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Break The Spell (14)


こんばんはー。ぞうはなです!
さて、続き続き。どうやら2人の会話で何話もいけそう。





「ショック…って…?」
「貴島君から電話がかかってきた事を俺に隠そうとしてた」
「は…いえそんな事は」
「その場で出なかったのも、聞かれたくない内容なのかなと思ったし」
「いやそのっ…すみません」
「車の中でも電話を気にしていたようだったしね」
「いえあの…」
「もし他の人の前でもああいう態度を取っているなら、貴島君とのことを誤解されても仕方がないと思うよ」
「は……まことにすみません」

「文句を言えない」と言いつつ文句だらけだと、キョーコはどこか冷静に思う。
けれどどうにも蓮に追及されると自分は弱い。謝るしかないのだ。大体、自分だって蓮に誤解されたいわけではない。

「で、何の用だったの?」
「はい?」
「貴島君の電話だよ。君は何もないと言ってるけど、連絡取ってるって事は付き合いが全くない訳ではないんだろう」
半ば呆れたような表情で蓮にさらりと問われ、あーー、とキョーコは視線を上にやった。

「一昨日は、飲んでるから来ないかってお誘いの電話でしたが」
バカ正直に告白してから、蓮の方に何気なく目をやって「ひいっ」と息を呑む。蓮の表情は変わっていないが、一段怒りの気配が濃くなったように感じられ、久しぶりにキョーコのレーダーがビリビリとMAXの反応を示している。

「君はそうやっていつも彼の誘いに応じてるのか」
「いえっ。一昨日はもう家についてましたし遅かったですしお断りを」
「一昨日以外は?…もしかして、昨日はその穴埋めに貴島君と会ってた?」
どきーーーん、とキョーコの心臓が跳ねて思い切り表情にもそれが表れてしまった。

「なるほどね…」
「いえそのっ!すみません、昨日の朝にはもう貴島さんとお約束をしてしまっていたので…!」
「いや」
蓮は少し真面目な表情になるとキョーコの弁解を遮った。
「俺の誘いを断ったのはいいんだ。問題はそこじゃない」
ではどこですか、とキョーコは聞きたくなったが、空々しい笑顔の次はお説教顔だ。とても言えない。黙って背筋を正してありがたくご拝聴するしかないのだ。

「君は相変わらず男の下心に鈍感すぎるな」
「は……?」

"相変わらず"。
いやそりゃ確かに、蓮が日本にいた時もアメリカに行っている間も、自分は異性との付き合いという付き合いをしてきてはいない。けれどその間何回も誘われたり言い寄られたりと言う事もあり、それなりにお断りをしたりかわす方法も身につけてきたとは思うのだ。まあ自力で、というより貴島にレクチャーされて、というところが大きいが。

納得がいかない、というのが顔に出てしまったのか、蓮はキョーコの顔を見て何回目か分からないため息をついた。

「"あの"貴島君が君とじれったい付き合いを3年以上も続けるってことがどういうことか、分からないか?」
「え……それはその、お友達というか先輩後輩として」
「お友達ね。貴島君が異性と純粋にお友達付き合いするように思えるかな」
「それは…」

キョーコは思いをめぐらせる。
貴島は本当に気さくに女優やタレントと頻繁にメールのやり取りをしていたし、他の人と食事に行った話なども当たり前のように話題にのせてきていた。そのあたりはお友達関係だとすっかり思いこんでいた。
あれの全てが色恋沙汰のものだと考えるとキョーコにとっては途方もないことなのだが、はて、改めて考えてみてもどっちなのかは想像もつかない。ただ、間違いなく自分に対してはある一線を越えるような振る舞いはしてこなかったと思う。
昨日のあの言葉を除けば。

「けど、貴島さんはその、とても親切にしてくださいました。先ほどお話したとおり、他の方への対応も考えてくださったり…」
「それはそうだよ。君に近づくためには周りの男は排除する必要がある。一番手っ取り早い方法だろう、そうやって指示をして成果の報告を受けるのが。ついでに感謝もされるし信頼もされる」
「まさか…だって他の方とお付き合いもされてたようですし」
「まあ彼だったら遊びではいくらでも付き合えるだろうね。その"他の方"とやらで、ずっと彼と恋人関係を続けている女性がいるか?」
「それは……」

考え込んでしまったキョーコを見つめ、蓮は前髪をかきあげた。
「貴島君とはしょっちゅう会っていたの?」
「いえ、そんな事はないです!貴島さんもお忙しいみたいですしそれほど頻繁では…」
「じゃあ、俺が帰ってきたタイミングで急に誘われた?」
「あー……?」

そういえば、ここのところは会っても1ヶ月に1回くらいの割合だった。
電話やメールは頻度が高いが、昨日のように強引に約束を取り付けられるようなことは最初の内こそあったが、最近は覚えがない。軽く誘われるものの予定が合わなければ「じゃあまたの機会に」と引き下がってくれた。そうだ、昨日が久しぶりだったのだ。
そういう意味では辻褄があう。昨日の貴島は何度となく蓮の名前を出していたではないか。それって一体…?

「なるほどね、大体分かったよ」
キョーコが答える前に、蓮は納得したように頷いた。一気に缶のコーヒーを飲み干して息をつくと、ぽそりと口を開く。
「まあ、待っていてくれただけ感謝か…な」
「感謝…?」
「いや、こっちの話。だけど君は、本当に気をつけた方がいい」
「はい…」

気をつけているのに。

キョーコは表面上は素直に返事をしつつも、納得がいっていなかった。
確かに貴島との事は、昨日初めて本人の口から衝撃の内容を聞いたこともあり、やや無防備だったとは思う。けれど結局貴島の真意はいまだ不明だ。特にキョーコに被害もない。
だがそれを置いて考えれば、それ以外の共演者やディレクター、プロデューサー、その他関係者からのお誘いは、少し素っ気無さ過ぎるのではないかと思うくらいはっきりきっぱりとお断りしている。

それはもちろん、言い寄ってくる相手に対してそういう気持ちにならないという事が一番大きいのだが、ではなぜそういう気持ちにならないのかと元をたどれば、やっぱり蓮の存在が大きいのだ。

大体、敦賀さんのせいじゃないですか。
ずっと日本にいなくて連絡も取れなくて、それに向こうではあんなキレイな人と仲良くなっておいて…!

「次にまた写真でも撮られたら、今度は本当に何もなくても言い訳は聞いてもらえなくなるからね」
勝手とは分かりつつも蓮に対する抗議の気持ちが湧きあがったところで、蓮からダメ押しのようなセリフをはかれ、キョーコは言葉に詰まってしまった。言われている事は確かに正しい。だが!


『言いくるめられそうになったら話を逸らすといいよ。聞かれたことを相手に聞き返すと大抵それるから』

いらっとしたところで、ニコニコと貴島がレクチャーしてくれた言葉が急にぽかりと頭に浮かんだ。
確かそれはしつこくプライベートを聞かれた時に有効だと言う話だったが、今この場で使えないものか。


「ご指導ありがとうございます。確かに敦賀さんの仰るとおりですね」
キョーコは殊更に姿勢を正して蓮の顔を正面から見た。それまで肩を落として防戦一方だったキョーコの声が変わったことに、蓮は少しだけ表情を怪訝そうなものに変える。
キョーコの瞳は真っ直ぐに蓮を見ている。
「そこまで仰るなら、敦賀さんのアメリカでの報道は、すべて真実ってことなんですか。アメリカで頑張ってらっしゃるって思ってたのに、恋愛にうつつ抜かしてたってことですね」

これは玉砕だと、言いながらキョーコは気がついていた。
何を当たり前のことを、とさらりと肯定されれば、この3年ちょっとの間のキョーコの積み重ねた想いは木っ端微塵に打ち砕かれることになる。ついでに、先輩に対する無礼な振る舞いとしてはもう、切腹レベルだ。

どっちにしたって玉砕確定なのよ!
だったらほんの皮一枚でも、ダメージ受けてもらわないと気が済まない!

八つ当たりに近い感情と、この蓮の知らない3年間でついた度胸がキョーコの背筋をぴんと伸ばした。
「それにもし、あれを否定されるとおっしゃるなら、お相手のサーシャさんにも失礼だと、そう言う事ですよね」

見た目には涼しい微笑を浮かべて落ち着いているキョーコだが、言っている本人の心の中は大嵐だ。荒波にもまれるいかだの上のキョーコは今にも海に投げ出されそうで、しかも本人は目を閉じて転覆の瞬間を待っている。

だが、キョーコが予想していた呆れの表情は蓮の顔にはあらわれなかった。
蓮は無言、無表情で固まったまま、虚しく時が過ぎて行く。


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コメントコメント


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捨て身の反撃

今晩は。更新をお待ちしておりました。キョーコちゃん、捨て身の反撃で気になるところで切れてしまい、またまた続きが気になります。この会話の結末も気になりますが、会話そのものも面白いですね。二人の探り合いだけで何話もいきそうというぞうはなさまのおっしゃることも分かります。中々素直に話が運ばない二人に「人生は永遠じゃないんだから素直になろうよ〜」と年齢を重ねた私は思ってしまいました。変な感想でごめんなさい。でも、ぞうはなさまのお話は色々な味わいがあって大好きです。続きも楽しみにお待ちしております。どうもありがとうございました。

genki | URL | 2015/06/27 (Sat) 01:10 [編集]


ハラハラ、ドキドキ

ぞうはな様
いつも素敵なお話をありがとうございます。
今回も、一歩先ですら予測不能で、本当に続きが楽しみで、ほぼ日参状態です!!
これからも、どうぞよろしくお願いします。

| URL | 2015/06/27 (Sat) 17:15 [編集]


Re: 捨て身の反撃

> genki様

お返事遅くなりまして申し訳ありません!
わざと切っている訳ではないのですが、なぜだか分量で切ると変なところで切れます…。
原作のキョコさんと蓮さんのやり取りって大好きで、こんなポンポン言葉の応酬ができるのにただの先輩後輩ってあり得ないでしょーなんて思ったりもしています。
それでもなかなかお互いの核心には触れられず。はて、何話続くんでしょう、この夜の会話…。

ぞうはな | URL | 2015/06/30 (Tue) 21:33 [編集]


Re: ハラハラ、ドキドキ

コメントありがとうございます!
おお、日参、ありがたいです。でも更新はそんなにできなくてすみませんー!
こちらこそここからのお話もお付き合いくださいませ!

ぞうはな | URL | 2015/06/30 (Tue) 21:34 [編集]