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叶えたい願い (1)


こんばんは!!ぞうはなでございます。

さてさて、ようやく5万ヒットのリクエストに突入ですーー。
って、最近リクエスト話しか書いてない気がしますが。

今日から始まりますのはねここ様のリクエスト!
いつもリクエストをありがとうございます~~!
リクエスト内容も詳しく頂いたのですが、『大魔王蓮さんとそれと契約するキョコさん』のお話となります。こちら、当然ながらパラレル話です。

ではでは早速参りましょー!





ん、もーーーー!!
信じらんない!
あんな奴のために私…私の16年間返しなさいよー!
一生、一生、死ぬまで恨んで…呪い殺してやるんだから…あんな奴あんな奴、地獄に落ちればいいのよー!!!


夜も遅い時刻。
薄暗いアパートの一室でぶつぶつと呪いの言葉を吐き出しているのは、まだうら若い乙女であるはずの最上キョーコという少女だ。
長く黒い髪を振り乱して目を血走らせているその様は決して人様にお見せできるものではない。しかし本人は自分の見た目などどうでもよいようで、先ほどから作業に没頭している。

キョーコの周りにはあやしげなブツがあれこれと散乱している。
壁には金髪の男のポスターが貼られているが、その表面はびりびりに引き裂かれているし、横には更に同じ男の写真があるが、顔には(特に目鼻口に集中的に)虫ピンが山のように刺さっている。
キョーコの右側に放られているのは五寸釘が深々と突き立った藁人形で、左側で火を灯されているのは毒々しい色の蝋燭でゆらめく炎の色すら怪しげに見える。

キョーコが今集中している対象は部屋の中心に敷かれた新聞紙だ。
怒り200%の状態であっても借りているアパートの畳に直接何かを書くのは躊躇われたと思われ、つながれた新聞紙は2畳ほどの大きさに広げられてマジックで大きな円が幾重にも描かれ、その内側には複雑怪奇な記号や文字がびっちりと書き込まれている。

「…なにとぞ……あの男に……」
真っ黒な表紙の本を広げてなにやらブツブツと呪文のような言葉を述べていたキョーコは、両手を新聞紙へ向けてかざすとあらん限りの念を送る。
ぷるぷると腕が震えるほど力を込めてしばらく念を送り続けるが静かな部屋には何も起きず、キョーコは「っはーー」と息を吐き出して体から力を抜いた。

じっと新聞紙の上の模様を見つめるが、それは相変わらず静かにそこにあるだけだ。キョーコは目の前に置いてあった本を取り上げると開いていたページをもう一度念入りにチェックする。
「これで本当に呪いの効果なんてあるのかしら?書かれたとおりにやったつもりだけど……」
キョーコはしばらく同じページをじっと眺めていたが、やがて諦めたように本を膝の上においてぺらぺらとページをめくり始めた。
「んー、じゃあこっちにしてみようかな。でも相手の恋愛運を下げるって、恋愛運なんてどーでもいいんだけど…」

しっかりと本に集中していたし、部屋の明かりは外から漏れる街灯の光と部屋の四隅に置かれた蝋燭の炎だけだったからキョーコは気がつかなかった。
気がつかなかったが、変化は確実に訪れていたのだ。
新聞紙に描かれた円の中心から、黒い煙が一筋立ち上る。煙は段々とその強さを増し、揺らめきながら天井へと昇っていき、そしてあっという間に人の姿を形作った。
そして真っ黒な人間の影に見えていた煙はいつの間にか実体化し、そこには黒いコートをまとった大男の姿が現れる。
男はぐるりと自分のいる部屋を見回すと、少し首をかしげた。それから足元に座り込んでいる少女に気がついてしばらく眺めた後おもむろに口を開いた。
「俺を呼び出したのは貴様か?」

キョーコは完全に本へと視線を落として集中していたから、自分以外の声が聞こえて心臓が口から出るのではないかと思うくらい驚いた。
声を発することも出来ないまま頭を上げて、男の姿を確認する。
新聞紙の円の中心に立っている男は黒いロングコートを着込み、あちこちが引き裂けたパンツとごつごつとしたブーツを履いている。無造作に伸ばされた髪は艶がなくぼさぼさと跳ね、部屋が暗くて長い前髪の影で隠されてしまい、顔はよく分からないが睨み付けてくる眼光は鋭く表情は厳しいようだ。

「だだだだだだ、だれ?」
本を放り出して壁際まで後ずさりながらようやっとキョーコは声を絞り出した。体が勝手に震えだして目の前の男の危険度を知らせてくる。
「呼び出しておいてなんだそれは」
呆れたように低い声を出すと男は一歩こちらに踏み出した。踏みしめたブーツがグシリと擦れたような音を立て、その足の下で新聞紙がガサガサと鳴る。
「よ、呼び出してなんてないです」
「この魔方陣は悪魔召還の魔方陣だ」
「悪魔?あ、あなた悪魔なんですか?」
部屋の隅っこに丸まってカタカタと震えながらもキョーコは何とか男に尋ねた。
「ああ」

キョーコはごくり、とつばを飲み込む。自分はなんというものを呼び出してしまったのだろうか。なんとか勘違いであったことを伝えて帰ってはもらえないだろうか。
「ごめんなさい!あの、私はあなたを呼び出すつもりはなくて…ただ、この本に呪いをかける方法が載っていたので、それに従って呪いをかけようとしただけで…」
最後まで言い終わる前に黒表紙の本がばさりと音を立てて男の手に吸い込まれるように飛び、キョーコは「ひぃっ」と悲鳴を上げた。

「ふん…」
男は本を一瞥しただけで口の端を曲げて笑うと、ぱたんと本を閉じた。同時に本は炎を上げてぼうっと燃えあがり、後には黒い燃えカスだけがはらはらと散る。
「こんないい加減なもので呼び出されたか…」
「す、すみません…あの決して私は…」
「だが呼び出されたからには仕方がない」
「へ?」
頭をかばうように謝罪の言葉を繰り出していたキョーコは意外な返事に思わず顔を上げた。
「目的が誰かに対する呪いなら、その本に書かれていることは全くの誤りでもない」
「どういうことですか…?」
「俺は悪魔だ。人に対する呪いなど造作もない」

あ、そういうことなの?

キョーコは一瞬恐怖も忘れてぽんと手を打った。
なんて間違った情報を載せてるのよ!と一瞬本の著者を恨んだキョーコだったが、言われてみれば合点がいく。
自分の目的はにっくき男に呪いをかけることだ。魔方陣が直接呪いをかけようが、そこで呼び出された悪魔が呪いをかけようが、結果として相手に呪いがかかることには変わりない。

…って、全然違うわよ!

キョーコは自分に自分で突っ込んだ。
目の前に立っている悪魔は呪いと引き換えに魂を持っていきそうだ。これを目前にしてしまうと到底同じとは思えない。

「俺は死神ではないからお前の魂をとったりはしない」
「なんで人の心を読むんですか!」
思わず言い返してジロリと睨まれて、またキョーコは「ごめんなさいごめんなさい」と部屋の隅で丸まった。

「呪いをかけたい相手が居るのか」
「いるわ」
静かに問われて、キョーコはきっと顔を上げて厳しい表情で言い切った。男はしばらくキョーコの表情を見つめた。先ほどの震えが嘘のように収まり、めらめらと黒く燃え立つオーラをまとってこちらを睨みつけている。

「ならば俺を呼び出したことは間違いではないだろう。願いは叶えよう。交換条件を飲めばな」
「交換条件ってなんですか?」
「願いが達せられたら、俺の願いを叶えることだ」
「あなたの願いって?」
「先ほども言ったが俺は人の魂には興味はない。だが、下僕は必要だ」
「下僕…」

キョーコは口を閉じて黙り込んだ。
「どうする?」
相変わらず男の表情は読めない。しかし、からかっている様子もバカにしている様子もなく、単純に自分の意図を問われているのだとキョーコは理解した。

下僕って何するの?どうなるの?
でも…この人が本当に悪魔なら……いや、このシチュエーションで普通の人間って方が無理があるわよね。
本当に、あいつに、呪いをかけてくれるの?復讐ができるの?それができるんだったら…


一瞬金髪の男のバカにしたように見下す顔が頭いっぱいに広がり、メラメラと心の中から黒い炎が湧いてくる。
「…下僕でも何でも、やってやろうじゃないの……」
ぼそぼそと呟くと、キョーコはゆっくりと立ち上がった。まだ恐怖が勝って部屋の真ん中にいる男のそばに近づくことは出来ないが、壁際でキョーコは背筋を伸ばして真っ直ぐに男の方を向く。
「本当に、願いを叶えてくれますか?」
「俺は嘘は言わない」
「じゃあ、私も願いが叶ったらあなたの下僕でも何でも、やります」

男はキョーコの真剣な顔をしばらく見つめると、口の端をゆがめた。
「契約成立だな」
「え、契約…?」
問おうとキョーコが口を開きかけたところで男の手がすっと上がり、キョーコの方に向けられた。同時に左の手の甲に焼けるような痛みが起こってキョーコは悲鳴を上げる。
「あつっ…!…って、何これ?」
慌てて左手を見ると、黒い曲線が何本も手の甲で踊りまわって複雑な模様を描き、ぴたりと止まって焼きつく。しかし、その模様はしばらくすると肌の中に吸収されるようにすうっと消えた。
「え?き、消え…?」

「契約の印だよ」
慌てるキョーコに男から声がかけられたが、先ほどとは声の様子と口調が違う気がする。
「契約?」
「悪魔に願いを叶えてもらおうと思ったら、契約が必要だろう。知らなかった?」
男はグシ、グシ、と音を立てながら新聞紙に描かれた円からキョーコに向かって踏み出す。円から踏み出した瞬間、男の体を竜巻のような黒い風が取り囲み、それが見えなくなったときには男の姿は先ほどとは変わっていた。

身長は変わらず高いが、髪は艶のある黒髪へと変わり、着ているものもジャケットにパンツとごく普通のものになった。
そしてこれは変わったのか見えるようになっただけなのか分からないが、その顔は美術の教科書で見た彫刻のように彫りが深くどこからどう見ても絶世の美男子だ。

「ななななな、なに?」
再度壁に張り付いて驚愕の表情を浮かべたキョーコに、男はにっこりと微笑んだ。
「さて、君の願いが叶うまでしばらくよろしくね?俺のことは……そう、敦賀蓮と呼んでくれ」

「は、はああああああ???」
キョーコの口から思わずほとばしり出た悲鳴に、遠くの犬が遠吠えで応えてくれた。


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コメントコメント


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新しいお話、楽しみです!
このあとどういう展開になるのか、ワクワク(//∇//)
1とナンバリング振ってあるということは、続き物ですね~、嬉しい!
ぞうはなさんワールドを楽しみたいと思います!

もっぷ | URL | 2014/06/11 (Wed) 23:11 [編集]


Re: タイトルなし

> もっぷ様

ありがとうございます!
期待を出来る限り裏切らないよう、またのんびりペースで更新していきますー。
続きものなのですが、いつものごとくどれくらいの長さになるのか分からないままスタートしております!

ぞうはな | URL | 2014/06/13 (Fri) 21:37 [編集]