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きみと恋をする方法 (28)


こんばんは!ぞうはなです。

やっと更新!言い訳は、言い訳はするまいーー。
推敲おざなりでごめんなさーい。




「結局まるめこまれたのね」
さらりと言われたので、何の事だかキョーコには分からなかった。思わず親友の無表情な顔を見つめるが、相手はキョーコが分からない顔をしているのが分からない、と言う風に少しだけ眉をひそめる。

お昼休みの教室。
周りはざわざわと騒がしく、キョーコと奏江の会話に注意を向けるものはいない。

「何の話?」
聞くのが怖かったが、正直にキョーコは尋ねた。しかし奏江はその問いを予想していたようで、やれやれ、と呆れ顔でため息をつく。それから先ほどの発言と同じ何気ない調子で答えた。
「生徒会の"副会長"先輩とあんたのことよ」

「え」と一言発したキョーコはそのまま静止し、代わりに耳と頬を真っ赤に染める。
「もしかして、その…気づいてた…?」
そろりと聞かれて奏江は吹き出しそうになった。むしろ気づかない方法を教えてほしいと思う。
「あんたねえ…隠してるつもりだったの?」
「だって」
「まあいいけどね。彼氏の方は見せびらかしたいみたいよ、それも気がついてないの?」
「でもその、内緒って…」
「はいはい」

キョーコは一応きょろりと周りを見回し誰も話を聞いていないことを確かめてから少し声をひそめた。
「それに、彼氏じゃないもの」
「なんで?付き合ってるんでしょ?」
「付き合ってる…というか、んーと、そうじゃなくて、学校以外でも遊びに行こうって」
「…ふうん?」

心底呆れた、という目で見られるとキョーコはいたたまれなくなり、必死に言葉を探す。
「その、生徒会の先輩後輩ってだけじゃなくてていう意味で別にそう言う…」
「何よ、もしかしてあっちもあんたに対して意思表示してないわけ?」
「意思表示?」
「付き合ってほしいとかそういう事よ」
「あ………」
キョーコの頬の赤みが一段増した。ついでに首のあたりも赤くなる。
「ああ、それはちゃんと言われたのね。…なんでそれで付き合ってないってことになるの?」
「その……」
「ああいいわ、なんとなく分かった。あんたがはっきり返事しなかったのね。それで、『じゃあ一緒に遊びに行くだけでいいから』とかなんとか言われたんでしょ?」

キョーコは目をぱちくりとしばたかせた。「どうして分かるの、どこかで見てたの?」と顔に書いてある。
「やっぱり丸め込まれてるんじゃないの」
「丸め込まれてるわけじゃなくて…!」
「じゃああんたは先輩のことどう思ってるの?」
「どうって…」
キョーコは言葉に窮した。

生徒会室で突然の(とキョーコ自身は思っている)告白を久遠から受けてから一週間以上が経った。
生徒会の活動もあるし、そろそろテスト期間にも入るし、久遠は部活で忙しい。学校以外でも遊びに、と言われていたが、実際には週末、久遠の部活終わりに少し会ってお茶を飲みながら話をしたくらいで、それほど学校外では会っていない。


それでも…夏休みになったら遊びに行こうって言われたのよね。


久遠はあの告白以来、本当にキョーコに甘い笑みをよく見せるようになったと思う。
さすが一時期は外国にいたと納得できるくらい、言葉はストレートだし、態度はもっと積極的だ。不意に触れられて囁かれることにキョーコはうまく対処できずにドキドキしてしまうのだが、自分だけが久遠にそうされることへの妙な優越感がキョーコの心を揺らしてしまう。


でもでも…!

キョーコの心には、まだ恋愛に対して後ろ向きな気持ちがある。
幼馴染に冷たく拒絶された傷は無意識のレベルでずっとキョーコに痛みを与えていた。
大体、尚に「色気のないつまらない女」と思われる自分が、久遠と釣り合うとは到底思えない。うっかりあの甘い笑顔にうっとりしてまた尽くして捨てられたら…。

「好きなら好きって言えばいいのに。喜ぶわよあの人。迷惑なくらいに」

言葉に驚いて顔を上げれば、奏江は呆れ顔で頬杖をついてキョーコを見ている。
「好きならって…」
「違うの?」
「わかん…ない…」
「そう?」

少し困り顔で首をかしげてしまったキョーコに、奏江はふっと笑みを見せた。
「まあいいわよ。これから期末テストだし、どうせあんたは勉強以外のことなんて考える暇ない!なんて言うんでしょ?」
「えっと…うん、テスト期間中は生徒会室の勉強会があるし」
「テスト終わったらすぐ夏休みだし、ちょうどいいじゃない」
「ちょうどいいって?」
「あんた青春を満喫するんでしょ?彼氏がいる夏休みなんてまさに青春そのものよ。一緒にプールでも行ったら喜ぶんじゃないの」
「ちょっと…!モー子さぁん!?」
「何よ間違ってないでしょ」
「でも…!」
真っ赤な顔のキョーコとクールな表情の奏江の言い合いはしばし続いたのだった。


『好き』って言うって言っても……

キョーコは昇降口の柱によっかかり、さらさらと降る雨をぼうっと眺める。
雨が降るとキョーコは電車を使うため、時間が合えば駅まで一緒に帰ろう、と久遠に言われている。この時期はちょうど雨が多く、数回一緒に下校したため周りにあれこれ噂されていることもキョーコは認識していた。

本当に素直に考えれば、自分は久遠に段々と惹かれてきているのだと思う。
笑顔を見れば嬉しいし、触れられればその部分がかあっと熱くなる気がする。この心臓が胸の中で跳ね回ってしまう気持ちは、かつての幼馴染に抱いたものとよく似ている。
けれど最近、それ以上の気持ちが湧いてきそうでキョーコは困っているのだ。

『自分だけを見てくれる』

それは幼馴染には抱いた事のないくすぐったい気持ち。
なにせ尚は自分の事などただの一度も真っ直ぐに見てくれた事はなかったのだ。それが最近になって妙に突っかかってくるのが腹立たしいのだが。
けれど久遠は真っ直ぐにある意味重いほどに自分を見つめてくれる。くだらない自分の話も頷きながら楽しそうに聞いてくれるし、楽しませようとしてくれるのが痛いほど分かる。


甘えたくなっちゃうよね…けど、甘えちゃダメよね…


「甘えたい、頼りたい」。そう思ってしまうのが自分でも不思議だ。尚に対しては決して抱かなかった気持ち。尚の存在を抜きにしたって、今まで自分はずっと自分でしっかりしなくちゃ、と心に喝を入れてきた。


「おまたせ」
むむむぅ、と考え込んでいたキョーコに後ろから声がかけられた。がばっと振り向けば、雨のじっとりとした湿度に負けない爽やかな笑顔がそこにある。
「ごめん、遅くなった」
「いえ、私もさっき来たので」
「ホントに?」
「はい、文化祭の準備が始まったのであれこれ忙しくて」
「ああ、結局どうなった?」
「アイデアいただいたのが皆に受けて、作ることになりました!」

キョーコが所属する手芸部では毎年文化祭に手作りのものを販売している。
その話を聞き、久遠はキョーコが自分に作ってくれたバスケットボールのキーホルダーを、ほかの種類も作って販売したら受けるのではないかと提案したのだ。

「そうか、よかった。けど、お願いした通りにしてくれるかな」
「もともと予算や扱いやすさの関係でフェルトにするしかなかったと思いますけど…でもどうしてそれと同じ生地じゃダメなんですか?」
「ダメに決まってるよ。これはキョーコが俺に作ってくれたものなんだから。同じものを他の人が持つのはヤダ」

「えええっ?」と驚いて目を見開いたキョーコに、久遠は傘を開きながら笑う。
「なんで、当然だよ。これもらえて、本当に嬉しかったんだから」

「またもうそういうことをさらっと言うんですから…」
ぶつぶつと顔を赤くしながら傘を開こうとするキョーコを、久遠は穏やかな笑みで見守りながら待つ。

ああもう本当、敵わないなあ…


雨の中、仲良く並んだ2つの傘は、駅までの道のりを並んで進んでいった。

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