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Break The Spell (1)


こんばんは!ぞうはなでございます。

さーて、急いでサクサク行かないと、リクエストしてくださったことすら忘れちゃいますよね…。
とはいえ既にリクエスト募集してから9カ月が経過。えーっと…申し訳ございません…。

ということで、次のお話!
今回はblue様のリクエスト。
珍しく原作沿い(といっても話の展開はあまり沿ってないかも)です。
いただいたリクエストの概要(!)は、「蓮キョ/いったん別れて5年後」という感じでしたが、切なすぎる話やドロドロ話が苦手なぞうはなは、だいぶリクエストを捻じ曲げたかも知れません。

さて、いつもながらの見切り発車がどうなるか…?
では参ります。





『Happy Birthday & Merry Christmas』


手書きの文字を見るだけで胸がドキドキして苦しくて涙がこぼれそうになる。
1年に1回だけ届く小さな葉書がここまで自分に動揺を与える事を、キョーコは「もう4回目なのに」と改めて驚き戸惑う。

涙が浮かびそうになったが、ここは事務所だと自分に言い聞かせ、キョーコは必死で平静を保った。

「今月はやっぱり誕生月だからいつにも増してファンレターやプレゼントが多いなぁ、いや最上君も本当に人気者になったもんだ」
ニコニコと笑顔で傍らの段ボール箱を示した椹は、キョーコの様子がいつもと違うなんてことには全く気がついていないようだ。


「ありがとうございます。やっぱりファンの方々に自分の誕生日を覚えていてもらってお祝いしてもらえるのってすごく嬉しいですね」
「そうだな、…いや全く、そう素直に思えるというのに君はなんでまだ…」
しみじみと素直な感想を漏らしてしまったため、不思議そうな顔で椹に言われてしまってキョーコは慌てて弁解した。
「い、いえ!まだまだなんです私!だからその、もうしばらくはいいんです、ラブミー部のままで!」


段ボール箱を自宅に送ってもらえるように依頼して、キョーコはそそくさとタレントセクションのオフィスを離れた。
その手には中身のチェックが不要なためそのままキョーコに渡ってきた葉書の束があり、一番上にはバラの花束がこぼれんばかりに写った写真の絵葉書が乗っている。

キョーコは廊下の片隅で足を止めると、その一番上の葉書をゆっくりと持ち上げて裏返した。


『Happy Birthday & Merry Christmas』


切手も消印も日本のものではなく事務所の住所も英語で書かれた葉書に、無造作に押された"AIRMAIL"のスタンプ。
宛名の下にはさらりとお決まりの定型文のようなそれでも手書きの一行。そしてそこから少し間を空けて、付け足したように小さな文字がこちらは日本語で書かれている。
短い文章で読むのもあっという間なのに、キョーコは1文字ずつをゆっくりと目に焼き付ける。


『年明けに会えるのを楽しみにしています。 R 』


…もうすぐ帰ってくる!

もう3年以上直接顔を見ていないが、あの優しい笑顔は、意地悪な表情は、いつだって鮮明に思い出すことが出来る。それでも最近思い浮かぶその顔はテレビや映画館のスクリーンで見たものと少し混じっていて、間接的に得た数年分の情報を辿るとキョーコの胸には喜びと同じくらいの切なさと戸惑いが湧き上がる。
なんとも言えない不安が足元から登ってくるような感覚に囚われ、キョーコは再び葉書を手の中の束の一番上に戻すと一つ息を吐いて再び歩き出した。



松が取れてからしばらく経った空港は少し落ち着いているが、それでもレジャー客とビジネス客が入り混じってかなりの賑わいを見せる。
小ぶりのキャリーケースを転がしながら到着ロビーを歩く金髪の青年に、近くを歩いていた若い女性が思わず振り返った。
「ね、あの人すごい…モデルかな?」
「ほんとだ、足長…!顔見た?」
「ちらっとだけ~。でもサングラス掛けてたからよく見えなかった」
「普通に歩いてたらめっちゃ目立つよね」
「うん」
青年はわき目もふらずスタスタとロビーから外に出ると、そこに待っていた長いリムジンと浅黒い肌の男に迎えられ、車で走り去ったのだった。


その翌日のLME本社、社長室には、黒髪の青年の姿があった。
ドアが開く音に青年は目をそちらにやるとすくりと立ち上がる。入り口からゆったりと歩いてきたLME社長であるローリィはにやりと笑って青年に座るよう促した。

「よぉ蓮~~無事に帰ってきたな」
今日のローリィは黒いスーツに派手なネクタイと普段に比べれば地味な装いだ。どうやら仕事から直接ここに戻ってきたようだった。
「あれこれお世話になりましたしご迷惑をおかけしました。またよろしくお願いします」
「おお、大変だったぞ、お前が行く時も、帰ってくるって話題になった時もな。帰る前に取材なんて受けるからあんな事になるんだ」
「あれは向こうの指示でしたから。日本向けのPRのためには日本のTV局の仕事も請けろと」
「そりゃ構わねえがな、ただそのせいでもうこの先の仕事はだいぶ詰まり始めてるぞ」

蓮は小さく笑うと頷いた。
「どこからも声がかからないよりはよっぽどいいです」
「だが今週来週はまだお前はうちの俳優じゃない。うまく切り替えろよ」
「はい、分かっています」
ローリィがテーブルの上の細かい装飾がされた箱から1本の太い葉巻を取り出すと、ドアのところに控えていた従者が音もなく近寄ってライターの火をつけた。ローリィは葉巻をライターにかざすと一つ頷き、それを見た従者は静かにドアから退出する。

「で、成果は出たんだな。ちゃんと"自分"と向き合えたのか?」
「…ぎりぎり及第点、と言ったところでしょうか」
「は、お前は相変わらず自分に厳しいな。あの監督に『思い残す事はない』と言わせたんだ。十分だろう」
「おかげで、清算は終わったと思えています。あとは前を向いて行かれそうですが…」
「なんだ、歯切れが悪いな」
ローリィはやや下向き加減の蓮を見つめると葉巻の煙を大きく吸い込んだ。少し溜めてからゆっくり青白い煙を吐き出すと、ぼそりと呟くように言う。

「過去は乗り越えた…それでも浮かねぇ顔ってことは、未来に不安があるのか」
蓮は視線を上げるとローリィの顔を見る。何かを言いたげな表情をしばらく見つめ、それから視線を外して少しだけ首を傾げた。
「どうなんでしょうね、ただ久しぶりに日本に帰ってきて……取り残された気分になっているだけかもしれません」


社長室を出た蓮はその足で俳優セクションに向かった。
デスクに座る面々は大体が知った顔だが、見たことのない人たちも混ざる。3年以上も空いてるから仕方がないな、と蓮がレイアウトの変わったオフィスを眺めていると、後ろから少し弾んだ大きな声がかかった。
「蓮!やっぱり来てたな、お帰り!」
振り向けばそこにあるのは担当マネージャーだった社の満面の笑みだ。
よく見ればその顔は前に見たときより少し年季を重ねているような気もするが、覚えていたそのままの笑顔にどこかホッとする。

「長らく留守にしてご迷惑をおかけしました」
「ホントだよお前、連絡もよこさないで薄情な」
「すみません」
社は目を細めてぶちりと言うとまた満面の笑みに戻った。

「まあでも元気そうだし全然変わってないよな!映画見た時には、筋肉つきすぎて戻ってきてからの仕事どうすんのかと思ったけどさ!」
「撮影終わってから落としましたからね…まだ元通りではないですが」
「そうか?ああでもまたよろしくな!再来週から早速働いてもらうからな!まあ最初は映画の宣伝がらみの仕事が残るけど、もうドラマの話もたくさん来てて嬉しい悲鳴だよ」
笑顔でばしばしと背中を叩いてくる社に、蓮は少し驚いたような表情になる。

「…俺のマネージャー、また社さんに担当していただけるんですか?」
途端に社も驚き顔になり、それがやや拗ねたようなものに変わった。
「何だよお前、変えてもらったほうがよかったのか?」
「いえ違います、そういう意味ではないですよ。でも社長に社さんは最上さんと琴南さんのマネージャーをされてるって…」
「お前がいない間の期間限定だよ。もともとあの2人にはマネージャーついてないし、その割には仕事も増えてマネージメントが大変で。だけど頑なに2人とも卒業しないからなあ、正式なマネージャーつけられないんだ」
「卒業…?」
「もう忘れちゃったのか、あの2人はラブミー部じゃないか」

蓮は社の顔をまじまじと見つめた。社も無言でそんな蓮を見つめ返す。
「なぜまだ…?」
「そんなの、本人に直接聞いてくれよ」
社はやや冷たく言い放つと「打ち合わせだから」とその場を後にした。

残された蓮は去っていく後ろ姿を無表情で見つめながらも、自分の心が動揺で波立つのを自覚したのだった。


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コメントコメント


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こちらも面白そうなお話しですね!

遅い時間に失礼します。早速新しいお話を読んでワクワクしてしまいました。まだ再会していないのにすでに頭の中に妄想が広がってしまいました。一旦別れて五年後、ということはちょっと大人の二人の世界が展開していくのかな、と思っています。でも、ぞうはな様のお話なら、泥沼にはならないだろうと安心していられます。続きが楽しみです。どうもありがとうございました。

genki | URL | 2015/05/15 (Fri) 02:14 [編集]


楽しみにしてます!

一通りすべてのお話を読み終わってしまい、寂しいなぁ…と思ってたら、トップページを見たら新作が!!しかも、お題内容も素敵です!敦賀さんのポストカードチョイスって、きっとビューリホーなデザインの選んでそうです~♪ここからくっついていく過程が今からすごく楽しみです!更新楽しみにしてます!

紗姫 | URL | 2015/05/16 (Sat) 21:28 [編集]


Re: こちらも面白そうなお話しですね!

> genki様

コメントありがとうございます。
お返事大変遅くなりましたー!

5年は辛かったので実はお話は3年と少し、というところで進んでいきます。
さてどんな話になるのか、ご期待に沿えますか、不安ですがよろしくお願いいたしますー。

ぞうはな | URL | 2015/05/18 (Mon) 07:10 [編集]


Re: 楽しみにしてます!

> 紗姫様

コメントありがとうございます!
全部読んでいただいて嬉しいです~。
敦賀さん、センスよさそうだから何気ないポストカードチョイスもきっと洗練されてるんでしょうね。
さてすんなりいくかどうか、お付き合いいただければ嬉しいです。

ぞうはな | URL | 2015/05/18 (Mon) 07:11 [編集]