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Break The Spell (7)


こんばんは!ぞうはなです。
うう、頑張って週2のペースですね(そして気を抜くとそれすら・・・)

ところで、アメリカの芸能界の構造って日本と全然違うんですねー。
そのあたりはぼかして都合のいい記述になっておりますのであまり追及しないでくださーい。

とりあえず続き、です。





『はぁ、もう!何回も同じ事聞かれて飽きちゃった』
『インタビューなんてそんなものだろう?』

ハリウッド女優はどさりとソファに座ると大きな声を出した。
サーシャは事前に自分の楽屋に大量の注文をつけた割に、生放送の情報番組終了後に蓮と腕を絡めたままで真っ直ぐ蓮の楽屋へと入ってきていた。スタッフたちは慣れたもので、サーシャの楽屋に用意された、サーシャが欲しがるであろうモノをさっさと運び込んでいる。

蓮はサーシャが半分寝そべるように座ったソファから少し離れた椅子に腰掛け、サーシャをむくれさせていた。

『そうだけど、日本来ても同じって…あーー、つまんない!折角の日本なのに』
『まあ、これも仕事だよ』
『分かってるわ。…まったく、レンは真面目すぎるのよね』
『そう?』
『そうよ。同じような質問されてるのにその都度答え考えてるでしょ』
『そうじゃないと全部のインタビューを見てもらえないからね』
『ふうん、やっぱり真面目だわ。ああ、明日の半日のオフが待ち遠しいな。ねえレン、どこに連れてってくれる?』
『…俺は明日オフじゃないんだけど』
『うそっ!?…トム?』
壁際に空気のように存在していた男が振り返ったサーシャの声に反応した。
ネクタイを締めてサングラスをかけたその男は軽く頷くと、『蓮だけの番組出演があるからな』と素っ気無く答える。

『信じられない…!なんで今まで黙ってたのよ』
『向こうでその話したときに言ったよ?』
『聞いたわ。でも私も断ってって言ったはずよ』
『俺の一存じゃ断れないよ』
『ん~~!!KYOTOに連れて行って欲しかったのに!!』
『サーシャ、それは俺がオフでも無理だ。半日じゃ向こうにいられる時間があまりないよ』
『なんで?日本って小さい島国でしょ。近いんじゃないの?』
『…いくら日本が小さくても新幹線で片道2時間かかる。東京と京都の距離は400km以上あるよ』
『……もういい。レンがいないんじゃ、行かないもん』
ふいっとサーシャは横を向いたが、蓮は穏やかに微笑んだまま無言でいる。

その時、楽屋のドアが控えめにノックされた。すぐに壁際のトムが動き、ドアを細く開ける。

蓮が日本に帰ってからと言うもの、楽屋に訪ねてくる芸能人はかなり多い。しかし常に蓮と一緒に行動したがるサーシャに何かあっては困ると、スタッフたちは蓮から見ればやや過保護とも思えるガードっぷりを発揮している。
それほど張り切らなくても、楽屋のドアをノックしたらえらく大きい外国人が「Hello?」と顔を出すのだ。大抵の人間はそこで引き下がってしまう。実はトムは流ちょうな日本語を操るのだが、こういう時はわざとぶっきらぼうで崩れた英語で対応するので、威圧感たっぷりだ。

しかしドアを開けたトムは外の人物としばらく会話を交わしている。やがてトムは身を引くと、ドアを大きく開けて外の人物を中に迎え入れた。
『レン、お客だ』
入口から楽屋に足を踏み入れ、中の様子を見てぴしりと真っ直ぐに立ったのはキョーコだった。

「お疲れ様です、敦賀さん」
「最上さん…今日はここで仕事?」
深々と頭を下げたキョーコに蓮は少し驚いて立ち上がっていた。昨日のキョーコのスケジュールを社に聞いた時、自分の大体の出演についても伝えていた。今日ここで同じ局に入るなんて、社は何も言っていなかったはずだ。

「はい、バラエティ番組の収録があって、それで今朝事務所で社長にお遣いを頼まれまして」
「お遣い……俺に?」
「はい。ああっ、それと昨日はどうもありがとうございました」
「いや、俺が勝手に行ったんだからお礼なんていらないよ」
「いえ、とても助かりました。と、お遣いの前に、そちらの方はサーシャさんですよね?」
「ああ、紹介するね。俺と共演したサーシャ・カーニーだ」

キョーコはサーシャの方にしっかりと体を向けると笑顔ではきはきと挨拶をする。
『はじめまして、サーシャ。京子と言います。お会いできて嬉しいです』
『はじめまして。あなたは蓮の友達?』
サーシャはソファに座ったまま悠然と笑みを浮かべた。

『同じ事務所の後輩です。そう!サーシャさんの映画、色々見ました!特に"橋の下"が好きで』
『あら、あの映画見てくれたの?』
『ええ。サーシャさんの悲しみの演技がすごく印象深くて…』
『ありがとう。私もあの映画はかなりお気に入りなの。大体みんなアクションがすごいって言うから、あの映画を気に入ってくれて嬉しいわ』
『アクションもすごいです。"クラッシャー"、手に汗握っちゃいますね』
『演ってる方はもっと汗かいてるわ。でも楽しんでくれると嬉しい』
『"クラッシャー3"も早く見たいです。楽しみにしてますね』
『ありがとう』
終始和やかに笑顔の女性2人の英語での会話は続き、最後にキョーコは握手を求め、サーシャがそれに答える。

「それで敦賀さん、お遣いの件なんですけど」
キョーコは蓮の方に向き直ると肩にかけていたカバンから小さな宝石箱を取り出した。
「マンションの地下駐車場に置いておいた、あとは好きにしろ、とのご伝言です」
キラキラと光る宝石箱を差し出され、蓮は苦笑しながらそれを受け取る。
「ありがとう。鍵を入れるにはちょっと仰々しいね」
「私にはよく分かりませんが、でも、この宝石箱、周りのキラキラが全部本物のような気がしてしょうがないんです」
困り顔で「中にしまうためのもののはずなのに外側が宝石だらけって…」とブツブツ言うキョーコに、蓮は笑う。
「うん…深く考えなくていいよ」
蓮はその場では箱を開けず、自分のカバンへと無造作にしまいこんだ。

「敦賀さんの新しいお車って社長さんのなんですか?」
「いや、仕事が始まる前に手に入れたかったから、手続きをお願いしていたんだ」
「確かに昨日のレンタカーじゃちょっと敦賀さんのイメージじゃないですもんね…」
「そうかな?どんな車ならいいのか分からないけど、あの車も結構よく走るよ」
「走らせたんですか」
「どんなの想像してるの?普通に、って意味だよ」
じとりとキョーコに見られて蓮が腕を組んで応じる。そんなやりとりが展開された直後に大きな声が飛んだ。

「レン!」
呼びかけたサーシャの方に蓮が顔を向ける。

【その子はあなたのなんなの?】
サーシャの言葉は日本語でも英語でもなく、キョーコには聞き取れなかった。
【さっき彼女が言った通りだよ。俺が日本にいるときの同じ事務所の後輩】
【もう用事は済んだんでしょ。私疲れたから帰ってもらってよ】

ふいとサーシャが顔をそむけた事で、キョーコは言葉が分からなくてもその感情を察知し、慌てて頭を下げた。
「すみません、長居して。おふたりはまだ生放送の出演もあるんですよね!お邪魔しました」
「いや…こちらこそ社長のお遣いしてもらっちゃってゴメンね。ありがとう」
「いえ!では、失礼しますね」

せかせかと出て行こうとするキョーコを追って蓮も入り口までたどり着き、ドアを開ける。そして少し小声で話しかけた。
「…最上さん、今夜の予定ってあいてる?」
キョーコは驚いた顔で蓮を振り返ったが、やはり小声で返す。
「ごめんなさい、今日はちょっと用事があるんです」
「そう…分かった」

ほんの少しの沈黙の後、「では」ともう一度頭を下げたキョーコに、思いがけないセリフが飛んできた。
「新しい車の試運転、付き合ってほしいんだ。連絡するね」
「レン!」という声が部屋の中からもう一度かかり、ドアは閉まる。


閉じたドアの向こうとこちらでは、同時に小さいため息が漏れたのだった。


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コメントコメント


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続き、楽しみしております!

ぞうはな様
今回も素敵な作品、ありがとうございます。蓮様とキョーコちゃんのビミョーなすれ違い。これからの展開にドキドキ、ワクワクです!
読み専門で申し訳ありませんが、本当に楽しみで、ぞうはな様の作品で、毎日の仕事の疲れが癒して頂いております。これからも、よろしくお願い申し上げ。

| URL | 2015/06/06 (Sat) 08:15 [編集]


Re: 続き、楽しみしております!

コメントありがとうございます!

こちらこそ、書く事は自己満足の極みですが、続けて行かれるのは読んでくださる方がいてこそ!でございます。
少しでも日々の暮らしの癒し、とまでいかなくてもアクセントくらいになれれば嬉しい限りです。

そしてここからの展開が、ドキドキワクワクを継続できたら、いいなーー!と思います!
お付き合い、よろしくお願いいたします!

ぞうはな | URL | 2015/06/09 (Tue) 21:11 [編集]