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おぼろづき (6)


こんばんは。ぞうはなです。
…えっと、限界に挑戦な感じです(もう無理)。





「好きだ」
蓮の腕の中で温もりを実感してふわふわする気分を感じ、耳元でうっとりするような甘い声で囁かれたと思ったら、蓮の顔が視界いっぱいになるほど近づいてきてキョーコの唇は塞がれた。この柔らかい感触には覚えがあると思ったものの、事実を認識すると体から力が抜けるほどの羞恥心がキョーコを襲う。

何もできずに固まったままでいるとそっと唇の感触が離れ、眼前の蓮の顔がふにゃりと緩んだ。
「可愛い…」
囁かれて、キョーコの脳天が沸騰する。

何この羞恥プレイは……!!
ど、どうして、なんなの、なにがどうしたらこんなこと…!

しかし蓮はキョーコに考える時間を与えず再びキスしてきた。
ぎゅっと目をつぶってされるがままのキョーコに安心したのかなんなのか、キスは続くし段々と接触の時間は長くなる。
しばらく唇をついばまれた後、柔らかい感触が離れてそのまま時間が経ったのでキョーコはようやくつぶっていた目を恐る恐る開いた。両頬は蓮の手の平に包まれたままだったので予想はしていたが、蓮の顔はすぐ目の前にある。

蓮の顔は横から照らされて普段見るのと違うコントラストで、炎が作る影がその彫りの深さを浮き出させていて妖艶な雰囲気を作り出している。
その表情は炎のせいなのか、キョーコの気のせいなのか、夜の帝王のような凄みも感じられるが、少し困っているようにも見えた。

何かを考えるようにキョーコの顔を見つめたまま黙っている蓮に、キョーコは恐る恐る声をかける。
「つ、敦賀さん…あの……どうなさったんですか……?」
先ほどまでキスを繰り返ししてきた相手に『どうなさったんですか』も何もないものだが、他にかける言葉が見つからなかったのだから仕方がない。しかしキョーコは言ってしまった直後に自分の言葉の意味を深く考えて慌てた。

ど、どうなさったんですかって、まるでキスを止めたのを咎めるような……!
ち、ちちち、違うんです、そうじゃなくて!何か考え込んでるようだからぁ…!

蓮はキョーコの心中を死ってか知らずか呟くように言う。
「君は許してくれるかな」
「は、はい?」
「俺、自分で思ってたよりずっと我慢がきかないみたいだ」
「な、何のお話ですか…??」
「うん……いや。…君が本当に嫌だったやめるから」

だから何を?と口を開きかけた瞬間、キョーコの口はまた塞がれた。先ほどよりもずっとずっと強引に。
比べるのも嫌だが、あの例のアリクイみたいなバカに口の中のチョコレートのかけらを奪い取られたときよりももっと激しいキス。同時に蓮の両手はキョーコの後頭部と背中に回されて逃げることも出来ない。やっと唇が離れて、目を開けようとした瞬間にもう一度ふさがれる。そんなことが繰り返された。

キョーコははじめこそ何が何やら分からなかったが、ようやく自分の状況を理解して、落ち着くことなど出来ないまでも少しだけパニック状態から脱した。きつく蓮の着物を掴んでいた左手から少し力が抜け、『敦賀さんにキスされるなんて…?』とどこか冷静に考え始め、がちがちだった顔面の緊張も少しほどける。
しかしその気持ちの余裕は敏感に蓮に察知されたようだ。蓮はキスを繰り返したままキョーコの体をゆっくりと横たえ、上から覆いかぶさる状態になった。

気がつけば自分は床に仰向けに寝かされていて、せっかく落ち着いてきたキョーコの精神状態は再びパニックに舞い戻る。目をぐるぐるに回したキョーコに、蓮は静かにぽそぽそと話しかけた。
「もし明日追っ手に見つかって斬られて死んだら…このままじゃ俺は死んでも死に切れないかもしれない」
「ふ、不吉なこと言わないでください!」
「だって折角君の気持ちが聞けたのに。キスだけじゃ足りない」
「……!そ、それはどういう」
蓮はぐいと顔をキョーコに近づけた。
「キスだけじゃ足りないんだ。このまま死んだら化けて出るよ」
「な、なんてことを…」
見上げる蓮の顔は完全に夜の帝王に見える。けれどからかう風ではなく真剣な顔だ。その顔を見つめ返していて、キョーコはふと気がついてしまった。眉間に皺を寄せてぼそりと聞いてみた。
「それは、その、足りたら…死んでもいいってことですか」
蓮の表情がふわりと緩む。
「まさか、逆だよ。そこまでしてくれたら絶対死なない。何が何でも生き延びる」

言ってる意味が分かりませんけど!

意味不明な理屈ににキョーコはすかさず心の中で突っ込みを入れる。
「君が本当に嫌なことはしないから…だから、許してくれる?」
その甘えるような言葉と態度は記憶にある。妹にべたべたするカイン兄さんか、呪いを解くキスをせがんだ妖精か。どちらにしてもキョーコは痛いほど分かっている。自分はその甘えに弱いのだ。ドキドキしつつも、ぐらぐらしつつも、胸がきゅんきゅんしてしまう。
しかし蓮の表情とは裏腹に、自分はなんだかとても重要な決断を迫られている気がする。なにせこの体勢はよろしくない。
キョーコは慎重に聞き返した。
「何を許せというんですか」
「…そんなはしたないこと、俺の口から言えないな」
「……!」

言えないようなはしたないことを許可しろとでも?

かあっと顔に熱が集まるが、次の瞬間の蓮の表情はどこからどう見ても夜の魔王だった。
「体で判断して」
言うなり蓮の体が覆いかぶさってきて唇もふさがれて返事が出来ない。抗議もできない。判断ってどうすれば、と思いながらもキョーコは何も言えないまま未知の世界へと足を踏み出すことになったのだった。


囲炉裏の薪はぱちぱちと火の粉を飛ばして燃える。
めらめらと立ち上る炎は生き物のように絶えず形を変え、その炎に照らされる小屋の中のものすべてもその表情を変えるように見えた。
もっともキョーコはそんなことをのんびり感じる余裕などどこにもない。執拗なキスに息も絶え絶えになっている内に気がつけば蓮の手があちこちから着物の中へと忍び込んでくるし、いつのまにか帯は解かれて肌が露わになっているし、もう一ミリもほかの事を考える隙がなくただただ羞恥の真ん中に放り出されている。

それに本人は気がついていないのだ。
揺れる炎に赤く照らされる自分の肢体が目の前の男を煽っていることも、はだけた着物の裾を恥ずかしげにかき寄せる仕草すらそれをさらに増長させていることも。

「だ、だめですって…ば……!」
弱々しく吐き出される抗議の言葉も蓮を止めることはできない。蓮は壮絶な色気をたたえた笑みを浮かべると、そう言ったキョーコに軽く口付けて囁いた。
「大丈夫、力抜いて」
裸の美男子が自分の足の間に体を置いて見下ろしてきているのだ。息が止まりそうなほど緊張してしまって力なんて抜ける訳がない。
「いっ…」
「力抜いて…少し我慢…して」
「つ…るがさぁん」
痛みに思わず声を上げたキョーコを蓮がしっかりと抱きしめる。2人の体は少し汗ばんで、触れる肌は熱くしっとりとしている。

「最上さん…こっちを見て」
キョーコはぎゅうとつぶっていた目をゆっくりと開いた。目に入るのは赤々と照らされた蓮の顔。顔のつくりや首から肩のライン、黒髪は蓮なのに瞳だけが違う色で、キョーコはなにやら不思議な気分になる。
なぜだろうか、余裕でリードされていると思っていたのに、蓮も呼吸は荒く苦しそうな表情に見えた。
「愛してる…」
蓮の鼻の先から汗がぽたりと落ちてきた。蓮はキョーコに覆いかぶさってくると苦しげに息を吐く。自分の耳にかかる蓮の荒い息がキョーコの体の熱も高めてしまう。

敦賀さん…いつもの余裕のある紳士じゃない……
なんか必死と言うか、一所懸命って言うか…

自分に対してそうなったのか?とふと考えると無性にむずむずと嬉しくなってしまう。
それでも蓮の動きと同時に急に痛みがつのってきて、キョーコは必死に声を抑えると蓮の体にすがりついた。


「嫌な事はしないって仰いませんでしたっけ…」
ぶちぶちと不満を口にするキョーコは蓮の腕の中にいる。
2人の逃避行が始まってからキョーコが眠る場所は蓮の腕の中やすぐ隣なのだが、肌と肌が直接触れ合ってるのが昨日までとの違いだ。
「そんなに…嫌だったの?」
「……そうじゃ…ないですけど……私嫌って言いませんでした?」
「嫌だって言葉、聞いた気もするけど、それほど嫌がっていなかったよ」
「……どういう意味ですか」
「体で判断したでしょ」
キョーコは「む~~」と唸るとごそごそと蓮の腕から逃れようとした。しかし動くと2人の体にふわりと掛けられた蓮の着物がずり落ちそうになって慌てて引っ張り上げる。

「敦賀さん、あの、もう着ましょう…」
「もう少し…なんなら今日はこのまま眠ろう」
「だ、ダメですよ!追手が来たらどうするんですか」
「来ないって」
「こ、来なくてもダメです!」
「なんで?」
「なんでって…!落ち着かないじゃないですか!」

仕方ないなあ、と蓮は体を起こし、自分の着物を肩に引っ掛けるとキョーコに背中を向けた。
「少し外で涼んでるよ」
「はい」
キョーコは慌てて体の下に敷かれた自分の着物を引っ張り上げる。

蓮は帯などをざっと拾って戸口まで進んだ。戸に手をかけたまま静かに振り返るとキョーコの丸みを帯びた肩が着物から覗いているのが目に入る。うっかりそのまま眺めたい気分になったが、キョーコにばれたら怒られそうだ。
蓮はまた戸口の方へと顔を戻すと戸を開けて外に出た。

外は炎で温められた室内とはうってかわってひんやりとして湿っぽい。
ふと見上げれば、月は先ほどよりもずっと高く上がり、しかし相変わらずぼんやりとくすんだ光を放っている。

「朧月か……なんだか…あれもこれも夢みたいだな…」

不意に脳裏に蘇るのは赤い炎に照らされたキョーコの顔。切なげな表情に鎖骨の辺りのラインまでもがはっきりと再生されて、蓮は思わずにやけそうになる顔をこすり、ケホケホと浅い咳をしてから少しきつめに帯を締め直したのだった。



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コメントコメント


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うーふーふー♪

にやけ蓮様頂きました!!
良かったねぇ!良かったねぇ!!蓮様っ!!

漸く報われた!
キョーコちゃん恥ずかし過ぎて服を着ちゃいましたが、美味しく頂いて蓮様も大変満足だと思います!!

風月 | URL | 2014/10/02 (Thu) 01:26 [編集]


Re: うーふーふー♪

> 風月様

コメントありがとうございますー!

蓮さん、思わずにやけちゃいましたー!
すっかり強引に押し切った形でしたがキョコさんも本気で嫌とは思っていなかったみたいだし。
いや、もしかして突然過ぎて頭が働いていなかったか…?
蓮さんは大満足ですよね。でも一度味占めちゃうとエスカレートも恐ろしかったりします。

さてだいぶ遊んで長くなりましたが、粛々と続けさせていただきますぅ…

ぞうはな | URL | 2014/10/02 (Thu) 18:17 [編集]