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本性をあばけ【リクエスト】(後編)

こんばんは!
間があいてしまいましたが、ようやく花様リクエストの後編です。
この次の更新はGW明けとなります~~。
ただいま出先のため、コメントのお返事は帰宅してからとさせていただきたいと思いますm(__)m

さて、早速行きましょー!



キョーコと別れて蓮とスタジオまで歩く間、社はやきもきしていた。
本当は、楽屋につくなりカメラで見られていることを2人に伝えたかったのだ。それなのに、終始にやにや顔のディレクターから、くれぐれもゲストとして登場するまではネタばらしをするな、と厳命され、そのおかげで最後の最後に決定的と捉えられかねない爆弾発言が、蓮のみならずキョーコの口からも飛び出してしまった。
あれをそのまま放送に乗せる事はおそらくないだろうし、そこは阻止すべきところではあるが、どっちにしてもすでにスタジオ内の出演者やスタッフには聞こえてしまっているだろう。

こうやって廊下で2人で歩いていても、隣の男に収録について釘を刺せない。もどかしさのあまり、社は思いあまって蓮に話しかけた。

「蓮…」
「はい、なんでしょうか?」
「いや………なんでまた今日、キョーコちゃんを食事になんて誘ったんだ?滅多にそんなことしないくせに」
蓮は隣の社の表情をチラリと見る。
「社さんこそ、いつもだったら俺がそんな行動したら、すごい目をしてからかうくせに、どうして今日はそんなに恨みがましい顔してるんですか?」
「いや別に、恨みがましい顔なんてしてないぞ」
それきり社は口をつぐむと、真っ直ぐに前を向いて足を速める。蓮はそんな社の心境を知ってか知らずか、少し首をかしげると黙って並んで歩いた。

スタジオに着くと、時間が押しているのかすぐに出演の準備がされ、セットの裏からの登場となる。
司会の紹介を受け、「こんにちは」と微笑むと、それだけで周りの女性陣は総崩れだ。司会者コンビが早速進行どおりに蓮に声をかけた。
「敦賀さん、後ろ見てみてください、後ろ」
「このコーナー名を読んでみてもらえます?」
蓮はそこに大書きされた文字を見ても微笑みを崩さない。
「敦賀蓮の本性に迫る…紳士の仮面を剥がせ?なんですかこれ、ひどいなあ。俺仮面なんてかぶってないですよ」

「さあ、その主張がどうか、もうさっきから一部始終、こちらでチェック済みですからね」
目の前のモニタを示されて、蓮は目を細めた。
「これは…俺の楽屋ですね?」
「そのとーり!カメラを仕掛けさせていただきましたー」
「色々、聞きたい事がありますよー!」
お手柔らかに、と微笑む蓮の表情は余裕があり、先ほどの一部始終を見られた事に対する動揺は見られない。

蓮の素顔検証は蓮の楽屋入り時点からのVTRを見ていく形で始められた。先ほど撮った映像であるが、すでにハイライト部分が抜き出されている。グラビアタレントの挨拶や蛍光灯交換のVTRが流れても、「普通、こうやって対応しませんか?」と笑って蓮が流し、さほどの突っ込みもされなかった。

そしてVTRは京子が蓮の楽屋を訪れた場面へと進む。
「さて、問題はここからですよ」
「敦賀さん、京子ちゃんと仲いいんですか?やっぱりドラマで共演したから?」
「事務所の先輩後輩として、割と親しいですね。実は俺は京子さんをデビュー前から知ってるんですよ」
蓮の調子は全く変わらない。相変わらずの穏やかな口調で、司会者コンビは顔を見合わせると更に質問を続けた。
「なるほどっ。しかし、何回見てもすごい色ですよね、このピンクのつなぎ」
「誤解しないであげてくださいね。これ、彼女が所属する、うちの事務所のとあるセクションのユニフォームですから」
社長の趣味で、彼女の趣味ではありません、と断ってから、でも最近全く違和感なくあれで電車も乗ってるみたいですけど、と笑いを誘う。

「で、この、読み合わせ!」
「なんですかこれ。敦賀さんの読みあわせっていつもこんななんですか?」
蓮は少し恥ずかしそうな表情で頭をかいた。
「いや…どうも京子さんに相手してもらうと、エスカレートするんです」
「それはなぜ?」
「観てもらって分かったかと思うんですけど、彼女かなり演技派なんですよ。こちらが投げたセリフに対していい反応が返ってくると…つい、本気になっちゃうんです」
「その結果が…あれですかあ?」
「俺には、敦賀さんが京子ちゃんに迫ってるようにしか見えませんでしたけどお?」

ざわざわと起こる笑いに対して、蓮はさらりと答えた。
「役柄として京子さんに対応するように動いたら、ああなっちゃったんですよね」
「おおっと…紳士といわれる敦賀さんですが、案外肉食系?」
「あはは。あくまで役柄ですよ。俺が演じている役は、結構積極的に行くタイプなので」
「とか何とか言っちゃって。あれ、京子ちゃんが止めなかったらそのままチューしてたんじゃないですか?」
「うーん、どうでしょうね。完全に役に入っていたので、俺には分かりません」
「ええーー。そんな言い訳、ありですか」
「言い訳じゃないですよ。そういう瞬間が、たまにあるんです」

するりとかわされ、この時点ではこれ以上突っ込めないか、と思いながら司会は話を戻した。
「そういえば京子ちゃんが、敦賀さんがアドリブ入れたって言ってましたけど、どっからがアドリブだったんですか?」
「それは、これから放送のドラマで確かめてください。あ、シーンごとカットされたら分からないかな」
「ちなみに、さっきのシーンって何話目ですか?」
「何話目でしたっけ…まあ、そんなこと言わずに今週から続けて観て下さいよ」
「いや俺は毎週欠かさず観てますよ!」
くすくすと出演者から笑いが起こる。蓮が質問の勢いをいなし、話を流して行くので司会コンビは若干のやりにくさを感じていた。が、ディレクターからのカンペを見て、ごくりとつばを飲み込むと話を切り出す。

「さて、ここから先は放送できるか分かりませんが…聞いちゃいますよ!京子ちゃんって、敦賀さんのお部屋によく行くんですか?」
「よくってほど頻繁じゃないですけど…何回か、ご飯作ってくれてます。京子さん、すごく料理上手なんですよ」
おおおおぉ、というどよめきが起こる。スタジオ内の誰もが、蓮の発言を聞き逃すまいと集中していた。
「ご飯作るだけ?」
「もちろん、一緒に食べますよ」
「やだな、敦賀さん、そーゆー意味じゃなくてさ…」
困ったような司会に対して蓮は声を上げて笑うと、髪をかきあげた。
「楽屋の様子見て分かりませんでした?彼女、俺が何かしたら、きっと二度と来てくれなくなります」
「でもなんだか、さっきやけに意味深な発言してませんでした?誤解されてもいいとか…」
「ああ、聞こえてました?」
蓮は慌てるでもなく身を乗り出した司会者をにっこりと見返す。
「ああいう発言をした後の彼女の反応、可愛いんですよ。それが見たくてつい、ね」
「つ…敦賀さんは、京子ちゃんの事好きなんですか?」
蓮は微笑みを湛えたまま、ふと目をそらした。
「彼女は大切な後輩、ですよ。そして、大切な先輩と思ってもらいたい…いや、かけがえのない先輩、の方がいいかな」

遠くを見る蓮の顔が、先ほどキョーコに向けた甘いものになったため、女性陣からほうとため息がこぼれる。うっかり見惚れてしまった司会者コンビが慌てて口を開こうとした時、蓮が制するように人差し指を唇の前に立てて言葉を発した。
「ああ、もちろんこの部分は放送しないでくださいね」
「やっぱり駄目ですか?」
「俺は何を言われてもいいんですけど…京子さんがね。迷惑かかっちゃうし」
「まあ…確かに騒ぎになっちゃうでしょうけど」
「それに」
人差し指をそのままで、蓮は軽く微笑んでみせた。
「こういう話って、本人抜きで話すことじゃないですし、ね」
「どういう話だよ!!」という司会のツッコミも、そのまんまです、と意味深な笑顔でかわし、収録は次のコーナーへと進んだ。

収録後、蓮に近寄ってきた社はじと目で蓮を見る。
「蓮お前、隠し撮りに気がついてたのか?」
「いいえ。知りませんでしたよ」
「ホントか?」
「ホントですよ。大体知ってたら、あんなことしません」
涼しい顔で言い返す蓮の言葉は若干信じられないが、これ以上追及をしても実際のところは分からないし、状況が変わる訳でもない。
けれど、蓮は今回の企画でドラマの宣伝、京子の演技力の高さのアピール、自分の京子への想いの暴露(いや、限りなくクロに近いグレーという状態ではあるが)をしてのけている。社は不満げにため息をついた。

「収録の間に椹さんに話はしておいたぞ」
「ありがとうございます」
「ちょうどキョーコちゃんもタレント部にいたから、その場で本人に伝えてもらった。電話の向こうで叫んでたぞ、キョーコちゃん」
「まあ…しょうがないですね。読み合わせのところだけだったら問題ないでしょう。ああでも、ギャラが出ないから申し訳ないですね」
「…お前は全く……」
なにが?と言わんばかりににっこり微笑むと、蓮は周囲に挨拶をしながら帰り支度を始めた。


蓮が事務所に着くと、ラブミー部部室では困った表情をしたキョーコが待っていた。
「お疲れ様です!あの、敦賀さん…」
「お疲れ様。待っててくれてありがとう。なんだか俺の仕事で巻き込んじゃってごめんね」
「いえ、それはいいんですけど…あの、大丈夫なんでしょうか?」
「さっきの楽屋での事?別に何も悪い事はないし、心配しなくて大丈夫。そうそう、皆、京子の演技がうまいって驚いてたよ」
「は…ありがとうございます!」
てれてれと照れるキョーコを促して、蓮は車へと向かった。

まったく、楽屋で短時間にあれほど色々起これば、気づくなと言う方が無理だろう…さすがに最上さんが来たときは驚いたけど、まあ結果としては上出来かな?

蓮は助手席に座るキョーコの横顔をさりげなく見る。

放送見ても…この子は気がつきもしないんだろうな。
まあいいか。外堀を埋めるところからゆっくりと…

密かな企みを乗せて、車はなめらかに滑り出して行った。


後日、蓮のドラマをたまたま見ていた司会コンビの片割れは、あるシーンで吹き出すことになった。主役の蓮とヒロインの同僚刑事の言い争いから始まったそのシーンは、蓮がヒロインに平手打ちされるところで終わっていたのだった。


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コメントコメント


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ありがとうございました!

この度はリクエストに応えて頂きありがとうございました!
着々と外堀埋めていく策士な蓮さんがたまりませんなぁ♪
カメラが見つかったわけじゃないけどバレバレだったんですね。(笑)
これからも色んなところでうっかりを装った外堀をがしがしと埋めていくだろう蓮さんを思うとニヤニヤ笑いが止まりません。
いつの間にやら周りからの生暖かい見守りムードに首をかしげるキョコちゃん(+呆れ顔の社さん)の様子が目に浮かびます。
そんなその後妄想すら楽しい♪

ステキなお話、本当にありがとうございました!!

花 | URL | 2013/05/04 (Sat) 22:11 [編集]


Re: ありがとうございました!

> 花様

コメントをありがとうございます!
蓮さん、策士なのですが外堀を埋めるところから徐々に、てあたりが慎重さんです。
それでもおにぶさんなキョコさんは「いやまさかそんなはずないわよね」とかいって、窒息するほど包囲網が縮まるまで認めないんだろうなと思ってみたり…。
リクエストのご期待に沿えていましたらいいのですが。
とても楽しいリクエストをありがとうございました!

ぞうはな | URL | 2013/05/05 (Sun) 22:33 [編集]