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Frantic Chasing (中編)


こんばんはー!ぞうはなです。
ええと、中編ですが…多分……次じゃ終わんないんじゃないかなー…





なんか…おかしかったよな?

撮影が終わり、蓮はスタジオの廊下を社と並んで歩きながら1人、今日のキョーコの言動について考え込んでいた。
機嫌が悪いとか、悩んでるとか、そんな素振りが見えたわけではない。普段どおりに撮影に集中し、その合間には笑顔も見せてくれたし会話も普通だった…と思う。
けれど、キョーコはたまにふと気がついたように自分から距離をとっていた。
以前、『Dark Moon』の撮影中にもそんなことがあった記憶はある。けれど、最近ではそこまで露骨にされたことはなかったはずだ。何か距離をとりたくなるようなことをしただろうか。

自問してみるが、特にちょっかいを出しすぎたとか思い当たる節もない。けれど撮影が終わって気がついたときにはキョーコの姿はスタジオになかった。どさくさにまぎれて挨拶だけはされた気がするが、蓮が監督と話しているその隙間にさらりと言われただけだった。

避けられてるのか?

極力考えないようにしようと思うが、抑えようもなく疑念が頭をもたげる。
すると蓮は前方のエントランスロビーにキョーコの姿を見つけた。気のせいか少し肩を落とすように歩く後姿をそのまま見送ることは出来ず、蓮は少しだけ足を速めながら声をかけた。
「最上さん、お疲れ様。今日は上がり?」
目の前の背中がびくりと跳ねる。
「お、お疲れ様です!え、ええっとはい、お仕事は終わりであとは事務所に…」
「じゃあ乗っけてくよ。俺はこれから雑誌の取材なんだけど、事務所はちょうど通り道だから」
蓮は瞬時に頭の中に地図を展開して提案する。あまりにかけ離れたことを言っては恐縮させてしまうが、言い訳する必要もないくらい自分の経由ルート近くに事務所があるのはラッキーだった。

しかし、キョーコの様子はいつもと少し違った。
「いえいえいえいえいえ!そんな、お手を煩わせる訳にはいきませんから」
拒否…じゃなくて遠慮をするのはいつものことだ。しかしなぜだろうか、その顔には恐怖にも近い感情が見え、ずりずりと後ずさりして何とかこの場を逃げ出そうとしているように、蓮には見えて仕方がない。
「別に、本当に通り道だから気にしなくていいよ」
プレッシャーにならない程度にやんわりと押してみるが、キョーコは更に後ずさっていく。するとそこへ丹羽が通りかかった。

「京子ちゃん、俺帰るところだから送るよ」

一瞬キョーコの瞳に迷いの色がよぎった。うろりと視線を走らせたところで「ほら、行くよ」と丹羽からダメ押しされ、「はい、あのでは、お願いします」と答え、「失礼します!」とぺこりと頭を下げて丹羽を追って蓮の前から足早に去る。

「嘘?キョーコちゃん…?」
思わず社が言葉をこぼす。
蓮も信じられない思いだった。自分の誘いを遠慮することは考えられても、それを断って別の人の誘いに乗るなど、今までの経験とキョーコの遠慮深さを考えれば「ありえない」と言ってもいいくらいだ。

どうしてだ?

考えても分かる訳はないが何か嫌な予感がして、蓮は雑誌取材に向かう車の中、黙ってハンドルを握ったまま考え込んでしまっていた。


キョーコが蓮の車への同乗を断った次の撮影日。
「蓮、落ち着けよ?」
「落ち着いてますよ」
心配そうな小声に反射的に答えながらも、蓮は握りしめそうになった拳からふっと力を抜くことが出来てマネージャーに心の中で深く感謝した。

キョーコはこの間のことには全く触れず、いつも通りににこやかに挨拶をしてくれて、シーンの段取りなどについてはあれこれと会話をするものの、やはりどこかよそよそしい。自分に対して何か怒っていることや言いたい事があるならば直接言ってくれれば、と思うものの、蓮が試みに距離を縮めようとするとキョーコはなぜか怒るどころか青い顔をして一瞬恐怖の表情を浮かべるのだ。

たった今も、キョーコの髪の毛についていた糸くずに偶然蓮が気がつき、ふと頭に手を伸ばした瞬間飛びのかれた。
さすがに反射的にしたその行動がまずいと思ったのか、キョーコは慌てふためいて弁解し、そして…丹羽に呼ばれてホッとした表情で走って行ってしまった。

「何をした覚えもないんですけど、俺嫌われたんでしょうか」
ついつい弱気になって蓮はこぼす。
「さぁ…どっちかと言うとキョーコちゃん、怯えてるように見えるけどな。お前、なんか無理強いしたり」
「しません」
聞くんじゃなかった、と蓮はぴしりと言葉を遮ったが、社は笑いながら口を開いた。
「でもさ、俺も当たり前だと思って最近あんまり気にしてなかったけど、キョーコちゃんが普通の距離を保つだけでなんかよそよそしく感じるよな」
「普通の距離…ですか?」
蓮は少しいぶかしげな表情で社を見る。

「あはは、蓮、お前も麻痺してるな。俺さ、今日はちょっとそういう目で見てみたんだ。そしたら、蓮と他の共演者やスタッフとの距離と、今日のキョーコちゃんとの距離はほぼ一緒だった。最近のお前とキョーコちゃんの距離って普通じゃなかったんだよ」
「そう…ですかね?」

マイナスだったものを0まで縮めただけだと思っていた。ようやく、少し親しげに近づいても受け入れてくれるようになったのだと。そうではなかったと言うのか?…だがしかしやはり納得はいかない。

「もしそうだとしても、いきなり距離をとるようになったのは事実ですよ」
「キョーコちゃんの表情からすると、誰かに何か言われたのかね?」
「そこまでは分かりませんが…」
少し離れた場所でキョーコは丹羽や他の共演者たちと楽しそうに雑談している。こちらの気も知らないで、と蓮はやや腹立たしいもやもやを抱えてキョーコの表情をじっと見つめた。


そして昼休み。
共演女優と2人、スタジオにあるレストランに向かおうとしたキョーコの前に、音もなく蓮は立った。
「お疲れ様。俺も一緒にいいかな?」
蓮がにっこりと笑ってみれば、瞬時に反応したのはキョーコではなく連れの女優だった。
「もっちろんですう~~~~~!」
目をハートマークにして女優が了承すればキョーコに断るすべはない。べったりと蓮に張り付いて話しかける女優の後ろについて大人しく食堂へ向かい、一緒のテーブルに着いた。
箸を取り上げながらふとキョーコは気がつく。

ああでも、そっか。
敦賀さんと噂になっちゃうようなことだけ避ければいいんだし、他の人と一緒なら平気よね。

そう考えた瞬間、胸にどしりとつかえていた重石が少し軽くなった気がする。
でもなぜ、蓮は一緒にご飯を食べようなどと提案したのだろうか。直前まで話していて流れで、ならばともかくわざわざ自分を追いかけて来てまで、とは。

いやいや、私と一緒にじゃないでしょ、なんておこがましい。
そうよ、敦賀さんは輪を大事にする人だから…

味噌汁の椀を取り上げながらちらりと正面に座る蓮の顔を盗み見たら、なぜかばっちり目が合ってしまってキョーコは慌てた。
どきどきと心臓が激しく跳ねる。瞬間的に目をそらし、それからそろそろとまた視線を戻せば、やはり蓮はこちらを見ているようだ。
キョーコは懸命にその瞳を見ないように気をつけながら蓮の手元に目をやった。蓮の箸は止まっていて、隣の女優の話に相槌を打っている。キョーコは話の途切れた瞬間につい声をかけてしまった。
「敦賀さん、召し上がらないんですか?」

すると蓮はふわりと嬉しそうに笑って答える。
「ん、食べるよ。ありがとう、気にしてくれて」
「い、いえ……」
キョーコはまともな返事もできず言葉に詰まってしまった。息をつめて固まっていたが蓮は隣の女優との会話を再開する。その後キョーコは食事の味も分からず、機械的に箸を口に運んでただ咀嚼するだけだった。


早々に蓮の前から楽屋に逃げ帰ったキョーコは床に膝をついてがっくりとソファの座面にうなだれた。

だめよキョーコ。
近くにいないようにって思ったら逆に気になっちゃって……!
笑ってくれただけでこんなの…ダメダメ、離れ…ないと……

丹羽の一言は言われたときは心外だったが、今なら分かる。自分は蓮の近くに居すぎるのだ。
こんなに近くにこんなすごい人がいたら、惹かれない訳がない。
自分の気持ちはすでに認めてしまったが、これ以上気持ちが育ったり、そばにいることが当たり前になってしまったらいざと言うとき離れられなくなる。

けれど実際に距離を取ってみたらどうだ。
顔を直視しないように、近すぎないように、と気を張っていたからか、すぐ隣に第三者がいるからと少し気が緩んだ状態でうっかり蓮の神々笑顔を見てしまい、心臓を鷲掴みにされたような切なさに襲われてしまった。


……ううん。
要は、私がどう思ってたとしても、他の人に怪しまれなければ済む話よ。…ほんとにもう、近づくのはやめよう!!
頑張るのよキョーコ。とにかく親しげにしなければいいんだから!

発想の転換をキョーコはしてみた。
そう、とにかくドラマが終わるまで自分と蓮との関係を怪しまれなければ済むのだ。そもそも実際にやましいことなど何一つない。接点さえ持たなければいい。

キョーコは自分の中の脆くて危うい部分を隠すようにそう決心し、握りこぶしを固く握りしめてある意味よく分からない方向に熱意を燃やしていた。


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コメントコメント


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ぎゃー!

ぎゃー!
ちょっとバタバタしてネットから遠ざかってた間にリクエストさせて頂いたお話しがアップされてるー!!\(゜ロ\)(/ロ゜)/

リクエスト部分に繋がるであろう蓮さんの心情…導火線にジリジリと火が点いていってる感じなのでしょうか?

リクエスト部分はもちろん、その後の展開も非常に楽しみにしてますv(*^ ^*)v


花 | URL | 2014/09/10 (Wed) 22:56 [編集]


Re: ぎゃー!

> 花様

コメントありがとうございますー!
全速力で逃げてるつもりのキョコさんですが、なぜだか尻尾を誰かに踏まれているようですよ…
なんだかリクエスト通りいくのか不安ですが、生暖かく見守っていただければと思いますー。

ぞうはな | URL | 2014/09/11 (Thu) 18:09 [編集]