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大体吉日(前編)

こんばんはー!ぞうはなです。
ぼうっとしていたら更新がやったら遅い時間になってしまいました。

さて、どんどんリクエストこなしていきますよー。
今日はよんまんひっとでいただきましたcocoa様からのリクエスト。
『社外恋愛の結婚シーン』でございます。
こちらは「社外恋愛」、その続編の「偏愛感情」のおまけエピソードのようなお話にさせていただきました。

パラレル話ですので、よろしければ「社外恋愛」「偏愛感情」をお読みの上でお楽しみください。

簡単に書いておきますと、タレントキョコさんと普通の(?)会社員蓮さんのお話です。
ではでは、前編、どうぞーー。




年末も押し迫ったオフィス。

「あれ?」
素っ頓狂な声を上げたのはマーケティング部門に在籍している百瀬逸美だった。
逸美は最近立ち上がった製品プロジェクトの仕様を確認しようと開発部門のオフィスを訪れていた。担当者としばらく話をして自分のオフィスに戻る際、同期である敦賀蓮の後ろを通りかかって声をかけ、蓮が振り向いたところでふと目に入ったものに驚いて思わず口から出てしまったのだ。

無言で首をかしげた蓮に、逸美はそろりと指差して戸惑いながら聞いた。
「なんで……指輪?」
逸美の指先の延長線上にはキーボードに置かれたままの蓮の左手があり、その薬指には銀色に光るシンプルな指輪が光っている。
「ああこれ?」
蓮は自分の左手に視線を移してから再度逸美の顔を見上げた。
「普通左手の薬指だよね?」
「え?ええ?」と驚いた逸美はごくりとつばを飲み込む。
「敦賀君…結婚してたっけ?いつの…間に?」

蓮の周りに座るメンバーが話を聞いて苦笑しながらちらりとこちらを見ている。誰も驚いた様子がないことから、逸美は蓮が結婚していて、それをまわりも知っているという事に気がついた。
「嘘?ええええ?いつ?」
大きくなりそうな声を必死に抑え、逸美は勢い込んで蓮に尋ねた。

「婚姻届を出したのは一昨日だよ」
「わー、クリスマス婚なんだ!もう一緒に住んでるの?」
「うん、それは少し前からね」
「式とか披露宴は?」
「今のところちゃんとしたのはやらない予定」
「どうして?お嫁さん、ウエディングドレスとか着たいんじゃないのー?」

矢継ぎ早に繰り出される質問に蓮は苦笑して、少し考えてから答えた。
「向こうがあんまり大々的にはやりたがらなくてね…時間もなかなか取れないし」
ふむ、と納得した逸美だったが、また質問に戻る。
「相手のひとって、だいぶ前から付き合ってた彼女?」
「そう」
「テレビ関係の仕事って言ってたっけ。でも結構年下だったよね?」
「うん、相変わらずあの業界で働いてる。まだ23歳だけど…3年も付き合ってたからね」


蓮の結婚相手というのは、デビュー以来どんどんと知名度を上げ、タレントとしても女優としても出演作を順調に増やしている京子こと最上キョーコだ。
蓮と逸美が働く会社にバイトとして1ヶ月来たことをきっかけに蓮とキョーコの交際はスタートし、そこから3年間の交際期間を経て、蓮にとってはやっと愛しい女性を名実共に手に入れた、という状況だった。

蓮の恋人、いや今は配偶者が芸能人であることを知っているものはごくわずかだが、蓮は恋人がいることだけはかなり早めに周りに伝えていた。周りの、または全然知らない女性からのアプローチを受けることは相変わらずだったため、煩わしさを減らすためにもちょうどよかったし、相手の素性は言わないまでも恋人の存在を隠す必要はないと蓮は感じていたのだ。

「テレビの仕事って本当に忙しいんだねー」
「そうだね。朝も夜も土日も関係ないみたいだし」
「すれ違いとか、ないの?」
逸美の言葉は興味本位ではなく、素直に心配から出たらしい。蓮はにっこりと笑うと答えた。
「最大限の努力をしてくれてるって分かるからね。むしろ応援してるよ」
「はいはい、ご馳走様でした!」
逸美は笑いながら、お祝い会をやるからね!お嫁さん紹介してね!と言って去っていった。

紹介は無理かな…

蓮は曖昧に返事をして逸美を見送ると、ふう、と息を吐いて椅子の背もたれに背中をあずけた。

式、ねえ…

蓮が自分の所属する部署に結婚の事実を伝えたのは、ちょうどこの日の午前中の定例ミーティングの場だった。さすがに上司には事前に報告していたため上司からさらりと伝えられた形になったのだが、やはり周りの反応は「式は?披露宴は?」というものだった。


最近ではわざわざ披露宴をやらないって人も多いとはいえ…やっぱり周りから見れば不思議なのかな。


蓮自身、あまりそういうものに拘りはなかった。
もちろんキョーコがやりたいといえばNOという理由などどこにもないが、尋ねてみた蓮にキョーコは明るく答えたのだ。

「ウエディングドレスも何回も着ましたし、結婚式もたくさんやっちゃってますから」

それは役の上でのことだ、当然ながら。
しかしキョーコはかなり控えめに見ても『お姫様』に関連するような可愛いものが大好きだから、ウエディングドレスやチャペルに対する憧れがないとは思えない。それでも全くこだわりがない様に振舞っているのは、きっと蓮への負担を考えてのことなのだろう。

芸能人であるキョーコとの交際は、やはり一般人同士の交際とはだいぶ違う困難がある。
キョーコは一般人である蓮のプライバシーが侵害されないよう細心の注意を払ってくれているのだが、それでもうっかりするとマスコミの気配が感じられるようなことが今までにもあった。
ここで京子の結婚式が、などというネタをつかまれたりしたらまたしつこく嗅ぎまわられる事は必至で、それを防ぐためにもキョーコは興味がないような顔を蓮には見せているのだ。

だけど…いつも我慢させてばかりだし、なんか…できないかな?

蓮はしばしそのままの姿勢で考え込んでいたが、隣の席で電話が鳴り始めると現実に戻り、気を取り直して作業を再開した。


ドラマ用のメイクを落とすと私服に着替え、キョーコはバッグから小さい巾着袋を取りだすと中身を取り出して目の前にかざした。

うふふ……

抑えようもなく笑みが浮かんできてしまう。
事務所との打ち合わせでキョーコの結婚の話は年明けに解禁することとなっているので、まだこの指輪をして人前に出ることはできない。せっかくの年末年始、少し仕事もセーブが出来たから蓮とのんびり過ごしたい、ということもあるし、蓮が周りに結婚を報告してから時間差があった方が蓮が怪しまれる事もないだろう、という配慮もある。

「そんなの気にしなくていい」って蓮さんは言うけど…やっぱり普通に仕事してる人には迷惑な話だもんね!
それにそうよ、あんなルックスの一般人なんてことが知れたら…本当に注目されて騒ぎになっちゃう。

光る指輪を見つめたままボーっと考えに浸っていると、楽屋のドアがノックされてかちゃりと開いた。

「京子、お疲れ様」
「あ、内藤さん、お疲れ様です」
入ってきたのはキョーコのマネージャーである内藤だ。眼鏡をかけてきりっと髪をまとめた内藤は、椹が選びぬいてくれただけあっててきぱきと働くかなり優秀なマネージャーだ。けれど一方で優しい雰囲気もあり、キョーコはいつも「社さんが女性になったらこんなよね…」と思っている。

「また指輪見てたのね。まあ年明けたら堂々とできるようになるから少しの間我慢して」
「いいんです、持ってるだけで幸せなんですから」
キョーコは言いながら元通りに指輪をしまい込む。
「そうね、新婚さんはそんなものよね」

少し顔を赤くしたキョーコに微笑みかけてから、内藤は表情を戻してキョーコに尋ねた。
「そうだ、パスポートを取り直さないといけないんだけど」
「え?ああ、そうか、名字が変わったから…」
「そうよ。結構急がないと、2月にドラマの海外ロケがあるもの。カード類の名義変更も合わせてね」
「はい!結婚するって色々と大変なんですね」
「そうね、でもちょっと誇らしいんでしょ、敦賀キョーコさん」
「えへ…」
にへら、とキョーコの顔が緩む。
「年が明けたら大変だからね。今の内にダンナさんにしっかり甘えて英気養っといてね」
甘えてって…とキョーコは少し恥ずかしそうにしたが、初めて蓮と過ごす年越しに、やはり顔が緩んでしまうのだった。


「海の色がちがーーう!」
キョーコはチェックインしたホテルの部屋からビーチを見おろすと歓声を上げた。常夏の島グアム。ギラギラと太陽が照りつけ、開放的な雰囲気にあふれている。日本の2月の凍える寒さを思うと、仕事で来たと言ってもやはりなんとなくワクワクしてしまう。

ホントだったらお仕事抜きで蓮さんと来たかったけど……

仕事でなければなかなか海外に行く余裕などない。
年末年始は蓮も仕事が休みで自分も少し余裕があったので数少ないチャンスだったとは思うのだが、結局蓮とキョーコは日本での正月をまったりと楽しむことを選択していた。

あれはあれで楽しかったわよね…一緒に年越しして初日の出見て。
お節も食べたし初詣も行ったしのんびりできたもんね…。


「さて京子、疲れは溜まってない?着いた早々申し訳ないけど早速ロケに合流するわよ」
内藤が手早く荷物を片づけると窓にへばりついたキョーコに声をかける。
「大丈夫です!さ、行きましょう!」
キョーコはくるりと振り返り、元気いっぱいに笑うと内藤を促して部屋を出た。


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コメントコメント


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わ〜い!!

大好きでした、「社外恋愛」「偏愛感情」。
それの続き、結婚式編⁈ですか~!!
嬉しいです~!!
とりあえず、「社外恋愛」読み直しました!!
外は雨でしたしね、それはもうゆっくりと読み直し楽しませていただきました。蓮様は一般人でもかっこいいってことですよね。
今日は「偏愛感情」読みに行ってきます!!
で、万全を期して「大体吉日」の続き楽しみに待っています!!

しゃけ | URL | 2014/06/08 (Sun) 08:47 [編集]


Re: わ〜い!!

> しゃけ様

読みなおしまでしていただいてありがとうございます~!
しゃけ様はじめとして、「社外恋愛」「偏愛感情」は好きだと言ってくださる方も多くて、とても嬉しいのです。

しかし一般人蓮さんがどういう日常を送っているのか、ということに想いを馳せれば馳せるほど、いやこんな一般人はどこ探してもいないだろうよ…という結論に。
どこ歩いててもスカウトされちゃいそうですね。

ぞうはな | URL | 2014/06/08 (Sun) 22:59 [編集]