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たのしいレシピ (1)


こんばんは!ぞうはなです。

書けるときにはどんどん進めますよ~。
今日からはりょうこ様のリクエスト。
リクエストの内容は「『先生と生徒』の逆パターン」ですが、ぞうはなはやや天の邪鬼なので普通の学校の先生ではないパターンとなりました。
それほど長くはならない、予定ですが、相変わらずの予定は未定で見切り発車です。
そして今回はまだまだプロローグ…






「なんでこう、かけ離れた役が来たんだろうな?」
「そのかけ離れた役を引き受けたのは社さんじゃないんですか?」
「そうだよ?面白そうじゃないか」
不毛な会話を繰り広げているのは芸能事務所LMEが誇る人気俳優とそのマネージャーだ。
2人は移動中の車の中に並んで座り、助手席のマネージャー社倖一はドラマの設定資料をぺらぺらとめくりながらハンドルを握る俳優敦賀蓮に話しかけている。

「俺がやるからこそギャップがあって面白い、とあちらも思ってるんですよね」
「そうだろうけどさ。さすがにお前の食への興味のなさは知らなかっただろうな」
「俺の私生活と役とは関係無いですよ。役が決まれば仕事としてやるだけです」
「そうか?俺としてはこの機会に私生活の方も見直して欲しいけどな」
車はテレビ局の地下駐車場へと滑り込む。守衛所で許可証を見せながら車は更に奥へと進んだ。

「このドラマで家事スキル磨いたら、結婚したいランキングに影響出るのかなあ」
のんきに笑うマネージャーにため息をつきながら車から降りると、蓮はドアをロックした。
「下がるって言いたいんですか」
「不動の一位を疑ってないな、お前は」
「違いますよ、この間出たランキングで一位をいただいたのは事実です」
「実態知られたら下がるよな、どっちかといえば」
「下がろうが上がろうが気になりません」
「ほうほう余裕だな」
言い合いながらも二人は早足で駐車場からエレベータホールに入り、エレベータで上階へと移動してひとつの会議室のドアの前にたどり着いた。


「こちらが今回のドラマでの料理を全面的に担当していただくフードスタイリストの飯塚寛子さんです」
テーブルを挟んで蓮と社の向かいに座ったプロデューサーが、隣の女性を紹介した。頭を下げた女性は40代だろうか、美人であるがはっきりとした少し厳しそうな顔立ちで、長い髪をひとつにまとめている。
「飯塚です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「それから飯塚さんの隣は…」
プロデューサーを遮るように飯塚が口を開いた。
「私のアシスタントの最上です」
「最上です。よろしくお願いいたします」
紹介された最上と言う女性は飯塚よりはずっと若く、印象も柔らかく少女のように見えた。女性はかなり緊張した面持ちで深々と頭を下げる。

「それで、さっそく本題ですけど、飯塚さんに料理の指導を受けたいという話でしたよね」
プロデューサーに話題を振られ、ひとつ頷いた社が説明を始めた。
「はい、いただいた資料によると敦賀の役は突然専業主夫として家族を支えることになった大学生ということで、料理はもちろん家事全般のスキルを身につけていくと」
「ええ、ぜひ生活感のない役者さんである敦賀さんに演じていただきたいと思いまして」
「それはいいのですが、敦賀はイメージ通り料理や家事には無縁でして…」
「やはりそうですか。いや私もどうも台所に立つ敦賀くんが想像できなくて。最近では若い男性だと料理できる人も多いですし、実際料理を趣味にするようなタレントさんもいるんですけどね。イメージ通りで逆に安心しました」
「ですが、説得力のためにはドラマの展開とともに違和感なく全てのシーンをこなさなくちゃいけないですよね」
「ごもっとも」
「普通に料理教室にでも通えればいいんですが、なかなか時間が多くは取れません。なんとかドラマの筋に沿った部分だけでも叩きこんでいただけないかと」

申し訳なさそうに説明した社に、飯塚が尋ねた。
「それは、ドラマで出てくる料理のみ作れるようになればいいと言う事でしょうか」
「端的にいえばそうなのかもしれませんが、画面で見て違和感がないように必要な技術は押さえておきたいと思っております」
「しかしこんな短期間で大丈夫でしょうか」

やや心配そうな飯塚に対して社は確信がある表情で力強く頷く。
「敦賀は今までもドラマ出演で必要な技術はその都度短期間で身につけてきました。難しいのは承知しておりますが不可能ではないと思います」
ふう、と大きく息を吐くと飯塚は口を開いた。
「分かりました、こちらもご協力は惜しみません。が、今回の敦賀さんの役はいわば主婦としてのスキルを身につける必要がありますので、指導はこちらの最上が担当します」
それまで静かに話を聞いていた女性ががたん、と音を立てて慌てたように立ち上がった。
「も…最上キョーコです!!どうぞ、よろしくお願いいたします!」

きちりと揃えられた指が重ねられ、ぴんとした背筋のまま静かに倒された上半身がゆっくりと起きる。飯塚はそれを見守ると社と連に向き直った。
「最上はまだ若いですが、料理だけでなく家事全般、それにマナーについても身につけておりますのでお役に立てるかと」
「助かります、ありがとうございます」
社が笑顔を見せると蓮も頭を下げた。
「無理なお願いを聞いてくださってありがとうございます」

「それじゃあ細かい事は本人たちで話し合ってもらおうかな。あと初回の撮影はあんまり上手にされると困るから、そこのところはお願いしますね」
ホッとした様子でプロデューサーが言うと、その場の打ち合わせは解散となった。


「面倒な事をお願いしてすみません」
「いえそんな!こちらこそ、こんな若輩者で申し訳ありません…!」
会議室に残った蓮とキョーコはお互いに頭を下げあう。飯塚は別の打ち合わせがあると早々に退出していた。
横で見ていた社が苦笑気味に口を開いた。
「飯塚さんのお墨付きなんだから年齢なんて関係無いと思うけど、失礼ですけど最上さんっておいくつですか」
「は…い…その、19です」

じゅうきゅう?

若く見えるのかと思ったら本当に若かった。
蓮と社は同じ驚きをもったが、申し訳なさそうにしているキョーコにはそれを見せないように頷いた。
「それだけ若いのに飯塚さんから任されるとはすごいね!」
「本当に……俺はさっき社さんが言った通り本当に料理に無縁で来ているから迷惑かけるかと思うけど…よろしくお願いします」
「そんな…そのっ、そんなて、丁寧にしていただかなくていいですから!」
「いやでも俺の先生だから」
「せ、先生っ!?」
「そう。よろしくお願いします、最上先生」
蓮がにこりと笑うとキョーコの顔から血の気が引いた。


こいつ…なんか気のせいか、この子いじめて楽しんでないか?

社は蓮の顔を見て少し不安になったのだが、とりあえずキョーコと連絡先を交換すると次の仕事へと急いだのだった。


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