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きみと恋をする方法 (1)


こんばんは。
少しのご無沙汰となりました、ぞうはなです。

本日は2周年リクエストの新しいお話にはいります!
リクエストをくださったのは小夜子様。
リクエスト内容は「パラレルで久遠キョ、久遠攻め攻め」というものですー。学園で、というご提案いただきましてあれこれ考えた結果、今回は久遠×キョーコということで、ちょろっといつもより遊んでみようかと。

どの辺を遊ぶかと言いますと、実はぞうはなは今までパラレルでも蓮さんとキョコさんの年齢差(4歳差)を原作から崩した事なかったんですよね。で、そこを崩してみようかと。いきなり同じ年とか年逆転ってのも難しそうなので、1年差に縮めてしまいました。
なお、ものすごくざっくりな筋は決めているのですが実はいつも以上に見切り発車のため、先が読めない状態でのスタートとなりまーす。
(でも学習して今回は最初からカテゴリ分けました)

さて、前置き長くなりましたがパラレル学園モノ、目標は軽めのラブコメ。
では参ります。






「新入生代表、最上キョーコ」

講堂の舞台の上で読み上げた原稿用紙をたたみ深々と頭を下げた少女に、拍手が起こった。
ゆっくりと顔を上げた黒髪の少女は緊張に固くなっていた表情を少しだけゆるめ、そそくさと壇上から下りて自分の席へと戻る。その間にも司会の教師の声がプログラムの次の題目を読み上げていた。


講堂の前三分の二は紺色のブレザーで埋め尽くされ、後ろの三分の一は華やかな色が混じる。
4月上旬のこの日、LME学園高等部では入学式が行われていた。
新入生の多くは中等部からの進学者のため周りは顔見知りばかりで私語も見られるが、一部は高等部からこの学校に来た外部進学者で少し緊張気味だ。中等部と高等部の校舎は離れているため、内部進学であっても講堂に入るのがはじめての生徒たちも多かった。

式の後半、新入生の注意は自分たちの後ろに並ぶ上級生に向けられていた。
上級生を代表する生徒会のメンバーが横一列に並び、その後ろに各クラスの代表が並んでいるのだが、中でも異彩を放つ生徒が生徒会メンバーにいたのだ。
中等部でも噂が聞こえていたその人物はしかし、直接見ると相当のインパクトがある。

その生徒は金髪と碧い瞳を持ち、それだけでも相当目立つと言うのに顔の造りも格別だ。
うっとりと見ほれてしまうほどの整った顔は今は無表情で、それがまた何を考えているのかと女子生徒の想像を掻き立ててしまう。更に言えば顔だけではなく紺色の制服に包まれた体躯はすらりと大きく、その脚は合うズボンがあるのかと心配になるほど長い。

新入生たちは中等部にいるときも高等部の行事や上級生の噂をたまに耳にしていたのだが、初めてそれを自分の身に感じてこれから始まる高校生活に希望や不安を抱いていた。

式は滞りなく進み、新入生たちは担任に誘導されて教室へと移動していく。それを見送った上級生たちはばらばらと立ち上がった。

「久遠、生徒会室行くか?」
金髪の男子生徒に声をかけたのは銀縁の眼鏡の男子だ。さらさらとしたストレートの髪を揺らし、勉強ができそうな知的な顔立ちながらもにこりと笑うと少し可愛らしい。身長や派手さの関係で金髪碧眼の男子と並ぶと目立たなくなってしまうが、単体で見れば十分スマートな美男子である。
「はい、印刷しなくちゃいけないプリントがあるので。でも今日は部活もありますからすぐ抜けます」
金髪の男子生徒は頷くと言葉を返す。

「ああ、春の大会があるんだっけ?部活も段々2年生がメインになるもんな」
2人は並んで講堂を出て、生徒会室の方向へと向かう。頭の後ろで手を組んだ眼鏡の男子が横目で金髪を見ながらぼそりと言った。
「一年生も入ってきた事だし、お前も早いところ推薦する相手を探せよ」
「そうですね、分かってますよ」

眼鏡の男子は3年生の社倖一であり、彼は生徒会の副会長を務めている。そして金髪の男子は2年生のヒズリ久遠で、こちらも生徒会で会計を担当していた。

LME学園の高等部はその生徒会活動が活発でかつ自主的なことで知られており、この学校で生徒会役員を勤めたと言う経歴は大学受験でも有利に働くと噂されている。
高等部の体育祭や文化祭は予算の配分からイベント内容まで生徒会が主体となって決定、運営し、予算管理までも教師は監視と助言のみに留まると言うレベルだ。たまに他校の視察を受けると言うので相当のレベルなのだろう。
この自主性の高さは代々生徒たちに受け継がれているもので、上級生が下級生をしっかりと指導していると言う伝統と、そういう校風に憧れ入ってくる生徒たちの意識の高さが合わさって初めて実現しているものと思われる。

しかし、いくら志が高い生徒が集まると言っても必然的に個人的なレベルの差は存在してしまう。
生徒会の役員は選挙によって全校生徒から選ばれるのだが、より有能な生徒で生徒会を引っ張るため、現生徒会役員が候補を自分で探して推薦すると言うことも伝統の1つだった。立候補はいくらでも可能なのだが、役員のお墨付きをもらった候補はそれなりの実力があるはず、ということで選挙では圧倒的に有利なため、役員の推薦を取ろうと頑張る生徒の方が多い。
そして高等部からこの学校に入学した久遠は、社の推薦を受けて会計になったという経緯があった。

「数字に強くて性格がしっかりしてて責任感があればそれで十分だからな」
「それだけの条件でもかなり厳しいと思いますけど」
「まあ慌てる事はないよ。7月の選挙に間に合えばいいんだ。俺も見所のある一年がいたら紹介するって」
「はい、よろしくお願いします」

散り始めた桜が2人の歩く渡り廊下にも花びらを散らし、2人の姿を目撃した女子生徒がうっとりと眺めてしまうほど、それは美しい風景だった。


入学式の翌日から授業が始まり、一週間もすると校内はかなり落ち着いてきていた。
一年生のクラスは外部からの入学もあるためやや手探りの感はあるが、早くもクラスの中にグループができ始めている。

6時間目の終了後、がやがやと騒がしいA組の教室の後方では1人の女子生徒が教科書をとんとんと机でそろえて授業の片づけをしていた。そこへ他の女子生徒が声をかける。
「最上さーん。ごめーん、今日の掃除当番かわってくんない?バイトに間に合わなくて」
「…いいけど……」
女子生徒は一瞬眉をピクリと動かしたが、笑顔を浮かべて立ち上がる。頼んだ生徒は「さんきゅ」と軽く礼を言い、そのまま友人と共に教室から出て行った。廊下に出る際にちらりと笑顔で目線を後ろにやり、小声で「ちょろいね」と囁くがその声は残された女子生徒には届かない。

「あんたもほんと、お人好しね」
「え?何が?」
自分の前の席に座っている少女にため息混じりに言われて、女子生徒たちを見送った少女はきょとりと聞き返す。

2人は両方とも長い黒髪であったが、その印象は全く違った。
掃除当番を押し付けられた少女はその黒髪をきちりと黒いゴムでひとつにまとめ、大きな丸い目の顔はどちらかと言えばあどけない。可愛い系統ではあるものの、飾り気のないその顔は一言で言えば『地味』と言われる類のもの。
対して声をかけた少女の方は長いストレートの髪をおろし、シャープな輪郭と切れ長の目で大人びた印象の美人だ。

「あんたがやる必要ないじゃないのよ。どうせ『変わって』なんて言って、あんたの当番の時に代わりを率先して引き受けたりしないんだろうし」
返ってきた答えに、掃除ロッカーから箒を取りだしたまとめ髪の少女は笑いながら答えた。
「いいのよ別に。ごちゃごちゃ言うよりやっちゃった方が早いし」
「そういうところがお人好しって言うの。昨日だってプリント配るの押しつけられて」
「見てたの?」
「見えたの」

他の掃除当番の生徒ががたがたと机を移動させ始め、掃除が始まる。
ストレートの黒髪の生徒は邪魔にならないように壁際に寄ったが、まだ少し険しい顔で言葉を続けた。
「私は事情は知らないけど、あのグループの女子があんたのことバカにしてるみたいでイライラすんのよ。あんたもへらへら受け入れてるみたいだし」
「へらへらだなんて」と苦笑した少女は床を掃いていた手を止めるとにこりと笑って友人を見た。

「別にいいの。くだらないから気にしてないし。大体やる事が中等部の時からワンパターンだから飽きちゃった」
言われた女子生徒はふうっとため息をつく。
「もーーー。あんたがいいならいいけど」
「うん、ありがと、モー子さん」
「だからっ!その変なあだ名、撤回しなさいよ!」
「だって今も『もー』って言ったじゃない~」
「うるさいわよっ」

会ってさほど間をおかずつけられたあだ名に、"モー子"、いや琴波奏江は納得していなかった。
奏江は他の中学から入試を経てここLME学園に高等部から入学してきた外部進学生だ。対する会話相手、最上キョーコは中等部からの内部進学。
通常ではのほほんと3年間を過ごして高等部に進学した内部進学生より、高い倍率をくぐりぬけて入ってきた外部進学生の方が学力が高いものなのに、入学式に参加してみたら新入生代表の挨拶、つまり入学時の成績トップは内部進学生である最上キョーコで、奏江はかなりびっくりしたのだ。

たまたま同じクラスになって話してみたら、予想に反してキョーコはほわんとしていてやや天然気味。すっかり毒気を抜かれたついでに口癖を捉えられて不名誉なあだ名をつけられてしまった。
しかしどうにも一週間様子を見ているとキョーコは一部の女子生徒からいじめられているようで、しかもキョーコ自身はそれを反発もせずに受け入れているようで他人事ながら腹が立つ。

こうして外部から来てしがらみを知らない奏江は、自分でもあまり意識しない内にキョーコの一番近くにいる事になってしまった。
とはいえ付き合ってみるとキョーコは女子にありがちな周りに迎合して態度を変えるようなこともなく案外芯がありそうなので一緒にいるのは嫌な事ではない。

「掃除中悪いけどちょっといいかな」
話しながらもてきぱきと掃除を進めるキョーコに再度苦言を呈そうと口を開いたところで、奏江の行動は不意にかけられた声に中断させられた。
「?」
奏江とキョーコは同時に顔を上げて声のほうを向いた。そして同時に少し驚いて目を見開く。
いつの間にかそこに立っていたのは上級生だった。それも、とびきり目立つ外見の。男子の。
「君が最上キョーコさん、だよね?」
上級生はキョーコに向かって笑顔で話しかけてきた。
「は、はい!」
キョーコが飛び上がらんばかりに背筋を伸ばしてはっきりと返事をする。しかしその顔にはありありと『なんでこの人がここにいて私が話しかけられるの?』と書いてあった。

「ゴメンね急に。最上さんにちょっと用があって。掃除終わったら10分くらい時間もらえるかな」
「は…?私ですか??」
「うん。…っと、ここにいたら邪魔だね。ゴメン、終わるまで廊下で待ってるから」
そう言い残すと男子生徒はすたすたと廊下に出て行った。驚いて呆然としてしまったのはキョーコと奏江だけではなく、その時点で教室にいた生徒たちも上級生が出て行くのをぽかんと見送ったあと、何事かとちらちらキョーコを見ながらひそひそ話をしているようだ。

「あんた何かやったの?」
「えええええっ?べ、別に何もしてないはず…」
キョーコは本当に心当たりがなかったのだが、周りの無遠慮な視線にさらされて胃がキリキリと痛むのを覚えてしまったのだった。


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コメントコメント


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おおっ

学園モノ!攻め攻め久遠さん、まだ表面上は不通な感じ?
どんな攻め具合が展開されるか楽しみです~♪

霜月さうら | URL | 2014/11/27 (Thu) 02:01 [編集]


楽しそうなお話ですね!

おはようございます。変な時間に失礼します。久しぶりに新しいお話を読んで、とても楽しそうだったのでコメントさせて頂いています。学園もの、4月、はつらつとした久遠くんと春の空気のようなキョーコちゃんにわくわくしました。学校に自分が通っていた頃は、勉強や委員会や試験に、うんざりする事もあったはずなのに、学校が舞台のお話って何故か特別な輝きを感じます。ぞうはなさまのパラレルはいつも夢中になって読んでしまいますので、とっても楽しみです。どうもありがとうございます。

genki | URL | 2014/11/28 (Fri) 06:39 [編集]


Re: おおっ

> 霜月さうら様

さてどこまで攻められるのか!(←自分に言ってます)
まだまだ恋は始まっていませんが、蓮さんではなく久遠なのでちょっといつもとは違う…かな?

ぞうはな | URL | 2014/11/28 (Fri) 22:25 [編集]


Re: 楽しそうなお話ですね!

> genki様

ありがとうございます!
確かに自分も試験だのなんだのと面倒な事も気が重い事も多く、あまり満喫したとはいえない学生生活でしたが、遠ざかってから見ると学校生活っていいですよね。
ご期待に沿えるよう、頑張りますー!

ぞうはな | URL | 2014/11/28 (Fri) 22:28 [編集]