたが、ふと思い出したように蓮を見上げた。

「そういえばさっき、ブランクっておっしゃってましたけど…アメリカでサーフィンされてたんじゃなかったんですか?」
「あー…いたはいたけどね。実はこのボードに乗るのは久しぶりだったんだ」
「そうなんですか!やっぱりお仕事がお忙しくて?」
「そうだね、そんなところ」
「でも全然ブランクなんて感じませんよ。海の妖精さんと仲良しなのかと思うくらい」
「え?」
「い!いえ!なんでもありません!」
キョーコはなぜだか赤くなってあわあわと両手を振り回した。


「お、光。なんでそんなところで潰れてるんだ?」
平日の昼休み。オフィス内の休憩所で椅子に座り、テーブルに顎をつけている光を見つけて社が声をかける。
「あー…社さん。いえ、午前中ずっと会議だったんでだいぶ疲れました」
「そうなんだ、お疲れ」
社が光の椅子の横に立つと、光が何か言いたげな目で社を見上げてくる。
「どうした?」

社は光の隣の席に腰を下ろし、光はゆっくりと顔を机から引っ剥がした。
「今日の会議…カリフォルニア支社の緒方さんが出張してきてたんです」
「緒方さん…?ああ、あのちょっと繊細な感じの」
「はい。会議の後、ご挨拶するタイミングがあったので敦賀君のこと知ってるかなって話振ってみたんですけど」
「うん、知ってておかしくないな。なんかあったか?」
うーーん、と光は腕組みをしてから口を開いた。
「もちろん知ってたんですけど。サーフィン仲間なんだって言ったら、『敦賀君ってサーフィンされるんですか?』って聞かれちゃって」
「…へえ?」

あいつどっか秘密主義みたいなところあるし、何考えてるかいまだによくわかんない部分、あるからなあ。

社は少し考えて、しかし穏当な意見を付け足した。
「休みの日何してるかなんて知らなくてもおかしくないだろう」
「いえ、だって敦賀君と緒方さんって同じアパートに住んでたらしいですよ」
「ああ、会社が借り上げてるところか」
「それで趣味の話なんかもしたって言うし、サーフボード持って出かけたところも見たこと無いって」
ぶちぶちと、光はなにやら考え込みながらこぼす。社は笑って光を見た。
「まあ、忙しくてそれどころじゃなかったのかもしれないし。あいつ入社前もアメリカにいたんだろう?その時にやってたってだけで……おい!光大丈夫か?」

ごちん、と机から鈍い音がしたので社は慌てておでこを机にぶつけた光の体を起こす。
「俺、ずーっとサーフィンやってたのに…子供のとき以来の敦賀君の方がうまいなんて……」
「ひ、光……」
「この間だってキョーコちゃん、敦賀君のライディングをうっとり見てたし…」
「またその話かよ」
「だって…」
「お前、キョーコちゃんのことは見守るだけでいいって言ってなかったか?」
「……言いましたよ、言いましたけど」

確かに光よりも蓮の方がサーフィンのテクニックは上だよなあ…
キョーコちゃんについては…蓮のことを特別視してる感じは無いけど、光の方が仲がいいようにも見えないし…1年以上先にあの店に通い始めてるのに。
にしても…光とキョーコちゃんが付き合ってる訳でもないんだから、もし蓮が万が一キョーコちゃんに惹かれてたとしても…俺は中立だよなあ。

「あ、ほら光。昼休み終わるぞ!」
なんと声をかけていいのか分からず、とりあえず社は昼休み終わりの時刻に救われたのだった。


関連記事

PageTop
 

コメントコメント


管理者にだけ表示を許可する
 

変な感じしますね。

おはようございます。
いつも素敵な作品を拝見させていただきありがとうございます。
社さんが蓮さんより光君の方が仲が良いのが何か変な感じがしますね。
しっくりこないので慣れるまでが時間がかかりますね。
プロサーファー並の蓮さんに馬鹿松太郎のプライドをズタボロに再起不能まで引き裂いていただきたいです。
気温差がまだまだ安定しておりませんのでどうぞ多忙な連休中はお身体にご自愛下さいませ。

みえぶた | URL | 2016/04/29 (Fri) 07:20 [編集]


進展してほしい

10話目ですが、蓮とキョーコの糖度がまだ低いです(涙)お互いに惹かれ始めるのを待ってますね。

更新楽しみにしてます!

harunatsu7711 | URL | 2016/04/29 (Fri) 08:47 [編集]


Re: 変な感じしますね。

> みえぶた様

コメントありがとうございます!返信が遅くなりまして申し訳ありません。
そしていつもご訪問ありがとうございます!

原作では光君と社さんの絡みってないですもんね。
このお話でも一応社さんと蓮さんが同じ部署の先輩後輩なのです。
松太郎もうすうす蓮さんのサーフィンがうまい事には気が付いているようではありますが…今後とも見守っていただければと思いますー

ぞうはな | URL | 2016/05/08 (Sun) 07:57 [編集]


Re: 進展してほしい

> harunatsu7711様

コメントありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません!
うう、なぜかなかなか糖度が上がらず申し訳ありませんー。
キョコさんはまだまだまだまだ、な感じですね。そして無意識蓮さん。どうもこの2人の恋心はひねくれてて…。

ぞうはな | URL | 2016/05/08 (Sun) 07:59 [編集]