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こんばんはー!
どひーー。連休だったとはいえ、あれこれバタバタしすぎて間が空きましたー!





「おはようございます」
「おはようございます」

スタジオ内に挨拶の声が響き渡る。
この日はキョーコ、光、甲子が出演するドラマの最終回の撮影。すでにラストシーンの撮影は終わっていて、数日後の放映日を控え、最後の蓮出演シーンの撮影日となっていた。
これ以上押したら編集が間に合わなくなるため、スタジオ内には緊張感がみなぎっている。

しかし、一部の出演者の間には違う緊張感も満ちていた。

「おはよう、京子ちゃん」
精一杯の笑顔で通常通りの挨拶をしているつもりの光はやはり隠しきれないのか、表情はいつもの通りだがそわそわとあちこちに振りまくられる腕の動きがせわしない。
「おはようございます。今日もよろしくお願いいたします!」
対するキョーコはかなり冷静にしっかりと笑顔でおじぎをする。もっともこちらも表面上は平静だが、良く見ればその笑顔はおでこの辺りが引きつっていて、なによりドキドキと鼓動が速い。


う…!京子ちゃん、いつも通りだな……やっぱり俺の告白なんてなんとも思ってないのかなぁ…?
いや、今そんなことは考えちゃだめだ。そうだよ、撮影が終わってから…!

光はにこにこしながら注意深くキョーコの表情を観察するのだが、深いところまでを読み取ることはできずに早くも気分が沈みそうになった。しかし、いやとにかく撮影が終わったらもう一度キョーコと話をしようと気をなんとか持ち直す。


やっぱり光さん、ちょっと意識してるよね…
うううう、なんだか居たたまれないなあ。でも撮影が終わるまでは返事しないでって言われてるし。
でもそうよキョーコ。引き延ばせばそれだけいい返事がもらえるかもって期待につながるのは、間違ってないわ。ちゃんと今日の撮影が終わったら、光さんと話をしないと!

キョーコも共演者を交えた雑談に笑顔で答えながら心の中で決意をする。


誰にも察知されない妙な緊張感と決意が場にみなぎる中、スタジオの入り口からは長身の俳優が姿を見せた。
途端にキョーコの背筋がぴしりと伸びる。光は特に蓮の登場に注意を払ってはいなかったのだが、そういえば、と思い出した。

昨日の敦賀君の雰囲気…なんだったんだろう?
んー、でも今日は普通のような…?

歩いてきた蓮がスタッフや共演者に挨拶をしている。
「おはよう石橋君」
「おはよう」
するりと通り抜けざまに交わされた挨拶。なぜか背筋にぴりっと電気が走った気がして、光は思わず振り返った。蓮の背中はいつもと変わらないし、他のスタッフに挨拶をする横顔は柔らかい微笑みを浮かべている。

気のせいかな…?

光は自分を納得させようとしたのだが、言いようのない不安が胸に押し寄せてしまったのだった。


撮影はすぐに始まり、順調に進んでいった。
いい意味での緊張感が場に満ち、出演者もスタッフたちもきびきびと動きシーン収録をこなしていく。蓮には何かと甲子がまとわりついて話しかけていたが、キョーコは心の底ではそれを気にしつつも撮影の方へと集中していた。

本番中、蓮の冷たい嘲笑に本気で竦んだ光が台詞を口にできなかったり、という若干のリテイクはあったが、概ね順調にすべての撮影は終了した。最後のカットにOKがかかると、スタッフたちが飛んできてレギュラー出演者に花束が手渡される。一回り小さくはあるものの蓮にも花束が渡され、和やかな雰囲気の中、スタジオでの収録は幕を閉じる。

キョーコは手渡された花束をうっとりと眺めていた。キョーコと甲子には柔らかいパステルカラーでまとめられた大きな花束が渡されていたのだ。いつかにっくき幼馴染が良く分からない名目で持ってきたべらぼうに重い花束には敵わないが、花だけでなくそれを包むラッピングもかなり豪華だ。

きれい…!ピンクのバラって本当、妖精さんがいそうよね…!
クイーンローザの気品には敵わないけど、あれが女王様ならこっちはまだあどけない王女様かしら?
それにこのレースについてるビーズも凝ってていいなぁ…これ持って帰ったらプリンセスローザ様のベッドの装飾に使えないかな?

「気に入ったみたいだね」
空想の中に入っているところに急に声をかけられてキョーコはドキリとした。声のするほうに顔を上げてみれば、キョーコの後ろからセットを下りてきた蓮の笑顔がそこにある。
「あ、はい!とても可愛くて…」
「確かに最上さんが好きそうだ」

くすりと笑われて、キョーコはちょっとバカにされたような気分でむくれた。
「どうせ私の趣味は敦賀さんみたいに洗練されてません」
「そんなこと一言も言ってないのにまったく…被害妄想が過ぎないか?」
「だって敦賀さんの目が口よりも雄弁に語ってますよ」
「そんなつもりもないけどな……」
蓮は周囲に人がいないのを確かめると少し声を落とした。
「今日、仕事は終わり?その大きい花束を持って帰るのも大変だろう。送るよ」
「えっ?いや、大丈夫ですよ!」
「俺も今日はこれで上がりなんだよ。好意は素直に受けなさい」
「はい……ありがとうございます…あ、でも」
キョーコは先ほどの決意を思い出してはっと蓮を見た。キョーコとしっかり目を合わせた蓮は、笑顔のまま軽く頷く。
「大丈夫。帰れるようになったらでいいから、俺の楽屋においで」


敦賀さんあれだけで分かっちゃったのかな…?

ある意味蓮に「早く断れ」と強要されたも同然だったのだが、キョーコも最初からそのつもりだったため蓮の意思がそこに介在しているとは思っていない。
こくりと、小さく、しかし真面目な表情で頷いたキョーコにもう一度微笑みかけると、蓮は周りに挨拶をしながら歩き去っていった。

コンコン
はーい

躊躇いながらノックした扉の向こうから、少し上ずったような返事が聞こえる。
ばたばたと足音がして、勢いよく扉が開いた。
「あ、あの…少し、お話が……」
そろりと部屋の主である光を見上げながらキョーコがおずおずと切り出すと、光は無意識にごくりと唾を飲み込んでキョーコを部屋へ通した。

「何か、飲む??」
そわそわと落ち着きなく動き回る光に、キョーコも緊張したまま切り出す。
「いえ…あの、いいです。話を聞いていただいてもいいですか?」
光はこくこくと頷くときょろりと周りを見回し、結局ソファセットに2人は向かい合って座った。

「昨日のお話なんですけど…」
キョーコは言葉を切ると光を正面から見た。
「ごめんなさい。やっぱりお付き合いはできません」

ぴたり、と光の動きが止まった。しばらく静止してから長く息を吐き出し、膝にがくりと肘をついた。
「そっか…やっぱり無理かあ」
「すみません」
「いや!謝らないで京子ちゃん。俺もなんとなく分かってたんだ」
「え…?」
光はゆっくりと顔を上げると弱々しく笑った。
「そりゃあね。自分が好きな子が、自分の事をどう思うかなんて……なんとなく、分かるよ」
「でも…」
「少し回答を引き延ばせば少しは意識してくれるかもって…京子ちゃんが本当に恋愛なんてしないって決めてるなら、それもあるかもって思ったんだけど」
「わ、私は本当に恋愛は…」
「ううん。京子ちゃん…自分に嘘ついちゃダメだよ。そんな辛そうな顔したら、分かっちゃうから」

え?

キョーコは息を呑んで光の顔をまじまじと見つめてしまった。


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コメントコメント


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ここで切れるとは?!

今晩わ。すみません。ぞうはな様もお忙しいのに、失礼なコメントをしております。敦賀さんが、落ち着いた感じになり、キョーコちゃんも以前よりは覚悟が決まったかな、という流れでしたので「さあ、どうなる??」というところで切れた感じがして、続きがとても気になります。更新をとても楽しみにお待ちしています。ありがとうございました。

Genki | URL | 2013/12/27 (Fri) 02:40 [編集]


Re: ここで切れるとは?!

> Genki様

こんばんは!
さてここからどうなる?というところで、すみません、ぞうはなも年末行事にばたばた巻き込まれております。
とりあえず2人の気持ちはかなり落ち着いているのですが、さて外乱がないとも限りませんね…

可能であれば今年中にもう1話くらい上げたい、という意気込みはあるのですが、ごめんなさい、完全に未定でございます~~。
大掃除などが順調に進むことを願いつつ…来年もよろしくお願いします(←あっ)

ぞうはな | URL | 2013/12/27 (Fri) 21:12 [編集]