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勢いを借りて


わぁ~~~。間が、ぽかりと空いてしまいました。
さて、いつもの通り思い付き短編。

酔っぱらいシチュエーションをよく他のマスター様のところでお見かけして、にまにましながら読むのが好きなのですが(いや、にまにまするのが好きな訳ではない)、"少し回った"くらいだとどうなるのかなあ、という疑問から勝手に展開してしまいました。

とりあえず、どうぞ。
キョコさん20歳になった年明け、成立前設定でお送りいたします。





その店は非常ににぎやかだった。貸し切られているため外の看板の電気は消されているが、中からは楽しげな話し声が響いている。
おしゃれだが小さいバーは、一般人が入ったら悲鳴を上げるであろう面々が揃っておしゃべりに興じている。ドラマの新年会と銘打たれた会に参加しているのは、今が旬の有名芸能人ばかりだ。

店の奥側に位置する2つに分けられたテーブル席の片方では、抱かれたい男No.1の称号を数年にわたって保持している俳優敦賀蓮が女性タレントや女優に囲まれ、もう片方のテーブルではこれまた女性に人気がある貴島秀人が軽妙なトークで周囲を沸かせている。

貴島の隣に座っているのは、女優としてそろそろ派手に開花するのでは、と期待に満ちた評価を受けているタレント京子で、貴島のトークを真剣に聞いてはくるくると表情を変えながら相槌を打っている。貴島は周りに満遍なく話題を振りまきながらもたまに隣の京子にこしょこしょと内緒話のように囁き、肩に手を置いたりとさりげないスキンシップを図っていた。

蓮はテーブルを囲むメンバーとの会話に笑顔でしっかりと参加しているのだが、その耳と目は器用に隣のテーブルを伺っている。
貴島が酒の勢いか、それともそれを理由にしてわざとか、たびたびキョーコの肩や髪に触るのが目に入る。キョーコもちびちびとワイングラスを傾けながら、ほんのりと染まった頬で貴島をたしなめることもなく笑っている。
そのためか、蓮の目の前にあるグラスに周りから注がれるビールは、蓮の笑顔からは想像できないくらいのペースで消えて行っていた。

それぞれのテーブルが盛り上がっているせいか、席を替わる者もおらずに時間は過ぎて行く。
蓮は笑顔のまま「ちょっと失礼」と周りに声をかけると席を立った。レストルームに向かったかと思うと、その姿は元のテーブルには戻らずにカウンターの方へと移動する。

蓮がバーテンダーに声をかけると、琥珀色の液体が注がれたロックグラスが蓮の前にすっと置かれた。蓮はそのまま背の高いスツールに浅く腰をかけると1人でグラスを傾けているようだ。


「あれ?いつの間に敦賀君、あんなところで1人で飲んでんの?」
キョーコの隣の貴島が声を上げて、キョーコも顔をカウンターへ向けた。もちろんキョーコは蓮がカウンターに向かったことに既に気がついており、その理由を気にしていた。改めて見てみると、先ほど蓮の前に置かれたと思ったグラスはすでにほぼ空いていて、蓮はお代わりを要求するところだ。

「やだなあ、もう、協調性のない奴は」
わざとらしいしかめっ面を作った貴島は立ち上がると蓮へと近寄った。蓮の後ろを回り込んで入り口側のスツールに腰を下ろす。そのため、キョーコ達からは蓮の表情は見えず、笑いながら話しかける貴島と会話をしている事しか分からない。先ほどまで蓮がいたテーブルの面々も貴島の行動に気がつき、2つのテーブルのほとんどの人間がカウンターの方をちらちらと伺う。

すぐに貴島は戻ってきた。
「ちょっとおしゃべりに疲れたから休憩中らしいよ。すぐ戻るって」
笑顔でさらりと述べたため、面々はそのまままた会話へと戻った。
キョーコだけは心配そうにちらりと蓮を伺う。蓮は置かれたお代わりのグラスをすでに半分くらいあけているように見えた。


蓮は2杯目のウイスキーを飲み干すと、頬杖をついたまま少し上を見上げて ふう、とため息をついた。
周りには共演者たちもいると言うのに、こんなところで1人で酒をあおるとは、貴島の言う通り協調性がないな、と内心でぼやく。
分かり切ってはいるが、原因はやはり愛しい後輩タレントだ。キョーコが自分以外の男と仲良くしようがどうしようが自分には何も言う権利はない。撮影現場やその打ち上げで貴島と話すのだって、貴島が積極的に寄って行ってるのだから当たり前だろう。
今の状態が嫌ならば自分が動けばいい。しかしもし動いてキョーコとの関係が修復できないほど壊れてしまったら…

「敦賀さん」
思考の迷宮にはまり込みかけた蓮の意識を、近くからかけられた声が現実へと引き戻した。振りむくと、そこには緊張した面持ちのキョーコが背筋をピンと伸ばし、両手を体の前で組み合わせて立っている。やや肩に力が入っているようだが、相変わらず美しい立ち姿だ。
「どうしたの、最上さん」
予想外のことに、蓮はついていた肘から頬を浮かせて不思議そうにキョーコを見る。
「あ、あの私、不義理をいたしまして申し訳ありませんでした!」
「………不義理?」
「はい!あの、貴島さんから、敦賀さんが疲れているか怒っているようだと伺いまして。怒ってらっしゃるとすれば、このお店に来てから私が敦賀さんにご挨拶もせずにいたからかと…!」
頭を下げて自分の足元を凝視するキョーコを蓮は複雑な思いで見つめていたが、やがて「はぁ~~」と長いため息を吐き出す。キョーコはびくりと体を震わせた。

だ、ダメ息!ひさしぶり…じゃなくて!やっぱり正解だわキョーコ!!敦賀さん、怒ってるというか、呆れてたんだー!!!

「自覚…あるんだ?」
ひやりとする声に思わずキョーコが顔を上げると、蓮は肘をつき、目を細めてこちらを見ている。
「…はい」
「挽回する気、ある?」
「も、もちろんです」
おずおずと返事をしたキョーコに、蓮はにっこりと笑顔を作ると自分の隣のスツールをぽんぽんと叩いた。
「じゃあ座って。少し、付き合ってもらおうかな?」
「はい!」

びしと敬礼して肩に力を込めたまま、キョーコはスツールに腰掛ける。
両足を揃えて両手も膝の上、背中はぴんと伸ばしたまま真っ直ぐ前を向いて蓮からのお叱りを待ったのだが、一向に蓮はしゃべろうとしない。あれ?と思って恐る恐る横を向くと、そこにはキョーコに背中を向けて肩を震わせる先輩の姿が見えた。まさか?

「敦賀さん?」
「……くっくっくっくっ」

キョーコはかっと頭に血をのぼらせ、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「敦賀さん!どうして笑ってるんですかー!」

「だって……あ、相変わらず……バカみたいに素直だね、最上さんは」
蓮は言葉の合間にぶふっと吹きだしながらもようやっと笑いをおさめてキョーコの方を向いた。
「そんなことで俺が怒る訳ないだろう。…全く本当に、君は真面目と言うか騙されやすいというか…」
「ま、また騙された……!」
キョーコは悔しそうに、むむむと蓮を睨みつけた。

蓮はくすりと笑ってバーテンダーにお代わりを頼む。
「ああ、それから彼女にはジンジャーエールを」
蓮の言葉を聞いてキョーコがちょっとむくれてそっぽを向いた。

「また子供扱いして…」
独り言のつもりの言葉はしっかりと蓮の耳に届く。
「君は二十歳になったばかりだろう?さっきから見てると貴島君にかなり飲まされてるからね。立てなくならない内にやめておきなさい」
「そんなに飲んでません!今だって、ちゃんと真っ直ぐ歩けてましたよ」
「真っ直ぐ歩ける、と主張するのがもう酔ってる証拠だ」

むうう、とキョーコはうなったが、蓮の前に置かれた新しいグラスを見て矛先を変えた。
「敦賀さんだって飲みすぎです。ここに座ってからの短い間で、もう3杯目ですよ。私が飲んでたのよりずっとこっちの方が強いお酒です」
「俺が何杯飲んでるか見てたの?」
うぐ、とキョーコは言い淀んだが、すぐに開き直って口を開く。
「知ってますよ!1人でこっちにいらしたから、何かあったのかと気になって仕方なかったんですから」
「そうか…気にしてくれてありがとう」
「ど…どういたしまして…」

蓮の柔らかい笑顔にどぎまぎしたキョーコが顔をそらすと、ちょうどキョーコの前にグラスが置かれた。薄茶色の液体に立ち上る泡を眺めながらキョーコはまたぽつりと呟く。
「今だけは年の差も縮まってると思ったのにな…」
蓮はウイスキーのロック。自分の前にはジンジャーエール。悔しいが、自分にはそれがお似合いと言う事だろう。やはり、自分と蓮の間には年齢差以上の溝が横たわっているとしか思えない。
「縮まってるって?」
蓮に問われて、心の声が漏れてしまった事に気がついてキョーコは慌てて弁解した。
「いえっ!別に、あの、何でもないです…!」
「ああ、そうか。ちょうど今は君が20歳で、俺が24になる前ってことだね。ふふふ、確かにまあ、縮まっていると言えば縮まってるかな?」
「い、いいんです!別に追いつける訳じゃないんですから」

キョーコは焦ってグラスに口をつけた。が、目をまん丸くしてグラスの中身を凝視する。
「これ、辛い…?」
「そう。それが本当のジンジャーエール。最上さんが知ってるのはお子様用だ」
「だけど…お酒じゃないですもん」
「…これ以上酔って誰かと何かあるのは"俺が"怖いんだよ。誰も君の事をお子様扱いなんてしてない。貴島君だって君を酔わせて、スキンシップを図ろうとある意味必死だ。まあ、君はそれを喜んで受けて入れてたみたいだけど」
「喜んでなんていません…ただ、その、拒否もしにくかっただけです」
「なんで?」
「だってそんな、後輩がそんな生意気なことは…!」
「じゃあ、嫌だったの?」
「嫌と言うか……」

これが敦賀さんだったらいいのにって思っただけです。

心の中で思っただけのはずだったのに、キョーコが蓮の顔を見ると蓮の目は大きく見開かれている。

もも、もしかして、私口に出してた…???

「出てたよ…小さい声だったけど、ちゃんと聞こえた」
おでこに手を当てて、かなり照れくさそうに笑った蓮は片手をキョーコの頬へと伸ばした。大きな温かい手の平に頬をそっと包まれ、親指で頬をすりすりとなでられて、キョーコの目は猫のように細められる。
「これは、嫌じゃないの?」
「う…嫌じゃ……ないです……」
「そうか…嬉しいな。俺もずっとこうしてたいし、もう少し最上さんとスキンシップを図りたいけど…さすがにみんなの前でこれ以上はやめておこうか」


みんなの前?


キョーコははっと気がついてがばりと体を反転させた。
店の奥の2つのテーブルでは、全員が固唾を飲んでこちらを見守っている。

「わあぁぁ~~~~~~~~!!!わ、わすれてくださいーーーーーーー!!!!!」

その後キョーコは怒とうのように押し寄せる皆からの質問に、「誤解です!違います!」と懸命に弁解する破目に陥った。
しかし、蓮からぽそりと耳元で呟かれた言葉にはにかみながら嬉しそうにこくりと頷いたため、蓮の声が聞こえなかった面々に更に激しい追及を受けることになったのだった。


皆には決して明かさなかった蓮の言葉は……
「このあと、2人だけで飲みなおそうか?」





てことでぞうはなの想像では

蓮さん => いじめっ子度UP
キョコさん => 心の声漏れ度UP
2人共通 => 好き好き度UP

でした~~。

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