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きみと恋をする方法 (11)


こんばんはー!ぞうはなです。
気がつけば今週も後半になってしまいましたー。
言い訳は置いておいて、とりあえず続きー!





「何が言いたいのよ?」
声を冷静に抑える事すらもはや難しい。キョーコはぐらぐらと煮えたぎるマグマを胸に無理やり押し殺した声で尋ねた。

「お前みたいに地味な人生送ってる奴はちょっとでもチヤホヤされたらバカみたいに浮かれるんだろ?だから俺がちゃんと現実見せてやるって言ってんだよ」
「現実?余計なお世話よ、私は浮かれてなんてないわ」
「どーだか…今日もあの金髪野郎の試合見てたじゃねーか。ばっかじゃねーの、お前」
「先輩の試合を見ることの何がバカだって言うの?大体その言い方、先輩に対して失礼よ」
「金髪野郎がなんてお前をそそのかしたか知らねえけどな、真に受けてあいつがお前に気があるって思ってんだろ?」
「はあ?あんたこそバカじゃないの?ヒズリ先輩は役員の話をしただけよ。なんでそういうくだらない話になる訳?」
ぎろりと睨んだキョーコに、尚は内心一瞬だけたじろいだ。しかしそれは表には出さずにキョーコを睨み返す。

「じゃあお前、ちゃんと断れよ。生徒会役員なんてとても務まりませんってな」

ごごごごごごごご。

「っっとにうるさいわね、このバカショー……」
キョーコは握りこぶしをぎゅうっと握りしめてぼそりと呟くように言った。
「あん?」
当然尚の耳にはキョーコの声は届かず尚は面倒くさそうに聞き返す。
そのバカにしたように尚の顔を目にし、キョーコのマグマは音を立てて押し寄せるとついに火口から激しく噴き出した。

「私の行動ををあんたに指図されたくもないわよ!」
「自分で判断できねーんだから俺がしてやるって言ってんだよ!」
「冗談じゃないわよ、あんたなんかの判断これっぽっちも必要としてない!」
「お前やっぱり分かってねえじゃねえか!地味なくせに立候補なんかして、落ちてみっともねえのはてめえなんだよ」
「それこそ放っておきなさいよ!あんたに何の影響もないでしょ!大体ずっと地味な人生送ってんのは誰のせいだと……!!!」

恐るべき大声で早口でやりとりされていた2人の会話がぴたりと止まる。
キョーコは先ほどまで浮かべていた怒りを引っ込めると、少し青ざめたような絶望的な表情で黙り込んでしまった。前を見ているようだが尚はキョーコの瞳が自分を見ていない事に気がつきやや戸惑う。


違う……違うわ。


確かに自分は、昔から尚の後ろにくっついて、尚だけを見て生きてきた。
尚や尚の両親に気に入られる事、褒められる事、それが行動の一番の原動力だった。
おかげで小学生の頃から旅館で働きづめで、友達との遊びや部活、子供らしい生活など自分とは違う世界のものだと思っていた。

ショータローだけのせいじゃ…ないよね……

確かに所有物のように、子分のように、自分をこき使ってきたのは尚だ。
しかしおそらく、そうさせたのはキョーコの行動。どちらかといえばそっちが先なのだ。尚が全てだったのは自分。けれど尚にとっては自分などほんの小さな存在なのだ。


なんだ私……ショータローの存在をなくしたら…何もないんだ。


「は、なんだよ。ようやくお前自分のバカさ加減に気がついたってのか?」
「……」

でもこいつにだけは言われたくないのよ!!

キョーコは再びぎろりと尚を睨みつけた。
確かに自分はバカだったかもしれない。けれどこんな人の気持ちをひとつも理解できないような男に上からバカにされるのだけは我慢がならないのだ。

「あんたには何も言われたくないわ。大体、学校でこうやって話してると地味で色気もない女と噂されるわよ。いいの?」
「ああそうだな、お前なんかと噂になるのは俺のプライドがゆるさねえ…って言っても不似合いすぎて噂なんて立たねえだろうけどな」

せせら笑うと尚は階段を下って去っていく。その後姿を見送って大きくため息をついたところで階段の上から下りてくる足音が聞こえてきて、キョーコは少し首をすくめて下を向いた。


やだ…こんな言い合い、誰かに見られた?

「最上さん」
下りてきた足音の持ち主から予想外に話しかけられて、キョーコは「ひゃあいっ?」と奇妙な声を上げて飛び上がった。顔を上げればそこには心配そうに自分を見る金髪の先輩の姿がある。

「ヒ…ヒズリ先輩!なんでこんなところに?」
この階段の上には1年生の教室と各教科の講義室しかない。2年生である久遠がここにいることにキョーコは驚いていた。
「だから、いつになったら正しく名前を呼んでくれるのかな?」
「す、すみません」

『ヒズリ先輩』だって間違いではないはずだがキョーコは反論はできずに素直に頭を下げる。久遠はキョーコの謝罪にきれいな笑顔を作るとさらりと驚く事を言った。
「君を探してたんだ」
「え、私をですか?」
「うん。応援してくれたお礼を言いたくて」

「は?」とキョーコは口を開けてしまった。
昨日直接お願いされたので、キョーコは今日のサッカーの準決勝と決勝、律儀にグラウンドまで足を運んでいた。
球技大会実行委員としての仕事もあったのでそれも兼ねて、と心の中で言い訳しながらも、前日と同じように活躍するその姿を少しドキドキするような気持ちで見守った。もっとも周りの声援がすごかったことによる気後れもあり、応援は心の中にとどめたのだが。

けれど自分はピッチに入りそうなほど熱狂する他の女子生徒からは隠れるように後ろの方にいたつもりだ。そして試合終了と同時に委員会の仕事に戻るため、その場を離れたはずだ。
なのになぜ、この目の前の先輩は自分があの場にいたことを知っているのだろうか。

「おかげで試合頑張れたよ。残念ながら優勝はできなかったけど」
「残念でしたけど…先輩大活躍でしたね」
「そうかな?」
「ええ。だって決勝では2人くらいがべったり先輩のマークについてました」
「ほんとにちゃんと見てくれてたんだね。ありがとう」
「いえそんな、お礼を言われる事ではないですから!その、応援してほしいって頼まれたんですし、当たり前です!」

久遠の碧い瞳が少し色を変え、すうと目が細められた。
「頼まれたから、義務で来てくれたの?」
「え…?いえ、義務と言うかその…」
「そういえば昨日の試合の時は誰を応援してたのかな」
「えっ?えっ?いえ、誰という訳でも…」

なんだろう…なんか先輩怖い……?
怒ってる?怒ってるのかしら?
えええ、なんで?
顔は怒ってないと…思うんだけど……
いや、やっぱり怒ってる?そうよ、口元は笑ってるけど目が笑ってないのよ!!

キョーコはうっすらと青ざめて一歩足を引いた。しかし久遠はちらりと階段下に目をやり、またすぐキョーコの顔に視線を戻す。
「今ここにいたのは1年生の不破君だよね」

やっぱり見られてたのっ?

どきりとしつつもキョーコは久遠の凝視に負ける形で頷いた。
「は、はい、そうです」
「昨日君が見てくれた試合は不破君のクラスとの対戦だったのかな。彼を応援しに来てた?」
「違いますっ!あんな奴の応援なんてする訳ありません!」
「あんな奴ね……さっきもすごい勢いで言い合っていたみたいだけど君と彼は付き合ってるの?」
「いいえ、付き合ってなんていません!!」
「それにしては親しげだね」

どこをどうみたら先ほどの怒鳴り合いが『親しげ』などと形容できるのか。
久遠の真意は分からないがただ一つ、キョーコには確信できたことがあった。
自分の何がそうさせたのかは分からないが、目の前の温厚な性格のはずの美貌の先輩は、確実に怒りを抱えていた。


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コメントコメント


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面白いです

こんにちは。お話、とても面白いですね♪学校の、広くて光と影が交差する廊下や階段、心の中に情景でよみがえって来ます。そこに久遠くんみたいな男子生徒がいたら、青春どストライクな思い出でしょう。ぞうはなさまの丁寧なお話し運びが学校の空気感まで甦らせるようです。次回も楽しみにしています。ありがとうございました。

genki | URL | 2015/01/16 (Fri) 15:56 [編集]


Re: 面白いです

> genki様

コメントありがとうございます!
ぞうはなの高校生活にも久遠君みたいな先輩がいたらなーなんて、思います。
もちろんいなかったけど、ぞうはな自身もキョコさんみたいな女の子ではなかったので仕方がないですね~。
高校の学校生活の雰囲気、感じていただけたなら嬉しいです!薄れかけてる記憶を呼び起こしながらやっていますが、多分に叶えられなかった願望が…?

ぞうはな | URL | 2015/01/18 (Sun) 00:08 [編集]