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きみと恋をする方法 (2)


こんばんはー。ぞうはなです。
遅い時間になりましたが、なんとか更新!
申し訳ありません、たっくさん拍手コメントいただいてとてもありがたいのですが、お返事は明日改めて!

では2話目です。





「あの…掃除終わりました」
キョーコは教室のドアからそろりと頭を出すと、廊下の窓側の壁にもたれて立っている上級生に声をかけた。
「ああ、ありがとう。ごめんねそんなに時間がかかる話じゃないから」
上級生はにっこりと笑うと教室に入ってきた。奏江はそ知らぬ顔で自分の席に陣取り、クラスメートたちは様子を気にしながら帰り支度をしている。

「俺は2年生の久遠ヒズリです。苗字がヒズリ」
「はあ…」
お名前は存じ上げております、とぼそりと答えたキョーコに久遠はくすくすと笑った。どうやらキョーコの丁寧な言葉遣いが面白かったようだ。
「最上さんは中等部からうちにいるよね?きっと高等部の生徒会についても少しは聞いた事があると思うんだけど」
「生徒会…はい、それほど詳しい訳ではありませんがその、大体の事は」
「うん、それなら話は早い。実は俺、生徒会の会計なんだけど、次期役員として最上さんを推薦したくて」

キョーコは目を丸くしたまま久遠の提案を一度頭の中で反芻した。
「次期役員?誰をですか」
「だから、最上さんを」
「は…はああああぁぁぁ???」
急にほとばしった大声に、何事かと廊下を通りがかった生徒が教室を覗き込んだ。


うーーん。

1人で廊下を歩いていた久遠は生徒会室の前でぴたりと立ち止まった。
その形のいい顎に片手の指を添え、何か考え込んでいた久遠は ふう、と1つ息をつくと生徒会室の戸に手をかける。しかし力を入れる前に引き戸はガラリッと力強く開き、瞬間的に久遠は手を引っ込めた。

「おぉ、久遠、ちょうどよかった会えないかと思ったじゃんか」
「どうした貴島君?」
わざとらしく両手を広げた男性生徒に久遠はにこりと笑顔を作りながらも涼しい瞳で冷静に返す。
「どうしたじゃなくってさ。ゴールネットが破れたから緊急的に予算の補填をお願いしたいんだけど?」
「先月もボールが足りないからと緊急的な予算の補填をサッカー部から依頼された気がするけど」
「だってそれ、見事に却下したじゃないか」
「そりゃあ、生徒会の予算に緊急補填用の分なんてないよ」

腰に両手を当ててふんっと鼻息を吐き出した貴島に、蓮は呆れた様に続ける。
「そういう費用は部内でプールするか部費でまかなってほしいと、先月も言ったよ」
「聞いたさ!」
分かってないな、と貴島はがりがり頭をかいた。
「できるならとっくのとうにやってるって。ただでさえ遠征だなんだで金がかかるんだ。これ以上部員に金出せとは言えないだろ?」
久遠はその綺麗な瞳を少し細めたが、にこりと笑って貴島の肩を叩いた。
「それだけ頑張ってれば結果もついてくるだろう。全国大会に出られれば、おのずと予算も増えるよ?」
「お前、それだけは言っちゃいけないだろー?」
貴島はやや渋い顔でぶーぶーと抗議の声を上げる。自分たちの強さや成績はよく分かってはいるのだが人に言われると正直傷つくのだ。
「まあ来年度の予算の話はおいておいて。ネットはとりあえず破れてたって練習に支障はないよね。学校の備品でもあるし、予算内で補修ができないか検討してみるよ」
「お、さすがヒズリ君。頼んだよ」
貴島は満面の笑みを浮かべるとひらひらと手を振って廊下を歩き出した。

「でもなんで部長じゃなくて貴島君がそんな交渉に来るんだ?」
貴島の背中に向かって久遠が問いかけると貴島は少しだけ顔を後ろに向けた。
「もう5月から代替わりするからって。でもまだ3年生引退はしないらしいんだけど」
「なるほどね」

久遠は貴島を見送ると今度こそ生徒会室の戸を開けて中に入った。
生徒会室の中央に置かれた長机では社がなにやらノートを広げて肘をつき、考え事をしている。壁際のパソコンデスクでは書記である2年生の百瀬逸美が作業をしているようだ。

「貴島の奴、しつこかったろ」
「まあ、なんと言われてもないものはないですから」
久遠は椅子を引きながら社に答えた。

「もうちょっと久遠が早く来てくれたら逸美ちゃんが迷惑しなかったんだけどな」
社の言葉に逸美が苦笑気味に振り返った。
「もう慣れちゃったから平気ですけどね。貴島君、なんだかんだ言っても無理は言わないから」
「ああごめん、百瀬さん。ちょっと一年の教室に行ってたから」
「一年の教室?何しに?」
きょとんと聞いた社に、久遠はあきれたような表情を作る。
「次の役員候補、探せといったのは先輩でしたよね」
「ああ、もう動き始めたのか。で、誰?誰を指名するんだ?」
興味津々、といった風に社は身を乗り出してきた。

「いや、まだ…」
久遠の言葉は急に歯切れが悪くなる。
「?」
いつになくはっきりしない久遠に社は首をひねったが、無言で先を促した。
「いえ、まずは本人の意志の確認が大事かと思って話をしに行ったんですよ」
「誰に?」
「1年A組の最上さんです」
「A組の最上さん…あれ、名前聞いた事あるぞ」
「そりゃあるでしょうね。入学式で新入生代表挨拶しましたから」
「ああ、主席入学の子か!」
思いだして社は少し大きな声を出した。あまり印象に残らない、地味な感じのあどけない少女だったことは覚えている。

「先生に少し聞いたんですけど、全教科満遍なくできるようで。性格も真面目で先生たちの信頼は厚かったみたいですよ」
「先生そんな情報流していいのかよ」
「けどまあ、成績はそこまで重要じゃないんですけどね」
社の胡散臭げな表情をさらりと流して久遠は話を続ける。

「俺が見に行ったとき、ちょうど他の人に頼まれて掃除当番を代わってあげているところでした」
「なるほど、責任感とかそういう面でも問題ないってことか」
「それだけじゃ分かりませんし、直接話をしたんですけど」
そこまで言うと、よどみなかった久遠の口がぴたりと止まった。少しだけ、ほんの少しだけ形のいい眉がひそめられ、じっと何かを見るような目つきになる。

「どうしたんだ?久遠」
ついに待ちきれなくなって社が声をかけた。
ああ、と久遠は我に返るとにこりと笑って答える。
「生徒会の役員になる気はないって断られちゃいました」

「ええっ!どうして!?」

大きな声を上げたのは社より逸美の方が早かった。
「そんな成績がいいんだったら、当然進学だよね?役員やって内申点を上げようって思わないのかな?」
「そ、そうそう。大体今まで打診されて嫌がる奴なんて珍しいぞ。なんで嫌なんだ?」
逸美に先を越された社も追随するように久遠に尋ねる。

「なんでも時間が取れないらしくて…」
久遠は自分の前髪をひと束つまんで引っ張りながら言った。

「時間?」
「え、放課後忙しいってこと?部活?」
身を乗り出した2人に口々に尋ねられ、久遠は苦笑して両手を広げた。

「いえ、部活も入る気ないそうです。詳しい事情を聞く前に逃げられちゃったんですけど、やっぱり理由を知りたいですよね」

うんうん、と頷く社と逸美を見て久遠はキョーコの表情を思い出した。

自分が女子生徒ににっこりと微笑みかけて、あんなに怯えるような、警戒するような表情で重心を遠くに移されたのは初めての経験だ。
別に女子全員が自分のことを好きなはず、なんて自惚れた事は考えてはいない。むしろどこからでも熱い目で見られて寄ってこられて辟易すらしているくらいだ。けれど嫌われるようなことをした覚えはまるでない。
それに、説明も聞かずに生徒会の仕事を否定された気もして面白くない。

いつしか久遠の瞳には挑戦的な光が宿っていた。


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コメントコメント


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早いですね〜

もう年末。ほんと1年が早いです(^_^;)
色々と用事が増える時期です、ご無理をなさいませんように。

おとぎ話から雰囲気がガラッと変わりましたね。今はまだ恋というより、挑戦⁈対戦⁈って感じですがこれから
お互い少しづつ惹かれ合うのかなぁ〜とニマニマしながら読ませてもらいました。

ケロ | URL | 2014/11/29 (Sat) 18:18 [編集]


Re: 早いですね〜

> ケロ様

コメントありがとうございます。
本当にあっという間の1年ですよねー。それも年々早くなる。恐ろしいです。

久遠の意識がどう変わるのか、キョコさんがどう対応するのか、おとぎ話とは違う高校生活での2人を楽しんでいただけたらと思います。
って、楽しんでもらえるお話にできるかはーーーー…がんばりまーす!

ぞうはな | URL | 2014/11/30 (Sun) 08:07 [編集]