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君の魔法 (23)


こんばんは!
ハロウィンが終わったらクリスマスムードってのはちょっと早いと思います。
あっという間に年末になりそうで怖い。

さて、もうちょっとサクサク進めたいものですが…
今日の更新です!





まさかそんな。
これは夢を見ているのではなくて?
それとも、私はからかわれているの?


それでも、確かめずにはいられずに、キョーコは震える声で呼びかけた。
「……コーン?」

レンは、髪の色に負けないくらい輝く笑顔を見せる。
「久しぶり…だね?キョーコちゃん」


「嘘……え、なんで?……本当に?」
さくさくと落ち葉を踏みしめて歩いてきたレンはもうキョーコの目の前に立っていた。
「今まで黙っていてごめんね。俺も、びっくりしたんだよ」
「ほ、本当に、ツルガ様がコーンなんですか??」

うん、と頷くとレンは湖面に視線をやる。
その途端、水柱が連続で3本立ち、水しぶきがはねた。
「魔法だよ、て言ってこんなことして見せたよね。つむじ風も作ってみたし、空に跳ねたりもした。それから、君はおやつを持ってきてくれて…この岩に並んで腰かけて、一緒に食べたね」
レンは岩に腰掛けながらキョーコを見上げる。
「君はまだ小さくて、この岩に座ると足が下につかなくて…しゃべりながら足をぷらぷらさせて、早く大きくなりたいって言ってた」

キョーコは呆然とレンを見つめた。
レンが話す思い出は、確かに覚えていることばかり。そして、人に話したことがないことばかり。

「本当に、コーン…!えええええっ??そんなことって…?」
「偶然ってすごいよね。俺も、最初君の名前を聞いて、フワ家との関係を聞いたときに、もしかして、と思ったんだ。でも、そんな都合のいい偶然なんてある訳ないと、その考えを一度は打ち消した。…でもまさか、君にあげた石を見せられたら、もう疑いようがないよ」
あ、これ!とキョーコはシャツの中から石の入った袋を引っぱりだした。

「ずっと持っていてくれてありがとう。まさか、そんなに大事にしてくれてるとは思わなかった」
レンの笑顔は、髪と瞳の色が当時のものであることも相まって、あの時のコーンが大きくなったらこうなるだろうな、という予想通りのものだった。

座って、と促されて、キョーコは半ばぼうっとしたままレンの隣に座る。袋から石を取り出し、呟くように話し始めた。
「この石…ずっと、悲しい時に握りしめて悲しみを吸い取ってもらっていたけど、この間マリア様と魔方陣に入ってしまった時も、その後の時も2回とも、助けてくれたんです」
「石が助けてくれた?」
「はい……温かい優しい気配が石からして…気分がふわっと落ち着いたんです」
「そうか。確かにその石は俺が両親からお守りとしてもらったものだからね。本当に効果があったんだな」
「…魔法の石じゃなかったんですか」
あはは、とレンは笑って空を見上げた。
「別れ際、君に泣かれて辛かった…だから、少しでも泣きやんでほしくて、『妖精』としてそれをあげたんだけどね」
「う…」
「あの後も、何回かここに来たけど君には会えなくて…フワ家の子だと思っていたから、フワ家に娘がいないと知って、手掛かりを失ったんだ。それに、俺もツルガ家に行くためにこの地を離れてしまったし」
「そういえば・・・なぜ、ツルガ様は名前が・・・?」

レンは少し躊躇うように下を向いたが、すぐにキョーコへと向き直った。
「今日は、その話をちゃんとしたくて、ここまで付き合ってもらったんだ。聞いてもらえるかな?」
真剣な目のレンに、キョーコも姿勢を正して頷いた。
「もちろんです!」
「ありがとう・・・そうだな、まずは俺の名前からか。キョーコは昔、俺のことをコーンと呼んだけど、本当は『クオン』って言うんだ」
「クオン?私が聞き間違えてたってことですか?」
「そうなるかな・・・まだ小さかったからね。俺も特に訂正はしなかったし。本名は 『クオン・ヒズリ』だ」
あっさりとレンが言ったため、キョーコはうっかり流しそうになったが、口の中で反復して目を丸くする。
「ヒ、ヒズリ??もしかして・・・!」
「そう、ヒズリ様の、遠いところに行っているという息子は、俺のことだよ」

声も出ないほど驚いたキョーコのパニックが収まると、レンは静かに自分の身の上を語りだした。

ヒズリ家に生まれて、幼い頃から『クー・ヒズリの息子』として扱われてきたこと。
最初は父が誇らしかったが、段々と息子であることのプレッシャー、周囲からの心無い中傷に押しつぶされそうになったこと。
そして、ついにその状況に耐えられなくなり、ふさぎこむようになってしまったこと。

「それで俺は、ヒズリ家の後ろ盾無く、自分の力でどこまで出来るのかやってみたいと言う思いが止められなくなったんだ。無名の1人の人間として、認めてもらいたかった。今思えば、どこか逃げている部分もあったとは思うけど」

そして、ヒズリからの相談を受けたローリィ王の計らいで、ヒズリ家の遠縁の小さい地方貴族であるツルガの家に、養子として引き取られることになったのだ。同時に名前も変え、髪と瞳の色も魔法で隠してヒズリ家との関係をにおわせるものを排除した。
「あちらの父にも迷惑かけた・・・自分のわがままのために家族や周りの人を振り回してたんだな」

吐き出すようにレンが言うが、そんなレンをキョーコはキラキラする目で見つめている。
「そんなことないです!ヒズリ様の庇護の下にいる方が楽なのに、あえて苦しい道を選ぶなんて、さすがツルガ様です!それに、その経験があるから、今のツルガ様がいらっしゃるんじゃないんですか?だって本当に、ご自分の力だけで高みまで登ってるじゃないですか」
地方貴族のくせにって悔しがってる人も、実はたくさんいるんですよ、とキョーコはこっそり打ち明けた。

レンは心がふわりと軽くなる気分だった。この子は、本当に真っ直ぐで人を疑わない子だな・・・と少しおかしくもなる。
「そこまで持ち上げられるとくすぐったいね」
「持ち上げてませんよ!真実です!!」
キョーコはそれでも握りこぶしを作って力説する。

「でも・・・確かにヒズリの家を出て、見えてきたこともあるんだ。君も今言ったけど、やはり爵位だの身分だのにとらわれて、足を引っ張られることも多い。残念なことにね。国王は関係なく実力で引き上げてくれるけど、実際に動くためには周囲の干渉も無視はできない。・・・この、ツルガの身分のままでそれを突っぱねていくことも考えたけど・・・・・・俺は最終的にヒズリの名前を捨てる気はないんだ」
キョーコはじっと黙ってレンを見つめて次の言葉を待った。

「どこかで、ヒズリの名に戻るとしても、タイミングを計りかねていた。どこまでやれるかやってみたくもあったけど、それは本当に後ろ盾を持たず実力のみで頑張っている人にも失礼なのかもしれないし。かといって戻ったら戻ったで、やっぱりヒズリの息子か、と言われそうな気もしたし。考え始めたら、どうしたらいいのかが余計見えなくなった」
キョーコは眉間にしわを寄せている。レンの言葉を受けて、キョーコなりに色々と考えているようであった。
「それでも・・・ヒズリ様の、ヒズリ家の名前があったとしても、なかったとしても、ツルガ様が自分の力で今まで築き上げてきた実績や実力が変わるわけではないですよね?」
「そうだね、皆がキョーコみたいに考えてくれるなら、何も問題はないんだ」
「そうですよ!だって、ツルガ様はツルガ様ですもん!名前が違ったって、髪や瞳の色が違ったって、私の尊敬する方だってことには間違いないんです!」

レンはまじまじとキョーコを見つめた後、下を向いてふーーーーっとため息をこぼした。
「あわ、すみません、私・・・」
キョーコが慌てて弁解しようとしたが、レンはそれを止める。
「ああ違うよ、ごめん。あんまりに俺がうれしくなることを言ってくれたもんだから・・・」
「えええっ?」
「でも、君が俺に抱くのは、尊敬だけ?」
「ええええっ?だけって・・・・・・」
なぜか、キョーコの顔は真っ赤になった。レンはそれを見て嬉しそうに笑う。
「・・・実は、俺は、もうすぐヒズリ家に戻ろうと思ってるんだ」
いきなり話が元に戻ったので、困惑したままキョーコはレンを見た。
「は、そうなんですか?」
「そう。・・・それは、キョーコ、君がきっかけなんだ」
「え・・・?」

「俺は、大事な人を作らないつもりで、ここまでやってきた。素性を隠したままでは、無理だから。友人にしても何にしても、深く付き合いすぎないように、入り込まれないように、レン・ツルガとしてはやってきたんだ」
「はい・・・・・・?」
キョーコは訳が分からないまま返事を返した。
「それなのに・・・君が、するりと入り込んできた」
「は・・・はぃ?」
「気持ちを押しとどめようとしたけど無理だったんだ。どうしても、君を手に入れたくなった。そうしたら、素性を明らかにするしかないじゃないか」
「ちょ、ちょっと待って下さい!な、何の・・・?」
キョーコは自分の心臓が飛び跳ねる音を聞いた気がした。何の不意打ちだろうかと慌てる。聞き間違い?と思ったところで、レンからのとどめの言葉が下りてきた。

「キョーコ・モガミ。俺は、君のことが好きなんだ」


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