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まどろみから覚めて(33)

こんばんは!ぞうはなです。
GW中ですが、こっそり更新です。
出先なので拍手お礼は帰宅してから上げさせて頂きますm(_ _)m



「昼間からあちこち連れまわしちゃったね。疲れたかな?」
蓮に尋ねられ、キョーコは両手を大きく振った。
「いえ!全然大丈夫です。久しぶりに遊んで、すごく楽しかったです!」
「ほんと?」
「はい!」

全力の笑顔で答えたキョーコの顔をしばらく見つめると、蓮は口を開いた。
「俺もすごく楽しかった。ありがとう」
「そんな、敦賀さんがお礼を言われることじゃ!こちらこそ、誘っていただいてありがとうございます。それになんだか全部おごっていただいちゃって…」
「俺から誘ったんだから当然だよ。男がおごるって言ったら素直におごられて欲しいな」
「でも…」
「俺の方が年上で給料もたくさんもらってるし、ね」
微笑まれて、キョーコの心臓はまたその鼓動を早くしてしまう。誤魔化すようにキョーコは金網越しに見える夜景に目をうつした。

「すごく楽しかったから…また一緒に遊びに行ってくれる?」
折角動悸を収めようとしているのに、横から耳に飛び込んできた言葉はまたキョーコの心臓を簡単に跳ねさせる。
「え…あの…わ、私ですか?」
「そりゃあ…ここで俺が君に話してるのに他に誰がいるの」
「そうですけど……」
「それに出来たら…またうちに泊まりに来て欲しいし、君の作った朝食を一緒に食べたい」
「は…い…?」
「ダメかな?」
「いやあのダメとかじゃないですけど…えええ?」

どどど、どういう意味どういう意味どういう意味なのーーー?
泊まりに来て欲しいって…私が眠れないからってことじゃなくて?
え、それじゃもしかして……ちょっとやだ、ダメよキョーコ変な解釈したら!

頭の中がパニックでぐるぐると思考の渦に巻き込まれているキョーコを見て、蓮はため息をついた。

やっぱりダメか…この子に回りくどい表現は通じないんだな、一切。
いや……もしかしたら、傷ついた経験で無意識にそういう解釈をしないようにしてるのか?

「最上さん」
「はひっ?」
強制的に思考の渦から引っ張り出されてキョーコは裏返った声を上げた。
「ちょっと混乱させちゃったかな」
「いえ混乱と言いますかあの…?」
「うん。君には誤解もされたくないし、ちゃんと俺の気持ちを知って欲しい」
「はい……」
「だから…俺と、お付き合いしてもらえませんか?」
「おつっ……!」
「貴島君にも散々誘われてたみたいだけど、今日ここに君が来てくれたから…ちょっとは希望を持っているんだけど」
「希望って…なんですかっ!でもだって、ええ?どうして…私とお付き合いを…?」

そこまで言わないとダメか?いや違う、そこが一番大事なことだな。
誤解なく、ちゃんと伝えなくてはいけないことだ。

蓮は無意識にひとつ深呼吸をすると、真っ直ぐにキョーコの顔を見つめる。
「そんなの決まってる。君のことが好きで、独り占めしたいから。ただそれだけだよ」

ひ、という音にならない音を立ててキョーコの息が止まった。

「……最上さん?最上さん」
目の前で手をひらひらとされて、ようやくキョーコは呼吸と意識を取り戻す。目を真ん丸くしたまま、まだ呆然と呟くようにぼそりと言葉を返す。
「なんで…?どうしてですか?いきなりそんなこと言われても…」
「いきなりとは思ってないんだけどな」
蓮の顔には苦笑が浮かんだ。
「いきなりではないよ。俺は好きでもない子に自分から声をかけたりしないし、何回も家に入れたりしない。電話が通じないだけで気になって約束もないのに家まで押し掛けるなんてもってのほかだ」
「え…そうなんですか?」
キョーコはもう、脳味噌がしっかりと回っていないようだ。蓮の言葉がしっかりと理解できているのかどうかも怪しいくらい、きょどきょどと焦点の定まらない目であちこちを見ている。

仕方がないな、と蓮はため息をついた。
おそらく嫌がってはいない、はずだ。そう思いたい。
ただ、ここで告白されるのが全くの予想外だったのだろう。いや、今日この場に限らない。おそらく蓮が自分に気持ちを向けているなど、想像もしていなかったに違いない。

それはそれで少しショックだけど…めげてる場合でもないな。

蓮はキョーコをそっと抱き寄せた。
何回かの経験から、キョーコは抱き寄せられるのを嫌がってはいない事がなんとなく分かっていた。抱き寄せると緊張して身を固くするのだが、少しすると「ほうっ」と息を吐き出すように体の力が抜けて身をあずけてくれる。

しかし今日はさすがに少し様子が違った。ほうっと体の力が抜けると同時に意識を取り戻したようだ。急にじたばたと腕の中で暴れだした。
「敦賀さん…こんな人がいっぱいいるところで…!」
蓮は構わず腕に力を入れるとそのつむじに向かって答える。
「大丈夫。ここはカップルばっかりだからね。皆自分の恋人か、きれいな景色しか見てないよ」
「だけど…!」
「じゃあ、人がいないところならいいの?それって、OKの返事ってことだよね」
急にぴたりとキョーコの動きが止まった。顔が見たくて囲っていた腕を緩めると、キョーコはそろりと顔を上げた。少し暗くて顔色までは見えないが、キョーコの目は少し潤んでいて、眉が下がって困ったような顔をしている。

蓮はそっとキョーコの頬を片手の手の平で包んでみた。なんだか少し熱い、気がする。
「返事は待った方がいいかな?」
「あの……ごめんなさい、少し考えさせてもらってもいいですか?」
蓮の胸にツキンと言う小さな痛みが走った。表情に出さないように気をつけて、柔らかい口調で答えを返す。
「もちろん。君にとっては急だったよね。ごめん。返事は急がないよ。ゆっくり考えてくれていい」
「…ありがとうございます」
「答えが出るまでの間…また誘ってもいい?」
キョーコはこくりと頷く。蓮はもう一度ぎゅっとキョーコを抱きしめるとようやっとその華奢な体を解放した。


思ったよりダメージを受けるもんだな…

蓮は暗い部屋に帰りつくとキーホルダーをリビングテーブルに置き、ソファにどっかりと身を投げ出してため息をついた。
否定されなかっただけでも十分だ、と帰り道からずっと何回も自分に言い聞かせている。キョーコが自分に対して後輩以上の立場で接していないことは十分承知していたはずだ。嫌われていなければそれでいい、と思っていたはずだ。

いや、ネガティブになるな。
それほど嫌がってはいなかったじゃないか。まだ断られたわけじゃないんだから…

キョーコの体を解放した後、キョーコは乱れてしまった髪を梳いた。思わずその髪に手を出してしまった蓮を見上げたキョーコの顔は照れくさそうで、上目遣いの潤んだ目に思わずもう一度抱き寄せたくなってしまったくらいだ。


ああだけどなんだ、執行猶予って…もどかしいな。

がりがりと頭をかきながら蓮は思った。
この色男は過去、女性を誘って断られると言う経験をしたことがなかった。大体誘う前に相手が自分のことをどう思っているかは分かるし、そうでなければ声をかける気にもならない。大体蓮の場合は周りにいる女性が自分のことを熱い目で見る確率が一般的な男性よりも圧倒的に高いので、そりゃあ空振り率が低いはずだ。

だけど今回限りはそんな今までの事情とは全く違っていた。
相手が自分をどう思っているかは良く分からない。少なくとも分かりやすい好意は寄せられていない。

そんな状態だけどこれ以上我慢は出来なかったんだよな…

キョーコの周りには貴島をはじめとした社内の男たちがうろうろしているのが見えていたし、幸か不幸か幼馴染の存在が今も過去のものとしてではなくキョーコのかなり身近にある事がわかってしまっている。
恋愛に消極的なキョーコだが、それだけに積極的に押されたら陥落しないとも限らない。そんなのを指をくわえてみているのは精神的によくない。これ以上抑えていたら、どこかから漏れて溢れて制御できないことになりそうだった。

待つしかないか…いやでも、待つだけじゃダメだよな。

蓮はつい弱気になりそうな気持ちに悩まされながらも、もうやるしかない、と覚悟を決めていた。

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コメントコメント


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ついに言った!

こんばんは

こんなに早い更新ありがとうございます。
ついに告白でしたね。キョコさんの良い返事がもらえなかった蓮様の葛藤、新鮮です。早く両想いにしてあげて下さいませ。

ponkichibay | URL | 2014/05/04 (Sun) 00:12 [編集]


頑張れ~、蓮様!!

GW中の更新ありがとうございます!! 待ってました。そして待っていたかいがありましたよ。蓮様のちゃんとした告白。なんか、新鮮で珍しい気がしますね。いいですよ~、ドキドキしちゃいます\(//∇//)\ 蓮様、押せ押せで頑張って下さい!! キョーコちゃん、押されてしまって下さい(笑) すぐに良い返事もらえなくてちょっと凹んでいる蓮様も良い~(≧∇≦)

しゃけ | URL | 2014/05/04 (Sun) 09:39 [編集]


Re: ついに言った!

> ponkichibay様

コメントありがとうございます!
もうかなり両想いに近い…のに、キョコさんには刺激が強すぎました。
蓮さんが海より深く沈む前にキョコさんがちゃんと自分の気持ちを認めてあげられれば…。

ぞうはな | URL | 2014/05/05 (Mon) 20:36 [編集]


Re: 頑張れ~、蓮様!!

> しゃけ様

コメントありがとうございます!
蓮さん、ちゃんと告白しないと伝わらない、というところまではしっかり認識しておりました!色よい返事がもらえなかったのも少し想定内ながら、やっぱりショックですよね。
キョコさんは自分と向き合えるのか。蓮さんは押せるのか。さあ、どうしよう?(←こら)

ぞうはな | URL | 2014/05/05 (Mon) 20:40 [編集]