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empty shell (25)


こんばんは!
遅くなってしまいましたが、更新です!
次か、その次で終われるかなー?




「私は…もう恋愛なんてしないって誓いました。あのバカのことを好きだった過去の自分は消し去りたいし、あんな、あんな周りが見えないような盲目の状態なんてもう二度と嫌だったんです」
「うん…君がそう思っているのは俺も知ってるよ」
「はい。だから本気で、もう二度とそんな愚かな感情を抱かないように心の中で恋愛感情なんて封印したんです」
「うん」
蓮は真っ直ぐな瞳で真剣にキョーコの話を聞いている。ちらりとそれを確認するとキョーコは慎重に考えながら言葉を選んでいった。

「けれど…敦賀さんのお話とは全然比べ物になりませんけど、駄目だと思っていても封印はもろくて…すぐにあふれ出てしまって。何度も何度も鍵をかけ直すんですけど、絶対に、二度とって思ってるのに、やっぱりそばにいるだけで一瞬で鍵が開いてしまうんです」
「ねえ、最上さん。それはつまり、君の中に誰かに対する恋愛感情があるってこと?」

キョーコは静かに問いかけられた蓮の言葉に少し俯いてためらっていたが、小さく頷いた。
「あんなに嫌な思いして固く誓ったのに、なんて軽薄で意志が弱いんだろうって自分でも分かってるんですけど…」
「意志は関係ないよ」
「関係なくないです…だって言ってることとやってることが全然違います」
「俺もえらそうなこと言えないけど、恋愛ってだからこそ恋愛なんじゃないかな」
「だからこそですか?」
「うん。ダメだと思っていても、どれほど理性で引き戻そうとしても感情は制御できない。俺だってそういう意味では同じだよ。罪が償えるまでは大事な人は作らない、て思ってたはずなんだけど」
「でも私は…あの馬鹿にいいようにされて、憎いって言う感情を制御できてないくらい、それくらいなのに!どうしてまた性懲りもなく…」

悔しそうに唇をかんだキョーコを蓮はじっと見つめ、それからキョーコの顔を覗き込むようにしながら口を開いた。
「その言葉から考えると、君が持つ恋心って言うのは不破君に向けるものじゃないよね」
キョーコは目を見開いて即座に反論する。
「んな!当たり前です!!あいつには呪い殺したいくらい憎いですけど、好きなんて気持ちはもうこれっぽっちも」
「じゃあ、その気持ちの相手は誰?」
「!それは……」

勢い込んでいたところに割り込むように聞かれて、瞬時にキョーコの勢いはしぼんだ。困ったような赤い顔で落ち着きなくおどおどしながらも黙り込む。
「それは……」
「俺の前で、俺の告白を聞いてその話をしてくれるってことは、期待してもいいのかな?」
「う……」
「否定しないってことは、て思いたいんだけど……なんでそんな難しい顔してるの?」

蓮に問われてキョーコは下げていた目線をちらりとあげた。しかし、蕩けるような光り輝く蓮の笑顔が一瞬で視界に飛び込んでしまい、慌てて目をそらして手をあわあわと振り回した。
「だだだだって、その、敦賀さん軽蔑しませんか?失望しませんか?」
「え、失望…?どうして?」
蓮は本気で驚いて聞き返してしまった。色々な返答を、否定も肯定も含めてこの短い間にシミュレーションしていたのだが、予想とは違う言葉に思考が混乱する。
「私、敦賀さんにあんなに強く宣言したんです!しかも、ショータローへの復讐はまだ全然果たせてなくて。それなのに、そんな尻軽なって、浅はかだって、軽蔑しませんか?」
うにゅ、と眉を下げられ少し涙目で見つめられ、蓮は呆然とキョーコを見つめてから ぷは、と噴き出してしまった。

「まさか…!参ったな、まさかそう返されるとは思わなかった」
「だって…」
「あのね最上さん…どこの世界に好きな子から好きと言われて軽蔑する男がいるの」
「でも、敦賀さんはそういうところ、私情を挟まないですよね?」

は~~~~~~~、と深くため息をついた蓮はぼりぼりと頭をかいた。呆れられたかとびくびくしているキョーコを視界に入れ、蓮は困ったように笑う。
「こういうのってさ、私情を除いちゃったら何も残らないと思わない?」
「え……」
「人を好きだと思う気持ちは100%私情だよ。それに、俺が君の『もう恋愛なんてしない』という誓いを後押ししたのも、他の男に取られないためだ。俺のために破ってくれるなら、喜んで歓迎するし軽蔑なんてする訳ない」
キョーコはもういっぱいいっぱいで、真っ赤な顔のまま口をはくはくさせる。
蓮はそんなキョーコに座ったまま少し近づくと、そっとその両手を取った。

「ほんとは、今日は気持ちを伝えられるだけでもいいと思ったんだけど…やっぱり俺は欲張りみたいだ」
「は…い?」
「君に嫌がられてないかもって思ったら…もっとちゃんと確認したくなった」
「確認ってどういうことですか?」
ふふ、と笑うと蓮はキョーコの両手を包み込んだ指にやんわりと力を込めた。気持ちを伝えるように、逃がさないように、でも優しく。
「何度でも言うけど、俺は最上さんの事が好きだ。君が俺の想いに応えてくれる気があるのかどうか、知りたい」

キョーコは自分の両手を温かく包む蓮の手をじっと見つめた。それからごくりと唾を飲み込むと、ゆっくりと顔を上げる。
「私は……私の心にしまい込んだ箱の鍵を開けちゃうのは、敦賀さんだけなんです。ダメだと思いながらバカな女になっちゃうのは、敦賀さんに対してだけなんです…」
「それって、つまりどういうこと?」
蓮の顔は抑えきれない喜びがあふれてきているが、キョーコはいじめられているような気分になる。
「つ、つまり…あの……私も…すき……です…」
最後の方はごにょごにょと小声になってしまったが、蓮の耳にはしっかりと届いた。

「よかった…ありがとう、最上さん」
「そな…!お礼を言われる事では!」
「でも本当に嬉しい」
はにかんだような蓮の笑顔に、キョーコは恥ずかしさが腹の底からぐわりと湧いてくるのを覚えた。どぎまぎと蓮から目をそらすと、キョーコの両手は蓮の大きな手に囚われたまま蓮のおでこに当てられた。
「ああ、やっぱり君に触れると勇気がわくね」
「な、また何のお話ですか?」
「あれ?前も言わなかったっけ。そう、マウイオムライスを食べた時だ」
「あれはプリンセスローザ様の…!」
「違うよ」

蓮はおでこに当てていたキョーコの手を自分の唇に軽く当てた。「ひゃっ」という声を上げてキョーコは思わず手を引いたが、予想していた蓮にしっかりと掴まれて逃れることは叶わない。
「違うんだよ。俺にとってのお守りは、勇気をくれる最強のお守りは君だ」
「そんな大したものではありませんよ!」
「君には自覚がないかもしれないけどね」

蓮は急に真面目な表情になるとじっとキョーコを見つめた。
「俺はまだ、まだ闇を完全には克服できていないし、今すぐに『敦賀蓮』を脱ぎ捨てる訳にもいかないんだけど。ねえ最上さん、俺は君のおかげで一歩前に踏み出す勇気がもらえてるんだ。俺はちゃんと、俺自身として君と向き合いたい。すべてを解決するまで少し時間はかかるかもしれないけど、一緒にいてくれるかな」
キョーコもまた真剣に蓮を見つめたが、やがて口を開いた。
「もちろんです。あの、私にできる事ならなんでも仰ってください。お守りにでもなんでもなりますから!」
「ありがとう。カインの時も君に助けてもらったのに、俺は甘え過ぎだな」
「んな、何を仰るんですか!私も、まだショータローへの復讐が済んでないんです!敦賀さんを目標にして、少しでも高みに登ろうとして結果的にご迷惑をおかけしてるのは私なんですから!」

キョーコの言葉に、少し蓮の表情が曇った。
「ねえその復讐って、もう無しにしない?」
「えええ?そんな、あいつには絶対ほえ面かかせてやらないと気が済みません!」
「んーー、でも…俺より執着してる男がいるのってなんか…」
「しゅ!執着って!!違いますよあのあいつに対いて抱いてるのは」
「憎しみと愛は裏表って言うよね」
「ぜ、全然違います!」
「もうずっと俺がいつも一緒にいるから、あんな男の事は忘れてくれてもいいんだけど」
「な……」
絶句してしまったキョーコに、蓮は紳士の笑顔でにっこりとほほ笑んだ。
「まあ百歩譲って復讐はいいといても、君の中でのあの男の比重はずっと下げてほしいな」

だ、誰この人…?
爽やかにすごいこと要求されてる気がするわ…

キョーコはいまだに蓮の告白でパニックになっている沸騰直前の頭で、嬉しさと驚きと困惑とが混ざった感情の中に、スパイスのようにごくわずかな不安が紛れ込むのを感じたのだった。


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コメントコメント


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幸せという気持ち

こんばんわ。今回はほんわかしたお話でしたね。幸せという気持ちは、傍で想像するよりも、そのど真ん中にいる人には戸惑いや信じられないという気持ちがたくさん働いて、その現実を有頂天になって味わうことができないかもしれない、と思いました。蓮さまは思いが通じた喜びをじわじわ感じているようですが、キョーコちゃんは半信半疑ですね。でも、そこが初々しくてみずみずしい恋心をよく表しているような気がいたします。冬から春へ空気が温み始める頃のようなほんのり暖かみのあるお話で、とても楽しめました。ありがとうございました。

Genki | URL | 2014/01/19 (Sun) 23:56 [編集]


Re: 幸せという気持ち

> Genki様

いつもコメントありがとうございます!
ようやくほのぼのモードに入れました…。
きっと幸せとか喜びって、しばらく経ってからじんわりと噛みしめるものですよね。
特に想像もしていなかったところからやってきたものは。
仲のいい2人を書くのは楽しいのですが、なかなかキョコさんが調子に乗ってくれないのですよね…

ぞうはな | URL | 2014/01/21 (Tue) 20:16 [編集]