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月の下で (6)


こんばんは!ぞうはなです!
一昨日、中秋の名月とか書いちゃいましたが、昨日でした…お恥ずかしい。
今日も晴れてて月がきれいですー。

とりあえず、更新!です!!
はふう… (<- 33巻よんだのでたましいがぬけてる)





「へぇ~~、な~~ぁるほどねぇ~~~」
えらく語尾にビブラートがきいてるな、と思いながら、着替えを済ませた蓮はスタジオのマネージャーの元へ歩み寄った。
マネージャーの横にはぴっしりと直立不動のキョーコがいる。その身にまとう色が回りの注目を集めていることに気づいているのか、なにやら落ち着かない表情でそわそわしているようだ。

「あ、ごめんキョーコちゃん、蓮の水を買ってきてくれるかな」
社がキョーコに小銭を渡すと、キョーコははじかれたようにスタジオから駆け出していく。
「水ならそこに用意されてるでしょうに…」
蓮が顎で指し示した先には、控え用のテーブルの真ん中に大量に置かれた各種飲料のペットボトルがある。
「お前は銘柄にこだわるってさっき言っといたからさ」
「…人を気難しい男に仕立て上げるのやめてもらえませんか…」

軽くため息をついた蓮を、社はにやりと笑った顔で見上げた。
「やっぱりお前、差し入れのお菓子を有効に『使った』んじゃないか」
「何を最上さんから聞きだしてるんですか」
「さっき車の中でうまく話をそらしたつもりだろうけどなあ?俺にはお見通しだ」
「別にそらしたつもりはありません」
「じゃあいいじゃないか、キョーコちゃんから聞いたって」
「それは構いませんよ。他意はありませんから」
「他意ねえ…?」
キョーコが素晴らしい速さで駆け戻ってきたため、2人の会話は中断した。

にこやかな笑顔で付き人らしく蓮の世話を焼こうとするキョーコを目の端で見ながら、社は心の中で今聞いたことを整理する。


確かにさ?あのプリンに関しては蓮が困ってたのは俺も知ってるけど。
一度顔を合わせたキョーコちゃんに譲ろうと思うのも、まあおかしくはないけど。
その後はあいつ、差し入れのお菓子、積極的にもらって持って帰ってるよなあ…それを何のかんの名目付けて、結局はキョーコちゃんとつながりを持ちたいってことだろ?
一度しか会った事ないってキョーコちゃん言ってたけど、もしかして蓮、一目ぼれなのか?
それにしても…寄ってくる女性は軽くいなすのに、それでいてキョーコちゃんとは週1回の手紙交換だけってさあ…!


ぐ~ふ~ふ~~ と1人で笑うマネージャーを呆れた目で見ながら、蓮はキョーコに話しかけた。
「付き人ってのは名目だから、そんなに気を遣わなくてもいいからね?」
「あ、はい!いえでも!!敦賀さんのお仕事のサポート、させてください!」
「ありがとう。とりあえず、座ったら?」
「とんでもない!!私ごとき下っ端、椅子なんてもったいない!!敦賀さんこそ座ってください!」
「女の子に立たせておいて自分だけ座るわけにもね」
「う…じゃ、じゃあ私も座りますから!」
「うん、そうしようか」

結局2人してスタジオの隅でパイプ椅子に座る。セットの中ではスタッフが準備で動き回っていて、キョーコは珍しそうにその様子をじっと見た。
「ドラマの現場は初めて?」
「はい、バラエティ番組の現場は見させていただきましたがドラマは初めてです」
「ああ、バラエティとはぜんぜん違うでしょ」
「はい!本当にあそこだけ会社の中みたいですね…」
「セットもよくできてるけどね、本番が始まればまたがらっと世界が変わるはずだよ。よく見学しててね」

やがて本番が始まり、きらきらと光る目に見送られて蓮はセットに入った。
「あの派手な衣装の子、敦賀君の事務所の子?」
「後輩…になる予定の子ですよ」
蓮は共演者の質問に答えると笑顔を見せる。いつもより微妙に気合が入る自分に「俺もだいぶ単純だな」と苦笑しつつ、蓮は役へと気持ちを集中させていった。

その日の2つ目の仕事もドラマの撮影だったが、こちらは1つ目とは変わって街中でのロケだった。
衣装を身に着け、少し髪形もいじった蓮の姿を見て、キョーコがぽかんと口を開けている。
「すごーーい…敦賀さん、さっきとは全然違う人みたいです…」
「あっちはやり手の会社員、こっちは泥臭い熱血刑事だからね」
「演技が始まるともっと別人になるよ、こいつは」

社の言葉にふとキョーコが考え込む。
「別人…?確かにさっきの本番中の敦賀さんはいつもと違いましたが、演技ではないんですか?」
蓮はその表情を見ると少し腰をかがめてキョーコの顔を覗き込んだ。
「俺たち役者は、何人分もの人生を生きるんだ。たとえ役柄といっても、その瞬間はその人間として生きている」
「自分じゃない他人になるってことですか?」
「そうだよ。性格も立場も、生まれてきた環境も何もかも。自分にはなかなかできない経験も、いっぱいできる」

真剣な顔で蓮を見つめるキョーコに、蓮は笑いかけた。
「やってみたいと思ってる?」
キョーコははっと我に返ると慌てて両手を振った。
「いえそんな、私なんかには…!」
「今すぐじゃなくても、可能性として考えるのは悪いことじゃないと思うよ。興味があるならなおさらね」
蓮は はい、とキョーコに台本を差し出した。
「この文字の羅列からどんな人生が生み出されるのか…面白い仕事だと俺は思ってる」

キョーコは恐る恐る台本を受け取ると、ぺこりと頭を下げてぺらぺらとめくりだした。
「お前、キョーコちゃんに役者を勧めるのか?」
「やりたいことならチャレンジするのはいいと思いませんか?」
「そう思うけどさ。お前、キョーコちゃんとの接点増やそうと…」
「そんな不純な動機で無責任なこと言いませんよ」
「ぷふふ。言わなくても不純な動機はあるんだな、胸の中に」
男2人のやり取りはぼそぼそと続いたが、キョーコはすっかり台本に集中してまったく聞いていないようだった。

ロケは昼ごろに始まり、すでに3時間ほどが経過していた。空は雲ひとつない快晴、撮影も順調だ。
いくつかのシーンを撮り終えて短い休憩に入った連は、駆け寄ってきたキョーコから水のペットボトルを受け取った。
「ありがとう。最上さん、座らなくて大丈夫かい?」
「そんな、私なんて見てるだけですから!」
「でもなんだか、少し顔色が悪いように見えるけど…?」
「そうですか?全然、元気ですよ!」
キョーコはにっこりと笑顔で蓮に答える。蓮は少しキョーコを気にしながらも、またすぐにスタッフに呼ばれて撮影へと戻っていった。

スタッフから小さな悲鳴が上がったのは、蓮のその日最後のシーンの撮影が終わった直後だった。
蓮が声のした方へ顔を向けると、機材と椅子の隙間から地面にへばりつくような位置にピンク色が見える。慌てて駆け寄ると、やはりそれはキョーコだった。意識を失ったキョーコは頬が上気して息も荒く、顔に触れてみると肌が熱く少しざらつくような感触を覚える。

まさか…

蓮はすばやく周りを見回し、キョーコを横抱きに抱きあげると立ち上がった。
「すみません、ロケバスを少しお借りします」
ざわついた中によく通る蓮の声が響き、スタッフが慌ててロケバスのドアを開ける。電話のために席をはずしていた社も駆け戻ってきていた。
「蓮!キョーコちゃん倒れたのか?」
「はい。少し熱があるようなので体を冷やせるものを持ってきていただけますか?」
「わかった!」
すぐに走っていく社を見送って、蓮はロケバスの後部座席にキョーコを横たえるとすべての窓のカーテンを閉める。暗がりの中で見回すと、すぐに衣装に使われる裁縫道具が入った箱が目に留まる。蓮は大股で箱に近づくと、上蓋に手をかけた。


「あ、気がついた?」
男性の声にキョーコは数回瞬きをした。ぼんやりと見える風景は薄暗く、狭い。
「あれ?私…」
慌てて起き上がると男性が近づいてくる。心配そうにキョーコを覗き込んだのは社だった。
「急に倒れちゃったんだよ。覚えてるかな」
「あ…すみません、ご迷惑を…」
おでこに冷却シートが貼られているのに気がつき、手を上げると腋から保冷剤が転がり落ちた。
「いやいや、大丈夫だよ。熱があったみたいだからとりあえずおでこと腋だけ冷やしたんだ。気分はどう?」
「すっかりいいみたいです…」

まだ呆然としているキョーコを見て、社はほっとしたように笑った。
「やっぱり蓮が言うように、ずっと外で日光に当たってたから日射病になっちゃったのかな?」
「あ……敦賀さんが、そんなことを?」
キョーコは差し出された水のペットボトルを受け取りながら社を見上げた。
「うん、だから暗くして冷やして水分補給して。よかったよ、元気になったみたいで」
「私、どれくらい…?」
「んー、それほどでもないよ、3、40分くらいかな?」
社が腕時計からキョーコに目を戻すと、キョーコは手を口に当てて目を見開き、驚いたような顔をしている。それから少し眉間に皺がより、何かを考えているような表情になった。

「ど、どうしたのキョーコちゃん、まだ気分悪かったりする?」
キョーコの表情がすぐれないと思ったのか、社は再び心配そうな顔になったが、キョーコはそれを見て慌てて弁解した。
「あ、いえ、もう大丈夫です!…あの、敦賀さんは…?」
「ああ、ついさっき次の仕事に向かったよ」
「…もしかして、社さん私のために残ってくださいましたか…?」
「キョーコちゃん、そんな顔しなくていいから!大丈夫、あいつさえいりゃ仕事は進むんだし、すぐに合流できるから。椹さんには連絡してあるから、キョーコちゃんは今日はもう帰って休もう」

社に促され、スタッフに謝罪をしてタクシーに乗り込みながら、キョーコは眉間に皺を寄せて何かを考え込んでいた。

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コメントコメント


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更新ありがとうございます^^ 裁縫箱の謎が解けずに悶々としております... 本誌もまさかの展開に魂が抜けてしまいました。

ねこ | URL | 2013/09/22 (Sun) 03:25 [編集]


Re: タイトルなし

> ねこ様

コメントありがとうございます!
うふふ、その謎は次回、明らかになるのです~

本誌、ああ、どうなっているのかしらあ!
コミックス派の私としては新刊発売直後が本誌との差が一番縮まる瞬間なのですが、それでもやはりタイムラグが大きいのと、「ぐあ~~、ここで終わるの?また半年待つの?」というやきもきがもう…!
そしていそいそと書くことで発散(できてないけど)にいそしむのでした。

ぞうはな | URL | 2013/09/22 (Sun) 15:35 [編集]