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おぼろづき (1)


こんばんはー!ぞうはなです。
さて、さっそく2周年のリクエストに入ります。

第一弾は風月様からのリクエスト。
細かいストーリーまでいただいたため、ぞうはなはそれをなぞるだけと言う他力本願っぷりです。
細かい筋を事前に知りたい方は2周年記事のコメントをご覧いただくとして(←手抜き。でもその通りいくとは限らないかも)、ストーリーの概要を載せますと、「時代劇の撮影中に戦国時代へタイムスリップしてしまう蓮さんとキョコさん、追手から逃げるうちに…」というものです。

何話になるか現時点で未定ですのでとりあえず (1) としておきます。
ではではどうぞ~~。





「意外と、というか、すごいハマッてるよねぇ、敦賀君」
「そうですか?」
うっとりとその姿を見つめながら話しかけてきた女優に、笑顔で少し首をかしげながら長身俳優は答える。
年末の長時間ドラマの撮影がこの日スタートし、出演者たちは長い時間をかけてヘアメイクや着付けを済ませ、撮影スタジオへと集まってきていた。ドラマの舞台は戦国時代、ということで当然ながら役者たちは皆カツラをかぶり、着物を身に着けている。
俳優 敦賀蓮は武将を演じるので、袴をはいて髪はすべて上げいつもとは違う雰囲気だ。

「敦賀君の顔立ちじゃ和服は似合わないんじゃないかと思ったんだけど、なんでも着こなしちゃんだね」
「いや、そんなことないです。立ち居振る舞いはまだまだおぼつかないですよ」
「またまた~」
なごやかに会話をする蓮の耳に聞きなれた声が微かに入ってきて敏感に反応する。しかし態度には出さないよう、蓮はゆっくりと顔を上げるとスタジオ入り口へと顔を向けた。

「おはようございます!」
朗らかに挨拶を交わしながら入ってきたのはタレント、いや、いまや女優 京子として頭角を現しつつある最上キョーコだ。キョーコは武家の娘を演じるため、長い黒髪のカツラをつけて小袖をまとっている。ぴんと伸びた背中と美しいお辞儀、そして自然ながらも裾の乱れない歩き方は蓮の目から見ても完璧で、蓮は内心感心した。
「おはようございます」
「おはよう、最上さん。さすが、着物がしっくり来るね」
蓮に気がついたキョーコは蓮と共演女優に挨拶をするために近寄ってきた。言葉を交わすと蓮はさらりと賛辞を述べる。

「ありがとうございます。けどなんで、さすがなんですか?」
「いや、前の新開監督の映画の時のことを思い出してね」
「う、あれですか……でも敦賀さんも髪が長いのちょっと不思議ですけど、お似合いですね」
「ねーっ!京子ちゃんもそう思うでしょ?私背が大きくて顔が小さい人は時代劇ダメだと思ってた~」
相変わらず蓮の横にいる女優は興奮気味にまくし立てる。キョーコは改めて蓮の全身を眺めたが、確かに袴姿に違和感はない。
「そうですね…けどきっと、昔の日本にここまで大きい人はいなかったでしょうね」
「うん、俺もそれで今までこういう話が来ないと思ってたんだけど…」
蓮は時代劇への出演は初めてだった。歩き方や座り方、殺陣までみっちり体に叩き込んだが、見た目の違和感だけはどうにもならない。多少なりとも危惧を持って臨んだ衣装合わせだったが、案外しっくりきて本人もホッとしたところだったのだ。

やがて出演者が揃い、リハーサルが始まった。
この日の撮影は武将の館でのシーンのため、板張りの広間や廊下のセットが組まれていた。その中でのリハーサルは順調に進み、一旦の休憩を挟んで本番へと進むこととなった。リハーサル中には置かれていなかった明かりなどの小道具が用意される間、出演者たちはセットから降りる。

一番奥の廊下の方にいたキョーコが立ち上がり壁際を歩いているちょうどその時、キョーコからは見えないセットの裏側では大道具のスタッフが作業を行っていた。
大きな道具箱をどかそうとかがみこみ立ち上がった瞬間、足元を這う太いコードを踏んでスタッフはよろけた。2歩ほど後ろに下がって転びそうになり、咄嗟に後ろにある柱をつかむ。しかしその柱はセットとなっている部屋の壁を支えるためのつっかえ棒で、大の男1人を支えるだけの強度はなく、スタッフは壁と一緒に倒れこむ形となった。

裏から聞こえた「ガツ、ドスン」という大きな音と、その直後に一瞬たわんだ壁にスタジオの全員が振り返った。一番近くに居たキョーコは音は聞こえたものの、何が起こっているかの把握は遅れてしまい、気づけばゆっくりと真横の壁が自分に向かって倒れてきている。
後ずさったものの逃げるには間に合わないタイミング。
咄嗟にキョーコは両腕で頭を抱えてその場にうずくまったが、遠くから大きな声が聞こえた直後に自分の体にのしかかってくる何かを感じた。壁より柔らかい何か。それが何なのかを理解する前に耳元で大音響が響き、キョーコの視界は閉ざされた。



ぎゅっとつぶっていたはずの視界に、チカチカと白い光がたくさん見えたような気がした。
耳鳴りがぐわんぐわんとして頭まで痛い。ほんの一瞬だったような、それともすごく長い時間だったような、どちらかはよく分からないのだが、キョーコは失われていた体の感覚が戻ったように思えて、そろりと目を開けた。目を開けても視界は暗く、キョーコは続いて頭を庇っていた腕を少しだけ動かしてみた。

すると、体にかぶさっていた何かも動いて、ようやくキョーコは自分の上に覆いかぶさっているのがセットではなくて人だという事に気がついた。
「大丈夫?」
かけられた声に顔を上げると、蓮の心配そうな顔が自分を上から覗き込んでいる。
もしかして敦賀さんが庇ってくれた?とキョーコは思ったのだが、思考は蓮の周囲に見える風景で一気にどこかに吹き飛んだ。
「えっ!?ここ、どこ…?」

蓮も顔を上げて辺りを見回した。
2人は確かに撮影スタジオのセットの中にいたはずだ。見上げれば高い高い天井とそこからさがる照明器具、周りは広い空間があるものの壁に囲われ…。
しかしどうしたことだろうか、キョーコと蓮の周りには壁などない。周りは笹の茂みに覆われ、高い木が生い茂る薄暗い林の中だ。空は薄暗く少しだけ赤みがかかっているので、時刻は夕刻のように思える。風ががさがさと笹の葉を揺らし、感じる土の匂いも間違いなくここがスタジオではないことを示している。

「どこに来てしまったんだろうね…怪我はない?」
パニックに襲われていたキョーコは蓮の落ち着いた声に少し自分を取り戻した。自分ひとりでこんなところに放り出されたら心細さに泣いてしまったかもしれないが、なぜか蓮がいてくれるだけで何とかなるような気がする。
「あ、すみません、大丈夫です!あの、助けてくださったんですね…ありがとうございます。こんな、ごめんなさい…」
「いや、君が謝ることじゃないし、怪我がないならそれでいいんだ。ちょっと向こうが開けているようだね。行ってみようか」
蓮が出した手を素直に取り、キョーコはがさがさと笹をかき分けて歩いた。足袋のみで踏みしめる地面はぼこぼこと固い。ここがどこなのか分からないし、撮影は午前中に始まったはずなのになぜ夕方なのかも理解が出来ない。

蓮は茂みの端で立ち止まると呟くような声を出した。
「…なんだ、あの建物は…?」
キョーコは両手を支えられて藪から出ながら尋ねる。
「どうしたんですか?」
「うん、あれを……俺たちはもしかしたら、とんでもないところに来てしまったのかもしれない」
「え?」
蓮の視線を追ってキョーコも少し遠くに見える物に目をやった。
たんぼと畑の向こうに見えるのは、集落か。しかし何か違和感がある。
キョーコはすぐにその違和感の正体に気がついた。見えるのはたくさんの小さい家と、そこから少し離れたところにあるやや大きめの館。そのどれもが茅葺か板葺の屋根を持ち、外壁はすべて木で出来上がっている。電柱や街灯などの見慣れたものはそこにはなく、館の周りに数人が歩いているのがかろうじて確認できるが、その誰もが今キョーコや蓮が着ているような着物を着ている。

「…どっきり……でしょうか」
「こんな手の込んだドッキリ、あると思う?」
「いえ…」
蓮ですら、やや茫然自失といった体だ。
2人は自分の置かれた状況を正しく判断しかけていたのだが、理性がそれを否定しようとするためかなかなか受け入れられなかった。

しかし我に返るきっかけは、意外な形で訪れた。
2人が立つ道は藪を囲むように曲がっていたのだが、その道の先から2人の男が現れたのだ。男たちは何気なく2人の姿を見たが、驚いたように立ち止まって大きな声を上げた。
「あっ!お、おい!」
「なっ!!こんなところに!」
蓮とキョーコは戸惑って顔を見合わせた。蓮は反射的にキョーコを庇うように体を前に出す。
「おおぉい!いたぞー!」
1人が大きな声を出しながら館の方へ駆け出した。もう1人は腰の刀に手をかけて、蓮を睨みつけながらじりじりと間合いを計る。

「突然なんなんですか」
事情を聞こうと蓮が声をかけるが、相手は興奮しているようで怒鳴り返してくる。
「てめえこそ、姫様をかどわかしておいてよくもまあノコノコと!」
そうしている内に館の方から槍や棒を持った男たちが駆けて来るのが見える。蓮はちらりとキョーコを見た。自分もキョーコも足袋ははいているが裸足に近い。腰につけている刀は見た目こそ立派に見えるが使える代物ではない。

この人数をかわして2人で逃げるのは…絶望的だな。
しかしどうやら咎められているのは俺だけで、最上さんは誰かと間違えられているのか?

努めて冷静に状況把握をしようとする蓮を牽制するように、最初の男がまた怒鳴った。
「京子姫!そんな輩に誑かされてはいけません!さあ、こちらにおいでください!」
驚いたのはキョーコだ。
「えっ?わ、私…??」
いきなり自分に話しかけられて、どうしていいのか分からない。しかし後から駆け寄ってくる男たちも口々に叫ぶのだ。
「京子様!」
「姫!お戻りくださいませ!!」

「つ、敦賀さん…?」
「どうやら君はあの館の姫君と間違えられているようだね…そして俺は姫を誘拐した犯人、というところか」
「えええっ?」
キョーコは驚いたが、確かに周りを取り囲む男たちは自分に"戻れ"と言っている。そして槍や棒の先は蓮に向けられているのだ。

「ど、どうしましょう、敦賀さん」
「うん…こちらはまったく状況が分からない上に、下手に抵抗したらあっさり殺されそうだ」
「そんな…!」
「とりあえず大人しく従うしかなさそうだね」
キョーコは不安げに蓮を見上げる。蓮はゆっくりと男たちに向き直ると抵抗をしない意図を伝えるように両手を上げた。



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コメントコメント


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きゃー!!!!

ぞうはな様!!
ありがとうございますぅぅぅぅー!!!!めちゃくちゃ嬉しくてもう最初からニヤニヤしまくりです!!!!
いやほんとにリクエストして良かったー(*´艸`)キャ
大興奮のままコメント失礼しました!!
すっごく楽しみです!!

風月 | URL | 2014/09/20 (Sat) 19:13 [編集]


Re: きゃー!!!!

> 風月様

こちらこそ、リクエストありがとうございますー!
愛読している書き手様からのリクエストは少し緊張しますね…。どきどき。
ご期待に沿えるかどうか、不安ではありますが勢いつけて続けてみますー!

ぞうはな | URL | 2014/09/21 (Sun) 07:58 [編集]