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君の魔法 (24)


こんばんは。
さっそく、続きです!





「キョーコ・モガミ。俺は、君のことが好きなんだ」


キョーコは言葉もなく、呆然とレンの顔を見つめてしまった。
レンの言葉が何回も頭の中をめぐるが、うまく消化できない。

今、なんて…?
誰が誰を好きだって?ええっと。えええっ??

たっぷりと無言の時間が過ぎてから、ようやっとキョーコは口を開いた。
「……わ、私ですか?え、な、何で…?」
辛抱強くキョーコの言葉を待っていたレンは、少し考えてから素直に答える。
「…なんでだろうね。言葉じゃうまく説明できないけど…君はいつも一所懸命で、どんなことが立ちはだかっても、越えようと努力している。見守りたいし、一緒にいたいし、……とにかく、他の男とどこかへ行ってしまうことを…考えたくない」

キョーコは今度こそ真っ赤になった。こんな熱い眼差しで見つめられて、自分への想いを語られたことなど、生まれて初めてだ。
口が開くが、なんと言っていいのか分からず、酸欠の金魚みたいにパクパクしてしまっていた。

レンの言葉は続く。
「気がつけば、視界に入っている君の姿を目で追っている。他の男と話してれば、その内容が気になって仕方がない。レイノに何かされたと聞いたときには追っていって切り捨ててやりたいくらいだった……こんな制御できない気持ちになったのは初めてなんだ」

なんか今さらりと物騒なこと言った!とキョーコは思ったのだが、なんだか口は挟めない。

「俺の気持ちを、正面から伝えるのは無理でも、少しは出していたつもりなのに、君は全く動揺もしないでいつも通りに接してくるものだから、まるで相手にされていないと落ち込んだり…もうここのところ散々だ…」

なんだか愚痴っぽくもなってきた。
が、ここは看過できずに思わずキョーコは反論する。

「ちょっと待って下さい!いつも通りって、それはツルガ様のほうじゃないですか!力になりたいとか言われたり、だ、抱きしめられたり、おでこにキキキ、キスまでして!!だけどそのあと会うといつも通りにされるから、勘違い女って呆れられたくなくて、頑張って平静を装ってたのに!!」

キョーコは涙目で、力いっぱい訴えた。レンはそんなキョーコの顔をまじまじと見つめた後、こらえきれない、と言った風情で赤面しながら満面の笑みになる。

「ほんとに?」
「嘘ついてどーすんですか、そんなこと!…あんなに悩んだのにぃ!」
「意識、してくれたの?」
「…そうですよ……」
「それって…少しは期待してもいい?」
「あう……」
キョーコはあまりの恥ずかしさにうつむいたまま、それでもなんとかこくんと頷いた。
レンは はあーーーーーーーーーーーっと長いため息をつく。

「よかった……」
「え?」
「俺もう、自信なくて…」
「何言ってるんですか?じ、自信ないって」
「だって、キョーコに意識されてないかもって思ってたから」
「そんな訳ないじゃないですか!」
「だって、分からなかったもん」
「だから、お互い様なんですってば!!」
「うん…だって俺、動揺隠すので精一杯だったから…でも、よかった」

赤い顔でまたにっこりと嬉しそうに笑うレンを見て、キョーコは思わずこぼした。
「ツルガ様って女性にそういうこと言うの、慣れてるかと思ってました」
「……自分から告白なんて、これが初めてなんだけど…」
「ええええっ!!う、嘘ですよね」
「………ほんと」
「信じられないっ!あっ。まさか、もてるから、言わなくても言われるとか」
「……」
「そ、それはそれでなんか…」
「妬いてる?」
「は?」
「妬いてくれてるの?」
「何言ってんですか もーーーー!」

顔を赤く染めた二人のくすぐったい会話はしばし続いた。


会話の切れたタイミングで、ふとレンは真面目な顔に戻って言った。
「…君の家の事情とか、婚約者のこととか、色々あるのは分かってる。君が結婚を拒否していることも。分かってるけど、それでも。…俺と一緒に歩く未来を、可能性でいいから、考えてみてくれないか?」
「は…はい……あのっ!すぐには、お返事できないんですけど……」
「うん、分かってる。俺も、早急に答えを出したいわけじゃないんだ」
「でも……私も、考えてみたいです…」
「ありがとう」

レンは岩から立ち上がってキョーコに手を差し出した。
「さて、風が冷たくなってきたね。こんなところまで引っ張り出してごめん。そろそろ戻ろうか」
「あ、はい!」
おずおずとキョーコはレンの手を取る。レンはキョーコの手を引っ張ってその体を自分の懐に抱きしめると、囁くように聞いた。
「それで…君の答えをはっきりとはもらってないんだけど……将来の事は置いておいて、とりあえずお試しで、俺と付き合ってもらえる?」
「ひゃあっ!お試しって!」
「だって、このままで返事だけ待ってるのは…正直、辛い」
「お、お試しじゃなくても…いいですよ…」
キョーコの声は尻つぼみに小さくなっていったが、レンの耳にはしっかり届いた。
「ありがとう…じゃあ早速、よろしくね」
レンはキョーコの体を少し離すと、おでこに唇を寄せた。
「あ、あの!でも!!」
「ん?なに?」
「周りには、内緒にしておきたいんですけどっ」
「ああ…まあ確かに小隊の中でそういうことが公になるのもあまり好ましくないか…」
「はい、だから…」
「わかったよ」

レンはもう一度キョーコをしっかりと抱きしめ直すと、ニコニコと笑顔のままで言った。
「じゃあ、これは二人だけの秘密の関係」
「は…そうなんですけど、なんか言い方が…」
「うん、秘め事だね」
「ツルガ様…」

レンは急にがばっとキョーコの両肩をつかんで離すと、少し拗ねた顔になった。
「『ツルガ様』は、ちょっと他人行儀過ぎない?」
「えっ!だって、急に変えるのもおかしいですし」
「レンでいいよ」
「無理です!…せめて、レン様ならどうでしょう?」
「敬称ついちゃうとなあ…」

ぶちぶちと文句をいうレンを、キョーコは不思議そうに見やる。
「レ、レン様…なんか、そんな性格でしたっけ?」
すねたりごねたり、いつもより、若干幼いように見えてしまうのだ。
レンはそれを聞いておかしそうにくすくす笑った。
「だってほら、今は俺、クオンだからね。元々はこうなんだ。レン・ツルガでいるときは、無意識に理想的な剣士として振る舞ってしまうからね」
「はぁ、なるほど…」
「それほどがらっと変わる訳じゃないけど、こういうの嫌?」
「い、嫌だなんて言ってないです!」
「それならよかった」

王都への帰り道は、二人にとって楽しい時間だった。
しかし二人ともが、(湖での話が決裂してたら…帰りはどういうことになってたんだろう?)と考えてしまい、少し恐ろしかったのだった。


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