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こんばんは!
早速続きですー。





写真は、2人が並んで歩きながら話しているもの、それから寄り添っているように見えるものだった。
はっきりと覚えがあるそれは数日前の食事の時のものだ。写真は暗い中で撮られて多少ノイズが乗っているものの、写っているのが誰か分かる程度にははっきりとしている。

「向こうは熱愛スキャンダルとして掲載したいらしいんだがな…」
ちらり、と様子を伺うように投げられた視線に、2人は慌てて否定の言葉を並べ立てた。
「いえあの、違います!」
「確かにこの写真は俺と京子ちゃんですけど、やましいことは何もなくてですね…」

それから2人はドラマのロケ中に三谷に誘われたところからの話を順序だてて椹に説明した。
写真には2人の説明どおりに若い男性たちが部分的に写っていることもあり、キョーコや光が嘘をついている様子もないと判断した椹は一通り話を聞き終わってから笑顔で頷いた。
「なるほど、話は分かった。まあこちらとしても事実を確認したかっただけだし、そういうことなら問題ないだろう」
「あの、それでこの写真は出ないんでしょうか…」
恐る恐る聞いてみたキョーコに、椹はあっけらかんと答えた。
「記事になるのを止めるのは、まあ無理だな。写真に写ってるのが別人だという訳でもないし」
「えええええっ!?」
「こちらがきっぱりと否定すれば、それほど大きな扱いの記事にもならんだろ。これ以外の何かがある訳でもないからな」
「ですけど、あの、光さんのイメージとかは…」
「ああ、それを心配してるのか」

椹は問題ないと笑って、思いっきり八の字眉になってしまっているキョーコに答える。
「光はこれまでスキャンダルはないし、根も葉もない噂ひとつでどうにかなるようなタレントでもない。こいつの真面目さと人柄の良さは業界にもファンにも知れてるからな。それは最上君も同じだ」
「う…そうすると、今回のが初ってことに……」
「ああ、こういう形で週刊誌に載るのは初めてかな。光、困るか?」

なにやら考え込んでいた光ははっと顔を上げると首を横に振った。
「いえ、特に非難されるようなことでもないですし、逆に京子ちゃんと共演してるってことがドラマの宣伝につながるなら…」
「そうだな、そういうことだ。スキャンダルにもならないから、心配しなくていい」
椹は写真を元の通りにしまうと、話の終了を告げた。
「ああ、2人とも今日はドラマの撮影だろう。最上君、光と一緒に乗せてってもらうといい」
「はあ…」
「そうそう、雑誌の発売は来週だそうだ。まあ今後も、外を歩くときは一応気をつけるようにな」
「はい……」
椹はそのまま会議室を出る。

まあ最上君は不破尚の熱狂的なファンだから…光になびくってことはないかな?タイプもだいぶ違うし。光のほうは実はまんざらでもなさそうだけどな…
…けどなあ…こうやって並べてみると案外2人、雰囲気が似ててお似合いかもしれないなあ…

まとまったらまとまったでそれほど印象も悪くはないだろうな、などとキョーコが聞いたら卒倒しそうなことをあれこれ考えながら、椹は自分の席へと戻っていった。


「も、申し訳ございません…!」
椹が去った会議室で、キョーコは椅子から勢いよく立ち上がると、深々と頭を下げた。
「え、なんで京子ちゃんが謝るの?ちょ、ちょっと顔上げてよ」
「だって、いくら事実無根とはいえ私がスキャンダルの相手だなんて、光さんのファンに申し訳が……!」
「そんなことないって!たとえ今回のことで京子ちゃんとの噂がたったって、俺には困ることなんてないよ」
「本当ですか…?」
恐る恐る頭を上げたキョーコの目に、優しく笑う光の顔が入る。
「本当本当。だから気にしないで。逆に俺がキョーコちゃんの初スキャンダルの相手なのが申し訳ないくらいだね」
「いえいえ、そんなこと!!」
「ほんとに?」
「本当です!」
力強く答えたその瞬間、キョーコの脳裏に嫌な男の顔が浮かんだ。

そうよ!あのバカ男と一緒にいるところを撮られたりして、それで何かとんでもないこと言われるより、よーっぽどいいわ!

「そか、よかった…俺もさ、他の人となんか言われるより京子ちゃんとの方がずっと…」
顔を赤くしてぼそぼそと呟く光の言葉は幸か不幸かキョーコには届いていない。
「何か仰いましたか?」
「いや別になんでもないよ!!」


2人はちょうど迎えに来たブリッジロックのマネージャーが回してくれた車に向かい、後部座席に乗り込んだ。
「それにしても、椹さんにもっと何か言われると思いました」
キョーコはシートベルトを締めながら素直な感想を述べる。
「ああ。ほら、うちの社長は"愛"が好きな人だからさ。真剣交際ならば認める、て結構懐が広いらしいよ」
「そんなんでいいんでしょうか?」
「これまでそれでうまく行ってるから、いいんじゃないかな…?」
「はあ…」

困った顔になってしまったキョーコに、光は笑いかけた。
「でも、しばらくはちょっと気をつけた方がいいかもしれないね。そういう話をつつき回すのが好きな人もいるから」
「あっ。でもそうすると、こんな一緒に車に乗せていただいて大丈夫でしょうか?」
「この車俺たちの移動用なんだけど、後ろのガラスは外側からは見えないようになってるから大丈夫だよ。大体同じ事務所で同じ現場に移動するんだからさ」

光に笑い飛ばされてほっとしたキョーコだったが、ふとなにやら嫌な予感に襲われた。

そういえば…こんなシチュエーションで目撃されて、てこと、前になかった?
そうよ!
確かあれはあのバカに拉致されて一緒にテレビ局に入ったときに…!

「あれ?京子ちゃんどうしたの?なんかちょっと顔色悪いよ?」

いやいやいやいや、だってほら、あの人はバカショーを生理的に受け付けないってだけよ。
そう、別に私の恋愛沙汰がどうこうとか、そういうことじゃないでしょ。あの時だって、カインとして妹のことを疑ってたんだし!
だけど……一生恋愛なんてしないって誓った手前、ちゃんと事実無根だってことを言っておいた方がいいのかしら?
いや、でも!女性週刊誌なんて読む訳ないから、もし全然知られてないのに自ら告白したら藪蛇に…!
それに、あの人は気にもしないで「ふーん、それで?」で終わりじゃないの?
…そうよね、きっとそんなことに興味も何もないわ……

「京子ちゃん?京子ちゃーーん」
必死に呼びかける光をよそに、キョーコは思考の内側に入り込み、青くなったり落ち込んだりと忙しかった。


表向きは何もなく時は過ぎる。そして、問題の週刊誌発売日。

社はその朝、蓮の部屋を訪れていた。
2人で軽く打ち合わせをすませ、そのまま仕事の現場へと入る予定だ。リビングで打ち合わせを終え、あと10分くらいは余裕があるな、と思いながら社は蓮に断ってテレビのリモコンに手を伸ばした。
「今朝あんまり時間がなくて、うっかり天気予報見てくるの忘れたんだ。今日ロケがあるだろ?」
「昨日の予報では曇りでしたね」
「うん。でも夜から崩れるってことだったからさ。早まってないといいんだけど」

屋外ロケの進行は天候に左右されることも多い。過密なスケジュールをこなす蓮のためにも、なるべく今日の予定は今日のうちにこなしてしまいたい。

社がテレビをつけると、朝の情報番組が画面に映し出された。
『本日の芸能トピックをお伝えします!』
画面の中では、キャスターがスポーツ新聞の記事などのコピーが貼り付けられたボードの前で原稿を読み上げている。画面の上のほうに天気予報のマークが表示されていて、社はそれをじっと見ていたのだが、細かい情報はデータ放送の方が取りやすいかな、と手の中のリモコンに視線を落とした。

『次の話題です!人気グループのあの人に熱愛発覚?』
男性キャスターがタイトルを読み上げ、女性キャスターがそれに続ける。
『はい!人気グループ ブリッジロックの石橋光さんが、タレント京子さんとの密会現場をスクープされました!』
がば、と顔を上げて画面を見た社は、すぐに横に座る俳優の顔に視線を移した。蓮も動きを止めて固い表情で画面を見つめている。

『これは今日発売の"ウィークリー女性"の記事です。先日ブリッジロックの石橋光さんと京子さんが2人っきりで都内のレストランで食事を終えて出てくるところがキャッチされました。掲載された写真には、2人が寄り添っているものもあると言うことなんですけど…』
『お2人は同じ所属事務所で、現在ドラマでも共演されているんですね』
『そうですねー。お2人の所属事務所は、「交際の事実はなく、先輩後輩という関係です」というコメントを出しているそうなんですが、2人で会ってたというのはどうやら事実のようですね』
『ドラマでも、光さんが京子さんに想いを寄せる役を演じているんですけど、もしかしてそれがきっかけに?』
『さあ、今後のお2人のお付き合いが気になりますね。では次の話題です!』

「蓮?」
女性モデルの出産の話題に移っても動かず画面を見つめている蓮に、社はおそるおそる話しかけた。
「はい」
「大丈夫か?」
蓮はおもむろに立ちあがると、背もたれにかけていたジャケットを手にとって腕を通す。
「何がですか?」

わ、わざとらしい!

突っ込みを心にとどめ、社はとぼけて返事をした。
「いや、キョーコちゃんが光君と2人で会ってたって事だろ?」
「それくらい…共演してるんですから、ないことではないでしょう」
「そりゃそうだろうけどさ……」
まだ社は物言いたげだったが、ちらりと目線で制され、ひとつため息をつくと言葉を収めた。そして、テレビを消すとリモコンをテーブルに戻す。
「さて、仕事だ仕事」
社はそれ以上の追及を諦めて玄関に向かい、蓮もリビングの戸口まで社を追った。
しかし、ふと足を止めて振り返ると、蓮は既に真っ暗になったテレビの画面を見つめる。無表情でしばし静止した後、ふいと目線をはずすと足早に玄関へと向かった。

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コメントコメント


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続きを楽しみにしてます

初めまして。
文章が読みやすくて、表現がかっこよくて、するすると一気に読んでしまいました。
続きを楽しみにしています(*^^*)

なれ | URL | 2013/11/22 (Fri) 18:02 [編集]


Re: 続きを楽しみにしてます

> なれ様

ようこそお越しくださいましたー!
おおおお!読みやすいと言っていただけるの、すごく嬉しいです。
読むときにつっかからないような文章を目指したい、という気持ちがありますので、稚拙な文章ではありますが、頑張りますー。

続きもえっちらおっちら載せて行きますので、よろしくお願いいたします。

ぞうはな | URL | 2013/11/22 (Fri) 23:00 [編集]