SkipSkip Box

きみと恋をする方法 (30)

こんばんは!ぞうはなです。

予想より長くなったこのお話も次で終わります~。そして、次の更新はGW空けてからになります!





ど、どうしよう…いつもよりなんか緊張って言うか、ドキドキするー!

暗い夜道を数分歩けばキョーコが住むアパートへと着いてしまうのだが、道中キョーコは動揺を隠すのに精一杯だった。久遠との関係は何も変わっていないはずなのに、自覚をしたらこれほどまでに気持ちが違うものなのか。穏やかな表情であれこれ話をしてくれる先輩は幸いにもキョーコの変化には気がついていないように見える。

アパートの前にたどり着くとキョーコは深々と頭を下げた。
「すみません、こんな遅い時間にありがとうございました」
「ううん、俺が来たかったんだからそんなお礼なんて」
久遠は自転車を両手で支えたままさらりと返事をする。
キョーコは暗がりの中街灯に照らされた久遠の顔をしばし見つめると思い切って口を開いた。
「…でもあの、会えて嬉しかったんです。だからありがとうございます」

久遠が作った表情は少し驚いたようなものに見えた。久遠は黙って自転車のスタンドを立てると自転車から手を離し、真っ直ぐにキョーコと向き合う。
「キョーコ。テスト休み中に1日、時間をもらってもいいかな」
「え?は、はい!大丈夫、ですけど…」
「海に行かない?」
「海ですか?」
季節は確かに7月だけどでも海って言ったら、と、キョーコの声に含まれた戸惑いは正確に久遠に伝わったらしく、久遠はくすりと笑った。
「泳ぎに行くんじゃなくて、一緒に遠出したいなと思って。海を眺めにいかない?」
ああ、そういうことか、とキョーコは胸をなでおろしつつも少し警戒してしまったことを恥ずかしく思いながら返事をする。
「だ、大丈夫です、そのあの、はい…」
「よかった。体育館が使えない日があって…部活が出来ないから、1日空けられるんだ。なかなか一緒に出かけられないからね」
「そう…ですね」
「もちろん、泳ぎたければ水着を持って行ってもいいんだけど」
「いいいいいえ!あのその、眺めるだけで!!」

慌てふためくキョーコに、久遠はくすくすと笑ってすぐにキョーコをなだめる。
「大丈夫、冗談だよ。じゃあ日程決めよう。楽しみにしてる」
笑いかけた久遠に、キョーコはまた胸がきゅうっとなるのを覚えた。
「私も本当にすごく楽しみです!テスト勉強する励みになりそうです!」

満面の笑顔で言い終えてから、あれ?とキョーコは思った。久遠が笑顔を引っ込めて真顔で自分を見つめたまま動かなくなったのだ。

何かおかしなことを言ったかな?とキョーコは焦り久遠の様子を伺うが、久遠はやがてゆっくりと腕を上げてキョーコの頬をその大きい手で包み込んだ。

金縛りにあったようにキョーコは動けない。久遠は相変わらず真剣な表情で自分を見つめていて、何か話さなくちゃと思うものの何を言っていいのかも分からず黙って久遠の行動を見守るしかない。

そうこうしている内に久遠が少し体をかがめ、キョーコの顔に影が落ちた。金縛りは相変わらず解けず、近づいてくる久遠の顔を見るのも心臓が破裂しそうで思わず目を閉じる。
キョーコの唇に柔らかいものがそっと触れ、一度離れたかと思ったらもう一度、今度は少しだけ強く唇へと感触が落ちてくる。

ここここ、これって…?

恐々と目を開くと、すぐそばから自分を覗き込む久遠の顔が視界いっぱいに見えてキョーコはさらに硬直した。
「…ごめん、嫌だった?」
小声で聞かれてようやく、キョーコの金縛りは解けた。まだ触れられたままの頬が熱くてその熱が久遠の手の平に伝わっているのではないかとキョーコはそんな事を考えてしまう。
「いえ!…びびび、びっくりしましたけど………嫌じゃ…ないです」
ほう、と小さいため息が久遠の唇から漏れる。
「よかった…キョーコがすごく可愛くて…ごめんね、まだ君の気持ちが聞けるまでは我慢するつもりだったのにできなかった」

か、かわいい……!??それにがが、我慢ってなんですか!?

心の中で反射的に聞き返す。
キョーコは激しいパニックに陥っていた。しかし混乱の渦の中でも、久遠が自分に対してキスしたいと思ってくれているということが堪えようもないほど嬉しいことは確かだ。された事はさっきの尚と同じはずなのに、相手が違えばこうも受け止め方が違うものか。

「でも本当に嫌じゃない?我慢しなくていいんだ」
「嫌じゃないです、だってあいつとは全然違って…」
キョーコはふわふわとした気持ちの中で、ついうっかりポロリとこぼしてしまった。

「あいつ?」
久遠の口調が少しだけ変わった気がする。キョーコは自分の失言に気づいて背中に冷たいものが伝うのを認識した。
「君が言うあいつって…あいつだよね。キスされたことあるの?」
「いえその!キスというか、そんなんじゃなくて!」
「いつ?」
「え?」
「彼は君のことをそういう対象としてみてなかったって言ってたのに、いつそんなことされたの?」

質問は段々と尋問になる。キョーコは久遠のプレッシャーに耐えられず、素直に答えることしか出来なかった。
「今日……さっき…です。帰ろうとしたときにたまたま会って」
「無理やり?」
「無理やりと言うか、いきなりされたので…で、でも!避けたのでちょっとかすっただけで…!」
キョーコの弁解は途中で遮られた。久遠が両手でキョーコの顔を包むと、再び口づけたのだ。先ほどのような触れるキスではなく、深く長いキスにキョーコは息が出来ずクラクラと目を回す。

「ダメだよ…俺以外の奴にそんなことさせないで」
「は……」
まだ目を回しているキョーコの体を久遠はしっかりと抱きしめた。そして耳元で言い聞かせるように囁く。
「俺とのキスが嫌じゃないなら、キスは俺とだけにして」
「し、しません、他の人となんて!」
「ほんとに?」
「はい」
「…不破君とも?」
「冗談じゃないです、二度と!二度とありえませんから!」

久遠はゆっくりとキョーコの体を離すと正面からキョーコの顔を見た。
「俺とは、いい?」
「え……」
キョーコは目を真ん丸く見開いて久遠を見た。それから少し目を潤ませてコクリ、と頷く。その瞬間また力強く抱きしめられてキョーコは小さく悲鳴を上げた。
「ああもう…好きだ」
「は……」
耳に言葉がこびりつく。もう心臓が暴れまわって下手すれば酷使しすぎで止まってしまいそうだ。

「君の青春を取り戻す手伝いなんて言って、嘘ばかりだな」
「へ?嘘って??だって私、たくさんお手伝いしてもらってます」
唐突に言われた言葉にキョーコはきょとんと聞き返した。
「だって楽しい思いをしてるのは俺の方だ。君がそばにいてくれるおかげで今がすごく楽しい」
「…そう言って…そう言ってもらえると、私もすごく嬉しいです。だって私、先輩がいなかったらつまらない学校生活だったかも…」
「俺も同じ」
キョーコはドキドキしながらそっと久遠の背中に腕を回した。一方的に抱きしめられるよりもそうした方が、自分の気持ちが伝えられるような気がしたから。

「好き?」
しばらく無言で抱き合った後、久遠は呟くように聞く。
「え?」
「俺のこと、好きになってくれる?」
「好きになると言うか………」
キョーコは言葉を切った。自分を抱きしめている久遠の腕がぴくりと動いた気がする。
言葉にするのは恥ずかしいが、ここまでずっと、久遠は自分にちゃんと言葉や行動で伝えてきてくれている。その姿を見ていたからこそ、自分の気持ちがはっきりと認識できたのだと思って、キョーコはごくりとつばを飲み込み口を開いた。

「もう好きになってます。きっともっと前から」
「…ありがとう」
「何でお礼なんですか」
「え?…おかしいかな」
「おかしいですよ」
「でも嬉しいから」
「私も嬉しいです…ありがとうございます」
「お礼はおかしいんでしょ?」
「だって」

「ふふ、キョーコは可愛いね」
「んなっ…んん…ちょ、せんぱ…んん!」
「しゃべるとキスしにくいよ」
「な、何言ってるんですか」

ぱたたたた、と音を立てて通りすぎる原付バイクの音とヘッドライトの光に、先に現実に戻ったのはキョーコだったが、久遠の腕から解放されるまではしばらくかかったのだった。


関連記事

PageTop
 

コメントコメント


管理者にだけ表示を許可する
 

素敵なお話ですね~

こんにちは。可愛らしい、恋物語…素敵なお話ですね!と同時に春から暑い初夏に向かう空が熱を帯びたような、そんなエピソードにワクワクしてしまいました。どうもありがとうございました。

genki | URL | 2015/05/02 (Sat) 17:41 [編集]


Re: 素敵なお話ですね~

> genki様

コメントありがとうございます!
春からどんどんと暖かく、暑くなっていく時期は恋も盛り上がるかもしれませんよね!!
とはいえ、久遠君はキョコさんがいれば万年春なのかも。

なんて、実生活はそんなワクワクとは無縁なぞうはなでしたが…

ぞうはな | URL | 2015/05/06 (Wed) 20:21 [編集]