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予言


こんばんは!ぞうはなです。
間がだいぶ空いていてすみません~~

さて、書けた時は載せましょう。
本日は2周年のリクエストとしていただきました。
おかん様のリクエスト!
「人間観察モニタリングみたいなドッキリな番組に敦賀さんが出演することになったら??」というものです。

以前に「本性をあばけ」で隠しカメラ系のお話を書いていたため、今回はちょっと変えたら、リクエストにもかする程度のしかも中途半端な小話に…。

申し訳ありません、おかん様。今回はこんな感じで…。

ちなみに、話の中のあれこれは、信用してはいけません。





「本日もおなじみの心理学者、金井先生でーす!」

扇型に配置された椅子の真ん中に座った男性タレントが大きな声で叫び、周りの出演者やスタッフたちの拍手が鳴り響く。
拍手の中セットの袖から姿を現したのはスーツを着て黒縁の眼鏡をかけた中年男性だ。男性はお辞儀をしながら司会の男性タレントの隣に腰を下ろす。

この日テレビ局のスタジオで収録が進められているのは、平日の夜に放送されているバラエティ番組だ。
雑学や業界の裏話でなりたったその番組では、ゲストや出演者の本当の姿を心理学的見解から解くと言うコーナーが評判になっている。

「今日もずばずばと、よろしくお願いします!」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「金井先生の本、読みましたーー。いや改めて、色々気をつけなくちゃって思いましたよ~~」
司会者がよどみなく本を手にしながら宣伝をし、そして番組を進行していく。
「ありがとうございます。表情や仕草と言うのは無意識に出てしまうのが怖いところです」
「そうですね!先生、あまり僕を見ないでくださいね。さて今日の犠牲者は・・・こちらです!」
司会者が示した傍らの大きなモニターには何人かの顔が映し出された。

「あの伝説的なドラマ『DARK MOON』の後日談が来月スペシャルドラマとして放映されますが、その撮影現場に潜入してきました!」
「私も毎週見てましたね、楽しみです」
「さて金井先生、今日は豪華に、この出演陣の素顔をさらけ出していただきたいと思います」
金井が笑顔でモニターに視線を固定したまま頷く。
「では、金井先生と一緒にVTRをご覧ください!」


VTRはスタジオの大きく厚いドアを開けるところからスタートした。
スタジオ内にカメラが入るとそこには豪華なリビングのセットが組まれ、スタッフが忙しく働き、出演者が傍らで待機している。カメラはスタジオに入った人の目線でゆっくりと進み、1人の出演者の横で立ち止まった。
「あれ、これ何のカメラ?」
「おはようございます、貴島さん。『モーニングショー』の取材です」
「へーー。でも聞いてないな」
スタッフは番組名を出して主旨がばれる事を回避するために別番組の名前を挙げた。

「できるだけ自然な撮影風景を撮りたいので突然お邪魔しました。撮影は順調ですか?」
「ああ、もちろん。でも今回俺出番少なくてね…」
「そうなんですか」
「そ。けどまあその分存在感で勝負だな」

頑張ってください、と声をかけてカメラは一度横を向いた。しかしすぐにくるりと元に戻って貴島の後姿を捉える。貴島はこきこきと首を左右に傾けてから腕を上げて伸びをすると、別の出演女優に話しかけた。
そこで一度VTRが止まって映像がスタジオに戻る。
「今の貴島君の映像で何か分かりました?」
「そうですね、色々と」
「サラッと言いますね…さてではここで、ゲストに登場してもらいましょう」

スタジオ内の拍手に迎えられて登場したのは百瀬逸美と京子こと最上キョーコの2人だ。2人ともDARK MOONの役柄のスタイルのままで、キョーコの額には痛々しい傷が見えている。

「百瀬逸美さんと京子さんです」
「よろしくお願いします」
司会者を挟んで金井と反対側に並んで座ったキョーコと逸美は頭を下げた。
「京子ちゃんはわざわざメイクまでしてきてくれたんだ」
「はい!来月のドラマ、皆さんに見ていただきたいですから」
「おお、気合入ってる。けど今日は別の気合を入れてもらわないといけないかもしれません!京子ちゃんと逸美ちゃんはこのコーナー知ってる?」
司会に聞かれて、二人は一瞬目を見合わせて口々に答える。
「もちろん」
「見たことあります」
「じゃあ説明は要らないですね。では金井先生、VTRの続き見ながら解説お願いします」
「分かりました」

金井が静かに眼鏡を片手で直し、キョーコと逸美は画面に集中した。
「貴島さんは女性と話す前、無意識に体をほぐしています。リラックスしようと思うと同時に、なにやら気合が入ってるんでしょうね」
「大原さんは男性と向き合う際にこうして両手でもう反対の肘をつかんで…腕組みのようにしてますよね。大原さん、おもてになるんでしょうね。無意識に相手との距離を取ってます。もしかして過去に言い寄られて嫌な思いをしたことがあるんじゃないでしょうか」

主要なメンバーの行動を次々に解析していく金井の説明に、キョーコと逸美はなかば呆然と聞き入る。
1年前のドラマ撮影でずっと接していた共演者たちへの指摘は、確かに頷けるものばかりだ。しかし、急に金井は歯切れが悪くなった。
「敦賀さんは…すみません、最後でいいですか」
「え、ええ、もちろんです。じゃあ敦賀さんはお楽しみに取っておいて、お待ちかねのゲストのお2人もお願いします」
司会者もやや戸惑いつつ、キョーコと逸美の診断を促した。

「京子さんは常に真っ直ぐ背筋が伸びてお辞儀も丁寧、実に優等生的です。けれど話し方は比較的フレンドリーですね。表情も良く変わって裏表がなく人懐っこく見えますが、実は他人との距離をとるタイプに見えます。内面にかなりシビアな問題を持っているかもしれませんね」
「し、シビアですか?」
「ええ、ああもちろんこういうのって自覚がないこともありますよ」
キョーコの表情が一瞬曇ったのを見て、金井は柔らかくにっこり笑ってすぐに補足をした。
「そうですか…」
キョーコはそっと片手を胸の上に当てる。
「嘘をつくのは下手ではないけど、気が抜けると表情も仕草も正直になっちゃいますね。取調べなんかに弱い方です」

う、と言葉に詰まったキョーコを放って、金井は逸美に視線を移した。
「百瀬さんは会話の時に相手を真っ直ぐ見つめます。おそらくかなり気が強い方ではないですか?負けず嫌いともいいますが…」
「あー…確かに」
逸美は苦笑しつつも頷く。
「ですが、その一方で恥ずかしがり屋でもありますね」
「えっ??」
「ほらそれ」と金井は指を指した。逸美は金井の指の延長線上にある、髪に触れている自分の手を見る。
「VTRの中でもそうですけど、髪を触る癖がありますね。これは恥ずかしい、という気持ちの現れです。たまに相対する男性への好意とも言われる仕草ですが、百瀬さんの場合は特定の誰かということではないので、やはり性格的なものでしょうね」

「へぇぇ」という感嘆のため息がスタジオに満ちる。
しかし、「では最後の敦賀さん、見ていただけますか」という司会の声に金井は少しだけ眉間に皺を寄せた。

「先ほどの敦賀さんがスタッフと話している場面の映像、もう一度見られますか?」
金井の声に応え、すぐにモニタに映像が映し出される。それは蓮が普段どおりの穏やかな表情でADと話をしているシーンだ。
「この人は……難解ですね。芝居中のように感じられるのですが、違いますよね」
金井は真剣な顔でモニタを見ながら呟くように言う。
「いえこれは撮影中ではないですよね」
司会に問われ、キョーコと逸美もうんうんと頷いた。

「珍しい人ですね。敦賀さんは…分かりにくいです。強いて言うならば、この人は常に演技をしているように見えますね。徹底的に自分を出さない、そんな感じでしょうか?」
ええーーーー!と驚きの声が上がる。しかしすぐに金井は言葉を足した。
「ですが、たまに分かるところがありますね…これは京子さんと話されているところでしょうか」

映像の中ではパイプ椅子に座った蓮とキョーコが台本を前に話をしている。
「ほら、敦賀さんの足の向き、完全に京子さんのほうに向いてますよね。横に並んでるのに」
「あーほんとだ」
「姿勢も少し前のめり気味です。他の人と話すときはフラットなんですけどね」
金井はちらりとキョーコを伺ったが、キョーコは無表情のまま動かない。

「でも金井さん、敦賀さん京子ちゃんとしゃべってる時たまに腕組みしてますよ」
「私もそれがちょっと不思議だったんですけどさっき…ああここです。……そうか、敦賀さんの腕組みは先ほどの大原さんとは意味が違うんだ」
「え、どう違うんですか?」
司会者が尋ねるが、金井は耳に入らないようにモニタに集中したまま顎に手を置いてぶつぶつと呟く。

「なるほど、文字通り衝動を抑えるために自分で腕を押さえてる?これは面白いパターンだ。…腕をつかむほどの強い衝動と裏腹に、表情には一切出てない…興味深い…もっと観察してみたいな」
「金井さん?」
「あ?…ああ、大変失礼いたしました」
金井は体を起こすとひとつ咳払いをした。

「京子さんと敦賀さんは仲がよろしいんですか」
さらりと聞かれてキョーコは飛び上がる。
「え…ええっ?いやそんな、仲がいいなんて…その、同じ事務所の先輩で…!」
「ああ、なるほど。京子さんは分かりやすくていいですね」
頷いた金井と真っ赤になってパニックになるキョーコに、逸美がくすりと笑った。
「『DARK MOON』の撮影の時も仲いいなって思ってたんですけど、今もっと仲いいみたいです」
「…!百瀬さんっ何を!?」

キョーコががばりと横の逸美を振り返ったところで金井が静かに言った。
「予言しましょう」
予言?と全員の注目が金井に注がれる。
「これからそう遠くない将来、敦賀さんと京子さんはもっと仲良くなれます」


ほんの1か月と少しあと、ちょうどドラマが放送される頃に予言は現実となり、金井の書いた本はバカ売れしたと言う。


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