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ふりむかない

歌番組の収録でおとずれたテレビ局の廊下で、目にも痛々しいショッキングピンクを見た。ていうか、見たくなくても目に勝手に入ってきた。

最近ドラマだのバラエティ番組だのにちょこちょこ出てきて、名前も顔も売れ出してるってのにまだあんなツナギ着てんのかよ。
一言言ってやろうと思って待ち構えていると、こっちに気がついたのか、「げっ」という嫌そうな顔をしてやがる。

「よう、キョーコ」
「何よ、こんなところで。なんか用?」
「用がないと挨拶もしちゃいけねーのかよ。ずいぶんえらくなったもんだな」
「あんたこそ、ペーペータレントに用もないのに声かけるなんて、ずいぶんとお優しいことで」

いつもながら売り言葉に買い言葉の応報だ。
別に喧嘩売りたいわけでもないんだけどな。仕方がねえ。
しかし、ピンクつなぎでしかめっ面して仁王立ちってどうなんだよ。

「あれとこれが同一人物って、詐欺だよな・・」
ぽろっと本音がこぼれ出た。
小さく呟いたつもりだったけど、あいつの地獄耳はしっかり聞き取ったようだ。半目でじろりと睨みつけてきた。
「あれってなによ」

「チョコかなんかのCM、お前じゃねーのか。起伏のない体のくせに"妖艶"とか言われていい気になってんじゃねーよ」
「なっ・・。」
最近放送が始まったビターチョコのCMでは、ナツっての?ドラマで奴が演じてたカリスマ女子高生役みたいにちょっとクールな雰囲気が話題になってるらしい。
け。キョーコのくせに。

「ふん。見惚れたんだったら素直にそう言えばいいのよ」
「だれがっ。呆気にとられただけだっつの!!」
「だったら詐欺とか言わないことね。・・ああ、もう!くだらないことで時間とられちゃったじゃないのよ!急がなくちゃ!!じゃあもう行くわよ!」

くるりと背中を向けて、あいつはそのまま小走りで駆けていった。
ぼんやり見送ると、廊下の向こうの方で誰かに声を掛けられ、足を止めて馬鹿丁寧なお辞儀で答える。少し言葉を交わして、また走って行った。

・・あいつはあいつなりに、芸能界というところで自分の居場所を作り、世界を広げているらしい。
そんな風にあいつが変わってきたから、だから、俺は・・?

キョーコが俺だけを見ていたときは、あいつに興味なんて湧かなかった。
いるのが当たり前で、俺だけを見ているのが当たり前。
あのままあいつが俺だけを見続けていたら、俺はどう思っていたんだろうか?
きっとあいつがあの時のままだったら俺も変わらずで。
あいつが変わって、だから、俺があいつを見る目が変わって?
でもその時にはもうキョーコは俺の横にはいなくて。俺だけを見てはいなくて。

頭を振って、堂々巡りの考えを頭から追い出した。
終わったことを考えたってしょうがねえ。
昔俺があいつをどう思っていたのか、あいつが俺をどう思っていたかなんて関係ない。
これから、だ。

これからのことを考えようとした途端、ビーグル野郎とか敦賀とかいやな奴の顔が頭に浮かんできたけど、それも、かんけーねーからな!




私自身、ショーはさほど好きじゃないけど、まあそれなりに頑張れ、と思う。
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