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偏愛感情(23)


こんばんは!

なんですかもう、毎日あっつい!!!
かき氷器、買おうかなあ…

本日の更新、いきまーす。





「ああ、こんなところに本物がいる訳無いって思ったか?」
「そりゃもちろんです。他人の空似なんだろう、と思い込もうとしましたが…」
蓮は個室の引き戸を開けると、通りかかった店員にビールを頼んだ。いつの間にかキョーコ以外は全員、飲み干してしまっている。
「え、で、いつ本物だって分かったんだ?」
注文を終えて引き戸を閉めた蓮に社はおそるおそる尋ねる。他の者もごくりと唾を飲んで社と蓮を見つめた。

「確信したのは…休出した時、偶然ロケ現場にいる最上さんを見た時です。でも本人に確認したのはバイトが終わってから、かな?」
蓮はキョーコに確かめるように言った。キョーコも蓮を見てこくりと頷く。

「え?バイト終わってから会ってたのか?」
社の関心はすっかり、キョーコが京子である事から、いつ蓮がそのことを知ったのか、と言う方へ移っている。
「会いましたよね、皆さんも。あの、打ち上げの飲み会の時です」
「飲み会の時……あれ?あんまりちゃんと覚えてないけど、そんな話する隙あったか?」

キョーコは何かを思い出したのかやや顔を赤らめ居心地が悪そうにきょろきょろしている。蓮はその様子をちらりと眺めてから答えた。
「俺、結局二次会には行きませんでしたよね?」
あっ!と社は気がついた。確かにあの日、蓮は一次会の店に忘れ物を取りに戻ってそのままいなくなった。蓮はメールでちょっと急用、と送ってきて、自分も酔っ払っていた事もあって深く追求しなかったが。

「ええ?どういうこと?あの後敦賀君とキョーコちゃんって会ってたの?」
「キョーコちゃん、一次会終わってすぐ帰らなかったっけ?」
山口と石井が次々に疑問を口にする。光は記憶が無いのか、黙ったまま真剣な顔で皆の話を聞いていた。
「あの時思ったよりお酒が回ってて、皆さんと別れてから歩き始めたら頭が痛くなって、醒まそうと思ってお店のすぐそばのガードレールに座ってたんです。そしたらそこに敦賀さんが通りかかって…」
言いにくそうにキョーコは下を向いてぽしょぽしょと話す。ちらりと蓮を見上げて助け舟を求めたため、蓮がその後を続けた。
「だいぶアルコールが回ってしまったようだったので、カラオケボックスに行って、酔いをさます間に少し話をしたんです」

なるほど、と社は頷いたが、すぐに怪訝な顔になって隣の蓮を覗き込んだ。
「で?それからどうしたんだ?」
「最上さんはすぐに帰りましたよ。俺も、それから二次会に行くのも、と思ってそのまま帰りました」
社は少し目を細める。
「それだけ、か?」
「それだけです」

「お待たせしましたー!」
そのタイミングで元気よく店員が入ってきて、ビールジョッキを次々と置いていく。一同は黙りこくって店員を見送った。
ジョッキを配る蓮を怪訝な表情で見ていた社だったが、キョーコが恐縮したように体を小さくしているのを見ると、にこりと笑って話題を変えた。

その後の飲み会は和やかに進んだ。山口と石井の女性コンビがよく飲むためか、全体的なペースは速く、飲むものもビールから焼酎へとチェンジしていた。光はいつになく言葉少なに杯を重ね、真っ赤な顔をして既にろれつが回らなくなり始めている。

そんな中、山口がこそりとキョーコに小声で聞いた。
「ねえねえ、キョーコちゃん。キョーコちゃんさ、バイト中は彼氏いないって言ってたけど、今はいるんだよね?」
聞きたくてもなかなか切り出せなかったことを、場の雰囲気が盛り上がってきた勢いに乗って口にしてみたのだ。キョーコはぱちくりと目をしばたいた。
「えっ??あ……ああ、はい、あの、…はい、います……」
声は段々と尻つぼみに小さくなっていったので、山口は慌ててキョーコに付け加えた。
「ああごめん!別に詮索するつもりは無くて、いいよ内緒だったら聞かないから!」
「あ、いえ…いることはもう会見でも言っちゃってるので…」
はきはきとしゃべるキョーコにしては歯切れ悪く言いよどむ様子を見て、社も会話に加わった。光は黙って耳を傾けているようだ。
「一般人だから誰って言えないんだよね?」
「そうですね、テレビでお名前出したりしたら迷惑かかっちゃいますから」
「でも…順調なの?」
「まあ、あの…そうですね、はい」

社はどこか思うところがあるらしく、腕組みをしてキョーコを見た。それから腕を解き、身を乗り出す。
「あのさ、誰って分からない程度にキョーコちゃんの恋人の事、聞いていい?」
「はい。お答えできる範囲でしたら」
キョーコは両手を膝の上に乗せて緊張した表情で正面に座る社を見る。山口と石井はいつになく攻める社に、どうなることかと興味津々で聞き入った。

「イケメンって噂があるけど、あれってほんと?」
「あの………はい…」
ひゅう~~~~~~~ と山口と石井が声を上げ、キョーコは真っ赤になる。
「身長は?大きい?」
「あ、かなり大きいですね」
「仕事は何してる人?」
「普通に会社に勤めてます」
「年は?」
「私より年上です」
段々と質問と答えのリズムが良くなってきて、周りは口を挟まずに問答を見守る。蓮も、焼酎水割りのグラスを手にして静かに2人を見ていた。

「その人は理系の人?」
「そうですね……お仕事は理系だと思います」
「先週金曜日にその人と会った?」
なんでそんなことを聞くんだろう?とキョーコは思ったが、ええと、と天井を見上げて考える。

先週の金曜日……あ、蓮さんとの最後の撮影の日だ。仕事だったけど、会ってる内に入るわよね…

「はい、お会いしましたが…?」
首をかしげて見返してきたキョーコをじっと見て、社はおでこに人差し指を当てて考え込んだ。それからゆっくりと顔を上げ、隣に座る蓮の顔を見る。社に見つめられた蓮は ふ、と笑みをこぼした。
「どうしました?」
「蓮……お前……いや、キョーコちゃんに聞こうか」

社はキョーコに視線を戻した。しばらく躊躇ってからゆっくりと言葉を吐き出す。
「あのさ…もしかして、その相手って…もしかして、こいつ?」
社がすいと指差した先には蓮がいる。キョーコは「え」と言葉につまると、ぎゅーっと、口を真一文字に結んで社を見つめた。
「否定しないってことは…」
キョーコの顔は見る見る内に赤くなる。それから、ふー、と息を吐きだし目をつぶって、それからこくりと深く頷いた。


ひっという息をのむ小さな声が光から漏れた。山口と石井は目を見開いてキョーコを見ている。
「あの…なんだかスミマセン」
音も出さずに固まっている面々になぜだかキョーコは頭を下げた。それを合図に全員が息を吐いて動き出す。

「え?え?ええ?ほんとに??うっそーーーー!」
山口は小声で、でも顔を赤くして握りこぶしを作った両手をぶんぶんと上下に振り、興奮している。
「うわなんだかもう、今日はショックが大きすぎ!!」
石井も額の汗を拭うような仕草をして小声で叫んだ。そして、2人は揃って蓮を見る。

「やっぱりばれちゃったね」
蓮はグラスを置き、肘をついてにこにことキョーコに微笑みかけた。
「はい…あのでも、お話してもいいとは思っていたので」
「でもどうして、俺だと思ったんですか?」
蓮は社に問いかけた。社は目の前のグラスを空にすると、光に差し出す。光は素直に受け取ると、氷を入れて焼酎の水割りを作りだした。

「だってお前、あの飲み会の後くらいからなんか変わったもん」
「変わりましたか?」
「お前が変わったと言うか、休むようになった。不定期に半休取ったり定時で帰ったりさ。明らかにプライベートに変化があったってことだろう?そしてそれは、彼女ができた、ということくらいしか考えられない」

よく覚えてるな、と蓮は頭を振った。
「でも、それと最上さんの事とは普通結びつかないですよ」
「お前…無意識か?」
「何がですか?」
「今この席で、キョーコちゃん見るときだけ顔が変わるんだよ」
蓮は少し動揺したため、無表情になる。
「そうですか…?」
「ああやっぱり無意識か。お前、キョーコちゃん見るときだけあまーい笑顔になってるぞ。そんなに分かりやすい奴だとは思わなかったけどなあ」
社は光が作った焼酎の水割りを受け取ると、すぐにまた口をつけた。


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