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しゅうちの事実 (前編)


こんばんは!ぞうはなです。
うむぅ、長らく空いてしまいました…

今日は4万ヒットのリクエスト(←いつのだ)、花様からいただいたものです。
原作沿いの短編となっております。
今日はまだリクエスト内容に到達していないので、そしてその段階でリクエスト内容を明らかにすると筋がなんとなくばれてしまいますので、リクエスト内容はお話の最後に公開いたします。

ではどうぞ~~~。





どうしてそういう流れになったのか、その時点ではもう誰にも分からなくなっていた。
しかし貸切にされたある店の中はかなり賑やかで、いや賑やかを超えて騒々しく、酒のボトルはどんどん空になり、正気を保っている人間の方が少ない。

敦賀蓮と言う俳優は、まだ若いのだがその落ち着いたイメージから酔って正体をなくすようなことはないと周囲からは思われている。実際に場の雰囲気が暴走してしまったらさりげなく引くなりその場を去るなりして、周囲に酩酊した姿を見せたことは一度たりとなかった。
そんな蓮がドラマの打ち上げの三次会が行われているこの店に留まり、喧騒の中心にいたのにはちゃんと理由がある。そして蓮のマネージャーである社がその理由をよく理解して蓮の行動に口を出せなかったのもある意味仕方がなかった。


ソファ席に座るキョーコの隣には、ドラマでキョーコと兄妹を演じた主演俳優である加藤という男が座っている。どっちかといえばキョーコは強引にそこに座らされている状態で、加藤のたくましい腕はキョーコの肩へと回されていた。
加藤の向かいには蓮。そして蓮の横には蓮の恋人役を演じていた女優が蓮の腕に自分の腕を絡めるようにして寄り添っている。

そのテーブルには他にも共演者がいるのだが、世界はこの4人で閉じているかのようだ。
蓮と加藤は2人ともグラスを手にしてドラマの話を主とした雑談に興じているのだが、先ほどからキョーコのレーダーは何がしかの殺気に対してずっと反応しっぱなしになっている。
キョーコはたまに振られる加藤からの話題ににこやかに返事をしているが、内心気が気ではなかった。

もう…加藤さんって『目の粗いザル』とか『枠』って言われるほど酒豪なんでしょ?
どうして敦賀さん、加藤さんのペースに付き合って飲んでるのよ~~~~!
それに、仲良く話しているように見えるのに、さっきからずっと2人からぴりぴりした気配を感じる…なんなのこれ?一体何の勝負なの??

キョーコが思うのも無理はない。競うように同じペースで飲み続ける2人によってすでに2本目のウイスキーボトルが半分以上なくなっている。


なんか敦賀さん、普段どおり笑っているように見えるのに…段々夜の帝王の笑顔になってきてる…
酔っ払ってる…のかな?意識してじゃない、よね?
加藤さんもだいぶ赤くなってるし、酔っ払ってるみたい…そのせいかな?さっきからずっと私にくっついてるし…。誰かと勘違いしてるのかしら?

蓮の笑顔は壮絶な色気を放ち始めていた。
カインとして割と強い酒を飲んで平気な顔をしていたのはキョーコも知っているが、これだけのペースでこれだけの量を飲み干すのを見たのは初めてだ。少し体が揺らいでいるように見えるし、かなり心配になる。
でもそれ以上に気になるのは蓮の隣に陣取る共演女優だ。女優は先ほどから蓮の腕をさわさわとさすったり、自分の胸を押し付けるように身を乗り出したりとアピールが露骨に思える。

ん、もーー。さっきからずっと敦賀さんにくっついて…
敦賀さんもそんな笑顔見せるから、誤解されちゃうんですよ!!
んん、でも…あんなにくっついてるのに敦賀さん全然よけもしないし笑顔だし喜んでるのかな…やっぱりああいう女の人がいいのよね…

にこやかな表情の裏で悶々と考え続けるキョーコだったが、蓮は蓮で相当な状況に置かれていた。


さすが加藤さん…噂どおり強いな。だけど、引き下がるわけにはいかない…
それにしてもまったく、この子は本当に警戒心がなさ過ぎだろう…

蓮はイライラと半ば八つ当たり気味に目の前の10歳近く年上の俳優とその隣に侍っている後輩タレントに内心で毒づいた。自分でもかなり許容量ギリギリ近くまでアルコールが回ってきていることは自覚しているが、目に入る光景が何とか正気を保たせている。

相変わらず加藤の腕はキョーコの肩に回され、離す気配はない。
たまに囁くようにキョーコに話しかけるその唇はうっかりするとキョーコの頬に触れそうで近すぎるし、ドラマの中で演じていた兄が妹にやっていたようにキョーコの頭や頬をなでるのだって頻度が高すぎると思うのだ。キョーコも拒否するでもなくニコニコと対応しているのが、仕方がないと思いつつもなぜ拒否をしないのだという勝手な苛立ちにつながっている。

加藤はドラマの撮影中もキョーコを気に入って、なにかと気にかけ話しかけ、個人的な誘いも周りにはばかることなく頻繁に続けていた。キョーコと同じ事務所で仲の良い蓮に対して牽制をする素振りすら見せていた。
撮影中はさりげなく蓮はそばにいたし、キョーコも誘いに乗らず問題はなかったのだが、今日は最後のチャンスとばかりキョーコを連れて帰ろうと企んでいる事を、蓮は二次会の店の洗面所でうっかり耳に入れてしまっていたのだ。

負ける訳にはいかない。

同じ女性を狙う男同士、分かってしまう何かがあるのか。男2人は視線を交わしグラスを掲げ、何回目か分からない無言の乾杯をした。


どうやら、ザルの目は蓮の方が若干粗かったようだ。または若さが味方をしたのか。
キョーコの隣、ソファに深く座った加藤は背もたれに頭をあずけて目をつぶっている。蓮も意識を保ってはいるものの、ぐらぐらと揺れる頭をなんとか膝についた片手で支えているような状態だ。
「敦賀さん…大丈夫ですか?」
隣に座る加藤の呼吸が整っていることを確認し、キョーコは恐る恐る蓮に話しかけた。
「ああ、大丈夫。それよりも最上さん、だいぶ遅い時間だから君は帰らないと」
蓮は顔を上げると答え、言い終わると同時に立ち上がった。勢いよく立ったためか少し体が揺らぐが、支えようと伸ばした隣の女優の手はやんわりと断る。そしてキョーコの方に身を乗り出すと、その手首を掴んで有無を言わさず立ち上がらせた。

「わっ、私は大丈夫ですから…」
「大丈夫なんかじゃないよ。ほら、カバンを持って。忘れ物はない?」
「敦賀さん…!あの、1人で帰れますから…!」
「いいから。行くよ」

蓮に半ば引きずられるように出口に向かいながら「し、失礼します!」と必死に周りに挨拶をするキョーコを、周りの人々は呆気に取られて見送った。


「敦賀さん!どうしちゃったんですか!?」
店を出てもキョーコの手をしっかりと掴んで歩いていく蓮に、キョーコは必死についていきながら大声で聞いた。
「どうもしない。向こうの道に出ないとなかなかタクシーは捕まえられないだろう」
「だから敦賀さん、私は大丈夫ですから!」
キョーコの言葉を無視するように蓮はずんずん歩いて大きな通りの車道寄りまで進み、ぴたりと止まった。キョーコもなんとか蓮の背中にぶつからないように立ち止まる。

くるり、と蓮は振り返ったが、その勢いでか体が大きく揺らぎ、キョーコは咄嗟に蓮を自分の体で支えようと一歩を踏み出した。しかしその体は大きな懐にすっぽりと収まってしまう。
「ほんとに君は……ハラハラさせないでくれ」
「…敦賀さん?そんな私、危なっかしいことしてましたか?」
ハラハラしているのは自分の方では、とキョーコは思うが、ため息混じりに言われると抱きしめられているこの状態にプラスして恥ずかしさと申し訳なさで心臓がバクバクしてしまう。

蓮はキョーコの体を離さずしっかり抱きしめたまま、片手だけをキョーコの後頭部に移動させて何回もその髪をなでる。こうして触れてしまったら、離せない。そんな気分になってしまうのはやはり酔いが極限に近いせいだろうか。
「あんなニコニコと笑って拒否しないから…誤解されるんだよ」
「誤解?ど、どなたにですか」
「加藤さんに決まってるだろう。あの人はずっと君を狙ってたんだから…」

でもよかった、と呟いた蓮に、キョーコは恐る恐る尋ねた。
「そんなことはないと思いますが…もしかして、もしかして敦賀さんがこれほど飲まれたのって、私のせいですか?」
加藤と飲み比べのようにして飲み続け、加藤がつぶれた隙に自分を連れ出してくれたというのだろうか。もしそうだとしたら、蓮がこれほどふらふらなのは自分のせいではないか。キョーコの胸がずきりと痛む。

「いや、君のせいじゃないよ。俺が勝手にやっただけ」
キョーコを抱えたまま、蓮はよろけて一歩後ろに下がった。キョーコも転びそうになって思わず蓮の体にしがみついてしまう。
「なんでですか…?」
ぽそりと呟くように震える声で吐かれたセリフに、蓮は答えてしまった。
「君が好きだからに決まってる。他の男になんか…渡せる訳ないだろう」
「え?」

キョーコの驚いた声がほんの少しだけ蓮に思考力を取り戻させた。
こんな場所で、こんな形で、こんなタイミングで言うはずではなかったセリフが、酒で緩んだ口から滑り落ちてしまった。

まだ俺は…この子にそれを伝える資格なんて……!

蓮はキョーコの体を勢いよく離すと車道に目を向けた。ちょうどいいタイミングで向こうからタクシーがやってきて、蓮は躊躇わず片手を上げる。

「さあ、乗って。これ、おつりは返さなくていいから」
蓮はキョーコをぐいと押して後部ドアが開いたタクシーに強引に乗せ、財布からすばやく一万円札を取り出すとキョーコの手に握らせる。
「あの…!」
必死に話しかけようとするキョーコを無視して「お願いします」と運転手に声をかけると体を引いた。
タクシーは心得たようにすぐにドアを閉めて走り出す。蓮はそれを確認するとよろよろと二、三歩動いてそこにあったガードレールにもたれかかった。


タクシーが動き出すとすぐ、キョーコは体ごと後ろを向いてリアウインドウから外を見た。蓮はよろけて何とかガードレールにもたれると、辛そうに下を向いてじっとたたずんでいる。

敦賀さん……大丈夫かしら?
もう、お酒飲んでない私の心配なんてしなくていいのに…!
それに、それに……

蓮の姿が見えなくなって、キョーコはゆっくりと体を戻して正面を向いた。
ふと気づいたようにカバンを探って携帯を取り出し開く。キョーコはしばらく画面を見つめていたが、目を閉じて深いため息をつくと携帯を閉じ、そのままじっと何かを考え込んでいた。


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コメントコメント


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ドキドキo(´∇`*o)(o*´∇`)oワクワク

ぞうはなさん、こんばんは。
『まどろみから覚めて』完結お疲れ様でした!&リク話ありがとうございますー♪(ノ≧∀≦)ノキャー
蓮さん、まさかのうかポロ告白!(ノ*´Д)ノビッ栗!!
そして何かをじっと考え込むキョコちゃん。
うわぁ…ここからどうリク内容に繋がるんだろう???o(゚ー゚*o)(o*゚ー゚)oワクワク
楽しみに続き待ってますね~♪

花 | URL | 2014/05/30 (Fri) 01:25 [編集]


Re: ドキドキo(´∇`*o)(o*´∇`)oワクワク

> 花様

コメントありがとうございます!
そしてリクのお話が遅くなりまして申し訳ありません~。
5万ヒットの時にいただいたもう一つのリクはまだ少し先になりそうですがぁ…

前編で既に告白した蓮さんですが、なにやら雲行きは芳しくなさそうで。
最終的にリクエストの内容につなぎたいと思いますのでよろしくお願いいたします!

ぞうはな | URL | 2014/06/02 (Mon) 22:29 [編集]