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まどろみから覚めて(25)


こんばんは!今にもまどろみそうな、ぞうはなです!
寝落ちする前に載せます。
続きはまた来週、よろしくお願いします。





ふう、と1つ息を吐くとキョーコはしゃきりと背中を伸ばして振り返った。
「お疲れ様です、貴島さん」
ひらひらと手を振りながら満面の笑みの貴島が近づいてくる。

「今日映画の試写会があるんだけど一緒に行かない?」
細かい挨拶などなしでいきなり貴島は本題に入った。
「キョーコちゃんさ、最近映画見てないって言ってたじゃん?結構女の子に人気がありそうな映画なんだよ」
「ありがとうございます。でも…」

貴島はキョーコの否定の言葉の最初を聞くと、ふいと真顔になった。そしてくるりと周りを見回し一歩キョーコに近づく。
「ねえ、キョーコちゃんは俺のこと嫌い?」
「いえ!嫌いじゃありません!」
「じゃあ好き?」
「え…えぇ?あ、あの…」
「そうだよね、まあそりゃ当たり前だと思うよ」
「はあ……?」

貴島は頭をぼりぼりとかいた。
「けどさ、それって俺のこと知らないからだよね。サークル以外に付き合いないもん」
「えと…確かに私はあまり貴島さんのことを存じ上げませんが」
そうだよね、と貴島は頷く。
「知ろうと思わないといつまで経っても知らないままじゃん?俺さ、俺のことをよく知った上で断られるなら納得するんだけど、知らないままで断られるのって門前払いされてるみたいでやっぱ辛いんだよね」
「は…あの、申し訳ありません…」

キョーコの表情が本当に申し訳なさそうなのを見て、貴島は真面目な顔のままもう一歩キョーコに近づいた。
「少しさ、お互いのことを知ってみるってのはどう?俺ももっとキョーコちゃんのこと知りたいし、キョーコちゃんにちゃんと知ってもらいたいな。変な意味じゃないよ。友達としてって事」

確かに私は貴島さんのことちゃんとは知らないけど…
そうよね、その人のことを知らないのに圧倒されるからって理由だけでずっと逃げるのも先輩に対して失礼よね。それに、それをちゃんと教えてくれるなんていい人だわ。でも今日は…

「あの貴島さん」
少し考え込んでから顔を上げたキョーコに、貴島は真面目な顔を崩して優しい微笑みを向けた。
「うん、なに?」
「その…確かに私、とても失礼なことをしてました…申し訳ありません」
深々と頭を下げられて、貴島は少し慌てる。
「いや!別に失礼ってことじゃなくてさ!」
「いえ、先輩としてとても親切にしてくださるのに、すみません」
「あ、謝らなくていいんだって。そんな深刻に受け取らなくていいからさ!だからその、そう思ってくれてるなら今日一緒に映画どう?」
「あの、そのことなんですけど…」


「まだこんなところにいたのか」
キョーコが口を開いた途端、貴島の後ろから別の声が割って入る。貴島とキョーコが声のほうに視線をやると、蓮がカバンを持って近づいてくるところだった。

「え…あの、お疲れ様です」
「敦賀君こんなとこでどーしたんだよ」
キョーコはいきなり声をかけられたことに困惑し、貴島は邪魔されたことに少しむっとしてそれぞれ反応した。
「最上さん、職務を全うするのはいいことだけど、それが終わったら君は自分の体調を第一に考えるべきだろう」
「え…」
キョーコがびっくりして返事に困っている間に蓮はキョーコの横まで近づいている。
「まったく…人がいいにもほどがあるよ」

「なに、キョーコちゃん体調悪いの?」
貴島が驚いて尋ねた。今目の前に立っているキョーコは普段どおりに見える。
「あの…はい……ちょっと頭痛がありまして」
「えーーー…って、なんで敦賀君はそれ知ってんだ?」
「そんなの見れば分かるよ。分かったら貴島君も今日は遠慮してあげてくれ。最上さんも早く着替えて帰った方がいい」
「はい…ありがとうございます。あの、貴島さん申し訳ありません」

またもやキョーコに頭を下げられて貴島は首を横に振った。
「いや、敦賀君が言う通り体調が第一だよ。引き止めちゃってごめんね。…辛いなら送ってこうか?」
「いえ…」
大丈夫です、とキョーコが言う前に蓮がにっこりと答える。
「俺は最上さんと帰る方向が一緒だから任せてくれていいよ。ありがとう」
「ああそう…」
貴島はやや納得の行かない表情になったが、ふと気がついた。蓮はにこやかな笑みを浮かべてはいるがその目は笑っていないようだ。そして、今やキョーコをかばうかのように自分とキョーコの間に半分体を入れて立ち、自分が立ち去るまでは動きそうにない。

あれ、なんで?この男がこんなことするのなんて、見たことないぞ…?

もう少し事情を知りたいところだが、それも難しそうだ。本当に困ったように半分蓮の背中に隠れているキョーコと、威圧感たっぷりに微笑む蓮を見て貴島は一気に息を吐きだした。
「んじゃ俺は帰るわ。キョーコちゃん、しっかり休んで今度こそ付き合ってね」
「あの…本当に申し訳ありませんでした」
頭を下げたキョーコに背中を向けると貴島は通用口に足を進めた。

おーおーなんだよ、敦賀君ってあんなに威圧的な態度取るんだ…
こえーなおい。ちょっとでも変な動きを見せたら喉笛に食いつかれそうだったぜ?
ったくよお、敦賀君だって選り取り見取りだろうに、なんでまあ人のターゲットを…

ぶつぶつと考えながらも貴島は引き下がる事に決めた。
どろどろとした諍いに巻き込まれないためには引き際は肝心だ。次の機会を伺おう。そう決めて、貴島は次の相手を求めてスマホをいじりながら会社の外へ出た。


「ちょっと~!廊下にすんごい美形がいるんだけど!」
「見た見た!あれ営業部の敦賀さんだよ」
「えーそうなんだ!うちの会社にあんな格好いい人がいたなんて知らなかった!!誰か待ってるのかな?」

ひそひそと、しかしかなり興奮した声でされるやり取りに、キョーコは「いたた」と思わずこめかみを押さえてしまう。

貴島が去った後、蓮はにっこりと、しかし有無を言わせない圧力とともに「待ってるから着替えておいで」とキョーコとともに総務部の方まで来てしまった。
「でもあの、1人で大丈夫ですから」
「そう言うと思った。けど、俺も今日は終わったしあとも何もないから送ってくよ」
「ええ?」
「いいから早く」
背中をそっと、けれど力強く押されて、キョーコはそれ以上否定もできなかった。

体調が悪いのは確かだ。だけど、なぜ蓮にこれほど心配されて世話をかけてしまうことになるのか。キョーコはデスクの上を片づける手を止めて痛む頭で考えてみた。

いや、ぼやぼやしてはいられない。結論を先送りにして急いで帰り支度を済ませると、キョーコはショルダーバッグを肩にかけて「お先に失礼いたします」と小さく挨拶し、ややコソコソとした感じで居室を出る。
噂話に興じていた女性の先輩たちもさほど気にした様子もなく「お疲れ様」と笑顔で声をかけ、再び話に戻っていった。

キョーコが廊下に出ると、少し離れた角にたたずんでいる蓮の姿が目に入る。あの先輩方は、蓮が自分を待っていたのだと知ったらなんと言うだろうか。蓮がこちらに来ようとするそぶりを見て、キョーコは慌てて蓮の元へと早足で近づいた。
「ほんとに待っててくださらなくても…」
「いいんだよ。体調が悪い時くらい遠慮しないで」
ふわりと笑いかけられてなぜだかドキリとするが、落ち着かない気分の方が勝ってしまい、とにかく外に出よう、とキョーコは反論を諦めて通用口へと向かった。



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コメントコメント


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ついに?

更新ありがとうございます。

ついに蓮様が動きだしましたね!
お持ち帰りかお泊りか?
期待してしまいます(≧∇≦)

来週までワクドキです

ponkichibay | URL | 2014/04/12 (Sat) 20:05 [編集]


Re: ついに?

> ponkichibay様

コメントありがとうございます!

更新ありがとうございます。
蓮さんようやく本領発揮なるか…?です~。

でも無自覚無敵キョコさんが相手ですから、どこまでどうなるか?
次の更新まで、もう少しだけお待ちくださいーー。

ぞうはな | URL | 2014/04/14 (Mon) 18:23 [編集]