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君の魔法 (21)

こんばんは!
11月に入って急に冷え込んできた気がします。

ああ、それにしても、毎月5日あたりってコミックス派の私にとってはかなり良くないです。
(しかもコミックスを読むまでネタばれもしたくない派)

本誌を読んだ方のネタばれ感想とか続き妄想とかを読まないように、読まないように。
ああでも、なんかどうなってるのか知りたい!!!
っていう葛藤にさいなまれています。

ああ、急展開とか聞くと気になる~~~。
でも、次のコミックスの発売ってまだまだ先ー!しかも、今号って32巻に収録されるのかしら?

ああああ…

な訳で、前置きが長くなりましたが、続きです…



キョーコの体からは無数の黒い小さな物体が飛び出し、不規則な軌道を描いて飛び回っている。
「あのバカといい、あんたといい、人のことを何だと思ってるのよ!」

レイノは軽やかに魔方陣の外へ飛び退ると体勢を立て直した。
「レイノ、大丈夫か?」
ミロクが思わず問いかける。レイノを狙って飛び出した黒い物体の流れ弾にかすっただけでミロクも結構な打撃を受けたのだ。部屋の中もあちこちの天井や壁にへこみができるくらいの威力だった。レイノ自身は直撃を食らっているように見えた。
「大丈夫だ……ぎりぎりでかわしてはいる」
レイノは笑みを浮かべて答えたが、顔面に何かかすった筋のような赤い痕がついている。左手で押さえているところを見ると脇腹にも食らっているようだ。

魔方陣の中央にこちらを見たまま立っていたキョーコはふと何かに気がついたように自分の体を見下ろし、右手で胸の下あたりを押さえた。すると、飛び回っていた黒い物体が次第にその色を変え、半分ほどが真っ白いものへとなっていった。白と黒の軌道が複雑に絡み合い、なんとも不思議な眺めが展開されている。

「おいレイノ。なんか、白くなってきたぞ?」
「ああ……キョーコの中には元々白黒両方が渦巻いているのが見えてたんだ。怒りや憎しみが何かの要因で抑制されているのかもしれん」
「で、どうする?予定通り魔力を使い果たさせてから連れていくのか?」
「……無理かもしれないな」
どういうことだ?と怪訝な顔をしながら、ミロクは魔方陣に近づく。魔方陣を起動したときのように床に手をつこうとしたが、近づくことができずにレイノを振り返った。
「排除されるぞ」
「そういうことだ…さっき俺もあの場からはじき出された。無意識に魔方陣を制御してるようだ」
「手が出せないじゃないか。どうするんだ?」
「こちらからはどうしようもない……魔力が尽きるまでは待てないな。すぐにここを離れないとまずい」
言いながらレイノはドアの方を見た。
ミロクがレイノの視線の方向に気がついてそちらを見ると同時に、ドアがはじけ飛ぶように開いた。

部屋に飛び込んできた男は一目で状況を把握すると、キョーコの方の様子を伺いながらも瞬時に方向を決め、レイノとミロクの方へ突っ込んできた。二人は抜かれた剣をギリギリでかわすと、ばらばらの方向へ身をかわす。
ミロクは男に対して冷静に声をかけた。
「いきなり御挨拶だな」
「自分の置かれている状況が分からないなどとは言わないだろう」
普段よりも低い声で答えを返したのは、剣の切っ先をぴたりとミロクに向けているレンだった。

レンはそのまま、斜め後ろにいるレイノにも注意を払いつつ、ちらりとキョーコの様子を伺う。
「彼女に何をした?」
「…なにも危害を加えた訳じゃない。魔力を解放しただけだ」
「何が目的だ?」
「レイノがな。あの女を連れていきたいんだと」
レンのまとう空気が緊張感を増した。気の弱い人間であればそのまま気圧されて降参しそうなほどの圧力だ。レンは剣をミロクに向けたままゆっくりとレイノの方に顔を向ける。

「…俺はあの美しいオーラを手に入れたい……ただ、俺が欲しいのはあんなに白いのじゃない」
今やキョーコの周りを飛び回る物体は圧倒的に白い方が多くなっていた。真っ白な霧の中をたまに黒い筋が走る。
「連れて行って、黒い感情を育てて、と思っていたけどな……そんなに睨むな。あんたをかいくぐっていけるとは思ってない」
「では、手を引いてもらおうか」
ミロクが口をはさむ。
「レイノにはその女から手を引かせる代わりに…」
「お前たちを見過ごせというのか?」
「どうせ俺を王の元に引き渡しても、爵位と財産剥奪の上辺鄙なところに飛ばされるくらいだろう?俺たちはもうこの国には戻らないからな。地位も金も、捨てていく」

ふう、とレンはひとつ息をはくとゆっくり剣を下げた。
「どうせ、この場から逃げ出せる用意は万全なんだろう」
「さすが小隊長様。理解が早いね」
「一つ聞かせろ。レイノ、お前も今回の件に噛んでるのか?」
「ああ、少しな……俺はあの魔方陣で呼び出せるという神の姿を見てみたかった。ただそれだけだ……キョーコには予想外にいいものを見せてもらった。礼を伝えておいてくれ」
言い終わるや否や、二人は窓に向かって駆け出した。ガラスに突っ込む、と思われたが、中空でその姿は何かに飲み込まれたようにふっと消える。
「キョーコを止めないと力尽きるぞ。キョーコ自身が外からの干渉を拒んでいるがな…まあ、せいぜい足掻くがいい……」
レイノの声が響いて消えた。


レンは剣を鞘に納めると、部屋を見回しながら魔方陣に近づいた。

ずいぶんと派手に破壊したな…キョーコの黒い奴か?

それから、まず魔方陣の外からキョーコに呼びかけてみる。
キョーコはレンの方を見ているが、どこか遠くを見ているように焦点が合っていなかった。両手で胸元を押さえ、何か祈っているように見えなくもない。

まったく…暴走しないよう、テンさんに教えを受けてたんじゃないのか?まだ黒くないだけましなのか?
…さて、どうやって止めたらいいんだ。

レンは魔方陣の領域に手を伸ばしてみた。何の抵抗もなく、腕は白い霧の中に入る。あれ?と思って更に足を踏み出してみたが、レンの体はあっさりと魔方陣の中に収まる。
魔方陣の中は白く煙っているが、居心地のいい空気の空間だった。小さい領域のため、すぐ目の前にキョーコがいる。レンは少しためらったが、正面からそっとキョーコを抱きしめて呼びかけた。
「キョーコ?魔力の放出を止められるかい?」
前回と違い、キョーコはすぐに気がついた。はっとレンを見上げると、抱きしめられていることに気がつき、慌てる。レンは腕を緩めることなく再度キョーコに話しかけた。
「キョーコ、このままでいいから。その小さいのをおさめられるか?」
キョーコは無言でうなずくと、目を閉じて頭を下げ、レンの胸にもたれるような体勢になった。そのまましばらくすると、飛び交っているものたちが次々とキョーコの体に飲み込まれるように消えていく。最後に残った2つの白い物体がキョーコの肩あたりでふわふわと浮かんでいるのに目をやって、レンはぎょっとした。まるでキョーコを小さくしたような白い小さな女の子の形をしているものが、こちらを見てニコニコ笑っていたからだ。二人はこしょこしょと内緒話をすると、そのままキョーコに飛び込んで消えた。
それから、魔方陣の光も収まり、キョーコの魔力放出はなんとか止まったのだった。

どれくらいそのままでいただろうか。
無言の時が過ぎて、キョーコがもぞもぞと身動きした。
「レ、レン様……そろそろ離していただいてもよろしいですか?」
「ん?どうして?」
「どうしてって…!」
キョーコはがばっと顔を上げてレンに文句を言おうと口を開きかけたが、レンの顔を見てびっくりした顔になった。
「ええっ?あ、あなた、レ、レン様ですか?」
「そうだけど…なんで?」
「だって…!髪が…!瞳が!!」

キョーコが驚くのも無理はなかった。
レンだと思って見上げた顔は、いつもの黒髪ではなく光り輝くような金髪、そして目は碧い光を湛えていたのだから。よく見てみると確かに顔の造形はいつも見ているレンのものだ。髪と瞳の色が違うだけでこれほどまでに印象が変わるのだろうかと、キョーコはまじまじとレンを見つめてしまった。

「そんなにじっと見つめられると少し恥ずかしいんだけど?」
レンの言葉でキョーコは我に返った。
「あ、すみません…!」
「この魔方陣に入ったせいかな。君の魔力の霧に包まれたせいかな。解けちゃったみたいだ」
レンが苦笑交じりに言い終わると同時に、レンの髪と瞳の色は元に戻った。
「え、…ということは」
「うん、これは魔法で色を変えて見せているんだ。元々の色はさっきの金髪と碧い目」
なぜ、とキョーコは聞きたかったが、なぜかここで聞いてはいけないような気がして、言葉を飲み込んだ。レンはキョーコの顔を覗いてそれを察知したのか、少し困ったような笑顔で続ける。
「ごめん、これは他の人には黙っていてくれるかな?俺とキョーコの秘密にしてくれると嬉しい」
キョーコは少し頬を赤らめて慌てて言った。
「そ、そんな怪しげな言い方されなくても、誰にも言ったりしませんから!」
「ありがとう」

お礼を言われることじゃ…と口の中でごにゃごにゃ言ってから、キョーコはまだ体勢が変わっていないことに気がついた。レンの両腕はしっかりとキョーコの体に回され、がんじがらめに抱きしめられている。さすがに正気でこれは恥ずかしい。
「あの!言わないので、は、離してくださいってば!」
「あれ?離していいの?きっと今、立てないだろう?」
レンが腕を緩めてキョーコの体を解放すると、途端にキョーコがぐらつく。ほらやっぱり、と腰を両手で支えられ、レンの胸に手をつく体勢になってしまってもっと恥ずかしい。
すると、一瞬でレンの空気が底冷えするものに変わった。何事かとキョーコが顔を上げると、レンはキョーコの顔より少し下を凝視して眉間にしわを寄せている。
レンは片方の手をキョーコの腰にまわして体を支え、もう一方の手をキョーコの首筋に持ってきた。するりと首をなぞられてキョーコはくすぐったさに肩をすくめる。

「これ…どうしたの?」
え?とキョーコは思わずレンの指が触れている方に視線をやるが、当然自分の首が見える訳もなく。そこに何かあったっけ、と考えてみて、そういえばさっきレイノが首に顔をうずめたときにちりっと痛かったっけ、と思いだした。
キョーコの心の声は何故か声になっていたらしく、そこまで思い出した時点でレンの空気はさらに冷たさを増す。
「レイノに…なにされたって?」
「い、いえ…あの……私の黒いオーラが見たいって言われて、それで脅しみたいにされまして」
「これ以上のこと、されてない?」
「されてません!何も、これっぽっちも!!」
なぜかキョーコは今身の危険を感じていた。一応思い出してみても他に何かされたことはなかったはずだ。

レンは少しの間黙ってキョーコを凝視していたが、はあ、と息を吐き出した。
「分かった。細かい話を戻ってから聞かせてもらえるか?」
「はい!わかりました!」
キョーコがいい返事で答えると、じゃあ戻ろうか、と言って背中とひざ裏をすくって、レンはキョーコを横抱きに抱えた。
「きゃあ!な、何するんですか??歩けますから!おろしてください!」
「…前のパブでは素直に体をあずけてくれたのになあ」
「あ、あれは!寝てたからしょうがないんです!」
「じゃあ今も」
「寝ません!」
「ほら、酔ってるようなもんだと」
「思えません!…って、このままどこまで行くつもりなんですか?」
「俺の部屋に来る?」
「な、何で‥!行きませんよ!」
「あれ、前のパブでは…」
「ねーてーたーんですーーー!」

こんな調子でそのまま城門を越えていったのですっかり目立ってしまったのだが、キョーコは白熱していて気付かず、レンは分かっていて止めず、結局近衛隊の詰め所で口をあんぐり開けたヤシロに迎えられてようやっと、キョーコはレンの腕の中から解放されたのだった。

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