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毒りんごをどうぞ【リクエスト】(1)

こんばんは!

さて、本日は marokuro様からいただきました2万ヒットのリクエスト。
リクエストのお題は『おとぎ話のパラレルでラヴラヴなお話』。

さあでも、ぞうはなの書くお話ですから、ラヴラヴが…どっかに行ってしまっています。
そしてもう原作までもどこかに行っています。ご都合主義な辺りのみがおとぎ話っぽいですが、皆さま、観念してお付き合いくださいませ…
(そう、人はそれをこう呼ぶ。『ひらき直り』と。)




むかしむかし、あるところにLME国という小さいけれど平和な国がありました。その国には2人の王女がいました。姉の王女はキョーコ、1歳違いの妹の王女は美森といいます。2人は黒い長い髪以外はあまり似ていない姉妹でした。

キョーコ姫には隣のアカトキ国の尚王子という、許嫁がいました。キョーコは幼いころから許嫁である尚の事が好きでしたが、実は妹の美森も尚に惹かれていました。そのため、成長するにつれて、尚と結婚することが決まっているキョーコの事を疎ましく思うようになっていました。

ある日、尚がいつものようにLME国の城を訪れました。尚は隣国を訪れてちやほやと接待される事が好きでしたので、暇になると遊びに来ているのです。キョーコは尚の訪問を喜んで、尚の好物を作りに城の厨房に入っていました。食事の準備ができたため、ダイニングの準備を他のものに頼んで尚を探しに行きます。

「ショーちゃん、どこに行っちゃったんだろう?」
城の長い廊下をきょろきょろしながら歩くキョーコは、普段は使わない応接間の中に人影を見つけました。それが尚である事に気がつき、声をかけようとしましたが、上げかけた手は途中で止まりました。なぜなら、尚の隣にもう一人、誰かがいるのが見えたからです。

「ねえショーちゃあん…ショーちゃんと結婚するの、私じゃダメなの?」
尚にぺったりとくっついた美森が、甘えた声で尚を見上げます。
「あー……それはなあ……まあでもさ、俺が誰と結婚しようが、おめーのことはちゃんと面倒見てやるぜ?」
「ほんと?ショーちゃん」
「ああ。お前の方が俺好みだしな」
2人の顔がそっと重なります。キョーコは驚きのあまり声をかけることもできず、物音を立てないように後ずさると、そのまま走り去りました。

結局その日、キョーコは尚や美森と一緒に食事をしたのですが、応接間で見たものが頭に残ってしまい、尚の顔をまともに見ることができませんでした。美森が尚に惹かれている事は気付いていたのですが、尚がそれに応じているとは思ってもいなかったのです。しかし、自分も尚の事を好きなので、美森の気持ちは理解できなくもありません。
しばらくの間キョーコは悩みましたが、直に尚の本意を聞いてみようと思い、次の尚の訪問を待つ事にしました。

そして2週間ほど経ったころ、再び尚がLME城を訪れました。
尚の滞在中はずっと美森がべたべたと尚にまとわりついていたため、キョーコは尚に美森とのことを聞く事ができません。ようやく尚が帰る頃になって美森が離れたため、キョーコは尚が城での滞在時に使っている部屋へと出向きました。

しかし、ここでもキョーコは驚くべき光景を目にすることになったのです。

いつも尚が従えている侍女である祥子が、尚の腕の中にいます。
「尚…LME城の中でこんなことして、誰かに見つかったらどうするの?」
「ああ?別に…大丈夫だろ」
「まったく…許嫁がいるお城で…悪い王子様だわ」
「許嫁なんて親同士が決めたことだろ?あんな色気のねー女との婚約、破棄しないだけありがたいと思ってほしいもんだぜ」
「そんなこと言って、キョーコ姫はよく働く人だから、いいように使う気満々なんでしょ。美森ちゃんの事は?」
「あいつはなー、体はいいんだけど、ちょっとこっちがな」
尚はにやりと笑って自分の頭を人差し指でつついてみせます。

「いっつも言ってんじゃん。俺は祥子さんみたいな大人の女が好きなんだよ」
「もう…調子いいんだから」
尚は祥子と深いキスを交わすとその腰に腕を回します。
「ん、もう…これ以上はダメよ……帰ってから…」
「ちぇ。分かったよ」

キョーコは頭が真っ白のまま、その場を離れました。自分が信じていたものが全てがらがらと音を立てて崩れて行くような気分でした。でも、こんなことは誰にも相談できません。これからどうしたらいいのか分からないまま、キョーコはふらふらと自室に戻ったのでした。

一方の美森は、ある日お忍びで訪れた城下で、1つの鏡を手に入れていました。
なんとなく吸い寄せられるように入った少し薄暗い1軒の店。そこにいたレイノと名乗る店主が魔法の物だと言ったその鏡は、綺麗な装飾が施された楕円形のものでした。

「あんたが知りたいと思ってる事に答えてくれるものだ…なんでもな」

レイノが意味深な笑みとともに言ったその言葉を完全に信じた訳ではありませんでしたが、美森は自室にその鏡を据えると、鏡を見つめて少し考えてから、恐る恐る話しかけました。
「鏡さん、鏡さん、王妃として一番ふさわしいのは、誰?」

美森の言葉が終わってすぐに、鏡面がぼやんと曇りました。そして、そこに1人の若い女性の顔が浮かびます。
「んー、そうねえ。やっぱり良く気がついて頭の回転も速くて謙虚な、キョーコちゃんじゃない?」
言われた美森は呆然としました。
「え…でもお姉さまは美森より胸もちっちゃいし、美人じゃないし、見た目も地味で華やかさに欠けるわよ?」
鏡はけらけらと笑います。
「そーんなの!キョーコちゃんは着飾れば見違えるわよ!大体、王妃に一番必要なのはそんな見た目なんかじゃないわよ」
鏡は至極まっとうなことを言ってはいるのだろうけれど、なんだか美森はいらっとしました。

お姉さまさえいなければ…美森が一番なんだから!

美森は暗い情熱をめらりと燃やしたのでした。


キョーコは表面上はいつも通りの日々を送っていました。
絶望の気持ちは日が経つにつれ、尚への憎しみの気持ちへと変わってきていました。

そもそもあのバカが私にも美森にもいい顔してるのが間違いなのよね!
大体私と結婚するのがいやならそういえばいいのに、私に全部公務を押し付けて自分は独身時代と変わらずに遊びまわるつもりなのね…こっちから破棄してやろうかしら!

幸か不幸か、国王と王妃は外遊に出かけたばかりであと1ヶ月は戻ってきません。国務は有能な大臣たちが王の意向を受けて粛々と進めているのですが、大きな決断ができる状態ではありませんでした。そのため、キョーコは色々と考えながらも表立って動く事はできなかったのです。

そんなある日。
キョーコが最も信頼を置いている侍女の奏江が血相を変えてキョーコの部屋へ飛び込んできました。奏江はキョーコの身分を証明する宝剣と、数枚の着替えをそこらにあった布袋に詰め込むと、何も言わずにキョーコの手を引っ張って庭へ出ます。
「な、なに、モー子さん?なんなの??」
「いいから黙って、ついてきて!」
庭から王城の裏へ抜けると、そこには普段は美森の護衛をしている3人の兵士が待っていました。
「姫をなんとか、お願いね!」
「おう!任せとけ」
3人は硬い表情ながらも強く頷くと、キョーコの手を引っ張って足早に歩き始めました。キョーコは訳も分からず引っ張られていましたが、すぐに後方の城の方からガラスの割れる音や女性の悲鳴、怒号などが聞こえたために顔をこわばらせました。

「い、一体何事なんですか?」
「キョーコ姫、今はとにかく森へ…!」

3人はキョーコを引っ張って、城のすぐ裏にある鬱蒼とした暗い森の中へと入り込んだのでした。


森の中は木が生い茂り、光があまり届かないために湿っぽく薄暗くなっています。
普段王城の人間はこの森に入り込むことが無いため、キョーコを先導する3人の兵士もやや腰が引けていました。30分ほど歩いてどちらが来た方向か分からなくなりかけたころ、先頭を歩いていた兵士がようやく足を止めました。
「キョーコ姫様、いきなり連れ出して申し訳ありません」

3人はそこでようやくキョーコに訳を話し始めました。
懸命に話してくれたのは3人のリーダー、石橋光です。3人は同じ石橋と言う名前のためか、いつもグループを組んでいました。他の2人に突っ込まれながら光が語ったのは、キョーコにとって恐ろしい事でした。

美森はキョーコがいなければ自分が尚と結婚できる、と思い込むようになり、鏡を買った怪しい店に頻繁に通うようになりました。最初はおまじないグッズなどでキョーコの不幸を願ったりしたらしいのですが、段々とエスカレートし、最終的には屈強な兵士たちに魔法をかけてキョーコを襲わせようとしたのです。
幸いな事にそれを石橋3人組経由で奏江が知り、危機一髪でキョーコを逃がす事に成功したのですが、今城に戻ったらキョーコは確実に命を落とすだろう、と言う事でした。

「助けてくださってありがとうございます。でも、あなた達は美森の護衛ですよね?こんなことして大丈夫なのですか?」

自分たちの身を案じてくれるキョーコに、3人はいたく感動しました。リーダーは特に。
「いや、だって俺は…美森様よりキョーコ様の方が……!って、余計な事をっ。失礼しました!!」
「リーダー、男ならそういうのは心の奥で思うだけで、黙っとくもんやで」
「そうやそうや」

3人は、森のそばにある断崖絶壁からキョーコが足を滑らせて落ちたと報告する、と言って戻って行きました。3人が姿をくらませたままだと怪しまれるからです。

キョーコは1人、薄暗い森の中に残されました。とても心細く、死んだ事にされて城に戻れない事に途方にくれましたが、本当に殺されてしまうのに比べればまだましかもしれない、と思い直しました。かなり前向きなお姫様です。

王様が戻ってくるまで息を潜めていれば事態は変わるかもしれませんが、それまでこの森の中を1人でさまようわけにも行きません。かといって城に戻れば美森の手のものに見つかって殺される可能性がとても高いので、戻る事もできません。

キョーコは城の周りの地理を思い起こしてみました。
確か、この森は隣の国との国境の森です。隣の国へはこの森を越えていくか、高くそびえる山脈を越えなければいけないため、ほとんど交流はありませんが、もしかしたら隣の国へ抜ければかくまってもらえるかもしれません。尚のいるアカトキ国とは反対に位置するので、村人などから情報が漏れる事もなさそうです。

よし、と気合を入れると、キョーコ姫は森の奥、隣の国へと続いているはずの道に向かって足を踏み出したのでした。




ああああっ。1話目に…登場しなかったよ…

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