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Break The Spell (2)


おこんばんは!ぞうはなです。

さて、2話目です。
どうぞー。





やっぱり久しぶりだと…なんとなく違和感があるな……

蓮はテレビ局の廊下を歩きながらそんな感想を抱いていた。
3年とちょっと前までは毎日のようにいた場所。自宅にいる時間より、各局のスタジオや楽屋にいる時間の方が圧倒的に長かった。何も考えずにいる慣れた場所だったはずが、違う国の撮影現場にどっぷり浸かってから戻ってくると、懐かしいと同時によそ者が紛れ込んだようなそんな気分になる。

メイクルームに入ると、先に座っていた男が自分の方を向いて軽く手を上げる。
「よお~~~~、敦賀君!ひっさしぶりだなあぁ~~」
「やあ、貴島君。元気そうだね」
メイク中の貴島はにこやかに蓮に話し掛けて来た。
「君もな。すっかりワールドワイドな俳優になっちゃってさ」
「ありがとう、けど1つの役をやっただけだから…どうもね」

蓮は貴島の隣の椅子に座ると、メイクさんに軽く挨拶をして鏡越しに貴島を見た。貴島は蓮が日本を立つ前と全く変わらぬ口調と表情で、そして相変わらずメイクの女性に馴れ馴れしい態度を取っている。
「ってもさ、シリーズ3作って大作だぜ?興行収入もすごいしさぞかし懐も潤ったんだろ」
「まさか、無名の俳優にそんなにギャラは出ないよ」
「またまた~~。羨ましいよなぁ、ギャラはいいわ、超いい女と付き合えるわ」

やれやれ、と蓮は内心ため息をついた。ちらりと横目で見た鏡の中の貴島は笑顔だが、目は笑っていないように見える。蓮と貴島のメイクがお互い顔を見合わせてさりげなく蓮がどう返事をするのかに集中したのも分かり、やや苦笑気味に蓮は答えた。
「貴島君は相変わらずだね」
「はぐらかすなよ、彼女も日本に来てるんだろ?紹介してよ~」
「もうそろそろ着くよ」
「え?ここに?」
「ああ。俺がここにいるのは映画の宣伝のためだし。今朝日本についてそのまま来る予定だって聞いてるよ」

ひとしきり興奮し、色紙を持って来ればよかった、と貴島は悔やんでから、思い出したように尋ねる。
「あーでも、一緒に日本に来なかったの?」
「わざわざ一緒には来ないよ」
「えー。海外の大物カップルは手をつないで来日するもんじゃん?」
貴島の言葉に蓮は静かに答えた。
「付き合ってる訳じゃないからね」

「ええええっ??何度もパパラッチされてたのに?」
蓮の予想通り、貴島はややオーバーに反応する。
「俺とサーシャはそういう関係じゃない」
「うっそだぁ~~。俺にまで嘘つくわけ?」
「なんでここで嘘つく必要があるんだ?」
「ん~~、ほら、ファンに刺されるとかさ」
「それならそもそも写真撮られるようなことしないよ」
「いや、そうとも限んないだろ~」
「じゃあ、君はどうなんだ?」

「へ?」
穏やかな笑顔で聞かれて、貴島は怪訝な顔になった。
「真剣に付き合ってる相手との写真撮られても、相手とのことを否定するのか?」
「敦賀君、誰の事言ってる?」
伺うような目つきにも蓮の穏やかな笑顔は崩れない。そういえばこの男はいっつもポーカーフェイスだったな、と貴島は思い出していた。最近見た蓮の動く表情はスクリーンの中のものだけで、それは喜怒哀楽をはっきり表に出していたから少し忘れていた。

「誰ってことはない、気持ちの持ち方を聞いてるだけだよ」
「聞きたい事があるならはっきり聞けよ。俺は嘘ついたり隠したりしないぜ~?」
にやりと笑った貴島に、蓮はほんの少しだけ間を置いてゆっくりと首を横に振った。
「いや、君のプライベートに口出したいわけじゃないよ」


自分の出演する番組の収録までには時間があるから、と貴島は蓮のメイクが終わるのを待って一緒についていった。
蓮の楽屋に向かいながら貴島はウキウキとした楽しそうな声を出す。
「サーシャちゃん、直に見ても可愛いんだろうなあ♪」
「貴島君、本当に時間大丈夫なのか?」
「なんだよ、彼女が俺になびくのが心配なのか?ちょっとくらい会わせてくれたっていいじゃない」

蓮の楽屋のドアまで辿り着いたその時、廊下の向こうから女性の声が響いた。
「レン!」
男2人はそろって声の聞こえた方向へ顔を向けたが、軽やかに走ってきた女性は蓮の懐へと飛び込む。
女性としてはかなり高い身長、そしてメリハリのある体つきに長く細く引き締まった足、肌は白く茶色い髪はショートカットで活動的だ。少し太い眉はまっすぐで、大きなグレーの瞳とすっきりした鼻筋は気が強そうに見える。
胸元が大きく開いた光沢のある黒いミニワンピースが色白で長身の体を女性っぽく引き立てている。

『サーシャ、フライトで疲れてない?』
『全然!聞いてた通り、TOKYOってすごい街ね!ねえレン、オフの時間にどこか連れてってよ』
『サーシャ、君が街を歩いたら大変なことになるよ』
『だからってホテルに缶詰めはいやよ!せっかく日本に来てるのにつまらないじゃない。それにしてもレン、同じホテルじゃないんですって?』
『ああ、俺は自分の部屋があるから』
『やだ、私が日本にいる間だけでもホテルにいてくれたらいいのに!でも日本のレンの部屋、見てみたいわ。やっぱりタタミ?フトンなの?』

蓮にくっついたままマシンガンのようにしゃべる女性を、蓮はやんわりと自分からはがして貴島のほうへ促した。
「貴島君、サーシャ・カーニー、君が知っての通りの俺の共演女優だ」
「Nice to meet you.」
貴島がややぎこちなく右手を出し、サーシャと呼ばれた女性はにっこりと笑ってその手を柔らかく握った。
『サーシャ、こちらは日本の俳優の貴島秀人。前から何回か共演してる友達だ。日本のトップ俳優だけど君に会いたがってたんだよ』
『はじめまして!よろしくね』
「こんなもので悪いんだけど、サインもらえるかな?俺前から君のファンでさ」
いつの間にかそこに居た貴島のマネージャーがさっとノートとペンを貴島に渡し、貴島はそれを笑顔でサーシャに差し出した。
『あらありがとう。今度の映画も見てね』
「クラッシャーシリーズは2作とも見たよ。君と共演できる敦賀君が羨ましくて」
『ふふ、あなたとも機会があるといいわね』
蓮が通訳を務めて簡単な会話を交わし、サーシャはサラサラとペンを走らせるとノートを貴島に返す。
「写メもいいかな!?」
ウキウキと浮かれた貴島は蓮に自分のスマホを渡し、笑顔のサーシャと写真におさまった。

『サーシャ!そろそろだ』
少し離れたところで見守っていたサングラスをかけた男性が声を上げ、サーシャは『はぁい』と返事をするともう一度蓮の背中に両腕を巻きつける。
『じゃ、蓮。着替えてくるわ』
『ああ、スタジオで』
サーシャは蓮の頬に軽く口付けると軽やかに去って行った。

後姿を眺めていた貴島はゆっくりと蓮の方に顔を向ける。
「やっぱ付き合ってんじゃん」
「違うって」
「だってあのサーシャちゃんの親しげな態度!キスまでされてさぁ!」
「彼女はいつもああなんだよ。俺以外でも、仲のいい相手にはね」
「どうだかねぇ…?」
呟いてから、ふと貴島は考えて気がついた。

確かにサーシャは蓮に親しげな態度を取っていたが、蓮の方はいつも通り、いや、いつもと言ってもそれを見るのは久しぶりだったのだが、以前蓮がしていた、他の人に対するのと変わらない紳士の対応だったように見える。
だけどサーシャがくっついて巻きついてキスするのを回避する事もない。暖かく柔らかい笑顔で全てを受け止めていた。

うぅん??やっぱりこの男、わっかんないなあ…?

貴島は首をかしげながら蓮と別れて自分の仕事場へと向かったのだった。


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コメントコメント


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いまだにキョーコちゃんの影も形も出てこないとは…

こんばんは。未だにキョーコちゃんの影も形も出てこないとは、余計に気になってしまって続きが待ち遠しい〜!という感じです。蓮さまが、キョーコちゃんが未だにラブミー部を卒業していないことを気にしているところも、伏線ありなのだろうと、いったい次に何がくるの??と怖いような…。めちゃくちゃ気になります!とても続きを楽しみにしております。どうもありがとうございました!

genki | URL | 2015/05/20 (Wed) 00:21 [編集]


Re: いまだにキョーコちゃんの影も形も出てこないとは…

> genki様

お返事遅くなりました!
蓮さんの方の帰国後を書いていたら、2話目はキョコさんが出てこないってタイミングになっちゃいました…。
2人が会わない間にそれぞれ何があったのか、じわじわと続きますのでお付き合いくださいませ~~~。

ぞうはな | URL | 2015/05/22 (Fri) 21:21 [編集]