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偏愛感情(20)


こんばんは!ぞうはなです。

うぅ~~~ん。
梅雨、どこに行っちゃったんだろう…

そろそろ植え込みのアジサイに水をやらないと、しお~~~ん、となりそうです。


ではでは続きと参りますー





「まだ起きてたの?」

打ち上げと称された飲み会に引っ張られ、黒崎やスタッフたちにしこたま飲まされた蓮は、日が変わってだいぶ経ってからようやく自分の部屋に帰りついていた。部屋に入って一息ついたタイミングで、待っていたかのように鳴り始めた携帯を手に取ってみれば、ディスプレイにはキョーコの名前。
蓮よりも少し早く会から解放されたキョーコは翌日早めの時間から仕事があるはずだ。それを知っていたため、思わず蓮は電話を取るなり聞いてしまった。

『あ、すみません…もう寝る準備は出来てるんですけど、蓮さんも帰れたかちょっと気になって…』
「ああ、そうか、ありがとう。うん、俺も今帰ってきたところ」
『そうですか…』
ほっとした気配が電話の向こうから伝わってきて、蓮は思わず顔をほころばせた。
「俺は明日、いや、今日は土曜日で休みだから大丈夫だよ。キョーコは仕事、早いんだろう?」
『私もそれほどきつくはないので平気です!…それに、打ち上げであまり蓮さんとお話しできなかったですし…』

また"蓮さん"だな…

いきなり呼び捨てに統一はできないようで元に戻ってしまっているが、徐々にでいいか、と蓮は特にそこには触れない。
「そうだね、でも明日は会えそうかな?」
日曜日は蓮も休みだし、キョーコも久しぶりに少し早めに仕事を終われる予定だった。
『はい!』
「どうする?どこか、行きたいところ…と言っても、キョーコは全然休めてないから無理すると疲れちゃうかな」
『あのそれで…ちょっと聞きたい事が…』
「ん?何?」
『あの…蓮さんは、おうちで会うデートって…どう思われますか?』
「え?どうって…」
唐突な問いの意味をつかみかねて蓮は思わず問い返す。
『あの…実はさっきの打ち上げで…』
キョーコは蓮に質問の理由を説明し始めた。

打ち上げの席で、スタッフに交際のことをそれとなく聞かれたときのことだった。スタッフたちもなんとなく蓮とキョーコの関係に勘付きつつ、それに関してあからさまに聞くような事はしなかったのだが、タレント京子の恋愛事情は気になるようだ。
「京子さんも、やっぱり"おうちデート"が多いんですか?」
「おうちデート…って?」
キョーコに質問してきたスタッフに言わせると、外でのデートは周りにばれ易いため、芸能人はお互いの家で会うことが多いということだった。キョーコは外を出歩いてもまずばれないし、これまでにどちらかの家でデートなど、女子高生に扮したときの1回以外はした事もなかった。素直にしたことが無いと答えたのだが、他人の目を気にする必要もないし、案外落ち着くかもしれませんよ、と言われて妙に納得してしまったのだ。

話を聞いていた黒崎に笑いながら言われた事もキョーコの印象に強く残っていた。
「男だったら自分の家で彼女が手料理振舞ってくれんのは嬉しいもんだぞ。たまには行って作ってやれよ」

私の手料理なんて…蓮さん、喜んでくれるかな?

キョーコは気になってしまって仕方がなく、うずうずと蓮に電話をしてしまったようなものだった。

「もちろん、キョーコがご飯作ってくれたらすごく嬉しいよ」
蓮は気持ちをこめて返事をした。ご飯など作ってくれなくても、自分の部屋にキョーコが気兼ねなく来てくれたら嬉しいに決まっている。どう誘うのが自然かと考えていたところだったから、この話題は蓮にとって渡りに船だ。

『そうですか…?』
「うん。忙しいキョーコにあまり図々しくお願いはできないけどね」
『いえ!私も料理は好きなので、喜んでいただけるならぜひ!』
「ホントに?それは楽しみだな。…でも、それ抜きでも家でデートは確かに落ち着けそうだね」
『蓮さんはおうちデートって大丈夫ですか?』
「うん。だってそうすれば、変装してない素のキョーコに会えるだろう?今回の撮影でたくさん見られて嬉しかったからね」
電話の向こうで照れてごにゃごにゃと言っている声が聞こえる。蓮は一度小さく深呼吸をすると、携帯に向かって話しかけた。
「明日、俺は休みでキョーコは夕方まで仕事だから…一度うちでデートしてみる?映画のDVDでも借りて一緒に見ようか」
『あ、はい!そういうのも楽しそうですね!』
「…キョーコ、明後日の最初の仕事は何?」
『明後日ですか?明後日は確か…ちょっと待ってくださいね』
電話の向こうで手帳を探しているのか、しばらく無言の時間が過ぎる。蓮は唾を飲み込んでその間をじっと待った。
『えぇと…明後日は朝9時からTBMでバラエティの収録ですね』
「TBMか。それなら、うちから行った方が早くない?」
『え…あ、確かに蓮さんのお部屋の方が近いですけど…それって…』
「うん、明日、うちに泊まってったら?その方がのんびりできるし、会う時間も長くなる。どうかな?」
蓮は緊張してキョーコの返事を待つ。声が聞こえるまでがものすごく長く感じた。

『…い、いいんですか?あの…お邪魔では…』
「俺は、そっちの方が嬉しいんだ。キョーコがよければ、でいいんだけど」
『は…い……あの、蓮さんがその方がいいんだったら、えと…はい……』
「じゃあそうしよう。っと、ごめん、明日早いのに長くなったね」
『いえ!私がかけちゃったんですし、全然気にしないでください!!』
「すぐに寝てね。じゃあ、お休み」
『おやすみなさい』

通話を切って、2人はそれぞれの部屋で同時にため息を吐き出す。あれこれと思うことが多すぎて、なかなか眠れそうに無かった。


そして日曜日当日。
キョーコは蓮の隣に並んでソファに腰掛け、大きいテレビ画面に映る映像を見ていた。テーブルの上には、デリバリーのピザが数切れ、皿の上に残っている。
隣に座る恋人のぬくもりが気になってキョーコはなかなかストーリーに集中できない。周りに誰もいない全くの2人きり、という状況も久しぶりで、照れ臭いが蓮を独占していると思えて、なんだかとても嬉しくてドキドキしていた。
映画が終わり、キョーコはふう、と息を吐きだした。
「面白かった?」
蓮に笑顔で聞かれ、キョーコは勢い良く頷いたが、細かいところが頭に入っていないことは内緒だ。
「こうやって見る映画もいいですね」
ストーリーには触れずにキョーコは感想を述べた。蓮も頷いて同意する。
「そうだね。周りに人がいないと落ち着くね。家で会うのもいいもんだな」
「今まであまりしたことありませんよね。といっても、私の部屋は狭くて蓮さんは落ち着けないかもしれませんけど」
「それでも俺もキョーコの部屋に行ってみたいな」
蓮に言われて、キョーコはきょとんと蓮を見返した。

「来てみたいって、思いますか?」
「そりゃあ…恋人の部屋に行ってみたいと思わない男はいないだろうね」
そんなもんですかね、とキョーコはまだ不思議そうな顔をしている。
「でもそんなこと、蓮さんから聞いた事ないですよ」
「そうだよ、言った事ない。言ったら、キョーコは喜んで招待してくれちゃうからね」
「ダメなんですか?」
ますますキョーコは訳が分からなくなった。

蓮はそんなキョーコを見て苦笑する。
「ダメじゃないけど…ダメだったんだよ。君の部屋に行くのも、俺の部屋に来てもらうのも」
「どうして…?」
蓮はじっとキョーコを見つめていたが、視線を外すと大きく息をついた。それからもう一度キョーコを見つめ、そしてキョーコの頬にそっと手を伸ばした。
「2人きりになるとね…どうしても、こうしたくなっちゃうから」
蓮はそう言うと、そっとキョーコに口づける。
「それでね…これだけじゃ済まなくなって…キョーコを脅えさせちゃうから、やめてたんだ」
「う…それはもしかして、前にここに来た時のことを言ってますか?」
「ふふ…そう。覚えてるよね。君に引かれて、かなりショックだったんだよ」
「す、すみません…!」
キョーコは慌てて謝った。初めてこの部屋を訪れた時に蓮に迫られてパニックになり、相当逃げ腰だった事をよく覚えている。あれだけ引いたら、確かに相手には失礼だったかもしれない。

「でももう…キョーコは大丈夫かな、と思ったから。部屋に、来てもらおうと思ってたんだ」
いつの間にかキョーコは蓮の腕の中に捕えられていた。片腕がキョーコの背中に回り、もう一方の手は優しくキョーコの髪をなでる。
「そうなんですか?」
「うん。どうやって誘おうかと思ってたら、君から提案してくれた」
「あ。昨日の…」
「そう。"おうちデート"をね」
「あのいえ、たまたま、そういう話題が出たってだけで…」
「うん、それを俺に話してくれたってだけで十分だ。話してもいいって思ってくれただけで」
蓮は何回も優しくキョーコに口づける。その間にも背中に回った大きな手はそっとキョーコの背中をなで、そして蓮がソファにキョーコを倒したところでキョーコは慌てたように口を開いた。

「あの!シャ、シャワーをお借りしてもいいですか??」
真っ赤な顔でものすごく恥ずかしそうに蓮を見上げたキョーコの顔を見て、蓮はそのお願いをうっかり却下しそうになったが、すんでのところで思いとどまったのだった。



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