SkipSkip Box

対決!(後編)


こんばんは!
あああ、蒸す!!!

さて、本日は昨日の続き。
頑張ったのですが、とっちらかったまま終わりました…





「さて、最後の勝負にまいりましょう」
「現時点で20対10で敦賀君が勝ってるねえ。これが最終勝負だから、勝った方にはどどんと100ポイント!」
「山形さん、今までの勝負の意味がなくなりますよ」
「まあまあ、こういう勝負のお約束でしょう」

リズミカルな司会のやり取りをちょくちょく挟みながらコーナーは進行し、今度は蓮と尚の前には白い皿に乗った赤いりんごがセットされる。

「京子ちゃん、これはどういうこと?」
「はい、ここまで、スポーツ、そしてお2人の専門のジャンルで対決をしてきたんですけど」
「そうだねえ」
「これからのいい男、料理もできなきゃダメ!」
「おお、それもそうだねえ!」
「そんな訳で、お料理対決です~~~!」
ルールは単純で、制限時間内にりんごの皮をちぎらずにより長く剥いたほうが勝ち、というものだ。

実はこの勝負も尚から持ち込まれたものだった。尚の実家では昔から旅館を営んでいる。継ぐなんてとんでもない、と反発はしていたのだが、父親が板長なだけに強制的に厨房に入れられた時期もあったため、キョーコほどではないが包丁の扱いも普通の男よりはうまいつもりでいる。
そして、蓮は料理に無縁であると、TVのトーク番組で本人が言っていたのを尚は耳にしていた。確かにあの"なり"で自炊している画は想像が難しい。この勝負はもらったも同然だろう。


最初の対決からなんだか俺があの男の引き立て役みたいな感じで面白くねーけど…
まあ最後しめときゃ勝つんだし、いいか。


「制限時間は30秒です!」
山形の宣言と笛の音で、尚は置かれたりんごとナイフを手にして皮をむき始めた。
「尚じょうず~~!」
尚の手からは一定のリズムでりんごの皮が皿へとぶら下がっていく。観客席から飛ぶファンからの賞賛の声に尚は顔を上げたが、かなりの人数の注目が隣の男に向けられている事に気がついた。なんだ?と横を見ると、予想外の光景が目に飛び込んでくる。

蓮は穏やかな表情で淡々とりんごの皮を剥いている。
その手つきは慣れた職人のようで、ナイフが当てられた部分からは尚の2倍ほどの速さでしゅるしゅると赤い帯が伸びていた。

「おおお、これまた2人ともうまいなあ」
「意外ですねえ」
言いながらもキョーコはなぜか両手で握りこぶしを作っている。


この男、料理とかやらないんじゃなかったのか?!


動揺が指に伝わり、尚の持つリンゴの皮がぶつりと切れた直後、山形の口にくわえられた笛が ピピーーーーー と甲高く鳴らされた。


その後のトークのコーナーなどもなんとか無難にさばき切り、収録終わりの声を聞いてキョーコは深く長く息をつく。

なんとか、終わったわ…どこもおかしくはなかったはずだけど、大丈夫だったわよね?

蓮も尚も表面上は友好的な表情を作り、観客を沸かせていた。蓮が落ち着いたところを見せ、尚がそれにやや突っかかり気味だったのも、対決の結果やキャラクターを考えれば不自然ではなかっただろう。

とりあえずホッとしながら台本などをまとめていると、隣の山形が話しかけてきた。
「お疲れ様、京子ちゃん」
「お疲れ様でした!今日もありがとうございました」
「いやあ、観客のテンションがすごかったね。まだ耳鳴りがしてるよ」
山形はしかめっ面で小指で耳をほじくる素振りをしてキョーコを笑わせた。
「ゲストが豪華でしたからねー」
「…で、京子ちゃんはどっちを応援してたの?」
「はい??」
山形は台に肘をついてにやにやとキョーコを見ている。
「最後の対決、握りこぶし作ってハラハラした顔してたでしょ?」
「え、いやそんなことは…!」
キョーコが焦って両手を振りながら否定しようとしたところで、聞きなれた声がかかった。

「山形さん、最上さん、お疲れ様でした」
「おお、敦賀君お疲れ」
「敦賀さん!お疲れさまでした。出演ありがとうございました!!」
「こちらこそありがとう、不破君との対決に勝てたのは最上さんのおかげだよ」

にこりと笑った蓮のセリフにキョーコは思わず周りを見回した。途端に蓮の斜め後ろにぎらりと目を光らせた幼馴染の姿が見えて不覚にもびくりと肩を震わせる。どうやら山形だけではなく尚にも蓮の言葉を聞かれてしまったようだ。
「なんで京子ちゃんのおかげなの?」
当然のごとく尋ねてきた山形に、蓮は笑顔で説明をした。
「実は、俺ほとんど料理なんてしたこと無かったので、対決内容聞いてからりんごの皮むきを最上さんに教えてもらったんですよ」
「ほう?…敦賀君と京子ちゃんは同じ事務所だったっけ。仲いいんだねえ」

どこかの眼鏡のマネージャーが浮かべるのと同じ種類の笑みを浮かべた山形に、キョーコは慌てて弁解する。
「い、い、いえ!あの、敦賀さんは先輩としていつもふがいない後輩の面倒を見てくださってるので、皮むきくらい…」
「いやでも、最上さんはさすが料理上手だよね」
「何を仰いますか!大体私、何も教えてなんていませんよ!」
「え?どういうこと?」
心底不思議そうな顔で山形が問う。キョーコはややふくれっ面で答えた。
「敦賀さんは私が剥いてるのを横でじっと見てただけなんです。真似して剥き始めて、あっという間に同じスピードですよ」
「へえ!すごいんだねえ、敦賀君は。器用なんだな」

蓮は穏やかににこにこと笑っている。
「いや、単純に真似するだけですから、お手本が上手じゃないとダメなんですよ。それに、そのために時間も割いてもらっちゃったし、結局他にも迷惑かけちゃったし…」
キョーコは驚き顔でがばっと顔をあげた。思わず蓮の口をふさぎたくなったが、全く不意打ちで間に合わない。だって、山形は蓮の言葉をしっかりと聞いている。
「何?他の迷惑って」

「いや、折角のチャンスだからって夕飯まで作ってくれて…」
「つ、つるがさん!!」
キョーコは真っ赤な顔で蓮の言葉を遮ったが、逆に山形の興味を煽る結果となってしまった。
「何々、京子ちゃん、敦賀君にご飯作りたいってこと?おおすごいな、積極的なんだね。大丈夫、俺黙ってるから!」
「ちちち、違いますよ!単純に、敦賀さんは放っておくと何も召し上がらないので、ちゃんと食べてもらえるって、そういう意味でのチャンスってことですよ!!」
「それにしてもさ、ご飯作るって…敦賀君の皮むきの練習、どこでやったの?」

しん、という静寂がその場を包む。キョーコはやや青ざめて「…う……」と呻き声を発したが、先輩俳優は全く躊躇無かった。
「そりゃあ往来でやるわけにも行きませんし、俺の部屋ですよ」
「おおおおおお!大丈夫京子ちゃん、俺本当に口固いから!!」
「いやだから違うんですってばー!」


「……な ん だ っ て……?」


ぎゃいぎゃいと言い合っていたところに、地の底を這うような声が聞こえて一同は思わず口をつぐんでそちらを見た。
「キョーコ…お前本気のどあほうなんだな?」
憤怒の表情で尚がキョーコに詰め寄ってくる。

「な、なんなの…!人の事どあほうとは何よ失礼な!」
尚は鋭い目でキョーコを睨んだまま、すうう、と息を吸い込む。

「なんのかんの理由つけられて男の部屋にのこのこ上がり込む奴の事をどあほうというんだ、このどあほうがーー!!」
「んなっ!何回言えば気がすむのよこのバカショー!」

山形は呆気にとられて口を開け、2人の言い争いを見つめたが、そんな中、冷静な男が一人いた。

「最上さん」

ひやりと流れる冷気に、キョーコの背中を悪寒が走る。
「は、はい!」
「俺が勝てたし、約束通りお礼をしよう。さ、遅くなってしまうから早く着替えておいで」
「あ、すみません、分かりました!」
キョーコはあたふたと山形やスタッフに挨拶をしてスタジオから走り出て行く。引き留めるために動こうとした尚は蓮の殺気に縫いとめられた。
「お前…キョーコをどうするつもりだ?」
「嫌だな、人聞きが悪い。言っただろう、練習につきあってもらったお礼をするだけだよ」
「てめ……!」
「今日の勝負は君の提案も入ってたと聞いたよ。なかなか楽しめた、ありがとう」
蓮はにこりと微笑むと、山形に会釈をしてスタジオを後にした。後から肩をすくめたマネージャーがそっとついて行く。


「あああんんのおぉぉぉぉぉおおおお、きざ男とバカ女ーーー!!!!!」

スタジオに立ち尽くし、ぶるぶると震える尚の肩を「頑張れ」という表情を浮かべて ぽんぽん、と山形が優しく叩いたが、それは尚にとって何の慰めにもならなかったのだった。




そして山形さんは、「不破君が成人してたら一緒に飲んで悩みを聞いてあげたのになあ」と思ったのでありました。

関連記事

PageTop
 

コメントコメント


管理者にだけ表示を許可する