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きみと恋をする方法 (14)


こんばんはー!
さて、なかなか収束しない…続きでーす。




「手芸部?」
「うん」

5月下旬のとある昼休み。
キョーコが『青春を取り戻す』のだと宣言してから1週間ほどが経っていた。

「あぁ、なるほどね、確かにあんた好きそうね」
「特技がお裁縫と料理だけってのが情けないんだけど」
「料理をするような部活はうちの学校にはないか」
「うん」

キョーコは手作りの弁当を机に広げ、奏江は購買で買ったサンドイッチをほおばっている。
「運動部にするかと思ってた。スポーツ測定で短距離速かったじゃない。球技大会でも活躍してたし」
「運動部は…練習も多いし、それになんとなく気が引けて」
「なんで?」
「中等部入学の時に全部断っちゃったから…」

奏江は納得して頷いた。
LME学園の中等部と高等部は敷地が離れているとはいえもちろん関係は深く部活動でも交流がある。中等部から運動部に所属している生徒はほとんどがそのまま高等部でも同じ部活に所属し続け、顔ぶれもあまり変わらないと言う。

「まあいいんじゃないの?あんたがそれでよければ。でも手芸部って何やってるの?」
「名前の通り縫ったり編んだり。あと、アクセサリー作りもするの。それでね、これ!」

キョーコは満面の笑みで小さな小さな紙袋を取り出して奏江に差し出した。奏江が袋を受け取り口を開けると、中からはビーズで作られた立体的な蝶の形のキーホルダーが滑り出てくる。アゲハチョウのような落ち着いた、でも綺麗な色合いだ。
「ちょうど一昨日にビーズアクセ作りをしたからモー子さんにどうかなって思って!アクセサリだと学校ではつけられないし」
「…ありがとう」
奏江は手の平にキーホルダーを乗せて細部をまじまじと眺める。
「よく見るとこれ細かくてすごいわね…売れるんじゃないの?」
「ええっ、そう?ありがとう!」

てへへ、と照れたキョーコだったが、奏江は心底感心していた。
目の前の少女は勉強が出来るだけでなく手先も器用なようだ。毎日自分で作っていると言う弁当を見れば料理の腕も確かだろうし、体育の授業で見る限り、身体能力もかなり高い。

この子…侮れないわよね。
見た目が地味だから誤解されるけど、実はなんだかすごい子なんじゃないの?本人に自覚がないのがまた怖いところだけど。

それでもニコニコと褒められた事を喜ぶキョーコはなんだか可愛くて、奏江はその場でキーホルダーを自分の財布につけてますますキョーコを喜ばせたのだった。


う~~ん…どうしよう……
やっぱり迷惑よねぇ?
けどでも、お礼はしたいし…かといって押し付けるのも……
勢いで作っちゃったけど、考えてみたらあんまり嬉しいものでもないような…
…やっぱりお礼は別の形にしたほうがいいのかしら?


うろうろうろ、と廊下を行ったり来たりしているのは帰宅の準備が整ったキョーコだ。ぶつぶつと口の中で何かを呟きながら先ほどからずっと廊下を無駄に往復している。
キョーコがいる廊下の数十メートル先には生徒会室があり、あと数メートルと言うところまで近づく事はできるのだが、バリヤーが張られているかのごとく、キョーコはその先戸口にたどり着くまでに至らない。


大体そうよ、親切にしてくれただけなのに下級生から変に関わられても迷惑よね。
ただでさえ、いつもあの人の周りには人がいっぱいで…


その割には自分に話しかけてくるときはいつも1人だな、などともキョーコは思うが、またくるりと方向転換して歩きながらぶつぶつと考え込む。しかし、キョーコは十何回目かの折り返しでぴたりと足を止めた。

そうね、待ってたり押しかけたりしても迷惑だから、そう!
偶然会えたら、それで偶然そんな話になったらさりげなく渡せばいいのよ。そうすれば受け取ってもらえなくても気にならないし…
って、私受け取ってもらえるかどうか気にしてるの?
いやいや、そんな事ないわよ。よし、そうと決まれば帰りましょう!今日は生徒会室にいるって言うし、会わないで帰れるわよ!


「あれ、最上さん?」
決意を固めたところで声をかけられてキョーコは飛びあがった。
「は、はい!」
「生徒会室に用事があった?」
「い、いえ!た、たまたま……」

笑顔で話しかけてくる久遠に、キョーコは心の中で自分の決断の遅さを呪った。大体ここは生徒会室と専科の教室と保健室しかないのだから、こんなところをたまたま通るわけもない。
早く帰ればよかった、とキョーコは視線をうろつかせながらその場をやり過ごそうとぎこちない笑顔を作る。

「…そう?でも生徒会室はもっと気軽に来てもらってもいいんだよ?」
「え?でも…」
「この間も言ったけど、普段どういう活動してるのか知ってもらいたいからね」
「はい…」

そうよほら、先輩は会計の後継を探してるだけだし。
私が変に意識したらなおさら先輩に迷惑だわ。

よく分からない心のもやもやを無理やり押さえ込んだキョーコに、久遠が話題を転換させた。
「そういえば部活ってなにか考えた?」
「はひゃっ?」
妙な返事をしてしまい、キョーコは恥ずかしさに頬を染める。
「は、はい!あの!先週見学に行って…その、手芸部に入りました」
「手芸部?ああそうなんだ」
「はい!それでその…ありがとうございました!」
「え、何が?」
深々と頭を下げたキョーコに、久遠はきょとんとした顔で聞き返す。
「部活動紹介の冊子をくださったので、しっかり検討することができました」

キョーコの説明に、ああそんなこと、と久遠は笑うと頭をかいた。
「本当はまだ決めかねてたら色々説明しようと思ってたんだけど。決められてよかったよ。最上さんは手芸が好きなの?」
「はい…それくらいしか出来る事なくて」
「いや、俺はまったく苦手だからすごく尊敬するよ。今度作品を見せてもらいたいな」

柔らかく笑った久遠の顔をしばし見つめて、キョーコはごくりとつばを飲み込んだ。
「あの、それで…お世話になったお礼にってこれを作ってみたんですけど」
ごそごそとカバンを探ったキョーコの手には綺麗にラッピングされた小さな包みが乗っている。
「か、かえってご迷惑かもしれないんですけど…」

差し出された包みを受け取ると、久遠は尋ねた。
「ありがとう。なんだろう、開けていい?」
「だ、ダメです…あ、あとで、後でこっそり開けてください!それで、不要だったら捨ててください!」
「え?」
「で、では!失礼します!!」
キョーコはくるりと背中を向けると脱兎のごとく逃げ出した。あまりの逃げ足の速さに久遠は引き止めることも出来ず中途半端に上げかけた手をじっと見つめる。

「逃げられたな…」
久遠はぼそりと呟くと複雑な心境で苦笑を浮かべ、包みを手に持ったまま生徒会室のドアをがらりと開けた。


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