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君の魔法 (25)


こんばんは~~
本日の更新は、ちょっとお話のつなぎっぽくて説明っぽいです。

またもや週末は更新の時間が取れないかもしれません…
また週明けから頑張りますので、よろしくお願いいたします!





"周りには内緒"と決めたため、意識の上は別にして、二人の日常はさほど変わらなかった。
レンもキョーコも近衛隊の仕事で忙しい上、たまに揃って休みの時間帯があったとしても、城内では目立つし、城下におりてもやっぱり目立つ。なかなか二人きりになることなど出来なかった。
あの日を境にして表立って変わったのは、キョーコがレンを呼ぶときの呼び名であったが、これも周囲が先に『レン様』と呼んでいるものに倣っただけ、という捉え方をされたため、約一名のメガネの青年が少しレンを冷やかしただけで済んだ。

それでも、特にレンにとっては色よい返事をもらえたという事実が精神の安定をもたらしていた。相変わらず視界に入ればその挙動を気にしてしまうのだが、キョーコが他の男と話していても以前ほどやきもきせずに済んでいたし、ちらりと視線を交し合えるだけでも少し気分が浮上するという単純さに、自分自身に苦笑してしまうくらいだ。

対して、キョーコにしてみれば、返事をしたものの状況的には変わらない、という状態が、色々と自分で考えられる執行猶予時間となっていた。なにしろ舞い上がって深く考えられずに首を縦に振ってしまったのだ。状況が激変したらきっとパニックで気持ちが追いつかないところだったが、今までと物理的な距離はそんなに変わらない。遠くからレンの姿を観察しながら一人ぼうっと思考の淵に浸かることができていた。

それでも例えば詰め所で二人っきりになる時間が数分でもあったりすると、急に抱きしめられたり、すれ違いざまに耳元でこっそり甘い言葉を囁かれたり。レンは本能に従って自然と行動しているだけだったのだが、キョーコは不意打ちにあう度にレンへの気持ちが育ってしまうことに、少し痛みを伴う喜びを感じていた。

キョーコ自身、なぜこれほどにチクチクと痛みを感じるのかは、十分自覚をしている。
まだ自分の問題は何一つ解決していないのだ。
自分のこれからをどう考えるのか。許婚についても、ただ「いやだ」と拒否するだけでは何も進まない。キョーコは日々を過ごす中で、少しずつ決意を固めていた。


そして新しい年が間近に迫ったころ。
「まただよ」
「予想はしてたけど、ほんと毎日すごいな」
仲間の声にキョーコが振り返ると、そこにはきらびやかに飾り立てられた貴族の女性とにこやかに話をしているレンの姿があった。ここのところほぼ毎日見かける光景だ。

LME国ではイベント好きな王の企画する様々な大小の催し物が季節ごとに開催されていたが、今の時期一番近いのは新年を祝うパーティーであった。国内の主要な貴族がこぞって王城に押しかけ、王に新年の挨拶をする。王家に対して忠誠を誓う意味もあり、代々の王が行ってきている儀式ではあるが、ローリィ王の手によって厳粛なものから華やかなものへと姿を変えていた。

王への謁見とは別に、軍隊の隊員による御前試合があり、他の国から呼び寄せた雑技団のパフォーマンスがあり。貴族の数が多いため、謁見は1日では終わらないのだが、それにあわせて見事なスケジュールでイベントが組まれている。王城の一部が市民にも開放され、年々派手さを増していると言う意見もちらほらと聞かれていた。

そして、パーティー最終日の舞踏会は若い貴族たちにはメインイベントとして捉えられていた。
国中から貴族たちが集まってきて一同に会する場である。結婚相手に出会うためとか、見定めるためとか。憧れのあの人と踊ってもらおうとか、いろんな思惑が入り乱れるのだ。

キョーコ自身は、舞踏会に参加できる年齢となった昨年はすでに国軍にいたため、舞踏会当日の外での警備に手を上げて、参加をまぬがれていた。そのため、どんなものなのか聞いてはいるもののその実感はない。
レンは北の国境に出向いていてここ2年ほどは舞踏会に出ていなかったのだが、今年は王城に戻ってきているので、連日貴族の女性たちから舞踏会でエスコートをして欲しい、相手になって欲しいと匂わせる熱いラブコールを受けていた。

「毎日毎日すごいですね」
たまたま詰め所で顔を合わせたキョーコがレンに向かって言う。
「ああ……さすがにちょっともう、疲れるよ……全く会ったことない人まで来るからね」
「すごい人気ですねえ」
感心したようにキョーコがこぼした。その声には全く不機嫌な響きが含まれていなかったため、ちろりとレンはキョーコに視線をやる。しかし、詰め所には他にも数人の隊員がいて、その内1人が会話に混ざってきて茶化すように言った。
「一体レン様は何人と踊るんですか?曲が足りないくらいですよね」
レンは肩をすくめて答える。
「先約があってね。残念だけど皆さんお断りしているよ」
「えっ。先約って…?」
からかうつもりだったのに思いがけない答えに隊員は身を乗り出して聞く。すると、レンは笑って事も無げに答えた。
「マリア様だよ。さすがにこれだけはお断りできない」
「なーんだ…ちょっとびっくりしたのに、つまんないですよ」
「つまんないと言われてもね…俺も体一つだし、警備もあるし、そうそうはね…」
そりゃそうか、と納得して隊員は去っていった。

「君は気にしてくれないの?」
周りに人がいないのを確認して、小声でレンは話しかけた。
「ひゃっ?…そんなこと、いちいち気にしてたら身が持ちません」
キョーコは突然二人だけの会話を振られたことにびっくりしたが、同じく小声で答える。
「毎日どれだけあの光景を見てると思ってるんですか」
「ごめんね?でも俺は余所見はしないから」
キョーコは少し頬を赤らめてそっぽを向いた。
「…そう信じてるから気にしないことにしたんです」
「信じてくれてありがとう」
「お礼を言われることじゃありません」

表面上はいつも通りでも、じわりじわりと二人の精神的な距離は近付いているように思えた。


いよいよ年の終わりが近づき、副官であるヤシロは小隊内の人員のやりくりに追われていた。
年の変わり目は自分の家に戻る隊員も多いため、最小人員で警備を行えるような調整が必要になる。ああでもない、こうでもない、と頭を悩ませているところにレンがやってきて、ちらりとその内容を確認する。

「すみませんね、ヤシロさん、面倒なことをお願いしてしまって」
「ああ、いいよ。これは俺の仕事だからね。大体まとまってきたから大丈夫だろ」
「ヤシロさんは家には戻らないんですか?」
「あー……俺はこの時期はいいや。新年の行事が終わってから休ませてもらうよ。お前も帰らないのか?」
「そうですね、俺も似たようなもんです。両親は新年こちらに来ますしね」

そうか、と言いながらヤシロは確認のため書類を見直す。
「キョーコちゃんは家に帰るんだなあ」
「そうみたいですね」
「去年は元気に警備のローテーションに入ってたけどな。まあ、たまには帰ってあげないとお母さんも心配だろうし」
頷きつつヤシロは言う。

レンはすでにキョーコから年をまたぐ休暇の話を聞いていた。
「母に、レン様のことを伝えてもいいですか?」と聞かれて、思わずキョーコを抱きしめてしまった。キョーコは頬を染めながらも、ちゃんと母親と話しあってくるから、まだ、もう少し待ってほしい、とレンに伝えたのだった。

キョーコが家に帰っている間に、色々と動いておかなければな…

レンは様々に計画していることを実行に移すべく、あれこれと水面下の動きを繰り広げていた。


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