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偏愛感情(21)


こんばんは!

おおお、だいぶ更新が遅くなってしまいました。
今日は少しだけ短めですが、きりのいいところまで…。

ではでは早速どうぞ!





「愛しているなら、身も心もつながりたい、男ならそうは思わないのか?」

蓮の頭の中に、ローリィに言われた言葉がよみがえった。
さすが、愛に重きを置き、それを明言する社長だけある。きっとその言葉は自身の経験に裏づけられたものなのだろう。普通に聞き流して忘れていたセリフが、このタイミングで重みを増して蓮の胸にしみこんできていた。


寝室はぼんやりとした黄色いフットライトの明かりのみに照らされている。それでもお互いの表情は見えて、明かりを消して欲しいキョーコと、つけておきたい蓮の妥協点の明るさと言えた。いや、キョーコの恥じらいの表情やなだらかな曲線を描く体のラインなど、蓮には全てが見えてしまっている以上、一方的に妥協しているのはキョーコなのかもしれない。

「んっ…」
少し顔をゆがめて小さな声を漏らしたキョーコに、蓮は体の動きを止めた。
「痛い?」
「いえ…大丈夫です」
うっすらと目に涙をためたまま、キョーコは笑顔を作ってみせた。それでも辛いだろう事は、キョーコの脇についた腕をつかむ手に時々力が入ることで分かる。
「無理しないで…辛いなら、やめるから」
蓮が少し体を起こしてキョーコの頭をなでると、キョーコはふるふるとかぶりを振った。
「無理じゃないです…痛いですけど…でも、嬉しいんです」
「キョーコ…」
精一杯の笑顔で見上げてくるキョーコを、何よりも誰よりも愛おしいと感じる。それは、もちろんキョーコの事を好きになってからずっと抱いている気持ちではあるが、この状況になって狂おしいほどの情熱に変わった。


過去、それなりに経験を積んできた、と思えるだけの数の女性を、蓮は己の腕に閉じ込め、体を重ねてきた。
恋人との行為は、単純に快楽を得るためだけではなく、愛情表現だと認識していたつもりだったが、今思えばそれは相当に浅い認識と実践だったと断言できる。
それは当然なのかもしれない。蓮自身、キョーコが初めて好きになった相手だと言ってもいいくらい、それまでの恋愛と違う感情に振りまわされている。精神的なものが違えば、肉体的な行為によって感じるものが違ってもおかしくは無い。

それにしたって…ここまでとは……

キョーコがもらすため息や、恥ずかしそうに目線を逸らした横顔、痛みに少ししかめた眉間の皺だって、どれもこれも、全てが蓮のつぼにはまって興奮を煽る。初めてのキョーコをいたわって慈しんで大事に進めたいのに、気がつけば自分を感じてくれる顔が見たくて無理を強いてしまう。心も体も快楽に打ち震えて、どうにも制御が利かないのだ。
これほどまでに余裕が無いのは、もしかしたら初めて経験した時以上かもしれない、と蓮は情けない気持ちにもなった。

そして同時に、自分の快楽以上にキョーコがどう感じているかがものすごく気になる。
自分の体を他人が触る事にどうしても抵抗があるようで、最初はなかなか思うように触れさせてはくれないし、徐々に慣れても声を出すのが恥ずかしいのか必死に押し殺してしまうので、自分ひとり快楽に酔っているのではないかと不安になってしまう。

願わくば、この状況にあっても2人が同じ気持ちでいたい。同じ感情を、気持ちよさを、共有したい。

そんな望みを抱いているところに差し出された「嬉しい」と言う言葉がまた蓮を煽り、暴走させようとする。それをなんとか押しとどめてキョーコをしっかりと抱きしめ、何度目か分からないキスをキョーコの唇に落とした。ずっとこうしていたいが、キョーコが辛いなら早く終わった方がいいのかもしれない、などと蓮が考えていると、キョーコが両腕を蓮の首に回して抱きついてきた。

「恥ずかしいんですけど…こうやってじかに触れあえるのが嬉しいんです…」
「キョーコ…」
少し汗ばんでしっとりとした肌と肌が触れ合うと、確かにぬくもりが伝わって安心できる。
「蓮さん…」
鼻の頭にちゅっとキスをされて、キョーコがくすぐったそうに笑いながら蓮を見た。
「キョーコ、ベッドの上で"さん"付けはダメ…」
「え………蓮…」
「そう。もう1回呼んで?」

「蓮……蓮…すき……だいすき……」

まだ恥ずかしがっていたキョーコにおねだりしたら、それ以上のものが返ってきてしまった。
「キョーコ…!ああもう……ごめん、ちょっとだけ、我慢してて」
蓮は切羽詰まった声でキョーコに告げ、必死に耐えるキョーコの表情さえも目に焼き付けて、それからやっと、キョーコを痛みから解放することができた。


くったりと脱力してベッドに横たわるキョーコを隣で眺めて、蓮はくすりと笑みをこぼした。キョーコはもうしっかりとパジャマ代わりのTシャツとショートパンツを身につけている。キョーコは自分の髪を梳きながら笑う蓮を不思議そうに見つめた。
「どうしたんですか?」
「んん…夢じゃないな、て思って」
「なんですかそれ…」
キョーコも笑って蓮に聞いた。
「この間、朝起きたらキョーコが横に寝てるって夢を見たんだ」
「夢の中で目をさましたんですか?」
「そう。リアルだった…けど、本当に夢から覚めたら、隣にキョーコがいなかったからがっかりしたよ」
がっかりって…と、キョーコは恥ずかしそうに蓮を見つめる。
「その夢のシチュエーションと一緒だ…あ、でもちょっとだけ違うかな」

「どの辺が違うんですか?」
興味津々、という顔でキョーコが尋ねると、蓮はうーーん、と天井を見上げて考える。
「夢のシーンでは、朝だったかな」
「今日このまま寝たら、同じになりますね」
「ああ、あと、多分キョーコは裸だった」
「うええ?…って、多分って…?」
「布団を胸のところまでかけてて、見えなかったよ。でも肩から腕は素肌だったから」
「…そんな夢、見ないでください…」

恥ずかしそうに目をそらしたキョーコをじっと見つめ、蓮は真面目な顔で言った。
「夢に見るほど、待ち遠しかったんだよ」
キョーコは真っ赤になると、「でも…」とごにょごにょと言いながら寝返りを打って蓮に背中を向ける。
「ん?何?聞こえなかった」
蓮は身を乗り出してキョーコの背中に体を密着させるようにして顔を後ろから覗き込んだ。顔は下向きにしてしまっているので見えないが、キョーコの耳は真っ赤だ。
「…です」
「え?」
聞こえなくて再度聞き返した蓮に、キョーコは怒ったように顔を上げて言った。
「蓮さん、エッチすぎです!」

「え」と一言だけ言って蓮は固まってしまった。
「もう、エッチなんだから」みたいな言われ方は過去にされた事はあるが、「エッチすぎる」とは初めてだ。
「だって、私初めてでドキドキして恥ずかしいのに、蓮さん慣れてて…恥ずかしい事いっぱいするんですもん!」
「キョーコ…それはだって、そういうものじゃないの?大丈夫、そのうち慣れるから」
「慣れるって!そ、そんなには…」
「いつでも泊りに来てくれていいよ。色々教えてあげるから」
「ひ、必要ありません!!」

くすくすと笑いながら蓮はキョーコを後ろから抱きしめ、キョーコは真っ赤な顔でそれでも大人しくされるがままだ。やがて2人はぽつぽつと話をしながら眠りに落ち、翌朝蓮は無事に夢で見た光景を現実のものとする事が出来たのだった。


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