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モテ日【リクエスト】(前編)


こんばんはーー!
えらく間があいてしまいましたーー!

言い訳をするならば、放置していた訳でもなく。
リクエストのお話を考えて書き始めたのですが、どうしても展開が気に入らずネタからやり直し…とか言う事をしてたら、こんなことに。

なんとかどうにか書き上げた今日の話は、ゆきだるま様のリクエストです。
リクエスト内容は『軽いラブコメ』。追い回す蓮から必死に逃げるキョーコとか、というリクエストでしたが、さて、ラブコメになっているのか。

前後編でお送りいたしますので、今日は前編です。





「あの京子ちゃん…ちょっと、いいかな?」

その日、午前中に行われたドラマ撮影が終わったタイミングでキョーコに声をかけてきたのは、共演している若手俳優だった。普段の撮影の時も気さくに話しかけてくる相手だったため、キョーコはさほど深く考えずにOKした。
俳優はキョーコを伴って、人気のない倉庫へと続く通路へと移動する。足を止めるとくるりと振り返るが、その顔はいつもの笑顔ではなく、どこか緊張しているような真面目な表情だ。

「あのさ…京子ちゃん、いつも恋愛はしないって言ってるけど…それって、今も本気で思ってる?」
「え?え、ええ…今は恋愛より、お芝居に全力をかけたいと思っていまして」
キョーコは突然聞かれた質問に少し戸惑いつつも、返事をした。
実際はもう二度と馬鹿な女になりたくもない、と恋愛を嫌悪しているのだが、さすがにそれを公言するのはタレント京子としてイメージが良くないと椹に言われ、建前を使い分けてはいる。けれど、現時点で恋愛をしない、と誓っていることに変わりはない。

「そっか…でもそれさ、芝居と両立、できないかな?」
キョーコは少し戸惑った表情で目の前の俳優の顔を見た。目線を下げていた俳優は、何かを決心したように顔を上げると、真っ直ぐにキョーコの瞳を見据える。
「俺、京子ちゃんのこと、いいなって思ってて。あ、もちろん、君が俺のこと、何とも思っていないって知ってるよ。だからその…最初は友達から、でいいんだけど……ダメかな?」

真剣に見つめられて、キョーコは言葉に詰まった。これまで親しくしてくれていたが、まさかそんな気持ちを抱かれているとは夢にも思っていなかったので、咄嗟に返事ができない。胸元で両手をぎゅうと握りしめると、困った顔でしばらく黙りこむ。
「あの…私……」
ようやく絞り出した言葉は少し震えていた。
「私…ごめんなさい。お気持ちは嬉しいんですけど、やっぱり今は…」
「誰とも?」
念を押すように聞かれて、一瞬キョーコの脳裏に1人の男性の姿がよぎった。しかしキョーコは目をつぶってその姿を振り払う。
「はい…」
目の前の俳優はふうっと息を吐きだして体の力を抜くと、無理やり笑顔を作ってキョーコを見た。
「そっか……そっか…やっぱり無理かあ」
んんん、と意味もなく伸びをして両手をぶらぶらと振りまわし、明るくキョーコに声をかける。
「ごめんね、突然こんなこと言って。ああでも、今後も、仕事仲間として、よろしくね?」
キョーコは慌ててしゃきりと背筋を伸ばし、両手を体の横にぴたりとつけた。
「も、もちろんです!あの私こそす、すみません!」
「なんで?京子ちゃんが謝ることじゃないだろ?…ほんと、ごめんね……じゃあ」
俳優は少し視線を泳がせると、キョーコの横を抜けて足早に去っていった。


び…びっくりした……

足音が聞こえなくなってから、ようやくキョーコは長く息を吐きだした。
芸能界に入って仕事を始めてからしばらく経つが、軽く声をかけてくるのではなく真面目な告白を受けたのは初めてだ。気持ちを向けられるのは決して嫌なことではないが、それでもやはり肯定の返事はできない。

もう、人を好きになんてならないもの…

先ほど、誰とも恋愛をするつもりがないのか、と聞かれた時に頭をよぎってしまった長身の先輩俳優の姿をもう一度思い出し、キョーコはブルブルと頭を振る。それから、よし、と握りこぶしを作ると、次の仕事へ向かうべく楽屋へと戻ったのだった。


そしてその日の夜遅く、キョーコの姿はラブミー部部室にあった。
他の部員は本来の芸能人としての仕事に忙しく、そこにはいない。1人なのをいいことに、キョーコは椅子に座ってその上半身を冷たい机にべったりとあずけていた。

今日は…なんなの?一体…

午前中の共演俳優の告白で、自分に好意を持ってくれるなんて珍しい人もいたものだ、と少し感心もしてしまったのだが、何がどうなっているのか、次のバラエティ番組の撮影現場で、今度は若手芸人に捕まった。

「あのさ…今度、2人でどっか出掛けない?」
少し照れたように頭をかきながら切り出された提案は、最終的には土下座せんばかりの勢いで繰り出され、キョーコはきっぱりと断るのに非常に苦労したのだ。

そして更に別のドラマの現場。
共演俳優に前からご飯を食べに行こうと誘われてはいたのだが、今日は特にしつこかった。
「事務所に戻らなくちゃいけないので…!!」と、最終的にはダッシュで振りきって、そして実際には事務所に戻る用事はなかったのに、口に出した勢いで本当に事務所に着いてしまった。

1日に3人って…絶対おかしいわよね?普通じゃないわよね?…はっ。もしかして…!

キョーコは急にがばりと体を起こすと、きょろきょろと周りを見回した。
机の脇に置かれた紙袋やロッカーの上の段ボール箱を一通りチェックして、それからまた用心深く周囲を見回しながら腰を下ろす。

どっきり…じゃないのかしら?隠しカメラがあったらどうしようと思ったのに…

キョーコが首をかしげたところで、カバンの中からぶぃーーーん、という振動音が聞こえてきた。携帯を取り出してみると、『敦賀さん』の文字。キョーコは慌てて通話ボタンを押した。

「はい、最上です!」
『ああ、お疲れ様。最上さん、今まだ仕事?』
「いえ、今は事務所で…部室にいます」
『え?事務所にいるの?』
「はい」
『なんだそうか…俺も今俳優セクションにいるんだけど、ちょっとそっちにお邪魔してもいいかな?』
「あ、はい!もちろん、大丈夫です!」
『じゃあ、ちょっと待ってて』

通話を終えてからさほど時を置かずに部室のドアがノックされる。キョーコはすぐに駆け寄りドアを内側から開けたのだが、蓮の顔を見た瞬間、ある考えが浮かんでしまった。

もしかして…今日の出来事がどっきりで、敦賀さんも仕掛け人だったら…?

もしそうだとすると、蓮もまたキョーコに告白をしてきて…そしてそして、「だいせいこうー!」「やだな、本気にした?」とか言ってネタばらしされて、間抜け面をさらした姿を全国のお茶の間に届けられてしまうのだろうか。ああ、蓮が"どっきり"とか書かれた派手なプラカードを掲げている姿なんて、見たくない…!何より、他の誰かならともかく、蓮に真面目に告白されたりして…そしてそれを「冗談だよ」とか言って取り下げられたら、耐えられそうにない。

0.1秒ほどの間にそんなことをフルスピードで考えてしまったためか、顔が若干強張ってしまった。精神的な疲れのせいで考えている内容もどこかおかしいが、キョーコは気付かず、ややぎくしゃくとした動作で蓮を室内に招き入れ、椅子を勧める。
すると、何かと敏感な先輩俳優はすぐにキョーコの異常を察知した。

「最上さん、大丈夫?」
「ひゃい?な、何がですか?」
「今日、仕事が立て続けに入ってたから、疲れたのかな。ちょっと顔色が悪いよ?」
蓮は心底心配そうな表情でキョーコの顔を覗きこんでくる。テーブルをはさんで向かいに座っているのに妙に距離が近くて、キョーコは跳ねるように飛び退ってしまった。

何で、今日私の仕事がいっぱい入ってたって知ってるのかしら…?てことはやっぱり…!

実際は有能なマネージャーである社がさりげなく、しかし着実にキョーコのスケジュールを収集しているのだが、そんなことを知らないキョーコは全てが怪しく思えてしまう。

「疲れてるんだったら事務所に戻らずに帰ってしまえばよかったのに…体調管理も仕事の内だよ」
蓮は腕組みをして少し怒ったような顔でキョーコを諭す。
「す…すみません」
キョーコは思わずしゅんとなって謝ってしまった。いや実際は戻りたくて戻った訳ではなく、半ばパニックの内に気がついたら来てしまっていたのだが。すると蓮はふわ、と表情を緩める。
「でも、俺にとってはよかったかな。最上さんが事務所に戻ってたから、今日こうやって会う事が出来て嬉しいよ」

普段ならば「またもう遊び人な発言を」と照れながら窘める蓮のセリフだが、キョーコはその言葉を聞いた瞬間、ぴきりと表情を凍らせた。
「や、やっぱり…」
「最上さん、どうした?顔色が…」
「やっぱり、敦賀さんも仕掛け人なんですね~~~~!!!」
叫ぶなり、自分の体を抱いてぶるぶると震えだしたキョーコを戸惑いながらもなだめ、話を聞きだすのに蓮はやや苦労したのだった。

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