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君の魔法 (20)


こんばんは!
長くなると思っていたけど、もう(20)まで来ちゃいました…。
まだしばらく終わりません。どこまで行くんだろう?

さて、週末は少し忙しいので、更新の時間が取れなさそうです。
続きはまた来週、ということで、よろしくお願いします!





3人が足を踏み入れた屋敷は、人の気配が無くしんとしていた。
通常、家主がいないときでも管理のために誰かがいるのが普通であるのに、なぜか屋敷全体が真っ暗だ。
キョーコは体を自分の意志で動かすか、それが無理なら誰か助けを呼べないかと頑張ってみたものの、それらの努力は実を結ばず、あっさりと一室に入ってきてしまっていた。

これは、二人を見失ったと言う人のことを責められないわね…

変なところで納得しながら、キョーコは窓からもれる月明かりを頼りに目を凝らす。
3人がいる部屋は、特に変わったところの無い応接間に見えた。窓寄りにソファとテーブルのセットが置かれ、3人が立っている入り口側にはピアノがあり、その前には軽くダンスが踊れるくらいの空間が空いている。

ミロクが部屋のドアを閉めると同時に、キョーコの体は自由を取り戻した。
ミロクがドアから離れたのを確かめると、キョーコはレイノの脇をすり抜けてドアに駆け寄りドアノブに手を伸ばした。が、触るか触らないかのタイミングでドアノブからバチッと火花が散り、慌てて手を引っ込める。

「レイノ、解くなよ」
「ずっとは疲れる…」
苦笑交じりにミロクが言うと、レイノはぼそりと答えた。

キョーコは振り返ると、二人を睨み付けながら口を開いた。
「用事って何ですか。…なぜ私に、こんなことまでして?」
ミロクは両手を広げると首を振りながら答える。
「用事があるのはレイノの方だ。逃げないで聞いてくれたら手荒な真似はしない」

もう十分手荒にされている気がする… と思いながらも、とりあえずキョーコは話を聞くことにした。
ミロクはテーブルに置かれたランプに火を入れる。ほのかな明かりがぼんやりと室内を照らした。ミロクとレイノは部屋の中央へと進んだが、キョーコはやや入り口に近いところで足を止めた。

「クク…警戒している猫みたいだな」
レイノはキョーコを見やって呟くように笑ったが、キョーコはそれを無視して仁王立ちしている。
「それで?用事とは?」
「ああ…単刀直入にいうか。お前を、連れて行きたいと思ってる」
はあ?と大きな声で聞き返してしまったキョーコは矢継ぎ早に質問を繰り出した。
「どこに?何で私を?そう言われてのこのこ付いて行くとでも思ってるの?」

「まあ落ち着け」
あんたが唐突にそんなこと言うから落ち着けないんでしょう!とキョーコは思うが、レイノはぼそぼそと話し出した。
「お前のあのオーラがほしい…できれば、魔法陣の中で見せた白いのじゃなくて、その前に見た、黒い方がいい…」

それは、もしかしてショータローと城で会った時のこと?
キョーコは思い当たるところがあったが、あえて問い返した。
「黒とか白とか、何の話?」
「とぼけるな…知らないと言うなら、今ここで引き出してやってもいい」

キョーコがはっと気づいたときには、音も無く近づいたレイノに左手を取られていた。
「ふむ、やっぱりお前の中で2色が渦巻いているな」
キョーコは思いっきり手を振りほどくと、入り口の方に一歩下がった。
「何なの一体…!」
「お前の中にくすぶる色は見えてはいたんだ……最初に放出を見た時は、真っ黒なオーラ…あれは美しかった。白いのも美しくはあるが、底深さで負ける」
恍惚とした表情で語るレイノが恐ろしくて、キョーコは少し身を竦めてもう一歩下がる。
「今見て分かった……やはりあれはお前の感情に左右されるな。怒り、絶望、…そうだな、憎しみの色が一番黒そうだ」

この人、何を見たと?
キョーコは手を取られたときに自分の中の何かを覗かれたことに気がついた。しかし、口を開けば余計な情報を与えそうで、きゅっと唇を引き結ぶ。

「俺も、あのオーラを直に感じてみたくてな…だが、俺たちはじきにこの国を離れる…だったら、一緒に連れて行くしかなかろう?」
「離れるって、どこに行くの?」
「もちろん行く先は言えないけど…受け入れてくれる国はあるんだ。そのためにあのW国の研究員様からいろんな情報を引き出したんだからね」
キョーコの問いに答えたのはじっと黙って見守っていたミロクだった。
「やっぱり、マリア様に対してあんなことをしたのはあなたたちなの?」
「ああ、そう。まあ、最初に話を持ちかけてきたのは俺の父親だったけど」
「なぜ?何であんなことを…?やっぱり神の力が目的なの?」

ミロクは肩をすくめてみせた。
「親父は神の力ってのに取り憑かれたようだったけど、俺たちはそんなものには興味が無い」
「じゃあ、なんで?魔法陣に書かれた契約者の名前はあなたになってたじゃない!」
「まあね。その方が、うまく行っても行かなくても、ダメージが与えられると思って」
「誰に?」
「決まってる。親父だよ」

なんで?とキョーコは素直に問い返していた。
「そりゃ、子どもが親を憎むのなんて、無い話じゃないだろう。自分のことしか考えていない単純な男にダメージを与えるには、一度持ち上げてから突き落とせばいい。簡単なことだ」
「そこまで、父親を憎んでるの?」
「そのレイノだって、実はあいつの息子だ。適当な女を愛人にして、適当に厄介払いして。俺の母親は本妻だったから放り出されはしなかったけど、まあ俺を産むための道具みたいなもんだった」
「そんな…」
「俺に対してだって愛情がある訳でもないのに、お前のため、ビーグール家のためってそればっかりだ。あの父親面にいい加減、うんざりしてね。一度、あの男の失望にまみれた顔を見てみたかった」
「俺を一緒にするな。俺はそっちはどうでもいい。しかも、結局その顔は見られてないな…」
レイノが脇から口を挟む。

「はは。それもそうだけど。どうせあの男、廃人みたいになってるんだろ?こっちが夢みたいな未来を吹き込んどいたからな」
「ひど…すぎない?いくらなんでも…」

「お前だって、肉親を憎む心が見えるぞ?」
レイノの視線はキョーコの心をえぐるようだった。咄嗟に言葉が返せない。
「…ああでも、そうだな、前の手紙のときよりも、それは薄れているか…。まだ残ってる黒いのは……男への憎しみか?」
キョーコは飛び上がりそうになった。ぐっと口をつぐんでレイノを睨むが、それは肯定として捉えられたようだ。

「そうか…ならば俺に対して向けさせるのも簡単だな」
言うなり、レイノはまたしても簡単にキョーコの懐に飛び込み、両腕を捉える。強引に部屋の広いところにキョーコを立たせると、同時にミロクが床に手を当てて何かを呟いた。

レイノとキョーコの周りの床に、白い光の円と複雑な模様が浮かび上がる。大きさはかなり小さいが、その光にキョーコは見覚えがあった。

これは、あの時と同じ???

キョーコは焦って大声を上げた。
「何をする気?私じゃ神は呼び出せないわよ?」
「落ち着け…これは全然違う魔法陣だ……お前の魔力を呼び覚ますための」

え?と思う間もなく全身を駆け抜ける強烈な力を感じる。
強制的に体の中にくすぶっているものを解放させるような、そんな力だ。
キョーコはぼんやりと、先日ショータローと対峙したときもこんな感覚に陥ったことを思い出した。ただし、今はあの時のような内側からこみ上げるような怒りや憎しみが無い。フワフワとする、不思議な感覚だった。

そんなボーっとした頭の中に、ささやくような声が飛び込んできてキョーコは少し覚醒した。
「…負の感情が足りてないな……あの男のことでも考えてみるか?」
呆然としている間に、キョーコの腰はレイノの腕にしっかりと抱えられ、目の前にレイノの顔があった。
「それよりも、直接向けられる想いの方がいいな……さあどうする……そのままぼうっとしてると、料理始めるが?」

レイノの顔が近づいてキョーコの首元へと埋まる。
ぴり、という首筋の痛みでキョーコの頭はかなりはっきりとしてきた。押しのけようとレイノの肩と頭に手をかけて力をこめるが、びくともしない。相変わらず首に唇を這わせながら、レイノは嘲るように歌うように呟く。
「腕力でかなう訳がないだろう…俺を止めたければ、お前のあのオーラを解放しなければ無理だ」

この男…!!なんて不健康な思考なの!!

段々と腹が立ってくるが、レイノは止まらない。その顔は徐々に胸のほうへと下りてくる。
「いい加減にして…!!」
叫ぶと同時に、キョーコの体から黒い小さな丸いものが1つ飛び出すと、レイノの頭に横からぶち当たった。レイノは少しよろける。
「ほう…しかし、まだまだだな」
言い捨てると、今度はキョーコの顔を両手で包むようにすると、至近距離まで顔を近づけた。
「それともなんだ、嫌でもないのか?……それならそれで、あの男より気持ちよくしてやるが?」

「勝手なことばかり…!」
キョーコの中で何かがはじけ、同時にどぉん、という鈍い音が部屋中に響き渡った。

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