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Break The Spell (16)


こんばんはー!ぞうはなです。
よし、とりあえずここんところは週2ペースを維持できてる…!

※すみませんー、ちょっとポカをやらかしたので微妙に修正いたしました…。





「でも……なんかそれってちっとも解決になっていない気がします。サーシャさんの気持ちは関係無いんですか…?」

憤慨していたキョーコだったが、ふと冷静になるとサーシャの立場になってしまう。

もし自分だったら。
好きな相手に上辺だけやさしい態度をとられたって、何も嬉しくない。事情を知らなければ脈があるのかとぬか喜びしてしまうだろう。
そして、もし蓮とトムで話し合われた内容を知ったら…自分がサーシャだったら、断られたとき以上に怒るかもしれないし、悲しくなるかもしれない。受け入れられないならばいっそ、突き放してくれた方が諦めがつくし気持ちが切り替えられる。


腕組みをして考え込んだキョーコに、蓮は優しい笑顔を向けた。
「そう、その通りだと俺も思う。確かにそれで撮影はしばらく順調に進むかもしれない。けど、解決にはならないよね」
「はい。上辺だけ取り繕ったって何も納得できないです」
「うん。だからね、トムにもそう答えたんだ」
「トム?」
「ああ、サーシャのマネージャーはトムって言うんだ。昨日最上さんが俺の楽屋に来てくれた時、対応した人がトムだよ」
「あのちょっと怖そうで大きい方ですね」
キョーコは頷いた。ドアをノックしたらいきなり蓮と同じくらい大柄なサングラスの男が出てきて早口の英語で話しかけられたのだ。緊張していたキョーコはものすごくびっくりしたのだが、英語で返事をして用件を伝えたら、思いのほかあっさりと中に通された。強面だが、それほど怖い人ではない気がした。


「それで、俺は改めてサーシャと話をしたんだけど」
告白を断ったのにまた話し合うというのも、なにやら奇妙な話だ。
しかしまあ、当人たちがそれがベストだと言うならば部外者の自分がとやかくいうことではない。
大体、蓮が誰を好きになろうが、付き合おうが、サーシャがどれだけ蓮にくっつこうが、自分には何を言う権利もないのだ。

部外者…そうよね、私は完全に部外者だわ。

自分で思っておいて腹が立つ。勝手なのは分かっているが、感情は止められない。
しかし、次の蓮の言葉でキョーコの立腹は驚きに変わってしまった。
「…結局俺は、トムの言う通りにする事になった」
「は?…言う通りって、表面上はサーシャさんの望むようにするっていう…?」
「うん」
「…なぜそんな?」
「サーシャ自身がそれがいいと言ったんだ。今は自分を好きでなくても構わない、ただ、そばにいたら絶対に俺の気は変わると、断言したよ」
思い出して笑う蓮に、キョーコはぽかりと口を開ける。
「…さすが、トップ女優ですね」
「そうだね、そこまで自信に溢れてないとあそこまで駆け上がることはできないのかなと、俺も思った」
「はあ……」
「サーシャがトムも巻き込んで、結局俺が折れる形に落ち着いてしまって…あれは完全にやられたな」
蓮が楽しそうにサーシャのことを語るだけで、キョーコはなんとなく胸が痛い。自分の元に帰ることしか考えていなかった、と先ほど蓮は言ったはずだが、やはりキョーコには信じられない。

なんだかんだ言ったって、仲よさそうなのよね…
だってそうよね、私と敦賀さんはそんなに長い時間を過ごしてないわ。

自分がLMEのドアを叩いて最悪な出会いをしてから、蓮が旅立つまでは2年なかった。そしてそれから、3年以上会えなかった日々。
その間、あの美女が蓮の隣にずっと居たのだ。美しさだけではない、才能に溢れる女性が。
大体、自分と蓮の関係はただの先輩後輩だったのだ。空白の間にそれが遠ざかる事はあっても近づくことはないと思う。そんな思いが蓮の言葉を否定させたがる。

「正直俺は、共演者が増える間に彼女の方から俺を見限ると思ってたんだ。けど、なんだかんだで日本に帰るまでそんなのが続いてしまったね」
「そうですか」

続いてしまったねって…続けたかったんじゃないんですか、あなた自身が。
そりゃあ…付き合ってなくたってあんな女の人が自分に対して好意を向けてくれたら嬉しいでしょうね。そう、本当は嬉しいんじゃないんですか?

キョーコの声に含まれる不満は蓮に伝わったようだ。蓮から目線を外して少し俯いたキョーコの顔を覗き込むと、蓮はそのおでこについと人差し指を当てた。
「こんな事情じゃ納得できない?」
「私が納得するとかしないとかじゃ…」
「けど、君は不服そうだ」
「そんなことありません」
キョーコは顔を上げてじとりと蓮を見た。蓮はいつも通りの穏やかな顔で、キョーコはひとりでウジウジ悩んでいるのがバカらしく思え、なんとなくイライラする。

「私が口出すことでもないです」
ふい、と目をそらしてキョーコが吐き出すと、蓮はおでこから指を離した。横目でちらりと見た蓮の表情は、よくは見えなかったが驚いているようだ。
「なぜそんな言い方するの?」
「だって当たり前じゃないですか。敦賀さんが誰と付き合おうがどうしようが、私が文句言うような事じゃないですよね?」

自分でも何を言っているのか分からないくらい一気に吐き出された思いにキョーコは自分で驚いた。

「…ごめんなさい」
「いや」
短い返事に、呆れられたかとキョーコはため息をついた。呆れられるなら、いっそのこと全部吐き出して終わりにしよう。キョーコの頭からは、すっかり蓮の告白など吹き飛んでいた。

「…長かったんです、敦賀さんがいない時間は長すぎて……ようやく会えたと思ったら、そばにはサーシャさんがいて」

吐き出して、と思ったものの、そこまで口にしてからようやくキョーコは気がついた。


ばかっ!キョーコ!!この想いは一生誰にも言わないで秘めておくんでしょう!!!


口をつぐむが、それと引き換えにするように今度は涙がぶわわっと溢れてきてしまい、キョーコは思わず空を仰いだ。止まって、と焦るほどになんと形容していいのかよく分からない感情は昂ぶり、ぽろぽろとこぼれる涙は止められない。
「ごべんなざい、なんでぼないでず…」
必死に取り繕うとするが、隠しきれないほど見事な鼻声になってしまい、さらにキョーコは慌てた。蓮から顔を逸らし、カバンを探ってハンカチで涙を拭きつつ顔を隠す。

「ほんどになんでもないでずがら…」
「いや…ごめん」
絞り出すような声が聞こえたかと思ったら、背中側からがしりと肩をつかまれて、キョーコの体は強制的に蓮の方へと抱き寄せられた。手摺に座った状態で膝に乗せていたバッグが地面へと落ちるが、それを拾うこともできやしない。

「敦賀さっ…?」
突然の事に驚いて問いかけようとするが、さらにぎゅうと抱きしめられてキョーコはますますパニックだ。崩れた体勢をなんとか立て直したところで、頭の上から蓮の声が聞こえた。
「ごめん、最上さん。ごめん」
「な、なんであやまるんですか…?」
蓮の腕の中で必死に問いかけるが、拘束は強くなるばかりだ。蓮のシャツやジャケットに涙や鼻水をつけてはいけないと、必死に距離をとろうとしたキョーコの努力は虚しく無駄になった。

「君に辛い思いをさせてるって気がつかなかった。君は俺のことなど気にせず、日本で過ごしているとばかり…」
「……」
キョーコは言葉に詰まる。

それは当然かもしれない。
自分の恋心は誰にも、蓮にはことさら、気づかれてはいけない。
そう思って蓮への気持ちを自覚してからもそれをキレイに隠してきたのは自分だ。蓮が日本を発つ前だって、帰ってきてからだって、精一杯、全身全霊をかけて、ごくごく普通に後輩としての態度を貫いてきた。

「ごめん……俺ばかりが置き去りにされてると思ってた」
「いえそんな、謝らないでください」
「いや、君をこんな風に泣かせるなんて最低だ」
「私が勝手に訳も分からず泣いただけです」
「ううん、ごめん……でも、ありがとう」

ひたすらに謝られたと思ったらお礼を言われ、キョーコは驚いて蓮の腕の中で顔を上げた。
「え?」
「君が俺を待っていてくれて嬉しい……本当は、ゼロから君との関係を、もう一度始めようと思っていたんだ」
「ええ?」
「君が貴島君と付き合ってそれで幸せであれば、見守ろうかと一度は思った。けど、それも無理そうで」
「えええ?」
「俺が3年留守にして失ったものは3年以上かけても取り返す。そう誓って帰ってきた」
「で、でも…でも私だって、敦賀さんはサーシャさんとの未来を選んだんだと思ってたんです」
「さっきも言ったよ。俺は向こうに行く前も、行ってからも、帰って来てからも、君との未来しか望んでない」

蓮は一度緩めた腕にもう一度力を込めた。
「こうやって君を抱きしめる事だけを、ずっと望んでいた…」
「そんな…」
「だって今まで君を抱きしめたのは、君が泣いてる時だけだったし」

は、とキョーコは思い返す。
初めて蓮の腕の中の温かさを知ったのは、そう、レイノに絡まれてコーンのことで悲しくなった時。
いや、だけど?

「違いますよ、敦賀さんがアメリカに行かれる時は私泣いてませんでした」
「そうか、あの時は俺が心の中で泣いてたんだった」

涙にぬれたキョーコの顔に笑みが浮かぶ。
そうしてようやく、蓮は笑顔のキョーコを改めてその腕の中に抱きしめることに成功したのだった。

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コメントコメント


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ようやく…

こんばんわ。ようやく同じ方向に向かって会話が進みましたね。ヤキモキしてしまいました。でも、気持ちを確かめたら、エンドが近いのかと思うとそれも残念な気持ちが…。とても楽しみに毎回続きを待っていましたから、終わりが近づくのも寂しいような。ぞうはなさまが困っちゃいますよね。すみません。(ちょっと本誌が出てきましたね。)これで収束なのか、まだまだオリキャラが頑張ってくれるのか、楽しみにしています。どうもありがとうございました。

genki | URL | 2015/07/03 (Fri) 23:32 [編集]


Re: ようやく…

> genki様

コメントありがとうございます!返信が遅くなりましたー。
お話は収束方向ではあるものの、キョコさんの懸念はまだ続いておりますので、もうちょっと続きますー。
そしてうっかり本誌出てしまいました。ネタばれなしのはずだったのに、ご指摘ありがとうございます…!

ぞうはな | URL | 2015/07/08 (Wed) 22:17 [編集]