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絶望と切望と(中編) 【メロキュンプレゼンツ!! 《ハッピー♡プレゼント!!》】


こんばんは!
本日はメロキュンお題の第2話!
ああ、予想した方もいらっしゃるかもしれませんが『中編』です…。
内容が薄いのに無駄に長くなってしまったため、後編もまとめて今日中のアップを予定しております。

とりあえず中編、どうぞ!




軽い打ち合わせを終えた蓮と社は次の仕事に向かおうと事務所のロビーに出た。すると、ちょうど椹との話を終えたキョーコも向こうからやってくる。

ぴくり、と蓮の右手が動き、一瞬回避しようかと周りを見回したのだが、社がいち早く反応してしまった。
「キョーコちゃん!お疲れー!学校帰り?」

社の声に2人に気がついたキョーコは、いつも通りの笑顔を浮かべて頭を下げた。
「社さん、敦賀さん!お疲れ様です」
社はキョーコに近づいて話しかける。
「最近忙しくてなかなか学校行かれてないみたいだねえ」
「そうですねーー…お仕事いただけるのは嬉しいんですけど、留年しないか心配です」
「そんなこと言ってもキョーコちゃんしっかり行かれる時は行ってるし、テストもばっちりなんでしょ?大丈夫だよ」
「そうだといいんですけど…」

それからキョーコは黙って立っている蓮にも笑顔で話しかけた。
「敦賀さんもお忙しそうですね。ちゃんとお食事されてますか?」
「ああ…それは大丈夫だよ」
蓮も普段の紳士笑顔でにこりと対応する。
「本当ですね?…と、ごめんなさい。これからTBMに移動なので、失礼します」
「ああ、頑張ってきてね」
「はい!敦賀さんもお体気をつけてくださいね!」
キョーコは笑顔で深く頭を下げると小走りで事務所から出て行った。

「蓮、ラッキーだったなあ」
にやりと笑った社に曖昧に返答し、蓮は駐車場に足を向けた。


最上さん…まったくいつもと変わらなかったよな?
嘘をついたりあれこれ隠し通すのが苦手かと思ってたんだけど…どういうことだ?
もしかして、自分の結婚を俺に隠すことについては別に抵抗がないという事か…でも……
いやそもそも、結婚するとしたら相手は誰なんだ?不破…はどう考えてもないだろう。レイノとか言う男のことも嫌がっていたはずだ。だとしたら誰だ?

散り散りに乱れた思考はなかなかまとまらず、蓮は自分の誕生日やバレンタインなどどこか意識のかなたに飛ばしてしまっていた。


この日を境に偶然はぱったりとやみ、蓮はキョーコに会うことなく一週間を過ごした。
社の申し出を頑なに辞退してしまったため、キョーコがいつどこで仕事をしているのか分からない。一度だけ遠目に仕事終わりらしいキョーコの姿を見かけたのだが、キョーコは普段持っているカバンに加えてかなり大きな紙袋を持っていた。

もうすぐ俺の誕生日だけど……最上さんからの接触はない、よな。


仕事終わりの楽屋で携帯の着信履歴をぼうっと眺める蓮を見て、社は軽くため息をついた。
「まったくさあ…気になるなら直接本人に聞けよ」
「何の話ですか?」
蓮は携帯をたたみながら平静を装って社へと顔を向ける。
「なんか気になってる事があるんだろ。仕事は何とかこなしてるけどそれ以外がずっと心ここにあらずだ」
蓮は無言で微動だにせず社の顔を見つめていたが、やがて観念したように大きく息を吐きだした。
「……聞けるものならとっくに聞いてますよ」
「お前とキョーコちゃんはちょっと似てるよな」
社は軽く笑いながら言い、それを聞いた蓮は少し怪訝な顔になった。
「似て…ますか?」
「うん。ああいや、似てるって言っても思考回路の一部だけ。お前もキョーコちゃんも相手に遠慮して自分の中でぐるぐる考えすぎなんだよ」
「……」
思い当たる節があって蓮は黙り込む。
「お前が軽井沢で機嫌損ねたときだってそうだったよなあ。キョーコちゃんも1人で悩んじゃって俺が何言っても聞かなかったし。不器用なのかな、2人とも」
「ですが…」
「まあいいんだけどさ。たまたま今日はお前がこれであがりでキョーコちゃんは事務所にいるなあって思っただけだ。さて、俺は久しぶりの友達と会う約束してるから、もう行くよ。お疲れ、蓮」
社はひらひらと手を振るとにやりと笑って楽屋から出て行った。


俺も大概…社さんに踊らされすぎだよな……

蓮は事務所の廊下を1人で歩きながらため息をついた。
とはいえ、「直接聞け」という社の言葉はなるほどもっともだ。開き直って考えてみれば自分の想像した以上に事態が悪化することはないとも言える。本人から直接引導を渡されればきっぱりと諦めて祝福の言葉を述べられるだろう。……いや、すぐにはそんな心境になれないかもしれないが。

考える内に蓮はひとつのドアの前に辿り着く。
息を吐いてドアを軽く3回ノックすると、中から「がたがたん」という物音と、「はひゃい!」という上ずった声が聞こえた。

蓮は躊躇せず一気にドアを開けた。
目に飛び込んできたのは必死の形相で何かを大きな紙袋に押し込むキョーコの姿。しかし、机の上にはキョーコがしまい損ねたのであろう、白くて小さい物体が乗せられていて、さらにキョーコが押し込んだ紙袋から1枚の小さなカードのようなものがひらりと舞って蓮の方へと飛んできた。

「あっ」
挨拶も忘れて短い声を上げたキョーコを無視して、蓮はドアを閉めると部屋の中へと足を進め、床に落ちた紙片を拾い上げる。それからコツコツと靴音を響かせてキョーコの方へと歩み寄った。

キョーコは紙袋に両手を乗せたまま凍りついて動かない。それを確認しながら蓮はカードを持った手とは反対の手で机の上のものをつかんだ。それは白いサテン生地で出来た、繊細なレースとビーズで美しく飾り付けられた小さなクッションだ。細いレースのリボンがクッションの真ん中あたりに2本縫い付けられている。

「これは何?」
短い質問に、キョーコはごくりと唾を呑んでからそろりと蓮の顔を見た。
「……リングピローです…」
「リングピロー?」
聞き返してしばらく考えた後、蓮はその物体の使われ方に思い当った。それはセレモニーの場で1対の指輪を載せるためのものだ。
腹の底から湧いてくる得体のしれない感情を押し殺して、蓮は静かにそれを机の上に戻した。それから、先ほど拾ったカードに目を落とす。触った感触でとうに気がついていたのだが、それは1枚の写真だった。裏返しになったその写真を蓮はゆっくりとひっくり返した。

写真に写っているのは1人の笑顔の男の写真。
好青年、とも言える整った顔立ちだが年齢は蓮よりかなり上に見える。この男が?とその写真をじっくりと見た後、蓮は無感情な声を出した。
「これは誰?」
「た……高崎さんという方で」
「それで?」
「いや…その」
キョーコは蓮から視線をそらして困ったような表情を浮かべている。
「なんで最上さんがこの写真を持ってるの?どういう関係の人?」
蓮はいつも通りの落ち着いた表情を浮かべて穏やかな声を出して尋ねた。いや、本人はそうしているつもりだが、キョーコは何かを感じているようで非常に落ち着きなく叱られた子供のような表情になってしまっている。

「あの、これからお話する事、誰にも言わないって約束していただけますか?」

蓮の胸がきしりと音を立てる。しかし蓮はそれを呑みこんで何でもない風を装った。
「ああ、誰にも言わないよ」
それでもキョーコは躊躇っている様子だったが、やがてひとつ頷くと話しだした。

「その方は、来月結婚されるんです」


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