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まどろみから覚めて(19)


こんばんは!
なんとか、かんとか、更新ですが今週はこれでおわりー!
来週は…どうなるでしょうか。なんとか1回くらいは載せられるといいですが…





何がどうなったらこうなるのーーーー!!??

キョーコの声にならない叫びは暗闇の中に吸い込まれていく。


キョーコの隣に陣取り、さっさとライトを消した蓮は横たわると「おやすみ」とキョーコに声をかけてきた。
あんまりの事態とその遠慮のない様子に呆気に取られてしまったキョーコは、起き上がったままおそるおそる蓮に話しかけた。
「あの…敦賀さん?」
「なに?」
「本当にここでお休みになるんですか…?」
「そうだけど」
「で、では私はリビングで……」
「何言ってるの。最上さんが一緒じゃないと俺がここにいる意味がないよ」
「意味……?」
「そう。寝不足が解消できるチャンスがある時くらい利用しないと。そのためなんだから、ほら、ちゃんと横になって」
「で、でもですね…あの、その、いくらサークルの先輩と言ってもその、一緒にというのは……」
言いにくそうにぼかして、それでも懸命に説明するキョーコに、くくくく、と笑う気配と振動が隣から伝わってくる。

「だからさっき言ったろう、何もしないって。大体、そういうつもりだったらとっくにそうしてるよ」
「で、ですけど…付き合ってもいない男女が同衾なんて」
「…どうきん?あはは、最上さん若いのになかなか難しい言葉を使うね。でも今更じゃないか?」
「今更ってどういう意味ですか?」
キョーコは思わず聞き返してしまった。今更と言われるようなふしだらな事、経験した記憶は無い。

「もう忘れちゃったの?君、俺の膝枕で夜を明かしたじゃないか」
「ふっ…!わざといかがわしい言い方するのやめてください!!」
「いかがわしい言い方じゃない、事実だ」
「だ、だって…!」
「だから今更、なんだよ。あれに比べればほら、接触してない」
暗い中で蓮が両手を広げる気配がする。うっすらと蓮の姿は見えるのだが、その表情まではよく分からない。けれど、キョーコは蓮の口調からなんとなく自分がからかわれているような印象を受けた。
「そりゃあれは私が悪かったと思ってます…」
「悪いとは言ってないよ。俺は全然構わないし気にして無い。むしろ君がぐっすり眠れるって方が安心するよ」
「安心ですか?」
「そう。寝不足で頭が痛い、と琴南さんにもこぼしてるらしいね。俺がそばにいたら眠れるって言うんだったら、いつでも頼ってくれていいよ」
「敦賀さんがそばにいたら必ず眠れるって訳でもないかもしれないですし…」
「じゃあ必ずかどうか、試してみればいい。逆に眠れないっていうんなら、途中で出て行くよ」

そして結局、キョーコは諦めて遠慮がちにベッドに横たわり、静かに心の中で叫ぶ事態となったのだ。


隣にいれば眠れるって…眠れる訳ないじゃない!
電車とか、居酒屋とかで不意打ちに眠くなっちゃうのとは訳が違うのよぉ!
だってほら、こんなに緊張してるしリラックスなんてできやしない…

キョーコは布団を動かさないように気をつけながらその場で寝返りを打って蓮に背中を向けた。

ほんとにもう…敦賀さんって何考えてるのかしら?
冷静で紳士な行動しか見たことないから、こういうこと平気でする人だとは思わなかったわよ。
他の女の人相手にこんなことしたら、絶対勘違いされるんですからね!

ああでもそうか、とキョーコは思い直した。

私の事なんとも思ってないし誤解しようもないから平気なのか…

結局私は男の人にとっては対象外なのよね、とキョーコは認識を新たにする。
しかし考えてみれば、自分だって誰かと恋愛しようと思っている訳でもなく、どっちかといえば当分こりごりだと辟易している。

恋愛なんてもうたくさんだもんね…むしろここまで清々しく対象外だって宣言してくれたら、こっちもさっぱりするかな。
それに…敦賀さんがここに来てくれたのだって、私を心配して、だよね。一緒に寝ようって言ったのも別に変なこと考えてじゃなくて私が眠れるように、私のために、だもんね。
変に拒んじゃって悪かったかな。考えてみれば、敦賀さんほどの人が私にそんなことを要求する訳ないわよね、もっと綺麗でスタイルのいい人が周りにもたくさんいるんだし。

キョーコは再び体勢を変えて仰向けになり天井を仰いだ。少しだけ頭を動かして蓮の方を見れば、少し間を空けた隣で目を閉じているようだ。
静かな中に自分と蓮の呼吸の音だけが響く。普段1人で寝ているので、別の人の気配がするのは不思議な感じだ。合宿の時数人で寝た時よりも気配が近く、同じ布団なのでぬくもりまで伝わってくる気がする。

変なの…毎回思うけど、敦賀さんの隣ってなんか不思議…

そしてほどなく、キョーコの呼吸は深く規則的なものへと変わっていった。


「寝たかな?」
誰に言うとでもなく小さく囁き声を発してみるが、暗い室内に返事を返すものはいない。

ホントに寝ちゃったな…

蓮は少しだけ体を起こしてキョーコのほうへと顔を向けた。
暗闇に目が慣れた今は寝顔も見える。カーテンからもれる弱い光がキョーコの伏せられた目を薄く薄く照らしている。考えてみれば正面からしっかりと寝顔を見たのは初めてだ。電車でも合宿のペンションロビーでも、隣り合って座った状態で寝られてしまったので、その顔をちゃんと見ることはできなかった。

しかし…本当に今日の俺はどうかしてるな…

こんなつもりはなかった。

別々に寝て、明日の朝起きたら送り届けるだけ。

サークルの先輩として、帰宅の足を失った後輩にしてあげることとしてはそれだけのはずだった。
もっともキョーコ以外の後輩が相手だったとしたら家に泊めたかどうかは定かでは無い。けれど、仮定として考えてみても答えは出ないため、蓮はそこについては既に考えるのを放棄していた。

だけどここまではどう考えてもやりすぎだ。
キョーコがどう感じたか分からないが、普通の女性ならまず間違いなく自分に気があると思うだろう。ベッドにもぐりこんでおいて、そんなつもりはありませんでした、とはあまりに身勝手な言い分だ。だけど、別に手を出そうと思った訳ではない。なのになぜ。

俺ってこんなに衝動的に動くこと、あるんだっけ?

ここのところ社会人としての外っ面で完璧に振舞っていたため、蓮は自分で少し驚いていた。でもこれでは認めざるを得ない。キョーコの後ろにあの軽薄そうな男の姿がちらついた瞬間、考える前に体が動いてしまったのだ。
キョーコの心に居座って、眠れないほどその思考のほとんどを占めている男に何かを感じたのか。よく分からないが、瞬間的にキョーコの頭からあの男を追い出そうとしたのだろう、それだけは分かる。

不意に、今日職場を出る時の社の顔が脳裏に浮かんだ。

「キョーコちゃんによろしくな~」

何やらにこやかだが何かを面白がっているような目の色とふよりと笑った口元。
こんなことになることを予想していた訳ではあるまいが、何か自分に感じる事があったとでも言うのか。何やらはめられたようで若干癪に障る。

すよすよと眠るキョーコの顔を見つめて、蓮は暗闇の中で長く長くため息をついた。


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